F A V O R I T E ー A L B U M S 1 3 [f a v o r i t e s]
BROL (Angele Vl 2018) Angele
アンジェル(Angèle Van Laeken)はベルギー・リンクベール生まれの女性SSW。乳歯の抜けた5歳児のセルフ・ポートレイトをデビュー・アルバムのカヴァにするとは只者ではない。父親はSSWのマルカ(Marka)、母親はコメディアンのローランス・ビボ(Laurence Bibot)、兄がラッパーのロメオ・エルヴィス(Roméo Elvis)という芸能一家の娘です。〈マーフィーの法則〉で、美しく成長した彼女の姿を拝見しましょう。見開き3面紙ジャケ仕様、15折りポスター付き 260
OMINDA (Tratore 2018) Andre Abujamra
変態音楽バンド(Karnak)の総帥アンドレ・アブジャムラの5thアルバム。ロシア、日本、アルゼンチン、ウルグアイ、インド、フランス、ポルトガル、ブルガリア、ヨルダン、チェコ ‥‥海外を旅して制作したワールド・ミュージック。Sasha Vista、Oki Kano、Perota Chingo、Maria de Medeiros、Martin Buscaglia、Ballake Sissoko、Zaza Fournier、The Bulgarian Voicesなど多数のゲストが参加している。全15曲 ・63分。紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き 259
AZUL MODERNO (Ricso 2018) Luiza Lian
サンパウロ生まれの女性SSWルイザ・リアン(Luiza Lian)の3rdアルバムはチン・ベルナルデス(Tim Bernardes)との共同プロデュース。小悪魔的な容姿と舌っ足らずのロリータ・ヴォイスでリスナーを魅惑する。重低音のダブからレゲエ、エレクトロ・ポップやサイケ・ドリーム・ポップ。サンプリングやノイズ、電子音、管楽器などが浮游する音像空間を自在に舞う。アルバム・タイトルを記した半透明の特殊ケースに、カヴァを兼ねた9つ折りの歌詞・ポスターを封入 258
BOYGENIUS (Matador 2018) boygenius
ボーイジーニアス(boygenius)は3人の女性SSWが結成したスーパーグループ。「天才少年」という逆説的なバンド名には幼い頃から褒め称されて育つ少年に対する少女からの冷ややかな視線が感じられる。Julien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacusの3人は自作1曲とアイディア1つを持ち寄ってレコーディングに臨んだという。6曲入りデビューEPのカヴァは《CSN》(1968)を模している。写真を撮ったのはモデル兼アーティストのレラ・ペンテルテ(Lera Pentelute)257
AVIARY (Domino 2018) Julia Holter
Julia Holterの5thアルバムは「鳥小屋」というタイトル。曲作りをしている間、彼女の記憶から浮かび上がった翼のイメージと鳥たち‥‥レバノン・ベイルート生まれの画家・詩人エテル・アドナンの小説『Master of the Eclipse』とメアリー・カラザースの『記憶術と書物』に影響されたという。全15曲 ・90分というコンセプトは演奏時間が短くなり、収録時間が30分というアルバムも珍しくない潮流に逆行している。見開き紙ジャケ仕様2枚組、歌詞ブックレット(16頁)付き 256
WE ARE ILL (Box 2018) ILL
英マンチェスター出身の女性バンドには40年前に冷凍保存されたThe B-52'sや90年代に核爆発したBikini KillのDNAが組み込まれているらしい。アンコーツの廃工場で18カ月以上にも渡ってレコーディングされたデビュー・アルバムは彼女たちの禍々しいメイキャップで飾られているが、「ビョーキ」なのだから仕方がない?‥‥「女三人寄れば姦しい」 どころか、5人も集まれば五月蝿いのだ。NHS(国民保健サービス)を批判した〈ILL Song〉も露悪的で毳々しい。全9曲・41分 255
EL MAL QUERER (Sony 2018) Rosalia
ロサリア(Rosalía Vila Tobella)はスペイン・バルセロナ生まれのSSW。デビュー・アルバム《Los Ángeles》(2017)はフラメンコ・ギター1本だけの伴奏だったが、2ndはフラメンコとR&B、ヒップホップ、ダンス、エレクトロなど最先端のサウンドを融合。天上界のセクシー女神のようなカヴァ・アートや歌詞ブックレット(28頁)のセミ・ヌード写真も魅惑的で、ポップ・アイコンとしてのスター性もある。全11曲 ・30分。透明スリップケース入り(Super Jewel Box)254
TRANCA (Circus 2018) Ava Rocha
アヴァ・ホーシャの3rdアルバムは総勢35名のミュージシャンが参加した大作。2016年に亡くなった友人の彫刻家トゥンガ(Tunga)に捧げた〈Pangeia〉、エンディングで早送りになる変則リズムの〈Periferica〉、Tulipa & Gustavo Ruiz姉弟と共作した〈Lilith〉、ギター・ノイズの大渦に巻き込まれる〈Assumpcao〉‥‥土着的なリズムと低音ヴォイスと実験的なサウンドが三つ編みドーナツのように絡み合う全19曲・62分。3面見開きデジパック仕様、歌詞ブックレット付き 253
SONGS OF PRAISE (Dead Oceans 2018) Shame
英サウス・ロンドンで結成された5人組のデビューアルバム。メンバー全員が20か21歳という若いポスト・パンク・バンドである。Charlie Steenのヴォーカルは怒りを爆発させる激情型だが、Eddie GreenとSean Coyle-Smithのギター(ストラトキャスター)はクリアなハイトーンで、Josh FinertyのベースとCharlie Forbesのドラムスがグルーヴを生み出す。意外とメロディアスでダンサブル。〈Kinky Afro〉を髣髴させる〈Friction〉に思わず頬が緩む。豚ジャケに外れなし 252
REMASTERED PART I (Fish People 2018) Kate Bush
還暦を迎えたKate Bushのアルバム全10点がリマスターされた。アナログ・ボックスは4セット(4・4・6・4LP)、CDは2セット(7CD・11CD)で、全スタジオ・アルバムと12インチ・ミックス、レア・トラックスなどを完全網羅(CD BOX Part IIにはライヴ・アルバム《Before The Dawn》も収録)。美麗化粧函入り。三面見開きデジパック仕様、歌詞ブックレット(8・12頁)付き。紙ジャケ愛好家は不満かもしれないが、国内盤が発売される予定は今のところない? 251
ALICE (Universal 2018) Alice Caymmi
日本の流儀で緊縛された花嫁アリス(縛り甲斐のある体型?)は「神聖と冒涜」の象徴。ハート型ネオンの標示は「ALICE」とだけ点灯され、「CAYMMI」は消えている。アリーシ・カイミ(Alice Caymmi)の3rdアルバムはBarbara Ohanaのプロデュース。Ana Carolinaと共作した〈Inocente〉 、ドラッグ・クイーンSSWのPabllo Vittarとデュエットした〈Eu Te Avisei〉など全9曲・26分。女優・歌手Cleo Piresと共演した〈Sozinha〉のリミックス・ヴァージョンは未収録 250
BE THE COWBOY (Dead Oceans 2018) Mitski
アナログ盤ブームの影響なのか、スカート丈と同じような最新トレンドなのか、昨今アルバムの収録時間が短くなっている。40分足らずの新譜も珍しくない。Mitskiの5thアルバムも全14曲で33分しかない。1曲の演奏時間が短いので矢継ぎ早に駆け抜けて行くが、9曲目の〈Nobody〉で殺られる。転調して空へ舞い上がり昇天する。Miyawaki Mitskiは日本生まれのSSW。Patrick Hylandと2人で創り上げたサウンドは完成度が高い。3つ折り紙ジャケ仕様。歌詞はインナーに記載 249
SPECULATIO (Bongo Joe 2017) Odessey & Oracle
The Zombiesのアルバムからバンド名を採ったOdessey & Oracleは仏リヨン出身の男女3人組(男1・女2)。2ndアルバムはキモ可愛いソイヤ・リゲート(Soya Legato)のカヴァ・アートが目を惹く。ピアノ、キーボード、チェロ、ハープシコード、ギター、リコーダー、バンジョー、ドブロ、ベース、シンセ、ヴィオラ・ダ・ガンバなどの優雅なバロック&サイケなサウンドにファニー・レリーチ(Fanny L’Héritier)の可憐無垢な天使ヴォイスが舞う「画・音一致」アルバム 248
SEE YOU AROUND (Rounder 2018) I'm With Her
I'm With Herは女性3人(Sara Watkins、Sarah Jarosz、Aoife O'Donovan)が結成したバンド。ヒラリー・クリントンとは関係ない。ギター、ピアノ、シンセ、フィドル、ウクレレ、マンドリン、バンジョーなどの優しいアクースティック・サウンドと柔らかな女性ヴォーカル&ハーモニーの融合は女性版CSNを想わせる。プログレ風味の〈I-89〉、インスト曲の〈Waitsfield〉、Gillian Welchのカヴァ〈Hundred Miles〉など全12曲・40分。見開き紙ジャケ、歌詞ポスター付き 247
EN T'ATTENDANT (Atmospheriques 2011) Melanie Laurent
仏女優メラニー・ロラン(Mélanie Laurent)の1stアルバム。「歌う女優」 の1人かと思ったら、全曲彼女のオリジナルだった。アイリッシュのSSWダミアン・ライス(Damien Rice)と5曲を共作し、2曲でデュエット。オープニングとラストのインスト2曲では彼女自身がピアノを弾いている。トリコロール・カラーの鉛筆を口に銜えたセクシーなカヴァ(通常よりも一回り大きいサイズ)に悩殺されちゃう。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。全12曲・50分 246
LA MEDIDA DEL PEZ (Blazar 2016) Anamoli
アルゼンチン・サンタフェ生まれの女性SSW、Anamoli(本名 Alejandra Estepa)の2ndアルバム。当初はストリーミングとデジタル配信のみだったが、2018年にCD化した。彼女のヴォーカル、ギター、ローズ・ピアノにチェロ、サックス、トランペット、ヴァイオリンなどを配したインディ・フォーク〜オルタナ・ポップ。Ninja(Iara Sillitti)とデュエットした〈Claves〉、Lucio Mantelがヴォーカルとギターで参加した〈Tu legado〉。見開き紙ジャケ仕様、全8曲・28分 245
I'M ALL EARS (Transgressive 2018) Let's Eat Grandma
英ノリッジ出身の早熟少女デュオ「お婆ちゃんを食べよう」の2ndアルバム。 Sophie、Faris Badwan(The Horrors)と共作した〈Hot Pink〉は「ドラッグストアの口紅とバービー ・コンヴァーチブルの色合いを戦闘の叫びに反転させる」と評された。〈The Cat's Pyjamas〉はネコのゴロゴロ喉を鳴らす声をサンプリングした間奏曲。LEGのデビュー・アルバム《I, Gemini》(2016)を年間ベスト10に選んだので、2年間の成長と成熟(まだ十代なのだ)は頼もしくも嬉しい 244
EL BUEN GUALICHO (Casa Del Arbol 2017) Natalia Doco
ナタリア・ドコ(Natalia Doco)はアルゼンチン・ブエノスアイレス生まれのSSW。2011年から、活動の拠点をパリに移している。2ndアルバムはアクセル・クリヒエール(Axel Krygier)のプロデュースで、仏レーベルからのリリース。西語と仏語で歌われるフレンチ・ポップやフォルクローレ、クンビアなどが混じり合った不思議なエクスペリメンタル世界。女占星術師風のアルバム・カヴァは近寄り難いけれど、ツンデレ系の可愛いヴォイスに一瞬で惹き込まれる。14曲・46分 243
JE SUIS UNE ILE (Heavenly 2018) Halo Maud
フランス・オーヴェルニュ出身のSSWアロー・モード(Halo Maud)のデビュー・アルバム。Melody's Echo Chamber、Gwenno、Jane Weaverなどに通じる今流行りのサイケ・ドリーム・ポップだが、可憐なヴォイスに悩殺される。共同プロデューサのRobin LeducやPablo Padovani(Moodoïd)、Benjamin Glibert(Aquaserge)がサポート。英・仏語混じりで歌うBjorkっぽい〈Tu Sais Comme Je Suis〉、彼女のギターに瞬殺される〈Du Pouvoir/Power〉など全12曲 242
TELL ME HOW YOU REALLY FEEL (Milk! 2018) Courtney Barnett
フェンダー・ジャガーを左手で指弾きするCourtney Barnettの2ndアルバム。暗鬱なトーンの〈Hopefulessness〉、マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』の一節を引用した〈Nameless, Faceless〉、激情グランジの〈I'm Not Your Mother, I'm Not Your Bitch〉、Kim&Kelley Deal(The Breeders)姉妹がゲスト参加した〈Crippling Self-Doubt And A General Lack Of Confidence〉‥‥全10曲、37分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(8頁)付きです 241
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お久しぶりです。
今Ava Roshaを聴いていますが面白いですねぇ。最近新しい音楽の開拓を怠り気味ですので参考にしたいと思います。
by ふじにぃ (2019-02-08 04:28)
AVA名義のデビュー・アルバムのジャケットは
浜辺に転がる4つの生首(マネキン人形)だった。
Alice Caymmiもそうですが、「親の七光り」を逆手に取ったような
反逆・反骨精神がハンパない大怪女です^^;
今もジョージアで暮らしているのですか?
by sknys (2019-02-10 20:38)
何とかトビリシで暮らしています。
今後どうなるかは解りませんけど。
by ふじにぃ (2019-02-12 11:17)
日本は大寒波襲来で、身も凍る寒さ。毎日ブルブル震えています。
トビリシは名前の由来通り暖かいのかしら?
by sknys (2019-02-12 21:00)
隣のアルメニアの首都エレヴァンが底冷えすると聞いていたので覚悟していましたが今のところ東京より遥かに暖かいです。
by ふじにぃ (2019-02-14 14:07)
日本よりもトビリシの方が過しやすそうですね。
早く春になって欲しいけれど、暖かくなるとスギ花粉が飛ぶので憂鬱です。
by sknys (2019-02-15 20:42)
トビリシ特派員ブログ(fujinee)を見つけました^^;
(http://m-tokuhain.arukikata.co.jp/tbilisi/)
by sknys (2019-02-20 10:27)