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F A V O R I T E ー A L B U M S 1 7 [f a v o r i t e s]

  • SINNER GET READY (Sargent House 2021) Lingua Ignota


  • Kristin Hayterは南カリフォルニア生まれのマルチ奏者。リングア・イグノタというステージ・ネームは中世ドイツのベネデ ィクト会系女子修道院長ヒルデガルト・フォン・ビンゲンによる言語(Lingua Ignota)に由来する。家庭内暴力、性的虐待 、拒食症などからの「サヴァイヴァー・アンセム」。アシュリ ー・ローズ・コーチャー(Ashley Rose Couture)の真珠マスクで顔を覆った4thアルバムのカヴァも凄すぎる。全9曲・56分。デジパック仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き 340



  • HEY WHAT (Sub Pop 2021) Low


  • トランプ禍の2018年を象徴する《Double Negative》から3年。ベーシストが抜けて、Alan Sparhawk(ヴォーカル、ギター)とMimi Parker(ヴォーカル、ドラムス)のデュオとな った13thアルバム。男女混成ヴォイスとデジタル・ノイズの共生は不穏なアンビエントにもクワイア風にも聴こえるが、覚醒したドリーム・ポップではないか。「二重否定」 に引き続いて、BJ Burton(プロデュース)とPeter Liversidge(カヴァ ・アート)を起用。全10曲・46分。見開き紙ジャケ仕様 339



  • DRAMA (Polyvinyl 2021) Rodrigo Amarante


  • リオ生まれのSSWホドリゴ・アマランチ(Los Hermanos、Orquestra Imperial)の2ndアルバム。インスト・タイトル曲〈Drama〉、スペインの諺を基にした〈Mare〉、Astrud Gilbertoを想わせるボサノヴァ〈Tara〉、John Barryの気味悪さを再解釈した〈I Can’t Wait〉、哲学者アラン・ワッツに誘発されたコメディ〈Tao〉、ポリリズム・フォークの〈Sky Beneath〉、ピアノ曲の〈The End〉など、全11曲・42分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(20頁)付き 338



  • HAPPIER THAN EVER (Darkroom 2021) Billie Eilish


  • Z世代のポップ・アイコンとなったビリーちゃんの2ndアルバム。Julia Fordhamの〈Happy Ever After〉はアパルトヘイトに抗議した曲だったが、「今まで以上に幸せ」 というタイトルも、涙を流すカヴァ・フォトも逆説的に響く。ボサノヴァの〈Billie Bossa Nova〉、ワルツの〈Halley's Comet〉、エレクトロ・ポップの〈Oxytocin〉、ハワイアンの〈Happier Than Ever〉、フォーク・バラードの〈Your Power〉など全16曲・56分。三面紙ジャケ仕様、歌詞はインナーに記載 337



  • I KNOW I'M FUNNY HAHA (Secretly Canadian 2021) Faye Webster


  • シールで右目を隠した4thアルバムは《Atlanta Millionaires Club》(2019)と同じく、まったりしたヴォーカルと柔和なペダルスチールが気怠い午睡に誘う。90年代のニュー・ソウルを想わせる〈In A Good Way〉、ボサノヴァ風の〈Kind Of〉、ロナルド・アクーニャ・ジュニア(MLB)の10代の恋愛を歌った〈A Dream With A Baseball Player〉、江原茗一(mei ehara)が日本語で客演した〈Overslept〉など、全11曲・41分。三面紙ジャケ仕様、CDには歌詞が無記載 336



  • BLUE WEEKEND (Dirty Hit 2021) Wolf Alice


  • 狼アリスの3rdアルバムはプロデュースしたMarkus Dravsの人脈なのか、Owen Pallett(ヴァイオリン、ヴィオラ)などがゲスト参加。「マクベス」 の魔女の台詞を引用した〈The Beach〉、ドリーム・ポップの〈Lipstick On The Glass〉、ガールズ・パンクの〈Play The Greatest Hits〉、カート・ヴォネガットのSF小説『猫のゆりかご』にインスパイアされたという〈The Last Man On Earth〉など全11曲・40分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き 335



  • AFRIQUE VICTIME (Matador 2021) Mdou Moctar


  • 西アフリカ・ニジュール出身のエムドゥ・モクタール(Mdou Moctar)はジミヘンと同じく左利きで、ストラトギターを弾く。マタドールからリリースされた6thアルバムはリード&リズム・ギター、ベース、ドラムスの4人編成のバンド・サウンド。タマシェク語で歌われるメロウで催眠的なヴォーカルと絡みつくような粘着質のトゥアレグ・ギターはサイケデリックで中毒性がある。〈Afrique Victime〉は必聴。全9曲・41分。見開き紙ジャケ仕様、英訳詞ブックレット(12頁)付き 334



  • UN CANTO POR MEXICO VOL. 2 (Sony Music 2021) Natalia Lafourcade


  • ナタリアさんの「メキシコ歌謡第2集」。カヴァ・アートは妖しげだが、ゲスト陣と情感を込めてデュエット。ドラディショナルを2ヴァージョンで再演した〈La Llorona〉。Caetano Velosoがスペイン語で歌う〈Soy Llo Prohibido〉。Ruben Blades、女性ラッパーMare Advertenciaと共演した〈Tu Si Sabes Quererme〉。Jorge Drexlerと自作曲をセルフ・カヴァした〈Para Que Sufrir〉など、メドレーを含む全14曲・58分。ジュエルケース仕様、ブックレット(10頁)付き 333



  • JUBILEE (Dead Oceans 2021) Japanese Breakfast


  • 韓国系アメリカ人ミシェル・ザウナー(Michelle Zauner)のソロ・プロジェクト。固くて苦い渋柿が時間を経て、甘く熟成した干し柿になるというイメージ・カヴァの3rdアルバムはアニメ映画「パプリカ」から採った〈Paprika〉、Jack Tatum (Wild Nothing)と共作した〈Be Sweet〉、ローファイ・シングルを再録音した〈Posing In Bondage〉、Alex Gがプロデュースした〈Savage Good Boy〉など全10曲・37分。三面紙ジャケ仕様で、歌詞はインナーに記載されている 332



  • PRIVATE REASONS (Pataca 2021) Bruno Pernadas


  • 「ポルトガルのスフィアン・スティーヴンス」 と称されるブル ーノ・ペルナーダスの4thアルバム。Talking Headsを想わせるアフロ・ビートの〈Lafeta Uti〉やStereolab風エレクトロ ・ポップの〈Theme Vision〉。韓国語で歌われる〈Jory I & II〉、9分超えの〈Step Out Of The Light〉など、全13曲 ・75分。気怠いヴォーカル、人懐っこい女声コーラス、エレクトロやストリングスを配したレトロ・フィーチャーなサイケ ・ポップ、夏のトロピカル・カクテル。デジパック仕様 331



  • PAIN OLYMPICS (Meat Machine 2020) Crack Cloud


  • Crack Cloudはカナダ・カルガリーで、Zach Choy(ヴォーカル、ドラムス)のソロ・プロジェクトとして始まり、バンク ーヴァーで編成された7人組のポスト・パンク・バンド。麻薬中毒者を含むメンバーの更生、メンタルヘルスの一環として活動している。デビュー・アルバムは「イーノ時代のトーキング ・ヘッズのように幻想的な渦巻きを引き起こす」と評されるように、絶望の深淵からポジティヴな陽光が射す。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。全8曲・29分 330



  • CAVALCADE (Rough Trade 2021) black midi


  • デビュー・アルバム《Schlagenheim》(2019)のインプロヴィゼーションとは対照的に、計画的なソングライティングとレコーディングによる2ndはポリリズムや変拍ビートなどの複雑な展開で聴かせる。プログレっぽい〈John L〉、ボサノヴ ァ調の〈Marlene Dietrich〉、プログレッシヴ・ジャズ風の〈Slow〉、ポスト・ロックの〈Diamond Stuff〉、10分近いオペラチックな〈Ascending Forth〉‥‥など全8曲・42分。三面デジパック仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き 329



  • BRIGHT GREEN FIELD (Warp 2021) Squid


  • Squid(烏賊)は2017年、英ブライトンで結成された5人組のポスト・パンク・バンド。《このアルバムは架空の都市景観を創り出した。ダグラス・クープランドの 「極限の現在」、マ ーク・フィッシャーとマーリン・カヴァリーの「憑在論」や未来の漸進的な抹消を読んで、長い間ディストピアと未来派の風景の中で生きていることに気づいた》とOllie Judge(ヴォーカル、ドラムス)は語る。全11曲・55分。デジパック仕様、歌詞ブックレット(12頁)+大型ブックレット(20頁)328



  • HORIZON (Upset The Rhythm 2019) Trash Kit


  • 2008年ロンドンで結成された女性ポスト・パンク・トリオの3rdアルバム。西アフリカのハイライフに影響されたRachel Aggsのギター、Dan Leavers(The Comet Is Coming)のサックス。ヴィオラ、チェロ、ハープなど多彩なサウンドと変拍子で、The Slits、Raincoats、Au PairsのDNAを継承。米SF作家オクティヴィア・バトラーの小説『種まきの寓話』に啓発された〈Coasting〉、The Exとのツアー中に触発された〈Every Second〉など全11曲・42分。デジパック仕様 327



  • AN OVERVIEW ON PHENOMENAL ... (Ba Da Bing 2021) Cassandra Jenkins


  • NYブルックリン生まれの女性SSWカッサンドラ・ジェンキンスの2ndアルバム。2019年夏、彼女はPurple Mountainsのツアーに参加する予定だったが、直前にDavid Bermanが自殺してしまう。プロデューサ兼マルチ奏者Josh Kaufmanのスタジオで録音されたアルバムは孤独と混乱、悲嘆、無力感に苛まれた後の喪失感と癒しをテーマにしている。「エレガントで万華鏡のような」〈Hard Drive〉、アンビエント・インスト〈The Ramble〉‥‥全7曲・32分。見開き紙ジャケ仕様 326



  • NEW LONG LEG (4AD 2021) Dry Cleaning


  • 南ロンドンで結成されたポスト・パンク・バンドのデビュー・アルバム。Florence Shaw(ヴォーカル)、Lewis Maynard (ベース)、Tom Dowse(ギター)、Nick Buxton(ドラムス)の4人組で、最も特徴的なのは紅一点のスポークン・ワード‥‥Gang Of Fourを想わせる硬質なギター・リフと冷静なヴォイスのアンサンブルにゾクゾクさせられる。John Parishのプロデュース。全10曲・42分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。特典 「7インチ・シングル」 325



  • ELECTRICALLY POSSESSED (Duophonic 2021) Stereolab


  • 2019年に再結成されたステレオラブの編集盤(Switched On Volumes 4)。2枚組(2CD・3LP)で、7曲入りEP《The First Of The Microbe Hunters》(2000)、7インチ・シングル、未発表曲、アウトテイクなどを収録している。米彫刻家チャールズ ・ロングとコラボした〈B.U.A〉(Burnt Umber Assembly)と〈Monkey Jelly〉のインスト・ヴァージョンは未発表曲。〈Calimero〉はブリジットお婆さま(Brigitte Fontaine)とコラボしたシングルA面。全25曲・104分 324



  • AS THE LOVE CONTINUES (Rock Action 2021) Mogwai


  • 1995年スコットランド・グラスゴーで結成されたポスト・ロ ック・バンドの10thアルバム。バンド名は映画 「グレムリン」(Gremlins 1984)に登場する生物に由来する。「モグワイ」(mogwai)は広東語で「悪霊・悪魔」の意味。「猫ジャケ」 と思い込んでいたが、気になって調べてみたら、1910年ロシアで撮影された 「白狐の剥製」(a stuffed white fox)のガラス・ネガ画像だった。太い尻尾がトリミングされているので、ネコに見える?‥‥全11曲・61分。見開き紙ジャケ仕様 323



  • SHORE (Anti 2020) Fleet Foxes


  • コロナ禍でフィジカル・リリースが長らく延期されていた4thアルバム。ロビン・ペックノールド(Robin Pecknold)曰く 「死を直視しながら生命を祝福するアルバムを作りたかった」。バンド名義になっているが、他のメンバーは参加していないというか、今までのアルバムも殆ど1人で制作(作詞・作曲・演奏)していたという。アルバム・カヴァの表裏には濱谷浩の写真(アラスカと北海道)が使われている。全15曲・55分。見開きハードカヴァ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き 322



  • UNTITLED (RISE) (Forever Living Originals 2020) SAULT


  • 拳を突き上げた抗議から、掌を合わせた祈りへ。英覆面バンドSAULTの《Untitled (Black Is) 》はジョージ・フロイド事件に端を発した「Black Lives Matter」運動を鼓舞するメッセ ージ性の濃いプロテスト・ミュージックだったが、3カ月後にリリースした4thアルバムはポジティヴな希望に満ちている。ディスコ、ソウル、R&B、ファンク、アフロビート、ポスト ・パンクなどが渾然一体となったレトロ・フューチャーなダンス・フロアを夢想させる全15曲・51分。デジパック仕様 321


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