ネコ・ログ #75 [c a t a l o g]
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ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
#667│ヨン│飼い猫 ── 舌出した縞ネコ
都電停留場の傍にロープで囲われたスペースがある。自家用車が停っている時もあるので駐車場のようにも、整地されずに雑草が生えているので民家の前庭のようにも見える場所に、2匹の虎縞ネコがいた。1匹は警戒心が強くて目が合うと庭の奥に退いてしまうが、もう1匹は眼光鋭く見つめ返す。ピンク色の舌を出した大胆不敵な面構えはヒトを小馬鹿にしているようにも思える。左耳先がカットされているので元ノラ猫なのかもしれない。写真左上の白い部分は車体の一部、前景の雑草(ピンクの小花)が挑戦的な表情を和らげている。手前にある踏み切りを渡るとW**方面への停留場、縞ネコを右に見て直進すると片側一車線の車道へ出る。線路の裏手の民家には可愛い三毛や茶トラもいたのだが、最近は見かけない。門扉の向こうや中庭の奥にいる時は手招きしても、なかなか外へ出て来ないのだ。
#668│マイ│飼い猫 ── 赤い花冠のネコ
最近やたらと目につく赤いロゴの都市型小型食品スーパー 「My**」 の裏手に、小振りの白茶ネコがいた。何度か見かけているのに、人見知りなのか仲良くなれない。行動範囲は狭そうだが、意外と活発に動き回る。家屋と家屋の狭い隙間(キャットウォーク)の奥へ消えたり、バイクのカヴァシート(写真の左端に灰色のカヴァシートの一部が見える)の中に身を隠したり、民家の2階のヴェランダに昇っていたり、その神出鬼没ぶりには驚かされる。立ち去ろうとしている時に振り返ったところを撮った。たまたま背景の植え込みに咲いていた赤い花が花冠のようにネコの頭上に載っている。ピントが甘いけれど、構図を優先してアップした。スーパーの面している車道は地下鉄が走る片側二車線の大通りだ。少し横道に入っただけで、ネコの散策する別世界へ誘われる。
#669│ミミ│ノラ猫? ── ミケのいる道端
帰途中に、ふと足許に気配を感じて見下ろすと、小さな三毛ネコが蹲っていた。眠いのか、それとも老齢なので動きが億劫なのか(悟りを開いた達観の境地?)、子猫のように敏捷に逃げ出したりはしない。カナダ・ケベック(モントリオール)のインディ・ロック・バンド、コリドー(Corridor)の4thアルバムは 「猫ジャケ」 だった。フロントマン、ジョナサン・ロバート(Jonathan Robert)の飼い猫ミミ(Mimi)ちゃんがアルバム・タイトルにもなっている。ドアップのカヴァ・イラストも飼主本人が描いている。灰色ネコも老齢なのか眠いのか半眼半口で、瞑想しているように見えなくもない(彼らのアニメ・コラージュMV〈Jump Cut〉にもネコ・ドラマーが登場する)。良く似た表情だったので、三毛ネコをミミと命名することにした。ちなみに女性ブロガー(トミー。)さんの飼っている眼光鋭い黒猫もミミちゃんという名前です。
#670│マロ│地域猫 ── ふらりふらふら風来猫 ♪
サンシャインシティ裏の東**中央公園内を休むことなく動き回る白黒ネコの眺めていて、森高千里やジム・オルークとカヒミ・カリィもカヴァしていた細野晴臣の〈風来坊〉を口ずさむ。マロちゃんは 「風来猫」(ふうらいびょう)ではないか。目の前で毛繕いをしていたかと思うと、段差のある植え込みにジャンプして姿を消す。どこに身を隠しているかと思案すると、真逆の方角から忽然と姿を現わす。フーテンの寅さんのように行動範囲も時間も広く長いわけではない。限られたテリトリ内で気ままに散策しているように見えるけれど、ネコにとっては欠かすことのない日課のパトロールなのだろうか。狭い地域内ならではの濃密な暮らしと生活がある。多くのネコたちは海外へ旅立ったり、宇宙へ飛び立ったりもしない。気紛れな根無草の風来坊よりも、風来猫の方が生きることに懸命なのかもしれない。
#671│オリ│飼い猫 ── ノイジー・キャット
鉄柵の向こう側は安全地帯だ。声高に威嚇しなくても、ヒトは柵の中に入って来れない。むしろ五月蝿いのは戦争、災害、パンデミック、犯罪、虐待、ハラスメントなどで騒ぎ立て、炎上させている人間たちの方ではないか。米インディ・ロック・バンドR.E.M.のマイケル・スタイプ(Michael Stipe)は南北戦争をテーマにしているらしき楽曲〈Swan Swan H〉の中で、「私たちは何て騒がしいネコなんだろう」(What noisy cats are we)と歌っていた。「ノイジー・キャット」 だなんて、俺たちネコ族に対して失礼な比喩ではないかしら。ネコは不平不満を口にしたり、体の変調を訴えたりはしない。頭痛、肩凝り、腰痛、関節痛など、痛い、痛いと泣き叫ぶ輩には辟易する。ギャーギャー騒がしい子供たちも大嫌い。ドタドタ駆け寄って来るや否や、素速く踵を返して逃げ去る。お祭り(神輿)の喧騒や花火大会の爆音も耳を塞ぎたい。ネコたちは平穏で静かに暮らしたいだけなのだ。ロックが大音量で流れると、なぜか木天蓼みたいに昂奮して、狂ったように駆け回っちゃうけれど。
#672│バラ│地域猫 ── オッド・アイの茶トラ
オッド・アイのバラちゃんは風来猫マロたちと同じ公園に暮らしている。先天的な疾患なのか、後天的な病気のか、右目が見えているのかどうかは分からない。公園のネコたちは皆んな首輪をしている。世話人たちに愛されている理想的な地域猫だ。〈スニーズ・ラブ 115〉で紹介した 「書店猫ハムレット」(東京創元社)はNYブルックリンの〈ペティストーン・フ ァイン・ブックス〉の看板黒猫が飼主のダーラに事件解決のヒントを提示するミステリ。「通い猫アルフィー」(ハーパーコリンズ・ ジャパン)は老飼主を亡くしたホームレス・キャット(ぼく)が辿り着いた住宅地 「エドガー・ロード」 の複数の家を渡り歩く一人称視点の小説。〈猫のホーマー〉で紹介した『幸せは見えないけれど』(早川書房 2010)は全盲の黒猫ホーマーの里親になった女性グウェン・クーパーの感涙ノンフィクションだった。オッド ・アイの猫を主人公にした 「猫本」 はあるのかしら?
#673│アラ│飼い猫 ── 台風10号が来るにゃん?
《2024年8月22日3時にマリアナ諸島近海で発生した台風10号は発達しながら北上。その後、進路を西北西に変え強い勢力を維持しながら九州方面に接近し、27日には急速に発達し非常に強い勢力となり、奄美の北東海上を通過しました。28日は勢力を保ったまま屋久島の西を通過し、29日8時頃に鹿児島県薩摩川内市付近に上陸。その後、ゆっくりと九州を縦断しながら瀬戸内海に抜け、四国を通過し太平洋へと進んだ》という。日本列島を縦断した 「超ノロノロ台風」 は強い暖湿気を送り込んだため、台風から離れた地域でも大雨の被害が生じたという。約1週間も日本上空に居座った台風10号は 「サンサン」 ではなく、「散々」 ではないかという愚痴も漏れ出る。幸い東京を直撃することはなかったが、断続的に降る豪雨には閉口した。外ネコやノラは天候の変化には敏感なはずだ。台風の接近を感知しているのだろうか。「猫が前肢で顔を洗うと明日は雨が降る」 というから、気圧の低下も感じ取っているのかもしれない。
#674│サイ│飼い猫 ── 残暑も非常に厳しくて
9月になっても35℃以上の猛暑日が続き、最低気温25℃以上の熱帯夜も途切れない。就寝中にエアコンを稼働し続けていても寝苦しくて、日中睡魔に襲われる。この残暑とゲリラ雷雨では外ネコも姿を現わさないと思って、外出時にデジカメの携行を諦めたことも何度かあった。家ネコも元気なく、夏バテなのか、虎の敷物のように平べったく伸びている。お尻を見せて関心なさそうに装っていたツンデレ猫のサイちゃんは立ち去ろうとする素振りを見せると、甘えた猫撫で声で鳴いて自ら引っくり返る。お腹を撫でろという催促なのだ。これがエンドレス・サマーのように、なかなか終わらない(どれだけ撫でれば満足してもらえるのかしら?)。この手練手管をどこで習得したのか、DNAに組み込まれた発声法なのか、人間の耳には聞こえない鳴き声(silent meow)と同じように絶大な効果を及ぼす。女性だって滅多に発しない。黒い包帯を腕に巻いたアマランタだって、「手探りでタオルをつかみ、身内を裂いて洩れようとする猫のような叫びを押し殺すために、口にくわえるのがやっとだった」。
#675│マリ│飼い猫 ── 「秋への扉」 はどこにある?
金井美恵子も書いていたように、外へ遊びに出ようとした際に大雨が降っていても、家ネコは別の扉の外は晴れているのかもしれないと思うらしい。ジンジャー・エールの大好きな牡猫ピート(ペトロニウス)もコネチカットの農家にある11のドアを開けるように、「ぼく」(ダン・デイヴィス)に纏わりつく。冬なのに少なくても、どれか1つのドアが 「夏へ通じているという固い信念をもって」。地球温暖化による気候変動で、最高気温40℃に迫る猛暑が熱中症、記録的な集中豪雨(線状降水帯)が河川の氾濫や土砂崩れの災害を引き起こす。近未来は日本から四季が消えて、夏と冬だけになってしまうのだろうか。出来ることならばダンとピートのようにプチ冷凍睡眠して、涼しい秋へ行きたいところだが、『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』(早川書房 1984)みたいな21世紀の灼熱地獄にタイム・スリップしたら最悪だ。ネコでなくても鳴き(泣き)たくなる。「秋への扉」 はどこにあるのかと。
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各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第75集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに670匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第75集の常連ネコはツンデレのサイちゃん。前回に引き続いて、ノラ猫の写真をアップ出来なかったのは残念ですが。人懐っこいアラちゃんを撮れたのは嬉しい。メキシコに亡命したスペインのシュルレアリスム画家レメデ ィオス・バロ(Romedios Varo 1908-1963)がネコ好きだったと知って、彼女を大好きになりました。小説の中でヒロインに涙を流させたトマス・ピンチョンも、作中にオマージュとしてレメディオス(小町娘)を登場させたガブリエル・ガルシア=マルケスも、バロのことが好きだったはずです。テイラー・スウィフトが 「子なしの猫好き女性」 として、ブラット(brat)を支持した一撃(ベンジャミン・ボタン君のネコパンチ?)も痛烈にゃん。
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- 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^
- オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました
- 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました
- 「701匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました
- 【台風10号振り返り】(ウェザーニュース 2024/09/03 15:50)から引用しました
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- 著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス(Gabriel Garcia Marquez)/ 鼓 直(訳)
- 出版社:新潮社
- 発売日: 2024/06/26
- メディア:文庫(新潮文庫 カ 24-2)
- 内容:1967年にアルゼンチンのスダメリカナ社から刊行されて以来、世界の名だたる作家たちが賛辞を惜しまず、その影響下にあることを公言している世界文学屈指の名著。現在までに46の言語に翻訳され、5000万部発行されている世界的ベストセラー。「マジック・リアリズム」 というキーワードとともに文学シーンに巨大な影響を与え続けている
- Artist: Corridor (Rock)
- Label: Sub Pop
- Date: 2024/04/26
- Media: LP / Audio CD
- Songs: Phase IV / Mon Argent / Jump Cut / Caméra / Chenil / Porte Ouverte / Mourir Demain / Pellicule
- 著者:ロバート・A・ハインライン(Robert A. Heinlein)/ 小尾 芙佐(訳)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2009/08/07
- メディア:単行本(ソフトカヴァ)
- 内容:ぼくが飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのだ。そしてこのぼくもまた、ピートと同じように“夏への扉”を探していた。『アルジャーノンに花束を』の小尾芙佐による新しい翻訳で贈る、永遠の青春小説
- Artist: Charli XCX
- Label: Atlantic
- Date: 2024/06/07
- Media: Audio CD
- Songs: 360 / Club Classics / Sympathy Is A Knife / I Might Say Something Stupid / Talk Talk / Von Dutch / Everything Is Romantic / Rewind / So I / Girl, So Confusing / Apple / B2B / Mean Girls / I Think About It All The Time / 365
2024-10-11 00:00
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