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番長リュウの道 [c o m i c]



「リュウの道」(少年マガジン 1969-70)、「原始少年リュウ」(少年チャンピオン 1971 -72)に続く「番長惑星」(1975-76)は「リュウ3部作」の完結編。現代から未来の地球へタイム・ワープしたリュウ、過去と未来が混在する世界に生まれたリュウ‥‥現代(70年代)を生きるリュウはパラレルワールド(多重世界)にスリップしてしまう。そこは地球に似ているけれど、「ロボット警官」 「夜間外出禁止令」 「殺人許可証」 などが横行する似て非なる、もう1つの地球だった。中学生のリュウ(等々力竜)はハカセ(左巻ツトム)、バクダン(伴太郎)、ツギハギ(五井四狼)などの仲間たちと共に、この世界の闇を支配している "影"(シャドウ)に闘いを挑む。リュウが敵対する学生とのケンカに勝ち、仲間に引き入れて行くプロセスは「男一匹ガキ大将」を想わせなくもない。U・F・O(未確認飛行物体)、イースター島の巨大ロボット、インカ帝国のロケット、バミューダ・トライアングル、大ピラミッドの遺産など、古代〜SFガジェットが総登場する石ノ森ワールドである。

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多勢に無勢のケンカから逃げたリュウは稲荷神社の大木の洞の中に隠れようとして水中に落下する。穴から地上に出ると、いつの間にか夜になっていた。人っ子一人いない帰り道で、リュウはロボット警官が酔っぱらいを射殺するのを目撃する。「人狩りマシン」はリュウにも銃口を向けるが、爆発事件に気を取られた隙に逃げ出す。帰宅したリュウを両親が心配顔で迎える。翌朝、リュウは通学中に日本刀を振り回す学生に襲われる。級友のハカセに相談すると、パラレル・ワールドに入り込んだのかもしれないと解説される。もう1度、木の洞から落ちて元の世界に戻ろうとするが、敢えなく失敗!‥‥落下した時に2人のリュウが混じり合って1人になってしまったらしい。リュウとハカセはロボット警官に追われて、空腹で行き倒れていたバクダンを助ける。リュウは五井財閥の令嬢ミヤコ(五井都)の兄ツギハギと対決して勝ち、「3番目のブレーン」として迎え入れる。

五井邸を訪れたリュウたちとツギハギが敷地内を警備しているガード・ロボットに襲撃される「殺人許可証 」。リュウの許に殺人許可証 とガン鉄番長・大岩助五郎からの決闘申し込み状が届き、午前0時の丸の内オフィス街で闘う「暗黒の決闘 」。バクダンがテロ組織に誘拐されて爆弾を作らされる「爆弾革命」。もう1人のリュウが佐渡博士と交わした誓約書によって、10年前に交通事故死した息子・正夫のロボットにリュウの心を移植されそうになる「知らない約束」。深夜、家に侵入して現金を奪った強盗の後を追ったリュウが山椒魚のような生物に襲われる「地底前世紀」。下校するリュウが学生に斬りつけられる「鉄砲玉がとんできた」。代々木体育館で決闘王・ブロース竜とツギハギの剣道の師範・神刀流三十八代丹羽研吾が真剣勝負する「リュウとドラゴン」。バクダンの友達・ネズミの姉が二重催眠をかけられて、宝石を盗むようにリュウに命令されたと訴える「夢の底にキツネがいる」。

UFOを目撃したリュウが2人組の男に襲われていた老人・南矢摩博士(UFO研究家)を助けてハカセの実家で介抱するが、インベンダー(侵略者)の地球侵略計画のデータの入ったアタッシュ・ケースを空から降りて来た宇宙人たちに奪われてしまう「U・F・O(未確認飛行物体)」。夜の街を見回るリュウとツギハギの2人はロボット警官たちに追われていた新聞記者・風祭一を救い、神社の大木の洞の中に隠れる。「夜の暗闇の奥で──夜の世界を支配している者がいる。そして、その夜を支配する何者かは昼の世界をも支配しているのだ!」‥‥風祭記者が調査し始めると妨害されて新聞社をクビになり、追われる身となった。月夜に悪魔鳥(サタン・バード)の群が飛び、一つ目の巨人・闇の使い魔が現われる。一つ目から楕円形の発光体が飛び出し、大木や神社を破壊してリュウたちを襲撃する。援護射撃して3人を救った女ゲリラたちと共にリュウは仲間を集めて、"影"(シャドウ)と闘うことを誓う。

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続発する大企業への爆破事件‥‥新たな仲間を探しに夜間外出したリュウとツギハギは爆破された民家の方から逃げて来る男の後を追う。八つ目ネコがリュウに襲いかかり、ツギハギが加勢する。リュウに捕らえられたニゲアシ(富田哲朗)は仲間に銃撃されたことで告白する。敵対しているゲリラに民衆を憎悪を集めるために、無差別爆弾投げ込み屋として "影"(シャドウ)に雇われた鉄砲玉の1人だったことを。鋭い刃物で全身を刺され、両眼を抉り取られた変死体を発見したネズミがリュウを現場に連れて行く。女忍者くノ一のような容姿の女性(?)がナンパして来た不良学生たちを撃退する。仲間に誘おうとしたリュウに、カタメは連続刺殺事件は血鳥の仕業だと告げる。毎晩、山の上で光るものの正体を確かめようとしたカタメが発見した巨大な卵のような発光体。出たり入ったりする光る飛行体。カタメを襲い、村人たちを殺した血鳥が東京まで追い駆けて来たのだと。

リュウ、バクダン、ネズミ、ハカセ、ツギハギが河に架かった鉄橋の隙間に出来たアジトに棲むニゲアシ、カタメと作戦会議を開く。ハカセが "影"(シャドウ)と闘うためには会社を設立する必要があると説く。いつの間にか仕込み杖を持った学生たちに橋の周りを包囲されていた。夜になって悪魔鳥が飛来し、学生ゲリラ集団との闘争が始まる。ニゲアシが両足を斬られ、ネズミも左腕を失う。血鳥と八つ目ネコがリュウたちに襲いかかる。学生たちも血鳥も八つ目ネコも "影"(シャドウ)に操られていた。絶体絶命のピンチを救ったのは対 "影"(シャドウ)のゲリラ組織 "サンシャイン" のメンバーになった風祭一だった。CMに起用した某有名女優との情事(写真)をネタに強請りに来た2人組を「スパットシャッキリ」の社長は殺してしまう。その時の会話を盗聴した録音テープで社長を脅迫して、リュウが新社長になる「乗っ取り」。

殺人許可証制度、ロボット警察機構、夜間外出禁止令‥‥2つの地球(双子惑星)の相違を調べることで、ヤミの支配者 "影"(シャドウ)を正体が明らかになるかもしれないというハカセの提案で各分野の専門家たちが集められる。調査を始めた途端、リュウの命が狙われ、実家が爆破されて両親が殺されてしまう。専門家の中に "影"(シャドウ)の密偵がいた「イヌの鼻」。父母が殺されたことで落ち込んだリュウは神社の洞から落ちて元の世界へ帰ろうとするが、再び失敗!‥‥横穴の行き止まりの奥に隠されていた機械を発見する「望郷」。ハカセが2つの世界を比較して歴史を遡り、 "影"(シャドウ)の正体がマヤ族だったことを解明する「歴史AとB」。稲荷神社の洞の地下をシャベルカーで掘り起こして次元移送機を発掘するが、ダイナマイトを咥えたキツネたちに爆破されて消滅する「たたり」。死んだはずの父親がリュウの会社へ面会に来る。1時間以内に帰宅して元の世界に戻らなければ捕らえた母親と家を爆破すると電話で "影"(シャドウ)に脅される「父さん母さんわなのえさ」。

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星城中学に転校して来たポルノ(秋津久美)ちゃん。アタイの子分にしてあげるという彼女の申し出を断ったリュウとケンカになるが、子分を引き連れて来たスケバン転校生はアタイがアンタの子分になると言い出す。女子生徒たちに囲まれたリュウは香水の匂いに酔って倒れ、水中から現われた潜水艇へ運ばれて小さな島に拉致されてしまう。超能力で岩を自在に操るポルノはマヤ一族の末裔だった。巨大カニに襲われ、島が大噴火して沈没する。リュウは浮揚する岩に掴まり、浮游するマッコウクジラの頭に乗って渦から逃れる。超能力が存在するという暗示を与えて、リュウの能力を引き出した。ポルノが助けたのではなく、リュウが自力で脱出したのだ。地球人の先祖・マヤ族は "影"(シャドウ)と闘っていた。ポルノがリュウに様々な形状形態のUFOをスライドで壁に映す。それまで築いて来た文明圏を放棄して、マヤ族が地底に隠れ住むようになったのは約1万2千年前、宇宙から来た侵略者の "影"(シャドウ)が「アトランチス」を襲撃したからだった。

「アトランチス」は海の底に沈められて、先祖たちは世界の方々へ散り散りになって逃げたという。夜空に出現したUFOの光に吸い上げられたリュウは空飛ぶ円盤の中で水に浸かり、氷漬けにされる。氷の塊が地上に降ろされると、リュウは氷を砕いて脱出する。待っていた3人の宇宙人を倒すと、UFOが現われて3人を回収する。突然夜空に現われた無数のUFOをマヤ族のUFOが追って行く。誘拐されたリュウの後を追跡して来たポルノが迎えに来る。番長シャチに倒されたツギハギ。自分を誘き出すための罠と知りながら、リュウは砂山高校の鋼鉄軍団に果たし状を届ける。リュウとシャチとの決闘‥‥鋼鉄の皮膚を持つ鋼鉄軍団は "影"(シャドウ)に改造されたサイボーグだった。大学構内に侵入した暴走族が学生集会を牽制し、アジ演説をしていたリーダーをバイクで轢き殺す。暴走族を待ち伏せしていたリュウはロケット弾を発砲するボス(宇宙人)と闘う。

リュウとポルノの傍に小型UFOが飛んで来て、信州の天魔峡へ招待したいと告げる。リュウの仲間たちは前もって招待しておいたという。山奥で嵐に遭ったリュウとポルノは山小屋に避難するが、クマやゴリラ、鹿などの動物に襲われて、ポルノまでもが捕まってしまう。崖の上に建つ天魔城へ通じる道を進化した猪の子に教えてもらう。鍾乳洞の奥へ進み、透明エレヴェータに乗って城の中へ入る。リュウの到着を待ち構えていたロボット軍団‥‥ロボット戦士との一騎打ちにリュウが勝つと、一体のロボットが「ワレワレハ長イ間キミノヨウナ超人類ノ出現ヲ待ッテイタ!──ソウ、コノ天魔城ノ城主ニ迎エルタメニ‥‥」と話す。彼らは "影"(シャドウ)から逃げて来た反乱ロボットたちだった。意志を持つ機械人間や人造人間を作り出したのは第5惑星人の "影"(シャドウ)だった。第5惑星を自ら破壊に導いた種族の生き残りが地球に移住し、開発のための労働力として機械人間や人造種族を作った。予想を超えた進化と繁殖力に "影"(シャドウ)は種の制御作戦を開始したのだ。

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リュウとバクダンはロボット107号の操縦する飛行艇に乗ってイースター島へ飛ぶ。モアイ像の立ち並ぶ島に巨大ロボット "テツジン" が眠っているという。リュウが鳥人の岩を浮揚させると、金属塊のタマゴが埋まっていた。鳥人(空中戦闘用兵士)がタマゴを奪いに来る。海中から巨大ロボットが現われると、鳥人たちは逃げ去った。タマゴが割れて黄味2つが出て来る。 "テツジン" と意志を通わせるための装置だった。リュウたちは他の鳥人の岩からもタマゴを入手するが、敵に先回りされて目覚めた "テツジン" たちとの巨大ロボット同士の闘いが始まる。後に残ったのは巨大な鉄クズの山だけだった。南米アンデス山脈‥‥飛行艇からナスカの地上絵を俯瞰する。コア博士たちと共にインカ帝国の遺跡調査に訪れたリュウとポルノはロケットが埋蔵されているという大きな金属製の棺と対面する。突如現われた円盤機に調査員を殺され、乗って来た飛行艇も破壊されてしまう。生き残った6人が眠りについた夜、リュウは「‥‥アブドラ・クプル・カブラカ‥‥」という呪文のような声を聞く。

見張りに立っていたポールが殺害され、ジェイムスン教授も行方不明になる。リュウの念波と幽霊パイロットの残留思念による呪文を唱和することで棺の蓋が開く。コア博士と娘のレニイがリュウとポルノに銃口を向ける。2人は "影"(シャドウ)の一味だった。リュウたちは次元移送ロケットに乗って超空間へ脱出する。「バミューダ・トライアングル」の謎を解くために調査に訪れたリュウとポルノの2人。飛行艇の計器が狂ってトライアングルへ突っ込む。"影"(シャドウ)の円盤機に攻撃されて海中へ潜る。ビキニ環礁の海底都市を発見するが、敵の母艦から発射されたサメ型潜水艦に追撃される。海底の鍾乳洞で巨大な磁場エネルギーの渦巻を目撃する。サメに翼を噛み砕かれた飛行艇は "影"(シャドウ)の基地に不時着する。追っ手から逃れたリュウとポルノは20年近くも島暮らしをしているという小野井船長の手引きで「ディメンション・エネルギー」の研究をしている施設に侵入し、"影"(シャドウ)の円盤機を奪って島から脱出する。

エジプト・ギゼーの大ピラミッドを見学に来たリュウとポルノは内部で一晩過ごす。真夜中にリュウはインカの石棺から聞こえて来た声と同じ声に導かれ、"新生の部屋" で啓示を受ける。「──なんじ選ばれし者よ。──なんじ人々の行く末を指し示す者よ‥‥なんじにすべての秘密を──すべての力を与える‥‥」。すべての謎を解いたリュウは仲間たちと共に "影"(シャドウ)との最終戦争(アーマケドン)に挑む。リュウたちの円盤機と円盤眼との戦闘‥‥バミ ューダ領域でのロボット軍団&マヤ戦闘機部隊と "影"(シャドウ)の円盤機の最終決戦。"影"(シャドウ)は遙か古代に追放された犯罪者たちの子孫だった。彼らは故郷へ帰りたがっていた。Aの宇宙とBの宇宙、Aの地球とBの地球‥‥彼らはAとBを自在に移動可能な装置を持っていたが、その狭間の超空間宇宙に留まることが出来なかった。リュウは基地ごと、故郷の超空間宇宙へ戻す。1/3は最終決戦で消え、1/3はリュウが故郷へ帰した。リュウは逃げた残りの1/3を追って、Aの地球へ舞い戻る。両親の待つ家へ。

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  • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2008)をテクストに使いました
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番長惑星 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-9

番長惑星 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-9

  • 著者:石森 章太郎
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2008/02/29
  • メディア:コミック
  • 目次:人狩りマシン / 三番目のブレーン / 殺人許可証 / 暗黒の決闘 / 爆弾革命 / 知らない約束 / 地底前世紀 / 鉄砲玉がとんできた


番長惑星 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-10

番長惑星 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-10

  • 著者:石森 章太郎
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2008/02/29
  • メディア:コミック
  • 目次:リュウとドラゴン / 夢の底にキツネがいる / U・F・O(未確認飛行物体)/ 夜─明日への闘いの序章 / 標的は影 / 目ンない血鳥 / ゲリラ対ゲリラ / 扉絵コレクション


番長惑星 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-11

番長惑星 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 9-11

  • 著者:石森 章太郎
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2008/02/29
  • メディア:コミック
  • 目次:乗っ取り / イヌの鼻 / 望郷 / 歴史AとB / たたり / 父さん母さんわなのえさ / スケバン転校生ポルノちゃん / U・F・Oのいろいろ(前編)


番長惑星 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 10-6

番長惑星 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 10-6

  • 著者:石森 章太郎
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2008/05/31
  • メディア:コミック
  • 目次:U・F・Oのいろいろ(後編)/ 鋼鉄番長シャチ / 暴走族 / 魔境からの招待状 / イースター島の巨大ロボット(前編)


番長惑星 5 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 10-7

番長惑星 5 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 10-7

  • 著者:石森 章太郎
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2008/05/31
  • メディア:コミック
  • 目次:イースター島の巨大ロボット(後編)/ インカ帝国のロケット / バミューダ・トライアングル / 大ピラミッドの遺産 / 故郷 / エピローグ / 扉絵コレクション

タグ:comic ishinomori SF
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