F A V O R I T E ー B O O K S 2 5 [f a v o r i t e s]
白猫、黒犬(集英社 2024)ケリー・リンク485
童話や民話、伝承を現代風に改変した短篇集。望むものは何でも手に入れられるほど裕福な男(70代)は老いの不安から、前妻の産んだ3人の息子を探索の旅に出して遠ざけることにした。最も小さくて愛らしい犬、結婚指輪を通すことが出来るほど極薄の生地で仕立てた引退パーティー用のスーツ、一番美しくて一番賢い花嫁を探して来た者を後継者にするという 「白猫の離婚」 は17世紀フランスのドーノア夫人による風刺童話『白猫』と同じく、三男が白猫の首を刎ねて美女を出現させるが、驚愕の結末に換骨奪胎している。表紙画はヒグチユウコ
ネコ学(築地書館 2024)クレア・ベサント484
英慈善団体 「インターナショナル・キャットケア」 の最高責任者を28年に渡って務めた著者による 「あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法」。『ネコ学入門』(2014)の改訂版。20年余り後の出版なので、より具体的な猫と人間のコミュニケーションに重点を置き、猫がストレスなく快適に、幸せで健康的に暮らせる生活を模索している。常に猫たちの身になって、彼らが何を感じて何を考えているかを表情や仕草、鳴き声、行動から推察。猫を飼っている人だけでなく、これから猫を飼いたいと思っている人への有益なアドヴァイスが満載
午後の最後の芝生(スイッチ・パブリッシング 2024)村上 春樹 / 安西 水丸(絵)483
『中国行きのスロウ・ボート』(1983)所収の短篇に挿絵(20点)を添えた単行本。大学生の 「僕」 が最後の芝刈りバイトへ行く。昼食休憩を挟んだ4時間ほどの作業の間に 「僕」 が飲食したのはアイスコ ーヒー、女主人が用意してくれたサンドイッチとオレンジジュース、ウォッカ・トニック。仕事の後に立ち寄ったドライヴ・インで注文したコカ・コーラとスパゲッティ。車中で眩暈を起こしたのは熱中症と思われるが、最大の謎は女主人が案内した2階の部屋。学生らしい不在の娘と一週間前に別れた彼女の虚ろな面影が 「僕」 の脳裡で重なる
一年前の猫(ナナロク社 2024)近藤 聡乃482
NY在住のマンガ家・アーティストによるエッセイ8篇に、カラー・イラスト25点を挿んだ文庫サイズのハードカヴァ上製本(巻頭に2つ折り、巻末に4つ折り蛇腹の別丁扉が付いている)。アサリ(もどき)のスパゲッティ、黒猫クレオとグレーのポンズ母娘、手作り培養ヨーグルト、こっそり縫いぐるみ(アライグマ)を可愛がって 「クルクルニャ?」 と鳴くクレオ、空き地に出来た公園の円柱、夢の中で◯◯ちゃんが飼っている猫 「あんず」、3歳になったポンズの誕生日を忘れてしまう 「私」 など。ふっくらした猫たちがフワフワと浮游するイラストも魅力的にゃん
三行怪々(河出書房新社 2024)大濱 普美子481
嵐山光三郎が 「私のベスト3」(本の雑誌 2025年1月号)に挙げていた怪本。北野勇作の 「100字シリーズ」 を読んで、「百文字病」 の変異株 「三行」(約60字)に感染した作家による超ショート・ショート200篇。三行目がオチになるのは狂歌に似ているかもしれない。「猫用の出入口を、扉に取り付けた。猫がそこから出ると、三本足の獣が列を作 って後を追う。最後の一匹が、行儀よく扉を閉めていった」 という風に怪猫度(11篇)も高い。こんな茶目っ気が 「たけこのぞう」 の作者にあったとは。チューリップと猫と骨が川の字に並ぶ表紙も三行怪々
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