b 坂本図書館 (books)『音楽は自由にする』 (新潮社 2023)は坂本龍一の自伝本。書き下ろしではなく、男性誌 「ENGINE」(2007-2009)に連載された全27回のインタヴュー(聞き手は当時の編集長・鈴木正文)を纏めた文庫本。一番面白いのは新宿高校から芸大へ現役合格したものの、音楽学部の学生に馴染めず、美術学部に入り浸って仲良くなり、自由劇場の公演などに関わった頃のエピソード。巻末の「年譜」は単行本が刊行年(2009)までしか記載されていない。
『坂本図書』 (バリューブックス・パブリッシング 2023)は婦人画報に連載された 「坂本図書」(2018-2022)を一部加筆・更新・再編集したブック・ガイド本。坂本龍一の「選書 ・語り」で、ロベール・ブレッソン、夏目漱石、ジャック・デリダ、小津安二郎、黒澤明、大島渚、武満徹、アンドレイ・タルコフスキー、奥野建男、中上健次、ジョン・ケージ、カルロ・ロヴェッリ、村上龍、ミヒャエル・エンデ、石川淳など、映画監督、哲学者、画家、音楽家、学者、作家など36名の著作を紹介。ウスビ・サコ、安彦良和との特別対談、鈴木正文との亡くなる20日前の対話 「2023年の坂本図書」(2023・3・8)も収録されている。
b メリーナ・モギレフスキー (music)リード奏者マルセロ・モギレフスキー(Marcelo Moguilevsky)の娘メリーナ・モギレフスキー(Melina Moguilevsky)の3rdアルバム
《Huecos》 (Club Del Disco 2022) は鉱物なのか化石なのか分からない異形なオブジェ・カヴァが象徴するように妖しく神秘的な音像空間を創出する。飼い猫バタト(Batato)が傍を彷徨く間、無糖コーヒーを飲み干した彼女は「自分のバンド(sextet)でやって来たことの何かが終わってしまったと感じた。別の側面から音楽を作る必要があることに気づいた」と語る。M.M.(ヴォーカル)、Juan Belvis (シンセ、ピアノ)、Luciano Vitale(フルート、ヴァイオリン、チェロ、ギターなど)という3人編成。Cesar Lerner(アコーディオン)が参加した〈Todo el sentido〉、ブラジルのSSW、Vitor Ramilとデュエットした〈Respirar〉、Juan Belvis(Ocho)と共作した〈Algo que hacer〉とCandelaria Zamar(ヴォーカル)とコラボした〈El fuego〉にはFernando Kabusacki(ギター)も客演している。全7曲・32分。見開き紙ジャケ仕様。
b 猫と呼んでね (cats)リオ新世代のSSW、Ana Frango Eletricoの3rdアルバム
《Me Chama De Gato Que Eu Sou Sua》 (Mr Bongo 2023)には獰猛そうな二頭の虎が描かれている。「猫と呼んで下さい、私はあなたのものです」 と言われても俄かには信じられない。可愛い猫撫で声で歌っていても、内心は気性の激しい虎だったりするからね。
『ほぼねこ』 (辰巳出版 2023)は会社員が休日に日本全国5カ所の動物園に足を運んで撮ったという大型ネコ科動物の写真集。トラ、ライオン、ユキヒョウ
(旭山動物園のユーリちゃん) 、ホワイトタイガーなど、見た目は子猫のように可愛くても、実物に触れるのは危険極まりない。ライオンに指や首を咬まれたムツゴロウ(畑正憲)さんのような目に遭いたくなかったら、「君子危うきに近寄らず」 です。アルバムも写真集もタイトルは 「ねこ」 と 「Gato」(ポルトガル語で「猫」という意味)なのに、表紙カヴァは「虎」である。これを猫本・猫ジャケと呼ぶのは躊躇われる。正しくはネコ科本・ネコ科ジャケではないか。ほぼ同時期に同じコンセプトのアルバムと写真集が出たのは「ニャンクロニシティ」なのかもしれない。それとも他人の虎似でしょうか?
b 山崎ベレン (books)『猫がいれば、そこが我が家』 (河出書房新社 2023)は
「ネコメンタリー猫も、杓子も。」 (NHK Eテレ 2021)で放送された「ヤマザキマリとベレン」の書籍版。シカゴ大学で比較文学を研究していた夫ベッピーノとポルトガルで暮らしていた息子デルスとマリが夏休みを沖縄で過ごしていた時、リスボンの友人に預けていた猫のゴルム(4歳)がマンション7階のヴェランダから転落死してしまう。ペットロス状態に陥った妻を慮った夫がPCでリスボン近郊の里親募集中の猫を探して、ベンガル種の雌猫を見つけた。ポルトガル生まれのベレンは夫妻の仕事に伴ってアメリカ、イタリア、日本へと引っ越しを繰り返すボーダレス・キャットとなる。現在、彼女(14歳)は東京の仕事場を自分の城として、著者と適度の距離を保って暮らす。初めて飼っていた猫バロン、クラスメイトの家で生まれたメル、イタリア・フィレンツェで詩人と同棲していた時に飼うことになったアロとモモなど、歴代の猫たち、ヴィオラ奏者の母リョウコ、年下の夫ベッピーノ、伊詩人の息子デルス、そして著者自身についても忌憚なく包み隠さず真摯に語る猫エッセイ。
b ローレル・ヘイローの地図 (music)「ヘイローの5枚目のソロ・アルバムは真っ黒に汚れた染みを溶かし消すことも、境界線が長く伸びることはなく、密集した最も巨大な輪郭でさえ、息(breath)の一吹きで崩壊する可能性がある透き通った宇宙の地図を作成する」
(Pitchfork) 。ローレル・ヘイロー(Laurel Halo)の5年ぶりとなるアルバム
《Atlas》 (Awe 2023)は昏れなず夕暮れのアンビエント ・コラージュである。2023年9月にリリースされた静謐なピアノと暗鬱なストリングスと不穏なドローンの幾重にも重なった津波が寄せては返すアンビエントを年明け(2024)に聴くと、まるでコロナ大禍や「能登半島地震」のような大災害を予見した鎮魂歌のように聞こえなくもない。Bjorkのアルバム
《Vespertine》 (2001)が9・11同時多発テロを予言したように。四十九日忌に公開された坂本龍一のプレイリスト
「funeral」 (葬儀)の最後の1曲(死の3日前に追加されたという)はLaurel Haloの
〈Breath〉 (2020)だった。
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音楽は自由にする
著者:坂本 龍一 出版社:新潮社 発売日:2023/04/19 メディア:文庫(新潮文庫) 目次:はじめに / 1952-1969 / 1970-1977 / 1978-1985 / 1986-2000 / 2001- / あとがき / 年譜
坂本図書
著者:坂本 龍一(選書・語り)/ 伊藤総研(文・構成) 出版社:バリューブックス・パブリッシング 発売日:2023/09/27 メディア:単行本 目次:ロベール・ブレッソン / 夏目漱石 / ジャック・デリダ / 小津安二郎 / 黒澤明 / 大島渚 / 八大山人 / 李禹煥 / 九鬼周造 / アーネスト・フェノロサ / 福岡伸一 / 武満徹 / ニコライ・ネフスキー / 工藤進 / アンドレイ・タルコフスキー / 橋元淳一郎 / 奥野健男 / 侯孝賢 / エドワード・ヤン / 中上健次 / ジョン・ケージ / 上田正昭 / カルロ・ロヴェッリ / 斎藤...
Huecos
Artist: Melina Moguilevsky Label: Club Del Disco Date: 2022/12/09 Media: Audio CD / MP3 Songs: Escondite / Lluvia / Todo el sentido / Respirar / Si se apaga / Algo que hacer / El fuego
Me Chama De Gato Que Eu Sou Sua
Artist: Ana Frango Eletrico Label: Mr Bongo Date: 2023/10/20 Media: MP3 / Audio CD Songs: Electric Fish / Dela / Nuvem Vermelha / Coisa Maluca / Boy Of Stranger Things / Camelo Azul / Insista Em Mim / Let's Go To Before Again / Debaixo Do Pano / Dr. Sabe Tudo
ほぼねこ
著者:RIKU 出版社:辰巳出版 発売日:2023/12/20 メディア:単行本(ソフトカヴァ) 目次:ねこじゃなくライオンです / ねこじゃなくユキヒョウです / 大きなお手 / のび〜 / 肉球自慢 / こてん / 親子で爪とぎ / いい湯だな / にゃ〜!/ 棒あそび / 親子でボールあそび / 追いかけっこ / 大ジャンプ!/ 着地!100点満点 / ホワイトタイガー?/ ハロウィン / お母さん大好き / しまい忘れ / 親子でお昼寝 ...
猫がいれば、そこが我が家
著者:ヤマザキマリ 出版社:河出書房新社 発売日:2023/09/21 メディア:単行本 目次:ベレン / 大切な関係ほど、程よい距離感 / 一番怠惰なのは人間? / ベレンの来日 / 私の “ニャンコ先生” / 猫の名前 / 猫の出産、私の出産 / 人の心が豊かな国は猫も幸せ? / 生命反応を感じていたい / プリニウスと私 /「信頼」という落とし穴 /「今日から二人で頑張りましょうね」/ 三つ子の魂 / 母が足りない / イタリア家族との再会 / マンミズモは猫愛に置...
Atlas
Artist: Laurel Halo Label: Awe Date: 2023/09/22 Media: Audio CD Songs: Abandon / Naked to the Light / Late Night Drive / Sick Eros / Belleville / Sweat, Tears or the Sea / Atlas / Reading the Air / You Burn Me / Earthbound
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