ネコ・ログ #69 [c a t a l o g]
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高木 佐保 「ネコだって、進化する」
#613│アニ&スワ│飼い猫 ── 仲良しネコ良し
「招き猫」のモデルになったというジャパニーズ・ボブテイル兄弟の白黒ネコは仲が良い。出会うと鼻先でコンタクトしたり、戯れ合ったり。子猫時代は警戒心が強くてヒトの足音や自転車の車輪音が聞こえるや否や走り逃げていたが、成猫になって急に人懐っこくなった。「猫語」 で呼びかけなくても、自ら近寄って来て足許に纏わり着く。足や躰を踏んづけそうになってしまうので歩けない。ある日、スワちゃんが後方から駆け寄って来た時に気づかなくて、ぶつかってしまったことが何度もある。短い尻尾を踏みつける心配がないのは幸いではあるけれど‥‥。仕方がないので重い躰を抱き上げても全然嫌がらない。そんな2匹が駐輪場で、真剣そうな目つきをして遠く前方を見つめている。凡庸なヒトには何を凝視しているのか皆目分からない。ネコが何かに気を取られて注視して微動だにせず、じっと静止している時は逆にシャッター・チャンスでもあるのだ。
#614│ハン│飼い猫 ── 元気にしてた?
久しぶりにネコたちのいる界隈を訪れた。懇意にしていた可愛い黒猫ソランが亡くなってからは足が遠のいていたのだ。この地域には過去に小柄のトミーと大柄のサビがいた。牝ネコの方が気が強くて、チャコール・グレーを毛嫌いしていた。今は代替わりして、茶トラと黒白ネコが暮らしている。三毛のマーブルは屋内にいるのか、姿を見かけないし、周辺に潜んでいる気配も感じられない。レイは人懐っこく手招きすれば近寄って来るけれど、ハンは用心深く遠巻きに距離を保つ。自ら近づいて来たと思ったら、捨て台詞ならぬネコパンチを見舞って去って行くというヤンチャな一面もあるので要注意である。不用意に手を出すと引っ掻かれるリスクが高い。暫く会っていない間に多少軟化したような気もするけれど、油断は禁物である。ハンちゃんが素人ネコ撮り人のことを覚えているどうかは微妙である。何を考えているのかも全く分からにゃい。
#615│ヘイ│飼い猫? ── キャットウォーク・キャット
S**図書館へ行く道すがら、民家の塀の上を縞ネコが歩いていた。まるでキャットウォークを歩くファッション・ショーのモデルにゃんこのように。ネコと目が合うと、興味深そうに見つめ返して立ち止まる。被写体との間合いは1mほど、数十秒間の接近遭遇だった。束の間のシャッター・チャンスだったが、初対面のネコを撮れたのは僥倖である。最近、外ネコと出遭う機会が激減してしまったけれど、10回に一度のチャンスを生かすためにも、毎度カメラの携行を常に怠らないことが肝要だったりする。その後、何度か同じルートを通ったものの、今のところ縞ネコの姿を見かけることはない。耳先カットされていないので、民家の屋内で飼われている家ネコかもしれない。「チャンスの神様には前髪しかない」(好機は直ぐに捉えなければ、後から捉えることは出来ないという意味)そうだが、「シャッター・チャンスの猫様にも前髪しかない」 のである。
#616│アン│ノラ猫 ── 卯年(2023)もよろぴょん
今年(2023)は卯年。皆川博子先生のショート・ショート「そ、そら、そらそら、兎のダンス」みたいに、ピョンピョン跳ね回って小躍りしたいくらいだが、ウクライナ戦争が終結しそうもない悲惨な現状ではロシア軍の略奪行為を想わせる〈盗ったら脱兎〉よりも〈毒吐く白兎〉の方が「回文かるた2023」のタイトルに相応しかったかもしれない。掌篇 「兎のダンス」 は一見ユーモラスなファンタジーのように読めるが、SF 「ボディスナッチャーズ」 のような不気味さも内に秘めている。駅前公園の三毛にゃんが珍しく戯れているところを撮った。実は年明けから暫く姿を見かけなかったのだが、先日数カ月ぶりに元気そうなアンちゃんと出会って安堵した。植え込みの陰に隠れていた彼女に手招きすると徐に近寄って来て、いつものように膝の上に乗ってくれた。『知りたい! ネコごころ』(岩波書店 2020)によると、ネコは視覚や聴覚の記憶から個体を認識しているらしい。
#617│ミャウ│ノラ猫 ── 人待ち顔のネコちゃん
長毛種ロンちゃんの縄張りから少し離れたところにサバ猫がいる。地域ネコたちの世話をしている夫婦と出合う。婦人には馴れていて、頻りにミャーミャーと鳴く。こんなに長く鳴き続けるネコも珍しい。どうやら毛並みを撫でてもらいたがっているようだ。生まれて1年くらいとのことだが、未だ子猫時代の記憶が忘れられずに甘ったれているのかもしれない。一度夫妻に同行させてもらい、公園内を周遊して、どの場所にネコがいるのか教えてもらったことがある。流石に年季の入ったネコ ・ウォッチャーらしく、周辺のネコたちの生態を熟知している。ロンちゃんがヴォランティアに捕獲されて動物病院に連れ去られ、危うく不妊手術をされそうになった経緯も婦人から聞いた。知らないヒトに突然捕まり、狭いキャリングケースに閉じ込められて、手術台の上で拘束されたロンちゃんの恐怖を思うと身震いする。
#618│レイ│飼い猫 ── 久しぶりの茶トラ
黒白ハンちゃんと同じく区画にいる茶トラと久しぶりに再会した。第一印象は少し年取ったかなという感じ。もちろんネコは暫くぶりに旧友と出会っても、笑顔で話し合ったりはしない。飼い犬のように尻尾を振って駆け寄って来るわけでもない。「暫く会わなかったけれど、元気にしていた? 少し年取ったんじゃないの」 と内心思っているのかどうかは分からないけれど、ポーカーフェイスというか、いわゆるツンデレの塩対応なのだ。それでも近寄って来て毛並みを撫でさせてくれるのだから、どこかでネコと心が繋がっているのではないかと思いたい。ヒトと同じくネコも視覚や聴覚などで個体を識別しているのは明らかだが、誰とでも親密に交際するわけではない。ヒトの関係性には他人、同僚、知人、友人、親友、親族、夫婦、親子などの濃淡がある。ところが互いに築き上げた信頼関係は時として脆くも崩れ去るものらしい。某背任容疑で逮捕された元外務事務官の作家S**氏はネコを飼う理由として「猫は裏切らない」からと語っている。
#618│サイ│ノラ猫 ── にゃんこ同盟
ロンちゃんを追い回していた茶トラも地域のネコ・ヴォランティアに捕獲されて、不妊手術を施されたという。拙ブログ(sknynx)にアップした写真は耳先カットされる以前に撮ったもので、遊歩道の植え込みの奥に隠れているサイちゃんを木立の隙間から撮った。暗がりになっているので解像度は低い(IOS 3200 1/50s)けれど、ソフト・フォーカスが逆に幻想的な雰囲気を醸し出している(左右を反転〜トリミングして、ブログのトップ・バナーに使用した)。外ネコの世話をしている婦人が驚くほど食欲旺盛で、少食のロンちゃんとは対照的である。手術後のサイちゃんは右耳先がV字型にカットされている。施術後に少し大人しくなったとネコ婦人は言うけれど、ロンち ゃんは警戒して、少し離れたところからサイちゃんの行動を注意深く見張っている。この犬(猫?)猿の2匹が 「にゃんこ同盟」 を結成する日は日暮れて道遠しかしら?
#620│ポニ│地域猫 ── 谷中のネコたち 5
外ネコへの不妊手術効果なのか、コロナ禍で家ネコを外に出さなくなったのか、外ネコの個体数が減ってしまい、最近は同じ地域に棲む同じネコたちしか撮れなくなっている。谷中のネコたちも少なくなったらしく、先日谷中分室を訪れた時には日暮里駅南口近くの天王寺周辺で2匹のネコにしか出合えなかった。墓地で鳴いていた白黒ネコは用心深くて、近づくと一定の距離を保って後ずさる。2〜3mくらいの距離から望遠レンズで連写している男性もいたが、筆者(sknys)の標準3倍レンズでは1m以内まで接近しないと鮮明なネコ写真が撮れない。基本的に自らヒトに近寄って来る友好的なネコ、こちらから近づいても逃げ去らない(怖がらない)人馴れしたネコしか撮れないということだ。天王寺前の陽溜まりでポニちゃんを撮った。ブログに上げた写真は以前、谷中へ行った時に撮ったアウト・テイクです。
#620│ロン│ノラ猫 ── 耳先未カット・キャット
地域の事情に疎いネコ・ヴォランティアに捕獲されて、不妊手術を施されそうになった顛末は〈ロンちゃんの受難〉に書いた。SNSにアップされた写真は瞳孔が開いて脅えていたという。カットされた左耳を目にする度に辛い気持ちになってしまうので、耳先未カット時代の貴重な写真をアップした。「猫の日」(2023・2・22)に 「猫」(Cat)でグーグル検索すると、左上に見慣れない「肉球アイコン」が表示された。灰縞ネコの手が肉球にタッチするGIFアニメに促されてタップすると、可愛い鳴き声と共にネコの手が伸びて来て、足跡(肉球スタンプ)を残す。任意のスペースをクリックするごとに、色んな鳴き声に呼応して灰、黒、茶トラなど色とりどりのネコの手でスタンプされる。とっても面白いギミックだが、全く実用的ではない肉球印。ネコに悪戯されて検索出来ないではないかというユーザは下部に表示されている「黒丸白抜きX」をクリックすることで、可愛らしい(煩わしい?)ネコの手から解放されるのだ。
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各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第69集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。今までに620匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第69集の常連ネコはロンとアンとちゃん。長毛種は呼べば来るし、三毛は膝に乗ります。先日、久々にミスちゃん(スコティッシュ・フォールド)の写真が撮れました。レースのカーテンの狭間から外を眺めているミスちゃんと目が合ったので手招きすると、暫し見つめています。逡巡している様子なので、マスクを外すと窓辺から姿を消して玄関ドアから外へ出て来ました。ネコが視覚や聴覚でヒトを識別して行動を起こすのは過去に会ったことを憶えているということ。その際の判断基準(行く、行かない)は一体どこにあるのか。人懐っこい飼いネコならば初対面でも跳んて来るのですが。
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- 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^
- オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました
- 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました
- 「701匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました
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- 著者:高木 佐保
- 出版社:岩波書店
- 発売日:2020/02/09
- メディア:単行本(岩波科学ライブラリー)
- 目次:ネコ研究ことはじめ / ネコだって、想い出にふける / コラム 賢いウマ、ハンス / ネコだって、推理できる / ネコだって、人を思う / ネコだって、進化する / あとがき / 参考文献
- 著者:高木佐保
- 出版社:慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2022/09/17
- メディア:単行本
- 目次:動物はどのように考えるのか / ネコはどこまで物理法則を理解しているのか / ネコは "声" から "顔" を思い浮かべるのか / ネコは "どこに" "何が" を思い出せるのか / ネコの思考能力はどのように進化したのか / あとがき / 初出一覧 / 参考文献 / 注・巻末図版 / 索引
2023-04-21 00:00
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