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スニーズ・シンクス 2 0 2 3 [b l o g]



  • 「お話ですか」 / 「お話です。化け物というのは、存在しないと云う形で存在するものなんです。頼政が退治したとされる魔物は、退治されたからこそ、退治されることによって、遡ってそれまでの生が生成された。化け物はこの世界の裏返し。拡散すべきエントロピーは収斂して行く。天然自然の理に忤うものなのです。だから、空舟に乗せられ、流されて芦屋の浜に流れ着いたのは、存在しないものの死骸です。死骸があればそれを葬る塚も作られる。関連した神社も造られます。付いていなかった鏃を洗う池も出来る」 / お話は──。/ 「そうやって現実になる。そして──増殖するんです。魔物の死骸は、バラバラになって浜名湖に落ちたとも謂れ、地名の由来にもなっている。死ぬことで遡って生を得たものは祟ることもする。生きた主体がないのに祀った塚を壊せば祟る。馬に転生して頼政に飼われ、平氏に取り上げられて後、頼政を滅ぼして宿世の縁を晴らしたとも謂う。本来居ないものは転生しようもないし祟れる筈もないのに」 / ヌエの哀しみはそこにあると中禅寺は云った。
    京極 夏彦 『鵼の碑』


  • 2023年(2022・12~2023・11)、スニンクス(sknynx)は72本の記事をアップした。月6本の内訳はメイン記事3本(1日・11日・21日)と別館ミニ・ブログの1カ月分を纏めた 「スニ ーズ・ラブ」(26日)、一覧リストや企画ものなど2本(6日・16日)。回文シリーズは新年恒例の「回文かるた」を含めて5本。「ネコ・ログ」 は4本。ミュージックは年間ベスト・アルバム(rewind)や新譜の紹介など7本、石ノ森シリーズは4本。猫ゆりシリーズはネコード〈猫にブラマンジェ〉、ネコ本〈猫のホーマー〉の2本、「折々のねことば」 は3本をアップした。皆川博子先生は今年も新刊『風配図 WIND ROSE』(河出書房新社)と『天涯図書館』(講談社)を上梓して、健在ぶりを顕示した。京極夏彦は「レンガ本・鈍器本」と称される百鬼夜行シリーズの新作長編『鵼の碑』(講談社)を17年ぶりに発売。ファブ4が27年ぶりにリリースした新曲〈Now And Then〉(Apple)も2023年のサプライズだった。


    閲覧数トップ10を見れば一目瞭然のように、サイドバーで更新されるアルバムやブックスやヴィデオを纏めた「FAVORITE」シリーズが上位を占めた。単独記事の閲覧数が少ないのは〈キャッシュがない!〉で書いたような歪んだ事情が影響していると思われる。拙ブログの更新情報がGoogleなどの検索エンジンに反映されていないことが判明したのだ。これには2022年7月に実施された「アクセス解析の仕様変更について」が関与しているらしい。読まれている記事の多くが2022年以前に投稿されたものであることからも明らかだ。新着記事情報が検索エンジンに通知されない中で、お気に入り記事ベスト10に挙げた〈ルイス・ウェインの猫たち〉〈アナと裸の女神〉〈東京ドームシティドール〉がトップ10に入っているのは嬉しい。〈変態仮面ロサリア(2022)〉〈猫にブラマンジェ〉〈猫のホーマー〉〈気に入ったら聴いてね(RIYL)〉など、推しの記事が余り読まれていないのは悲しいけれど。


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  • ● 猫のゆりかご
  • お気に入りのネコードとネコ本を10点ずつ紹介する「猫ゆり」シリーズ。〈猫にブラマンジ ェ〉で紹介したアルバム《Happy Families》(London 1982)はヴィクトリア朝時代の猫画家ルイス・ウェインへのオマージュを込めて、マイク・ブラウンロウ(Mike Brownlow)が描いたイラスト。Free Kittenの《Unboxed》(Wiiija 1995)はEPを並べたレコード棚を撮っただけなので見難いけれど、アルバム・カヴァには子猫たちの写真やイラストが小さく写っている。〈猫のホーマー〉とは米作家グウェン・クーパーが飼うことになった盲目の黒猫のこと。『幸せは見えないけれど』(早川書房 2010)の中に感涙もののエピソードがある。9・11同時多発テロに遭遇した著者がマンハッタンのアパートメント(31階)の中に閉じ込められてしまったホーマーたちを救出するために規制線を突破する場面。切羽詰まって絶体絶命のピンチに直面した時に、その人間の本性が露呈する。彼女はプライドやキャリアなどを全てを捨て去り、「殺し文句」 を発して警官に嘆願するのだ。

  • ● 折々のねことば(13〜15)
  • 「折々のことば」(朝日新聞朝刊の連載コラム)のパロディ版「ねことば」は3本(30篇)をアップして150篇になった。〈折々のねことば 13〉の中の「ネコのように謎めいた作品が書けたらなあ」というエドガー・アラン・ポーの「ねことば」はファクト・チェックで、虚偽(False)であると証明された。〈ねことば 14〉の中の「二匹の大きな猫、シャムとぶちが ‥‥」は 「ミロのヴィーナスの腕の中に倒れ込んだ」(I fell right into the arms, Venus de Milo)というTelevision〈Venus〉(1977) の歌詞を引用したエピグラフを探す過程で、ジェイ・マキナニーの『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』(新潮社 1991)の中に見つけた。「シャミー1000」 は手塚治虫も気に入っている傑作ネコSF短篇である。〈ねことば 15〉「虐待されて濡れた猫みたいにスキゾフレニックになった」(カート・コベイン)や〈猫にマタタビ 、ペニスに裸女〉(松浦理英子)など、いわゆる「猫本」ではない小説やエッセイの中に出て来る「ねことば」を偶然見つけるのは愉しい。

  • ● ブックス
  • 〈皆川歴史館〉では新刊を含む6冊を紹介した。処女作『海と十字架』(偕成社 1972)から『風配図』まで、迫害・殺戮した権力者への怒り、プラトニックな少年愛、幻想などの主要テーマが半世紀に渡って首尾一貫していることに胸を打たれる。43年ぶりに復刊した山尾裕子の幻の長編『仮面物語』(国書刊行会)や川野芽生の初長編『奇病庭園』(文藝春秋)も話題になったが、今年最大のサプライズは『鵼の碑』である。新聞の全面広告に、41人の作家や書評家が祝文を寄せている。《◎ 綾辻行人 祝、『鵼の碑』刊行。まさに待望の! ですね。◎ 今村昌弘 本棚が 「ここを空けろ」 と叫んでいる。◎ 大沢在昌 やっと書いてくれたか。それにしても尻が重すぎだろう。◎大森望 これこそ科学小説の真髄。京極堂、怪奇をあばけ!◎ 小野不由美 こういう妖怪の描き方があるんだ、という衝撃。◎ 喜国雅彦 研磨された文章の読点(、)にいつも心酔。◎ 辻村深月 百鬼夜行は私の青春。嘘でしょ!? 新刊読めるの!? ◎ 宮部みゆき 待望の本作は百鬼夜行シリーズのアベンジャーズです。◎ 和嶋慎治 / 人間椅子 紛うかたなき現代の戯作者による書き下ろし。瞠目。》(朝日新聞 2023・9・16)

  • ● アート
  • 〈シーレの生涯と章句〉は「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展」(東京都美術館)、皆川先生のYA向けのミステリ『倒立する塔の殺人』(理論社 2007)、ハリエット・ヴァン・レークの絵本『エーディトとエゴン・シーレ』(朔北社 2023)を並べた記事だが、「国内30年ぶりのシーレ展」 と謳っているにしてはレオポルド美術館から出品されたエゴン・シーレの作品が全93点中42点と少なくて残念だった。〈ルイス・ウェインの猫たち〉はベネデ ィクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)の主演した伝記映画 「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」(The Electrical Life of Louis Wain 2021)、画集『ルイス・ウ ェインのネコたち』(青土社 2023)、南條竹則『吾輩は猫画家である』(集英社 2015)を纏めた記事で、「ウェインの猫」 を借用・オマージュしたOrange JuiceとBlancmangeの「ネコード」2点も紹介した(後日セールで入手したOingo Boingoの《Best O' Boingo》(MCA 1991)も追加したいにゃん)。

  • ● 回文シリーズ
  • 〈跨ぐ鳴くタマ〉〈盗ったら脱兎(回文かるた 2023)〉〈毒吐く白兎〉〈鞭打ち夢〉〈テレビ寂れて〉の5本をアップした。ハロウィン、闇バイト、コロナウイルス、ジャニーズ、神宮外苑再開発など、卯年も良くも悪くも世相を反映した回文が並ぶ。トラウデン直美、マヌルネコ、アリシ・カイミ、ジバニャン、リトル・シムズ、ミヤネ屋、上白石萌歌、ジャニ ーK**、レオナルド・ディカプリオ、アリエル・ドンバール、川野芽生、マティス、スパイダーマン、坂本龍一など、著名人や固有名詞も目に着く。5つ星回文は〈冷め湯気立つマイコフィリア、この木にキノコあり。イブ乞い待つだけ夢さ〉〈マヌルネコ死、涙、孤児寝る沼〉〈苛つく泣いた。家、遺体なく辛い〉〈観戦、会話、5類マスク外す。ハグ、スマイル、怖い感染が?〉〈酔い鳴いて告げ、バスタブ・キャット。1つ焼き豚、スパゲッティないよ〉。教授回文〈似顔画「Ryuichi Sakamoto」子供が幸いう百合ヶ丘に〉は 「さかもと ・りゅういち」 ではなく、「りゅういち・さかもと」 でないと回文にならない。

  • ● ネコ・ログ(#68〜71)
  • 去る7月の連休前に永眠したロンちゃんの不在はC**図書館裏だけでなく、心の中にも虚な穴が空いたようで長く落ち込んだ。その2カ月後、「mac OS Sonoma」(14.0)にアップグレードすると、「Photos(Memories)」 でペット(ネコ)たちのインデックス(年・月 ・日別や固有のネコたち)が自動的に作成されるようになった。バックグラウンドで日々更新されているようで、数カ月経っても終わらない。重複するインデックスを削除してもゾンビのように復活する。明らかにバグだと想われるが、現時点でインデックスの自動作成を止めることは出来ないという。10年以上撮り続けたロンちゃんのインデックスが当然、数多く作られる。ネコのサムネイルをダブルクリックすると、BGMが自動的に流れて、スライドシ ョーが始まる。ロンちゃんの写真を見ていて、拙ブログにもスライドショーを設置したら供養になるのではないかと思いついた。〈メモリアル・キャッツ〉は虹の橋を渡ったネコたちの想い出のアルバム。第1集は長毛種のロンちゃん(2012-2023)です。R.I.P.

  • ● 石ノ森シリーズ
  • 〈モンスター・アライアンス〉は 「怪人同盟」(冒険王 1967)、〈新ボーイ・スカウト〉は「少年同盟」(朝日小学生新聞 1967-68)、〈ミステリ・ハンター〉は 「怪奇ハンター」(週刊少年キング 1968)を改題。いずれも少年たちが団結して怪奇事件や悪の組織や怪奇現象を調査・解決するSF冒険マンガである。〈レインボー戦隊ヒカル〉は風田朗(かぜた・ろう)名義で発表された 「レインボー戦隊」(週刊少年マガジン 1965)のこと。スタジオ・ゼロに発注されたTVアニメの原案として雑誌に連載されたが、思うように人気が出ずにTV放送される前に未完で終わってしまった。厳密には石森作品と呼べないかもしれないけれど、主人公の星ヒカルや看護婦リリのキャラクターや異星人の侵略から地球を守るというストーリは石森色が濃い。TVアニメ版 「レインボー戦隊ロビン」(東映動画 1966-1967)は好評だったらしく、「レインボー戦隊ロビン・ファンサイト」 というディープなHPもある。記事タイトルに合わせて、ブログの見映えを「レインボー・カラー」に変えてみました。

  • ● ミュージック
  • 〈変態仮面ロサリア(2022)〉は毎年恒例の年間ベスト・アルバム10。〈死んだ男の残した曲は〉は2023年1月に相次いで亡くなったJeff Beck、David Crosby、Tom Verlaine、4月に急逝したMark Stewartを追悼して、彼らの楽曲(1曲)を偲んだ記事。〈アナと裸の女神〉で、ブラジル・ミナス新世代の女性SSWが結成した集団(Coletivo)とメンバーのソロ ・アルバムを紹介した(彼女たちがスッポンポンになったMV〈Canção Pra Mim〉は閲覧注意か?)。〈沁みるシムズ〉は覆面バンドSAULTにも参加している英女性ラッパーLittle Simzのアルバム4枚をレヴュー。〈気に入ったら聴いてね(RIYL)〉はPitchforkの 「The Best Music of 2023 So Far」 のRIYL(Recommended If You Like)を真似た記事で、アルバム18枚(引用4枚を含む)を推奨した。〈ドリーム・ポップ・ガール〉で、Hyd、Zella Day、Sofie Royer、Melody's Echo Chamber、Uffie、Hatchie、Crenokaのアルバムを纏めた。〈スペインの女たち〉ではMeritxell Neddermann、Silvia Perez Cruz、Gemma Humet、ROSALIA、Maria Heinのアルバムを紹介した。

  • ● スニーズ・ラブ EX
  • 別館スニーズ・ラブ(sknys-lab)は原稿用紙400字を目安にしたミニ・ブログ。毎週土曜日に投稿しているが、日々タイムリーな短文記事を書き続けているうちに次第に溜まって来た。このまま未発表のまま埋もれてしまって反故になるのも忍びないので、エクストラ記事として本ブログ(sknynx)に4〜6本を纏めて投稿することにした。〈ディアフーフの猫〉は2019年12月に亡くなった永遠の子猫リル・バブ(Lil BUB)に捧げられたアルバムを含む5篇、〈パンダじゃないよ〉は7月7日に亡くなった頭脳警察のパンタ(享年73歳)が登場する皆川博子先生の短篇 「アルカディアの夏」(1973)を含む6篇、〈猛子の像〉は大濱普美子の小説集『猫の木のある庭』(河出書房新社 2023)、樹村みのりの『彼らの犯罪』(岩波書店 2021)、深谷かほるの『夜廻り猫の雑貨店』(ポプラ社 2023)などを含む5篇。個々の記事を見つけ難いと思われるので、インデックス〈スニーズ・ラブ EX〉を作成した。

  • ● アイドル(カワイレナ)
  • 〈東京ドームシティドール〉は手羽先センセーション 「ニュー・ワールド」(Tokyo Dome City Hall 2023・3・21)のレヴュー記事。今回のライヴ会場は後楽園の敷地内にある収容人数約3000人の多目的ホールだった。念のために、東京ドームの周りで入場者を誘導している警備員に東京ドームシティホール(TDCH)の場所を訊くと、「分かりません」 と言われち ゃった。今まで数100人規模のライヴ・ハウスが多かったので、満席になるのか危惧していたけれど、開演時刻が近づくに連れて空席も埋まって来た。全26曲、アンコールの4曲を含めて3時間の長丁場。記事タイトルはTDCHとTPD(東京パフォーマンスドール)の合体語呂合わせ。「カワイレナ」 という名前を表題に敢えて冠しなかったので、気づいていない手羽先センのファン(レナ推し)がいるかもしれない。来年度の記事扱いになってしまうが、12月に 「カワイレナ生誕祭 2023」(横浜 1000 CLUB 2023・11・24)を投稿した。

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