SSブログ

F A V O R I T E ー A L B U M S 9 [f a v o r i t e s]

  • STAR WARS (dBpm 2015) Wilco


  • 期間限定の無料配信(MP3)をツイッター上で発表したWilcoの9thアルバム。早速フリー・ダウンロードしたファンも少なくないかもしれませんが、「猫ジャケ」なのでアルバムを買わざるを得ません。全11曲、34分に満たない小品ながら、ノイジーなギター・サウンドが渦巻く。見開き紙ジャケ仕様のアルバム・カヴァには黒い花瓶に挿した花を背負った優美な白ネコさんが描かれているけれど、歌詞ブックレットの中ではアルチンボルド風のサイケで妖しい「騙しネコ」と化しています 180



  • ST. VINCENT (Loma Vista 2015) St. Vincent


  • NMEやThe Guardianなどで年間ベスト第1位に輝いた《St. Vincent》(2014)のデラックス・エディション。オリジナル11曲にシングル〈Bad Believer〉や〈Digital Witness〉のリミックスなど5曲を追加収録。彼女の魅力はデジタル・ビートやアナログ・シンセに絡むクレイジーなヴォーカルとギタ ー。〈Prince Johnny〉のようなバラードも美しい。黒いケープを纏っているAnnie Clarkの左上にあるステッカーは直接カヴァ(ブックレット)に印刷されているので剥がせない 179



  • FOIL DEER (Carpark 2015) Speedy Ortiz


  • Sadie Dupuis(ヴォーカル、ギター)率いる4人組の2ndアルバム。ツイン・ギターが絡み合い、リズム隊と一丸となって驀進するサウンドは重量戦車を想わせる。絶叫ヴォーカルならば完全な戦闘モードだが、Sadie嬢のヴォイスが可愛いので、TacocatやAlvvaysのような甘さもある。ヘヴィ&ノイジーな〈Raising The Skates〉、変則6拍子の〈Homonovus〉、ガールズ・パンクな〈Swell Content〉、メロディアスで美しい〈Mister Difficult〉‥‥。9つ折りの歌詞カード付き 178



  • WELCOME BACK TO MILK (Mute 2015) Du Blonde


  • フェイク・ファーで上半身を覆い、局部を隠した挑発的なモノクロ・カヴァ。Du Blondeは英ニューキャッスル生まれの金髪娘Beth Jeans Houghtonのソロ・プロジェクト。ガレージ・パンクからSSW風のバラードまで振幅は激しいけれど、取っ散らかった印象はない。Jim Sclavunos(Bad Seeds)のプロデュースしたアルバムはヘヴィでタイト。セミ・ヌードや彼女が撮った96枚の写真を鏤めたブックレット(24頁)には主張がある。最終曲のタイトルは〈ワイルドじゃない?〉177



  • PLATFORM (4AD 2015) Holly Herndon


  • Bjorkが切り拓いた前人未踏の荒野を女性たちが探検する。ホリー・ハーンダンは米テネシー生まれのアーティスト。灰色の瞳と赤毛の三つ編みヘアがトレードマーク。エレクトロ〜エクスペリメンタル系のサウンドには気味悪さと心地良さが混在している。耳触りが良く、脳もゾワゾワする?‥‥。彼女が語りかける〈Lonely At The Top〉は「世界の上位1パーセントの富裕層に向けて書かれたクリティカル・ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」だという(ele-king)176



  • I HAVE LOST ALL DEDIRE FOR FEELING (Captured Tracks 2015) Perfect Pussy


  • 2013年にリリースされた4曲入りカセットEP(デビュー・アルバム《Say Yes To Love》(2014)のフリー・ダウンロード曲だった)の再発盤。CD化に際して〈Adult World〉(The Secret)、〈Leash Called Love〉(Sugarcubes)のカヴァ2曲を追加収録。前者は典型的なパンク・ナンバー。Bjork似のヴォーカルが弾ける後者はテクノ〜エレクトロ・ノイズ風の展開を見せて刺戟的。全6曲、20分弱のミニ・アルバムだが、メンバーや風景などを撮った白黒写真集(36頁)を封入 175



  • SIMPLE SONGS (Drag City 2015) Jim O'Rourke


  • 2006年、日本へ移住したJim O'Rourkeのヴォーカル・アルバム。《Insignificance》(2001)以来、14年振りの歌ものである。石橋英子(ピアノ、オルガン)、須藤俊明(ベース)、山本達久(ドラムス)、波多野敦子(ストリングス)という編成で完璧な欧米ロックを創出。日本趣味は微塵もない。抑制されたヴォーカルがサウンドに溶け込み、楽曲は作り込まれている。「メイド・イン・ジャパン」に価値があるのでしょう。友沢ミミヨ画伯のイラスト・カヴァでなかったのは残念です 174



  • CONFIN (Geiser Discos 2015) Lucio Mantel


  • アルゼンチン・ブエノス・アイレスのSSW、Lucio Mantelの4thアルバム。山羊の群れのスリップケースを引き抜くと、雲の上を駆ける馬のカヴァ(プラケース)が現われるアートワーク。メジャー(Sony Music)と契約しても、一切妥協のない実験精神溢れるサウンドになっているところが素晴しい。Fito Paez(ヴォーカル)、Axel Krygier(ピアノ、フリューゲルホルン)、Gillespi(トランペット)、Alejandro Franov(シタール)、Alina Gandini(ピアノ)などがゲスト参加!173



  • HASTA LA RAIZ (Sony Music 2015) Natalia Lafourcade


  • メキシコの森ガール、ナタリアちゃんの6thアルバムは「ルートへ」というタイトルの通り、自らのルーツ・ミュージックに回帰した作品。大山猫のコスプレ・カヴァで飛躍した《Hu Hu Hu》(2009)のエレクトロニカ色は抑制されている。中南米の伝統音楽に根ざしたポップなサウンドなのに、ポリリズムの〈Hasta La Raiz〉、ドラムンベースが薄く流れる〈Palomas Blancas〉、レゲエ調の〈Lo Que Construimos〉‥‥など、アレンジも秀逸。可愛らしいヴォイスも健在で嬉しいなぁ 172



  • CARRIE & LOWELL (Asthmatic Kitty 2015) Sufjan Stevens


  • スフィアンの7thアルバムはドラムレスの純正フォーク・アルバム。ギターやバンジョー、キーボードなどの弾き語りによるシンプルな演奏で、母親(Carrie)の死に触発された少年時代の体験や継父(Lowell)への思いが歌われる。《The Age Of Adz》(2010)のようなサウンド面の目新しさはないが、繰り返し聴いているうちに胸に沁みて来る。「We're all gonna die」と歌う〈Fourth Of July〉の歌詞は柔らかな歌声とは裏腹に重く響く。3拍子の〈John My Beloved〉も美しい 171



  • SOMETIMES I SIT AND THINK, AND SOMETIMES I JUST SIT (House Anxiety 2015) Courtney Barnett


  • 白地に青と緑のチェック柄の絨毯と肘掛け椅子一脚が描かれた安西水丸風のアルバム・カヴァ。椅子に座って考えたり、何も考えないでボーッっと座っていたり、というアルバム・タイトル。豪タスマニア生まれの女性SSWはサウスポーでテレキ ャスターを弾く。2ギター、ベース、ドラムスというオーソドックスな編成だが、ギターの音色がTelevisionを想わせたり 、ライオット・ガルーやグランジ風だったり。〈Kim's Caravan〉の気怠いヴォイスとノイズ・ギターは強烈な印象を残す 170



  • VULNICURA (One Little Indian 2015) Bjork


  • ネットでは2カ月前から配信されていた9thアルバム。ブリッジして胸の赤い裂け目を見せているグロテスクな青銅像のような限定盤と黒いコスチューム姿のBjorkが後光のようなケープを纏っている通常盤の2種類がリリースされているが、アルバム・カヴァやスリーヴなどパッケージ・デザインの違いだけで収録9曲に異同はない。興味を惹くのはアルバム・タイトルと胸の亀裂がヴァギナを想わせること。破局した元夫マシュー・バーニー(Matthew Barney)風の性的コスプレみたい?169



  • SORGA (Buda Musique 2015) Dupain


  • 南仏オクシタニアのミクスチャ・バンドDupain、10年振りの4thアルバム。Sam Karpienia(ヴォーカル、マンドール)、Pierre-Laurent Bertolino(ハーディ・ガーディ)、Gurvant Le Gac(フルート)、Emmanuel Reymond (コントラバス)、François Rossi(ドラムス)という編成の5人組。5人が一丸となって疾走するサウンドはパンクでプログレッシヴ。〈Beveire D'Aucèus〉の咆哮は何度聴いても涙目になる。歌詞はオック語で、ブックレット(36頁)に英訳詞を併記 168



  • CITIZEN ZOMBIE (Freaks R Us 2015) The Pop Group


  • Mark Stewart(ヴォーカル)、Gareth Sager(ギター)、Dan Catsis(ベース)、Bruce Smith(ドラムス)というオリジナル・メンバーで2010年に再結成された英ポスト・パンクの雄。35年振りに放った3rdアルバムはPaul Epworthのプロデュース。身悶えするようなMark Stewartのヴォイスは健在ながら、黒いダブ〜ファンクにポップな彩りを添えている。「リミテッド・エディション」(2CD BOX SET)には4曲入りEP《Versions Galore》とパッチなど付録6点を同梱 167



  • NO CITIES TO LOVE (Sub Pop 2015) Sleater-Kinney


  • 1994年、米ワシントン・オリンピアで結成された女性トリオの10年振りのアルバム。Corin Tucker、Carrie Brownstein (ヴォーカル、ギター)、Janet Weiss(ドラムス)の3ピースで、JSBXようにベースレスなのが彼女たちのスタイル。2人のヴォーカルとギターが絡み合うサウンドはスリリングで厚みがある。ギターの下降ラインに痺れる〈Surface Envy〉、アニメPVも愉しい〈A New Wave〉‥‥。ライオット・ガルーの咆哮はオバサン化して丸くなったどころか凄みを増した 166



  • ON YOUR OWN LOVE AGAIN (Drag City 2015) Jessica Pratt


  • Jessica Prattはカリフォルニア出身のSSW。ファニー・フェイスで、ファニー・ヴォイス。〈Wrong Hand〉でオルガン、〈Moon Dude〉でクラヴィネットが入る以外、全編ギター弾き語りのフリーク・フォーク。不思議な声と生ギターが混じり合って白昼夢を創出する。宅録なのか、周囲の環境音も聴こえる。デビュー・アルバム(Birth 2013)は顔のクローズアップだったが、2ndは古いアパートが見える場所で腕を組む。見開き紙ジャケ仕様(全9曲、32分)。彼女も 黒猫が好き 165



  • PANDA BEAR MEETS THE GRIM REAPER (Domino 2015) Panda Bear


  • 「死神に会いに行く」というPanda Bear(アニコレ)の5thアルバム。本名(Noah Lennox)を冠した〈Mr Noah〉、アナログ・シンセが揺蕩う〈Boys Latin〉、グラウンド・ビート風の〈Come To Your Senses〉‥‥気味の悪い効果音もあるが、多幸感溢れる桃源郷にトリップしたようなサイケ・ポップ集。W紙ジャケをカラフルな紙ケースで包んだパッケージはスイス・バーゼルで活動するMarco Papiro、インナー・カヴァはポルトガル・ポルト在住のHugo Oliveiraが描いている 164



  • ULTRAVIOLENCE (Polydor / Interscope 2014) Lana Del Rey


  • Lana Del Rey(Elizabeth Grant)はNY生まれの女性SSW。「ギャングスタ版ナンシー・シナトラ」を自称し、「ハリウッド・サッドコア」とも呼ばれる音楽スタイルは往年の映画女優のような気怠い頽廃感に覆われている。Dan Auerbach(The Black Keys)が大半をプロデュースした3rdアルバムは60年代のヒット曲〈And I Love Her〉や〈Romeo And Juliet〉を彷彿させるノスタルジックなサウンド。「Deluxe Edition」 はボーナス・トラック3曲を追加した全14曲(65分)163



  • LA ISLA BONITA (Polyvinyl 2014) Deerhoof


  • 結成20周年を迎えた「鹿蹄」の12thアルバムは初めて外部プロデューサ(Nick Sylvester)を起用。チアリーディング・ソングの〈Paradise Girls〉、ラモーンズのライヴ・カヴァ曲を元に作ったという〈Exit Only〉、米大統領の名前をモジった〈Oh Bummer〉‥‥全10曲、32分弱の円盤にアヴァンポップが凝縮されている。アルバム・タイトルはスペイン語で「美しい島」という意味。「美しい国」を標榜する某島国の総理大臣はディアフーフの音楽を聴いたことがあるのでしょうか 162



  • BESTIAL BURDEN (Sacred Bones 2014) Pharmakon


  • 女性の下半身に蠢く蛆虫、女体に盛られた内臓‥‥海外ドラマ「BONES」の変死体みたいに悪趣味なカヴァでリスナーの目を惹く(背けさせる?)Margaret Chardietのソロ・プロジェクト。欧州初ツアーの4日前に大手術を受けて3週間の入院を余儀なくされたという。2ndアルバムはNYノイズ・インダストリアル女子らしい息苦しい喘ぎ、地の底から響く絶叫、獣のような咆哮、激しい咳き込み、狂喜狂乱など全6曲、29分の責苦が続く。彼女の躰に悪霊でも取り憑いているのかしら 161


                        *


    タグ:Music favorites
    コメント(2)  トラックバック(0) 

    コメント 2

    ふじにぃ

    こんばんは。

    最新のHolly Herndonの動画をチェックしてみましたが、これは面白いですね。アルバム注文してみました。PV配信しているRVNG Intl.の発想がそもそも面白い気がします。
    by ふじにぃ (2015-07-27 00:27) 

    sknys

    ふじにぃさん、コメントありがとう。
    NSA(アメリカ国家安全保障局)のことを歌ったという〈Home〉、
    未知の惑星(砂漠?)を探査する〈Morning Sun〉‥‥。
    耳に心地良いというか、愛撫されているような気持ちになります^^
    by sknys (2015-07-28 00:23) 

    コメントを書く

    お名前:
    URL:
    コメント:
    画像認証:
    下の画像に表示されている文字を入力してください。

    トラックバック 0