b 女子高生コンクリート詰め殺人 (comic)少女マンガ家が90年代に発表した作品集
『彼らの犯罪』 (岩波書店 2021)。「女子高生コンクリート詰め殺人」 の被告4人の裁判を傍聴する末永沙恵子(わたし)と望月ヒロコの視点で描いた 「彼らの犯罪」。新興宗教「ユートピア会」の講習会に参加した友人・中川優理子が坂口実枝子(わたし)に体験談を語る 「夢の入り口」。高校教師・高橋眞とその妻しのぶが長男・真を刺殺した事件をタウン誌の編集をしている佐々木(わたし)が取材する 「親が・殺す」。父母への愛と憎しみ、異性・同性愛、ミス・コンテスト、独居老女の日常などを点描する連作 「横からの構図」。少女強姦とミソジニー、カルト教団のマインドコントロール、家庭内暴力と息子殺しなど、現実に起きた事件をテーマにしているが、30年前に描かれたとは思えない先見性に目を瞠る。書き下ろし短篇「明日の希望」は脱原発、コロナ禍後の近未来を描く。原爆投下もサリン撒布も原発事故も2度起きないと眼が覚めない(両目が開かない)のではないかという疑念は常日頃から思っていたこと。口に出すのが憚れたことを樹村みのりは痛烈に、為政者への批判を込めて未来から警鐘を鳴らす。
b アンリ・マティスの猫 (art)「マティス展」 (東京都美術館)に行って来た。猛威を振るった新型コロナ・ウィルスも漸く終熄したのかと思ったら、連日35℃以上の酷暑が続く日々。梅雨明けの日照りで紫陽花も除草剤を撒いたかのように枯れ、外ネコも虎皮の敷物のように日陰で平べったく延びている。夜間開館日(金曜)に当日券を求めて、20〜30人ほどの列に並ぶ。予約券を持参してエントランスを素通りする人は殆ど皆無。約10分後、QRコードが印字されたペラペラのレシートを自動読み取り機に翳す。幸い待ち時間なしで入れたが、会場内は
「エゴン・シーレ展」 以上の大混雑。予約制の意味が分からない。これで入場制限しているのかしら。地下(B1)からエスカレータで昇った1階だけは写真撮影可で、皆さんスマホでカシャカシャと撮っている。絵画を撮る人は肉眼で鑑賞しないのね。ネコの絵が〈赤の大きな室内〉
(Large Red Interior 1948) だけしかなかったのは残念にゃん。出口手前で上映されている 「ヴァンス ・ロザリオ礼拝堂」(5分)は黒山の人集り。グッズ売り場もレジに並ぶ長蛇の列だった。
b 夜廻り遠藤商店 (comic)『夜廻り猫の雑貨店』 (ポプラ社 2023)は8コマ・マンガ
「夜廻り猫」 の拡張版。遠藤平蔵が夜廻り見習いのワカルみたいに居酒屋を開店したのかと思ったのは早合点。大きな樹の祠で雨宿りをする遠藤、重郎、ニイの3匹。遠藤が重郎に寝物語(彼らの開いたお店の商品、ぎうにう、バタパン、ゆでたまごを味見する)を聞かせていると、食物を獲得出来なかったニイは外へ飛び出す。雨上がりの翌朝、ニイを探しに出た重郎が何者かに連れ去られてしまう。重郎を探しに縄張りの外へ出たニイは野良ネコたちに攻撃されて傷つき、新宿歌舞伎町に辿り着く。倒れていたニイを灰縞猫のタダユキが拾って帰宅する。白猫ミドリが誰もが集まれる夢のお店を作ることを提案し、飼主のケンが建築資材と商品を二トン車で運んで実現させる。遠藤が縄張りを放棄して、大きな祠に開店した「遠藤商店」はワカルやボウシたちの集まるネコたちの共生・共同体となる。ハードカヴァ、オールカラー(A5判・40頁)。
b 猛子の像 (books)『猫の木のある庭』 (河出書房新社 2023)は大濱普美子の小説集
『たけこのぞう』 (国書刊行会 2013) の文庫版。「のっぺらぼうの平仮名書きからは、どんな内容の話なのか見当がつかず、ひょっとしたらまるでそぐわないイメージを与えてしまうかもしれない」 という著者・大濱普美子の懸念から、冒頭に収録された処女作に改題された。老夫婦の住む木造平屋建ての母屋の離れに「私」と飼い猫タマが引っ越して来る 「猫の木のある庭」。「私」 の住むアパートの隣室で亡くなった夫人の管財人から受け取った遺品の黒皮の婦人靴を履いたことで生活が一変する 「フラオ・ローゼンバウムの靴」。亡き姉・夏子の娘・朝子が秋子の待つ実家に冥界から帰って来る 「盂蘭盆会」。銭湯の2階に同居することになった2人の女性、フサ江(私)とマチ子が自転車で海を見に行く「浴槽稀譚」。ワーキングホリデーの申請が通ったミサキ(私)がドイツでコンピュータを使う仕事の傍ら、家事手伝いのバイトに就く 「水面」。画家だった母親・松子の訃報を受けて、娘の猛子が帰国する 「たけこのぞう」。
b 脆弱な小馬 (music)フィーブル・リトル・ホース(Feeble Little Horse)は2021年、米ペンシルヴァニア・ピ ッツバーグで結成されたデュオ、Seb KinslerとRyan Walchonski(ギター、ヴォーカル)に、Jake Kelley(ドラムス)とLydia Slocum(ヴォーカル)が加わった4人組のノイズ・ポップ・バンド。「Alex G、ドリ ームポップ実験主義者のSweet Tripと地元の爆音ギター・バンドへのバンド・メンバーたちの愛から生まれた《Hayday》は20代の実存的な恐怖を描いた容赦なく意図的に混沌としたドキュメントである」
(Pitchfork) 。再発盤
《Hayday》 (Saddle Creek 2022)は〈Dog Song 2〉〈Termites (Full Body 2 Remix)〉の2曲を追加収録。2ndアルバム
《Girl With Fish》 (2023)の 「魚を持つ少女」 というタイトルは美術館で想像した絵画の題名について、バンド内でウケたジョークに由来しているという。シューゲイズ、不協和音のギター、「ノイズ・ロックの感触とDIY志向のポップの融合、異なる感性が興味深い方法で衝突する」
(NME) 。
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彼らの犯罪
著者:樹村 みのり 出版社:岩波書店 発売日:2021/10/19 メディア:文庫(岩波現代文庫 文芸 341) 目次:彼らの犯罪 / 夢の入り口 / 親が・殺す / 横からの構図 / あとがき / 明日の希望 / 岩波現代文庫版あとがき / 解説(鈴木 朋絵)
アンリ・マティス展
アーティスト:アンリ・マティス(Henri Matisse) 会場:東京都美術館 会期:2013/04/27 - 08/20 主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館 / ポンピドゥーセンター / 朝日新聞社 / NHK / NHKプロモーション 概要:約20年ぶりの開催! 20世紀芸術の巨匠アンリ・マティスの大回顧展。世界最大規模のマティスコレクションを誇るパリ、ポンピドゥー・センターから名品約150点を紹介。“フォーヴィスム” の夜明け、マティス初期の傑作《豪奢、静寂、逸楽》日本初公開
夜廻り猫の雑貨店
著者:深谷 かほる 出版社:ポプラ社 発売日:2023/04/21 メディア:単行本 内容:ある雨の日、重郎は遠藤とニイの前から姿を消す。遠藤とニイは重郎を必死に探すも見つからず途方に暮れるが、必ず帰ってくると信じて、重郎をさがすために雑貨店を開くことに…。人気漫画『夜廻り猫』から漫画絵本が誕生!豪華オールカラーで読める心に優しいストーリー。きっとあなたの心を癒す絵本です。
猫の木のある庭
著者:大濱 普美子 出版社:河出書房新社 発売日:2023/07/06 メディア:文庫(河出文庫) 目次:猫の木のある庭 / フラオ・ローゼンバウムの靴 / 盂蘭盆会 / 浴槽稀譚 / 水面 / たけこのぞう / 文庫本あとがき / 解説・金井 美恵子
たけこのぞう
著者:大濱 普美子 出版社:国書刊行会 発売日:2013/06/19 メディア:単行本 目次:猫の木のある庭 / フラオ・ローゼンバウムの靴 / 盂蘭盆会 / 浴槽稀譚 / 水面 / たけこのぞう
Hayday
Artist: Feeble Little Horse Label: Saddle Creek Date: 2023/01/13 Media: Audio CD Songs: Worth It (Intro) / Termites / Chores / Tricks / Too Much / Sherman's Last Ride / Picture / You Got It Babe / Kennedy / Drama Queen / Grace (Outro) / Dog Song 2 / Termits (Full Body 2 Remix)
Girl With Fish
Artist: Feeble Little Horse Label: Saddle Creek Uk Date: 2023/06/16 Media: Audio CD Songs: Freak / Tin Man / Steamroller / Heaven / Paces / Sweet / Slide / Healing / Pocket / Station / Heavy Water
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