ハイド(Hayden Dunham)は米テキサス・オースティン生まれのパーフォーマンス・アーティスト、デザイナー、SSW。英プロデューサのA. G. Cook、Sophieと結成したプロジェクトQTのシングル〈Hey QT〉(2015)で、仮想キャラのポップ・シンガーQT(Quinn Thomas)(実際に歌っているのはHarriet Pittard)を演じて、半架空のエナジードリンク(DrinkQT)をプロモートした。1stアルバムはA. G. Cook、Sophie(2021年1月30日、アテネの自宅バルコニーから転落死した)、Easyfun、Caroline Polachek、Jónsi(Sigur Ros)などがプロデュース。エレクトロポップの〈Fallen Angel〉、ロンドンの児童合唱団(The Capital Children's Choir)と共演した〈Oil + Honey〉、グランジっぽいファズ・ギターが暴れる〈Chlorophyll〉、「ベッドでSFの本を読んでいるのよ」(sci-fi books in bed)と歌う〈The Real You〉、Caroline Polachekと共作した〈Afar〉など、全11曲・40分。見開き紙ジャケ仕様。麗しい水中ヌード・カヴァに魅惑されて、ジャケ買いにゃん。
米ノース・カロライナ・アッシュビルで結成された男女混成5人組の5thアルバム。「ネズミが神を見た」 というタイトルは米TVドラマ 「ヴェロニカ・マーズ」(Veronica Mars 2004 -19)の同名エピソードに由来する。現在はMargo Schultz(ベース)が抜けて4人体制になっている。Karly Hartzman(ヴォーカル、ギター)、MJ Lenderman(ギター)、Alan Miller(ドラムス)、Xandy Chelmis(ラップ・スティール)によるシューゲイズとカントリー・ミュージックの掛け合わせがツナマヨ、たらこパスタのような食べ合わせの妙味を生む。Karly Hartzmanの絶叫ヴォイスが爆発する8分半の長尺曲〈Bull Believer〉、米作家リチャード・ブローティガンの詩の一節(Love’s not the way to treat a friend)を引用したという〈Formula One〉、米コミック作家リンダ・バリー(Lynda Barry)の『クラデ ィ』(Cruddy 1999)からイメージを借りたという〈Quarry〉など、全10曲・37分。見開き三面紙ジャケ仕様、歌詞はインナーに記載されている。
スペイン・カタルーニャ出身のSSWメリチェル・ネッデルマン(Meritxell Neddermann)の2ndアルバム。《In the Backyard Of The Castle》(2020)はロング・ヴァージョンをカップリングした全19曲・82分(2CD)だったが、新作は全10曲・35分。Thom Yorke (Radiohead)にインスピレーションを得たというタイトル曲〈Suelta〉は多重ヴォーカルとシンセのカットアップ、英ロック・バンド、スーパートランプ(Supertramp)にオマージュした〈Restaurante en el mar〉は80年代ロック風、オートチューンを使った〈Si ets tu〉はエレクトロニカ、キーボード・アレンジの〈T'esperaré una mica más〉は70年代の米ポップ・ソウルを想わせる。〈No me hablas〉〈Deixa'm veure't〉のようなピアノの弾き語りもある。1stアルバムで顕著だった変化に富んだ楽曲も確実に深化している。ウ ェブ画像からは分かり難いが、アルバム・カヴァの 「SUELTA」 という大きなタイトル(白枠文字)はエンボス加工されている。デジパック仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。
ユール(Yeule)はシンガポール生まれのSSWナット・チミエル(Nat Ćmie)のプロジェクトで、ステージ・ネームは 「ファイナル・ファンタジー」(FFXIII-2)に登場する少女パドラ=ヌス・ユール(Paddra Nsu-Yeul)に由来する。3rdアルバム・タイトルの 「柔らかい傷」(softscars) とは時間を経て、傷が癒えても残る痕跡(トラウマ)の比喩だという。7曲をキン・レオン(Kin Leonn)、3曲をMura Masaと共同プロデュースしている。パンク 〜ノイズ・ポップの〈X W X〉、Mura Masaとプロデュースした〈Softscars〉、シューゲイズ〜ドリーム・ポップの〈Dazies〉、岩井俊二の長編アニメ映画 「花とアリス殺人事件」(2015)のサントラ、ヘクとパスカル(Hec to Pascal)のインスト・カヴァ〈Fish in the Pool〉を含む全12曲・40分。怒濤のノイズ音像に描かれた可愛いヴォイスがアルバムをポ ップに染めている。スーパー・ジュエル・ボックス仕様、歌詞ブックレット(8頁)入り。
ペルー・リマ生まれで、独ベルリンを拠点に活動するDJ・プロデューサ、ソフィア・クルテシス(Sofia Kourtesis)の1stアルバム。軽快なハウス・ビートに身も心も踊らされる〈Si Te Portas Bonito〉、重篤な癌に冒された母親の命を延命させた脳神経外科医ピーター・ヴ ァイコツィ(Peter Vajkoczy)に敬意を表わした〈Vajkoczy〉、低音ビートが心地よく躍動する〈Funkhaus〉、荒涼としたアンビエントに内省的なヴォーカルが重なる〈Moving Houses〉、敬愛するマヌ・チャオ(Manu Chao)に手紙を書いたことからコラボが実現したという〈Estación Esperanza〉はペルーの反同性愛者嫌悪への抗議デモ(a Peruvian anti-homophobia protest)のシュプレヒコールに合わせて 「今何時ですか、私の心は?」(¿Qué horas Son, mi corazón?)と繰り返す。〈How Music Makes You Feel Better〉という曲名の通り多幸感溢れる癒しのハウス・ミュージックになっているところは看護師見習いから転身したKelly Lee Owensにも相通じる。全10曲・49分。見開き紙ジャケ仕様。
キャロライン・ポラチェックはNYCマンハッタン生まれのSSW。家族と移住した東京で、幼少時(6歳まで)を暮らす。コロラド大学在学中にシンセ ・ポップ・デュオChairliftを結成した。Ramona Lisa名義で《Arcadia》(Terrible 2014)、CEP(Caroline Elizabeth Polachek)で《Drawing The Target Around The Arrow》(Pannonica 2017)、1stソロ・アルバム《Pang》(Sony 2019)をリリースしている。薄汚れた地下鉄の車内で四つん這いになって進む女性の眼差しは 「欲望」 に燃えている。手前に砂漠が広がり、右端に蟻のキャラバンが進む。2ndアルバムはベルカント・オペラとラップが交錯する〈Welcome To My Island〉、フラメンコに着想を得たという〈Sunset〉、パウル・クレ ーの絵画を想わせる〈Crude Drawing Of An Angel〉、GrimesとDidoとコラボしたドラムンベースの〈Fly To You〉、Kate Bushの〈The Sensual World〉みたいなバグパイプが憑依したかのような〈Blood And Butter〉など、全12曲・45分。歌詞ブックレット(16頁)付き。
Songs: Trust / Fallen Angel / So Clear / Oil + Honey / Breaking Ground / Chlorophyll / Glass / The Real You / Bright Light / Only Living For You / Afar
Songs: Welcome To My Island / Pretty In Possible / Bunny Is A Rider / Sunset / Crude Drawing Of An Angel / I Believe / Fly To You / Blood And Butter / Hopedrunk Everasking / Butterfly Net / Smoke / Billions
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