少年リュウの道 [c o m i c]
ヒサクニヒコ 「みんなの『原始少年リュウ』」
「原始少年リュウ」(1971-72)は週刊少年チャンピオンに連載された古代SF作品である。「リュウの道」(少年マガジン 1969-70)に時代設定が「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」を想わせる未来だったのに対し、「原始少年リュウ」 は過去。「番長惑星」(少年チャンピオン 1975-76)は現代。3作品はリュウという同じ名前の少年が主人公であることから「リュウ3部作」と呼ばれている。しかし、プロローグで《 ──「時間」は時おりうそをつく。ある人には長く、ある人には短く‥‥そしてまた。ある人の昨日がある人には明日だったりする。それは‥‥大都会のニューヨークのドまん中と、ニューギニアのジャングルの奥地が、同じ "現在" という「時間」の中に存在していることがわかるだろう。この「物語」には「時間」がないといっておこう。はるかな、失われた "過去" かもしれないし、案外近い "未来" かもしれない。いや、あるいは‥‥そこに、きみがいる今 "現在" かもしれないのだ ── 》と語られているように、 "過去" には "未来" や "現在" が混在している。
*
全裸の女性が白い赤子を胸に抱いていた。白い肌は呪われている、始末しなければ一族に災いが降りかかるとキバトラ族の長が主張する。落雷によって真っ二つに裂けた大樹は天の神が白い赤子を呪っている証拠だと‥‥。「りゅうの王」(片目のティラノサウルス)の生贄として「王の谷」に捧げられた赤子は幼い息子を探しに来た猿人キティに連れ去られてしまう。十数年後、花の髪飾りの少女ランは少年リュウと出会う。よそ者と看做したヤムが木槍でリュウを攻撃する。逃げるリュウをヤムと仲間たちが追う。救けに来たキティは槍に刺されてしまった。捕らえられたリュウはオオツノ村の長に火刑に処される。負傷したキティが再び救いに来るが、突然現われた「りゅうの王」の餌食になってしまう。ランはリュウの縄を解いて逃げる。洞窟に隠れた2人に長老が、呪われた白い赤子が災いを呼び寄せた、リュウの母親はキティではなく火の中から生まれた女の子供であると語る。リュウを殺しに来たヤムは誤って長老を殺めてしまう。
「りゅうの王」に追撃さたリュウとランは海の中へ飛び込む。しかし、海棲爬虫類モササウルスに襲われて2人は離れ離れになる。勇士タカの部族に捕らえられた2人。ランはタカと取り引きして(タカの言いなりになることで)リュウの命を救おうとするが、毒の煙を吐く死の火口へ突き落とされてしまう。酒池肉林の宴に興じる村人たち。風向きに九死に一生を得たリュウは火口から脱出してランと一緒に逃げようとする。逃走する2人の前に全身傷だらけの男が立ち塞がる‥‥タカの兄キバだった。「りゅうの王」 に家族を殺されたキバは仇討ちするために片目のティラノサウルスの後を追っていたのだ。躰の傷痕は「りゅうの王」との闘いで負ったもの、右目に刺さっている槍の先はキバの攻撃によるものだった。「りゅうの王」 を誘き出す「罠の餌」としてリュウを生かしておくと主張する兄キバ。弟タカは火の山から「やりの石」を持って来ればランも解放するという交換条件をリュウに持ちかける。
火の山に登るリュウの後を尾けるキバ。先回りして行く手を阻んだキバは、火山が噴火して火の雨と火の水で焼き殺される、「やりの石」を持って帰ったとしても弟のタカはお前をを殺すつもりだとリュウを説得する。2人が山から下りて村に戻ると、タカの部族は「りゅうの王」に襲撃されて全滅していた。リュウは肉食鳥ディアトリマに襲われ、木にしがみついて泣いていた子供ドン(ランの弟)を救出し、ランを連れ出したヤムと対決する。キバと合流したリュウとラン、ドンの姉弟。一方闘いに敗れたヤムはタカと手を組んでリュウの命を狙う。崖の上から黒トカゲが岩を落としてリュウたちを殺そうとする。白いトカゲの子を囮にしてドンを襲おうとする‥‥知恵を持った黒トカゲ族の仕業だった。リュウは石を打ちつけて火を熾し、蔓を利用して弓矢を作る。白い雪が降り出し、動物たちも寒さに追われて南へ移動していた。雪の中から姿を現わした巨大なマンモスに襲われるが、リュウは弓矢で獣の両目を射て、崖から突き落とす。
廃村に辿り着いたリュウとキバ、ランとドン姉弟はオオカミの群れに狙われる。小屋の入口に火を焚いてオオカミの侵入を防いで一夜を明かす。リュウはオオカミを生け捕りにして橇を作ろうとするが、白毛長族原人に噛み殺されてしまう。リュウを追って来たタカとの闘いの最中、オオカミを皆殺しにした原人たちが襲来する。白毛長族の頭を倒したことでタカは長となっていた。スキーで雪面を滑走するリュウたちはマンモス狩りしているオオガモ族を目撃する。リュウのことを「白い神」と呼んだ長老は女神が槍や弓矢や剣、落とし穴や罠などの知恵を授けて旅立った、白い子神が立ち寄ることがあったらペンダントを渡すように頼まれたと語る。ミュータント・トカデと手を組んだタカ。「りゅうの王」に仲間を殺されて南から逃げて来たというトンガ。弓矢で鹿狩りをしていたランはヤムに拉致されてしまう。その夜、タカの率いる白毛長族が村を襲撃する。リュウは小屋に火を放つことで、白毛長族を撃退した。
トンガの道案内で岩壁の割れ目から向こう側へ出ると、温暖な別天地が目の前に拡がっていた。森の中に建つ白い神の神殿‥‥大昔、白い神々が空から降りて来て、神殿を造ったと村の長老から聞いたと語るトンガ。このまま村へは帰らずに1人で自分の仲間を探しに行くと表明するリュウをキバが諭す。村の長に選ばれたのに「りゅうの王」に挑んで、村人だけでなくキバの妻や子までを殺されてしまった過去を告白する。和解した2人の前に「りゅうの王」が姿を現わした。ランとヤムを狙う「りゅうの王」にキバが1人で立ち向かう。キバは「りゅうの王」の左目に槍を刺して視力を奪うが、盲目のティラノサウルスの餌食になってしまう。1人で闘わせたことを悔むリュウはキバの仇を取る。神殿の庭に入った「りゅうの王」の上から積み重なった石を崩し落として生き埋めにしたのだ。ランが発見した地下への階段を降りると、鳥のような翼を有する飛行艇があった。飛行艇に乗り込んだリュウが行き先を告げると空へ飛び立つ。
宇宙から地球を眺めて地上へ舞い戻ったリュウ。岩の壁を越えて北風が吹き、雪が舞う。再び飛行艇に乗って空へ飛び立つと、氷の山が移動して来るのが見えた。氷の時代が到来するのだ。リュウは長老に南へ逃げるように告げ、村民を救う方法を見つけて必ず戻って来ると約束する。後を追って来たタカとヤムがリュウに闘いを挑むが、襲って来たミュータント・トカゲを飛行艇にあった武器(光線銃)で焼き殺すと、怖くなったヤムは逃げ出し、タカも怖じ気づいて手出し出来なかった。リュウとラン、ドン姉弟は白い神の国へ帰還する。そこは高度な文明を築いていた「未来都市」だった。数カ月前に北方の未開地区で救出された女性アイとリュウの母子対面。しかし、親子の幸せな時間も束の間‥‥突然大地震が起こり、大津波に呑まれてアトランティス大陸は海底に沈む。リュウたちが飛行艇で脱出する際に、母親は兵士に撃たれてしまう。空へ飛び立った飛行艇‥‥第四氷河期が近づきつつあった。
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- 「石ノ森章太郎萬画大全集 7-13,14」(角川書店 2007)をテクストに使いました
- 「みんなの『原始少年リュウ』」は「原始少年リュウ 2」(竹書房 1995)から引用
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- 著者:石ノ森 章太郎
- 出版社:竹書房
- 発売日:1995/11/01
- メディア:文庫
- 目次:白い子ども / りゅうの王 / 試練 / 火の山 / 旅立ち / トカゲ / 白い恐怖 / "石ノ森ワールド" 構築の回想・野田昌宏
- 著者:石ノ森 章太郎
- 出版社:竹書房
- 発売日:1995/11/01
- メディア:文庫
- 目次:白い神 / 神殿 / 光る船 / 帰還 / 大破壊 // 原始少年サラン / おわりからはじまる物語 / みんなの『原始少年リュウ』・ ヒサクニヒコ
2017-08-01 00:10
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by sknys (2017-08-04 12:12)
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by sknys (2017-08-07 22:42)