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ゼロゼロ・ナイン・ストーリーズ [b o o k s]



  • 世界中に戦争を引き起こし、各国に武器を売りさばく死の商人 「黒い幽霊団」(ブラック・ゴースト)。彼らに実験用の戦闘サイボーグ兵士として改造され、ゼロゼロナンバー9人目の戦士009となった島村ジョー。同じように改造された8人の仲間、および改造手術を行な ったギルモア博士とともに009は組織を脱走し、黒い幽霊団との戦いの日々か始まった── 「週刊少年キング」 1964年7月19日号より連載開始。各エピソードを重ねながらも、65年、「ミュートス・サイボーグ編」 の途上、編集部の都合で中断を余儀なくされる。事態が一変したのは1966年7月のこと。この月、東映動画(現・東映アニメーション)制作の映画『サイボーグ009』が公開され、秋田書店から創刊される新書判コミックレーベル〈サンデーコミ ックス〉の第一弾として『サイボーグ009』が初単行本化。当時としては異例の大ベストセラーとなった(この成功に追随して、他社も積極的に新書判コミックスを出すようになり、現在にまで及ぶ)。さらに、「週刊少年マガジン」 で連載が復活。この8か月に及ぶ 「地下帝国 "ヨミ" 編」 で、物語は完結する。
    河出文庫編集部 『サイボーグ009 トリビュート』


  • ■ サイボーグ009 トリビュート(河出書房新社 2024)
  • 石ノ森章太郎のSF作品 「サイボーグ009」(1964)の誕生60周年を記念した小説アンソロジー。「9人の戦鬼」(辻真先、斜線堂有紀、高野史緒、酉島伝法、池澤春菜、長谷敏司 、斧田小夜)が9つの物語を新たに紡ぎ出す。主人公の島村ジョー(009)だけではなく、フランソワ・アルヌール(003)、イワン・ウイスキー(001)、ジェット・リンク(002)、アルベルト・ハインリヒ(004)、張々湖(006)、グレート・ブリテン(007)、ピュンマ(008)にスポットを当てた書き下ろしオリジナル・ストーリー。初代TVアニメを大胆にノヴェライズした 「平和の戦士は死なず」、「地下帝国 "ヨミ" 編」(1966)の後日譚 「アプロ ーズ、アプローズ」、フランソワをヒロインにした 「孤独な耳」、ジェットの飛行能力開発秘話 「八つの部屋」、ハインリヒが火力発電所の地下で黒い幽霊団の残党たちと死闘を繰り広げる 「wash」、張々湖飯店の定休日に事件が起きる 「食火炭」、ピュンマが火星探査救出船に潜入・捜査する 「海はどこにでも」、姿を消したロシアの気候制御の権威ニコライ・カラージンの身柄を確保するように、ジョーたちがギルモア博士から要請される 「クーブラ・カーン」。

  • 「平和の戦士は死なず」 辻 真先 ★★★★
  • 初のTVアニメ・シリーズ(1968)の最終回(第26話)をノヴェライズ(「あえて看護婦と記す。校正の方はご留意願いたい」 という本文の註釈から、新たな書き下ろしであることが分かる)。戦後30年、パブリック共和国とウラー連邦の東西冷戦の最中、黒い幽霊団(ブラック・ゴースト)の科学者バランタイン教授から、小国ミランダヴィアの元王女ミア姫とラジリア国の大統領ヤクンの洋上結婚式で新婦への結納として贈られる核爆弾を 「止めてごらん」 という挑戦状を叩きつけられたギルモア博士、島村ジョー(009)、フランソワ・アルヌール(003)、グレート・ブリテン(007)、イワン・ウイスキー(001)の4人が婚礼が行われるラジリア国の巨船グレートクルーズ号に乗り込む。豪華クルーズ船内にある6番目のバー『シークレット』の壁に架かっている額縁(ルノワール風の絵画)に変身したグレ ートがヤクン大統領とミア姫の会話を盗み聞きするのだが。

  • 「アプローズ、アプローズ」 斜線堂 有紀 ★★★
  • 数あるゼロゼロナイン・シリーズの中でも屈指のエピソードと称される 「地下帝国 "ヨミ" 編」(1966)の後日譚。巨大な魔神像から脱出した島村ジョー(009)と救出に来たジェット・リンク(002)を大気圏から精神移動(テレポーテーション)させた方法が長い眠りから目覚めたイワン・ウイスキー(001)の脳波通信によって語られる。グレート・ブリテン(007)の叩いた拍手の音で、沈黙の世界から漸く意識を取り戻したジョー。ジェットは一足早く目を覚ましていた。魔神像にジョーを精神移動で送り込んだイワンでも、落下する2人を地上へテレポートさせることは至難の業だった。超能力ベイビーは流れ星となって落ちて行くジョーとジェットを海中へ精神移動させたのだ。『ボクハ君タチヲ二度精神移動サセタ。一度ハ大気圏カラ海中ヘ。二度目ハ深イ海ノ中カラ海面近クヘ。ソウイウコトダ』「本当にたまげたよ‥‥君は本当に頭が良い‥‥」 とジョーが歎息する。『当然ダ』とイワンが言う。

  • 「孤独な耳」 高野 史緒 ★★★★
  • 1984年秋、ソ連の政治局員イリヤ・タラソフの暗殺計画があるという暗号通信をギルモア博士が傍受して解読した。妻がボリショイ・バレエのプリマドンナで、各国の大使や要人をオペラやバレエに招待する芸術外交を担っているタラソフはレニングラードで開催される全世界国際バレエコンクール(無名ダンサーの登竜門)に出席する可能性が高い。島村ジョー(009)、グレート・ブリテン(007)、イワン・ウイスキー(001・僕)は所属する白鳥バレエ団の推薦を受けてバレリーナとして参加することになったフランソワ・アルヌール(003)と共にロシアへ赴く。フランソワはアメリカ代表として滑り込みでエントリして来た黒人少女アニー・スミスと楽屋で打ち解けて仲良くなった。フランソワはラフマニノフの 「夜‥‥愛」、アニーは古典演目 「ディアナとアクタイオン」 を踊るのだが、ディアナが手の持つ小さな弓が凶器になるとは!‥‥ちなみにジェットがTVで視ていた 「レーガン大統領のそっくりさんとチェルネンコ書記長のそっくりさんが、高価なスーツを着たまま泥レスリングする」 MVとはFGTH(Frankie Goes To Hollywood)の〈Two Tribes〉(1984)である。

  • 「八つの部屋」 酉島 伝法 ★★★
  • 絶海の孤島にある黒い幽霊団の施設で、ジェット・リンク(俺)たちの飛行テストが繰り返されていた。発射台から飛び立ったトニー・カジンスキ、ケヴィン・ワーナー、ジェットたちに、O博士とG博士が無線マイクで指示する。アテンダントの先導で、整備舎から出て地下鉄駅を思わせる出入口から階段を降りて長い地下通路を歩く。エレヴェーターで上昇すると、正面近くに〈003〉という真鍮プレートを打ちつけた扉があり、3人は002号室に入る。001から008号室まで、8つの部屋に数人の被験者がいる。R教官から講義を受け、医務室で再手術や調整が行われる。それぞれのプロジェクトから1人だけがサイボーグ戦士として生かされるらしい。ある夜、ジェットは001号室の唯一の被験者イワンから脳波通信で話しかけられる。成層圏の翔破に挑んだ飛行テスト中にケヴィンが暴走して、山の尾根に建つ建物に激突死した。ジェットも1万メートルから時速200kmで落下する。水深620mの海中に沈んだジェットを008号室の男が救助する。集中治療室で目覚めたジェットはG博士から、統合的サイボーグとしての手術を受けた被験者と共に、島から脱出する計画を聞かされる。

  • 「アルテミス・コーリング」 池澤 春菜 ★★★
  • 不登校のコノコ(あたし)はバレエの公演で来日していたフランソワ・アルヌール(003)声をかける。見回りに捕まるのを怖れたコノコが逃げ出す前に、明日同じ時間に同じ場所で待ち合わせる約束をした。次の日、再会した2人は小さな公園で話し合い、コノコが町のガイドをするお礼に、フランソワはスジェとして踊るバレエ公演に招待する。『石の花』はロシアの物語。「石の細工をしているダニーラと、恋人のカテリーナ、悪い領主、地下の国の女王さまとの不思議でお伽話みたいな四角関係」 だが、フランソワにはサイボーグゆえの悩みがあった。真っ暗な公園。コノコの目の前で1人で踊ることで解放された003はコノコを助けようとする。日本を離れる最後の日、彼女が怯える見回りを探し出して正体を突き止めようとする。ビルを解体したような薄暗い空間に辿り着いた2人に、煙のような影が建物の隙間から湧き出す。レイガンも実弾も効かない黒い影が棘のような触手を突き出して003に襲いかかる。絶体絶命のピンチを救ったのはラベンダー色の巨象に変身した007(グレート)と002(ジェット)だった。黒い影の正体はマイクロマシン、サイボーグの擬集体だった。

  • 「wash」 長谷 敏司 ★★★★
  • 黒い幽霊団に改造されてから60年経ち、ギルモア博士は老い、サイボーグ戦士たちもアップデートを余儀なくされた。戦闘用ドローンの標準装備も最新武器の1つだった。ドイツに帰郷したアルベルト・ハインリヒ(004)は古い小劇場へ向かう。「マクベス」 の一人芝居を演じるグレート・ブリテン(007)に会うためだった。楽屋で旧交を温め、ビアホールで近況を話し合っていると、グレートのファンだという女性クリームヒルデ・ヘルガ・ベルガーが近づいて来た。彼女を避けて店を出た2人に、大型のEV車が4台が前後から急接近する。襲撃者たちを一掃した004が捕らえた敵指揮官の口を割らせる。ハンスは稼働停止した火力発電所の地下で半世紀以上も眠っていた黒い幽霊団支部の残党だった。冷凍睡眠しているサイボーグ兵士は200人以上いたという。2人はフランソワ(003)とピュンマ(008)に救援を頼む。地下帝国の有翼蜥蜴人ダッサンもいるのではないかと003が言うと、激怒した007がコマドリからネズミに変身して偵察に行く。地下では巨大な繭(ベルガー博士)がバケモノたちを生み出していた。敵の狙いが007にあることに気づいた004も潜入しようとするが、発電所前にある川から現われた翼のないダッサンの催眠術にかかって捕虜となってしまう。

  • 「食火炭」 斧田 小夜 ★★★
  • 張々湖飯店の定休日。最高の1日になるはずだったが、最近雇った易知(イーツィー)が悲鳴と共に厨房に飛び込んで来た。店頭に多くの客が殺到しているという。ポストにチラシが入っていたので注文したのに、料理が届かない、残飯が届いたというクレームだった。チラシは張々湖飯店のものだったが、電話番号が書き換えられている。張々湖(006)は共同経営者のグレート・ブリテン(007)を疑った。しかし客に届いた出前の丼を調べると、「中華食堂張々湖」 と油性ペンで書かれている。杜撰な成りすましだった。こちらから逆に出前を注文すれば届けに来た人から真相を聞き出せると疑惑の晴れた007が提案した。易知に電話させて、張々湖と007が安普請の彼のアパートで待ち構えた。玄関に入った男に張々湖が飛びかかる。男は怯むどころか張々湖の腹を目がけて頭から突進して来た。弾き飛ばされた張張湖の顔面に男の振り上げた拳が迫る。すんでのところで007が羽交締めにしたが、男の怒りは治らない。「ずっとお前を探していたんだ!」 「お前が、米米(メイメイ)を殺したんだろ!」 と、景蓖(ジンベイ)が問い詰める。張々湖は幼い甥っ子・米米の面倒を見ていた。

  • 「海はどこにでも」 藤井 太洋 ★★★★★
  • 「国際宇宙ステーションも第三世代になり、月面基地と合わせて数百人が宇宙に住んでいる今、火星探査には大きな期待が寄せられていた」‥‥ところが軌道に辿り着いた先遣隊は着陸シャトルを失って、火星軌道に閉じ込められてしまう。民間人を含む50名を地球へ帰還させる救出ミッションに、黒い幽霊団の科学者が関与しているという情報を得たイワン・ウイスキー(001)の指示で、ピュンマ(008)が火星探査団救出船サンタマリア二世号に潜入捜査することになる。サンタマリア号の居住ブロックは外壁と内壁の1mの空間に水が満たされている。その水中を自由自在に泳ぐピーター・オロナナ(008・僕)の姿に、生命維持エンジニアのアマニ・ムアンギは感嘆する。グレート・ブリテン(007)も警備班のジョージ ・バーンズ(GB)という偽名で密かに乗り込んでいた。ある日、食堂に入ったオロナナが温めた食事をトレイに嵌め込んでいた時に微かな衝撃を感じる。そして地上のサッカー中継を映し出していたTV画面が暗転して、ベット(賭け)をしていた作業員たちが騒ぎ出す。

    地球圏との通信を引き受けている複合フェイズドアレイアンテナが機能停止したのだ。軌道ゴミ(デブリ)の衝突らしかった。壊れたアンテンナを確認するために、宇宙飛行士サミー ・ペテル、整備班のハナ・ヨン、アマニ・ムアンギ、そして自ら志願したオロナナが船外活動(EVA)に出る。アンテナの修復には早くても2カ月はかかる。3日後に来る帰還シャトルとサンタマリア号をドッキングして、艤装を続ける一次契約者100人を乗せて返すのにはアンテナのデータリンクが必要不可欠だった。地球へ帰還出来なければ、火星で8年間のミッションを行うことになってしまう。その情報がリークされて、作業員たちからのクレームが拡散される。オロナナの2度目のEVAで、アンテナの破壊は事故ではなく、人為的な故意の攻撃であったことが判明した。帰還シャトルと有線でデータリンクするための通信ケーブルをアマニが作る。そしてオロナナはアマニと共に三度EVAをすることになる。老いたとはいえ、ピュンマ(オロナナ)にとって、宇宙遊泳は海中を泳ぐのと何ら変わりはなかった。

  • 「クーブラ・カーン」 円城 塔 ★★★
  • 島村ジョーとジェット・リンクは成層圏プラットフォーム 「デンドロビウム」 のコンソール前で発砲した男を倒す。工作員は気絶する前にレバーを引いて2機の成層圏ドローンを切り離した。デンドロビウムは 「日陰がないなら、日陰をつくってしまえばよい」 という単純な発想で建造された、北回帰線上で周回するグライダーを巨大化させたプラットフォームだ。ギルモア博士が2人を呼び戻したのはトルコで行われた研究集会の後、姿を消したロシアの気候制御の権威ニコライ・カラージンの身柄の安全を確保するためだった。アルベルト・ハインリヒとフランソワ・アルヌールと張々湖が研究開発施設に潜入して、高度サイボーグの素体(男女20体)を発見した。イワン・ウイスキーはサイボーグ化して延命するように説得をしたが、ギルモア博士は老衰による死を選択する。博士の地位をシステム・ギルモアが引き継ぐ。NYの自然史博物館のエントランスで、グレート・ブリテンはエージェントの青年と待ち合わせる。9人のサイボーグが建設中の海底都市デンドロカカリアに避難する。ブリテンとジェロニモがカラージンを確保。島村とリンクがデンドロビウムを落とす。〈システム ・ギルモアの異常に最初に気がついたのはジェロニモだ〉とイワンがピュンマに伝える。

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    • イワン(001)、グレート(007)、ジェット(002)、フランソワ(003)、ハインリヒ(004)、張々湖(006)、ピュンマ(008)‥‥ジョー(009)の出番がない

    • ゼロゼロ・ナンバーへの愛が溢れる渾身の力作揃いですが、ジルベルト・ジルみたいな老ピュンマを主人公にした 「海はどこにでも」 は白眉、サイボーグ戦士が 「システム・ギルモアたち」 と対峙する 「クーブラ・カーン」 だけは少し難解でしょうか?
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    サイボーグ009 トリビュート

    サイボーグ009 トリビュート

    • 著者:辻 真先 / 斜線堂 有紀 / 高野 史緒 / 酉島 伝法 / 池澤 春菜 / 長谷 敏司 / 斧田 小夜 / 藤井 太洋 / 円城 塔
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2024/07/08
    • メディア:文庫(河出文庫 い 42-2)
    • 目次:序 / 平和の戦士は死なず / アプローズ、アプローズ / 孤独な耳 / 八つの部屋 / アルテミス・コーリング / wash / 食火炭 / 海はどこにでも / クーブラ・カーン / 編集後記


    総特集 石ノ森章太郎 増補新版

    総特集 石ノ森章太郎 増補新版

    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2024/06/27
    • メディア:ムック(KAWADEムック)
    • 内容:『サイボーグ009』生誕60周年記念。『仮面ライダー』など数々の名作を生み出し、マンガを革新した天才の巨大な業績を豪華執筆陣でたどる。009構想ノート他、超貴重資料を満載

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