大侵略者 [c o m i c]
石森 章太郎 「大侵略」
NYケネディ空港にタスマニア王国の大使が到着する。そして米政府高官に宣戦布告をして、無条件降伏を要請した。ホワイトハウスの米大統領(ニクソン似)は明日午後2時、ネバダの核実験場にある原爆を逆爆発装置で爆破するという脅しを一笑に付すが、その予告通りに爆発してしまう。モスクワのクレムリン宮殿にもタスマニア王国からの使者が訪れて、ソ連の指導者(閣下)が指定した場所と時刻に原爆を爆発させた。オーストラリア大陸の東南にあるタスマニア島に3人の調査団が上陸する。もう1人の動物学者という名目で潜り込んだ雑誌記者のケンは脱獄して逃亡中の凶悪犯2人(白人男たち)に襲われていた原住民のララを救う。婚約者クーヌーの放ったブーメランで負傷したケンの右腕を手当てするララは日本語で謝る。北京中央政庁では保有する核爆発物を1カ所に纏め、起爆装置を破壊して海底に沈めろと脅迫されていたが、資本主機帝国アメリカと偽共産主義国家ソ連の陰謀だと誤解した主席はタスマニアの使者が指定した時刻に核ミサイルをアメリカとソ連へ向けて発射する。
動物学者の娘ケイトは彼女たちイギリス人がタスマニア人を全滅させた、少数民族や希少動物たちを滅ぼしたのは人間の持っている獣性だとケンに話す。動物学者がタスマニア・デビル(哺乳類有袋目フクロネコ科)を見つけた。父娘は1936年に絶滅したといわれるフクロオオカミの生存確認調査に来ていた。ケンは米秘密情報局員の1人として逆爆発装置を発見するための調査に来ていた。ララがケンに告白する。ずっと以前、彼女たちの島に白い神マサが来て、日本語による神託によってタスマニア島に移住したことを。お告げに内容を聞き出そうと逼るケンにクーヌーが再びブーメランを投げた。ケンの身を庇ったララ、逆上して襲いかかる婚約者をケンが射殺する。仲間を殺された原住民たちに攻撃されるが、身代わりになった時にケンの首から引き千切ったメダリオンを手にしたララが制止する。写真に写っていたケンの養祖父が白い神サマだったのだ。瀕死のララが神託を告げる。「五百ノ夜ト昼ノアトニ島ヲイデヨ。オオイナル国ヘノリコミ、カク ツゲヨ。ナンジラ、オゴレルモノドモヨ。神ヲオソレヨ。ワガ足モトニヒザマズケ!」
雪の降り積もる日、ケンは捨て子だった混血兄妹を育ててくれた養祖父(おじいちゃん)の棲む小屋を訪れる。逆爆発装置を操作していた養祖父と対面して、この大侵略作戦が彼1人で考えて実行したこと。逆爆発装置ではなく、精神波増幅機であること。ニューギニアの小さな島へ行って、原住民の持っている原始的動物的超感覚で精神波を中継してもらうための協力を頼んだこと。彼らに後催眠暗示をかけて、世界中の核保有国に乗り込ませたことを知る。核爆弾を逆爆発させる指定の時刻が迫り、養祖父は逆爆発装置のスイッチを入れようとする。世界の核保有国は、その時刻に全ての核爆弾が "敵国" の上にあるように細工していた。核保有国の指導者たちは既に核ミサイルの発射ボタンを押していたのだ。動転したケンは逆爆発装置のスイッチを押す養祖父の背中に発砲する。妹ミミが駆けつけたが間に合わなかった。おじいちゃんは核ミサイルを爆発させたのではなく、世界中の核爆発物を一瞬にして不発に、役に立たぬものに変えたのだった。
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野営している4人の前に異形の男が現われる。《──おまえら人間どもはこれまで‥‥おのれの私欲のためにただひたすらおごりたかぶって‥‥自然を破壊してきた!──母なる海をけがしてきた!! さよう、おまえら人間の生命を‥‥子を生んだその母なる海をだ‥‥だからこそ、いま‥‥母なる海はおのれをまもりために‥‥自然のすべての生命をまもるために‥‥ "泡沫" というかたちで、おまえたちを罰してきた‥‥!!》寒川が狂人を刺殺したテツを咎める背後から野犬の群れが襲いかかる。岸壁に辿り着いた寒川光と白浜洋子の2人に恋が芽生えると、嫉妬したテツが背後からナイフで刺そうとする。水溜りから発生した "泡" に包まれて死ぬ。ミッキーが崖から海へ身投げすると、海中から無数の "泡" が現われて空中へ浮揚する。抱き合う寒川光と白浜洋子に "泡" が迫る‥‥。「おとし穴」 から1年8カ月後の作品にしては絵柄が違いすぎる。主人公が「人造人間キカイダー」のジローに良く似ていることなどから、作画は石森本人ではなく、アシスタントが描いたのではないかと思われる。
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- 「石ノ森章太郎萬画大全集 3-3」(角川書店 2006)をテクストに使いました
- 「おとし穴」 は〈未来がまつ落し穴〉からの再録(一部加筆・改稿)です
- 「くだんの母」(別冊少年マガジン 1970)は〈くだんのママ〉を参照して下さい
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2024-02-01 00:03
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