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サイボーグ 009ノ1 [c o m i c]



  • 1945年 ── 第二次大戦は、広島、長崎への原爆投下によって、幕をとじた。/ だが、それは、原子力時代から、第三次世界大戦への、危険をはらんだ時代の幕あけでもあった。/ 米・ソの二大強国による勢力争いは、日ましに激しくなり、核兵器の開発がさかんになった。/ しかし、その兵器を使用することは、まきちらされる放射能によって地球上の生物が滅亡することも意味していた‥‥。/ そして1957年 ── 。/ ソ連のうちあげた人工衛星が宇宙時代の幕をきっておとした。/ これによって、超高空から、攻撃できるようになり滅亡戦争の危機は、ますます強められた。
    石森 章太郎 「サイボーグ009 プロローグ」


  • 196X年、スイスの古城に集まった「死の商人」たちの前で黒ドクロ・マスクの怪人が「未来戦計画」をプレゼンする。未来戦の舞台となる宇宙、成層圏戦争用のサイボーグ戦士(改造人間)について‥‥。モスクワで息子イワンの頭脳改造手術に成功したウイスキー博士は妻エリカと口論の末、彼女をスパナで殴り殺す。その直後、博士は家を訪れた黒服の男たちにスカウトされる。太平洋X点にあるサイボーグ研究所では世界中から優秀な外科医や科学者を集めていた。さらにNYウエスト・サイドの不良少年ジェット、同じくアメリカ西部で職探しをしていたインディアンのジェロニモ、生活苦から首吊り自殺を図った中国人の張々湖、東ベルリンから西への亡命を恋人(牝ライオンの着ぐるみ!)と企てたサーカスの動物運搬人ハインリヒ、休暇で帰省する空軍兵の兄を駅まで迎えに行ったパリジャンヌの妹アルヌール、アル中で身を持ち崩した英国役者グレート・ブリテン、アフリカで荷役用の奴隷として空輸される寸前に逃走した黒人ピュンマ‥‥世界各地に派遣された「黒い狩人」たちは実験用の人間狩りを始めた。

    電子頭脳に勝る超能力を有する赤ん坊001、マッハ5のスピードで空を飛ぶジェット002、50km四方の音を聴く耳と千里眼の目を持つ003、全身が武器(右手マシンガン、左手ナイフ)と化した004、鋼鉄の皮膚と百万馬力の怪人005、口から熱線を吐く006、細胞を変化させる変身能力の持ち主007、深海活動専用に造られた008‥‥というように、彼らはサイボーグ戦士に改造されてしまう。そして日本では久里浜少年鑑別所から集団脱走した少年たちの1人、孤児院育ちの混血児・島村ジョー(SUNDAY COMICS版では「村松ジョー」)が第9番目のゼロゼロナンバーとして拉致される。サイボーグ研究所で改造手術を施された009は巨大ロボットや戦車、戦闘機から手荒いテスト(攻撃)を受けるが、009を海辺で出迎えた博士たちの背後で8人のサイボーグ戦士たちが叛乱を起こす。彼らはアイザック・ギルモア博士を「人質」に取って、幽霊島から脱走しようとしたのだ。そもそも、この謀反はギルモア博士が仕組んだ計画だった。

    小型機で秘密基地から脱出した9人のサイボーグ戦士とギルモア博士はX島に隠れる。しかし、見張り用の改造イルカに隠遁場所を追尾・発見されて、陸・海・空を戦艦や潜水艦、戦闘機、戦車などで完全包囲されてしまう。007、008、009の3人は001の指示で敵の潜水艦2艘を奪取してサブマリン101に乗り込み、001が催眠術をかけた乗組員の操縦するサブマリン555を敵に追跡させる。555の行き先は敵の秘密基地だった。101は「黒い幽霊団」(ブラック・ゴースト)の本拠地へ引き返す。「黒イ幽霊団ノ首領ヲ、ソノ参謀タチヲ破壊シ殺ス」(001)ために‥‥。秘密基地への侵入、004が貯蔵室にある核爆弾の安全弁を外して、時限装置をつける。009が黒いドクロ・マスクの首領と対決する。「黒い幽霊団」の本拠地を島ごと爆破したサイボーグ戦士たちは日本へ、ギルモア博士の親友コズミ博士の家に身を寄せる。しかし、平穏な日々は長く続かなかった。「黒い幽霊団」の放った刺客たちが次々とサイボーグ戦士に闘いを挑んで来るのだから。

    プラスとマイナスの電気を放電する双子サイボーグ兄弟0010、6本足の巨大黒クモ0011、洋館全体が彼女の躰になっている「人食い屋敷」0012、東京の街を破壊する巨大ロボットを脳波で操縦する唖の少年0013‥‥009が救けた少女を公園のブランコに退避させて、神社の境内で0013と対決する場面は大友克洋の「童夢」のラスト・バトル、超能力少女と老人の最終決戦を想わせなくもない。「オーロラ作戦」(SUNDAY COMICS版では「新ナチス」)は「黒い幽霊団」ではなく、ナチスの残党(ネオ・ナチス)の企んだ事件。ギルモア博士が旧友ドルフィン教授の住む横浜の家を訪れていた時、突然見知らぬ3人の男たちに襲われて教授が拉致されてしまう。東京のミッションスクールに通う娘シンシアをコズミ博士の別荘へ保護することになるが、009の運転する車に同乗して彼女が学校の寮へ身の回りの荷物を取りに行く途中、新ナチス一味に襲われる。

    004と007の提案で、故意にシンシアを新ナチスに攫わさせて、3人が車で追跡する。大型ジェット機に乗り込んだ新ナチスとシンシア、009、004、007の3人は遥か彼方の南極へ向かう。新ナチが娘を誘拐したのはドルフィン教授から超音波兵器MM(マッドマシン)の肝心要の1%(奪った研究ノートには記入されていなかった)を聞き出すことだった。3人のサイボーグ戦士はドルフィン父娘を救出して大型輸送機で脱出しようとするが、敵の砲撃で片翼を奪われて不時着陸。追っ手の戦闘機を004の右手マシンガンが撃墜するも、完成したMMの超音波放射に倒れる009たち‥‥。ドルフィン教授が「誘導兵器──すべての戦闘用機械の機能を狂わせるMMを造る気になった」のは第二次大戦中にナチスのV1号ロケット爆弾の攻撃で片足を失って顔に大火傷を負った妻、娘を産んだ直後に自殺した亡き妻への愛情と戦闘兵器への憎悪だった。「パパも機械を憎んでいたのね!」と言う娘シンシアの言葉がジョーたち、サイボーグ戦士(半機械人間)の胸に突き刺さる。

                        *

    SUNDAY COMICS(第2巻)は「新ナチス」の次に「深海の漂流者」を収録しているが、石ノ森章太郎萬画大全集「サイボーグ009 3」は「オーロラ作戦」と「放浪の始まり」(全4頁)の後に「高い城の男」「真空戦争」「新型爆弾 「雷電」」の3篇が挿まれている。首相や社長の娘や孫など要人の子供たち10人がロケットのようなものを背負った男たちに誘拐され、日本政府は10億円の身代金を要求される。首謀者は身代金を届ける場所に指定された富士山頂の古城に潜むマッド・サイエンティスト(超能力者)だった「高い城の男」。日本へ向かう旅客機が撃墜される。機上のヤマザキ博士の命を狙った犯行だった。「黒い幽霊団」のロボット工学部門で働いていた博士はミサイル基地衛星を打ち上げる計画を知り、完成したアンドロイドJQと共に逃亡を企てたのだった。008たちは偵察イルカを捕獲して、衛星打ち上げ基地・奇岩島の場所を聞き出す。004が基地の火薬庫を爆破し、ロケットに潜入した009たちが衛星基地を、JQが自爆して月基地を破壊する「真空戦争」。

    「新型爆弾 「雷電」」は上成五郎博士の乗った旅客機が撃墜されるという「真空戦争」と同じオープニングで、博士の風貌もヤマザキ博士に瓜二つ。博士の孫娘エリカちゃんがロケットを背負った男たちに攫われるというシチュエーションも「高い城の男」と同じ。博士の発明した兵器が「雷電」という違いはあるものの、偵察イルカを生け捕りにして秘密基地の場所を吐かせるエピソードも含めて良く似たストーリになっている。「真空戦争」や「高い城の男」と全く同じページやカットの流用まである。「新型爆弾 「雷電」」が前2篇を再構成した作品になったのは「少年キング」ではなく「別冊少年マガジン」に掲載されたことも大きく関係しているのだろう。「高い城の男」の中で007が子供に永久変身したキャラで描かれているのはアニメ版との整合性だと思われるが、40年後に初めて読む読者は混乱するかもしれない(「真空戦争」では元の中年役者グレート・ブリテンの姿に戻っている)。この3篇がSUNDAY COMICS版からカットされた理由も分かるような気がする。

    サイボーグ戦士とギルモア博士はコズミ博士に別れを告げて日本を後にする。三たび偵察イルカによって発見されたサブマリン101は敵の潜水艦から水中ミサイル攻撃を受けて深海へ逃れるが、それは「黒い幽霊団」の思うツボだった。巨大タコの足に搦みつかれて操縦不能に陥った101‥‥「レバーペーストαを注入して細胞を異常発育させ、生物を巨大化させる」ドレスラー博士(分子生物学者)の生涯を賭けた、増え続ける人類の食料確保のための研究成果だった。水中生物を自由に操るBT電波、水中用のマイクロTVカメラをつけたデビル・レイ(イトマキエイ)、誘導ミサイルを装備したトラザメ・ミサイルなど‥‥「黒い幽霊団」の新兵器も登場する。インドシナ半島へ向かう101は途中で原始怪獣プレシオザウルスに遭遇し、発光クラゲの大群に襲われて原子力潜水艦の動力を吸い取られてしまうが、目を覚ました001の観念動力(テレキネス)によって危機から脱出する。

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    サブマリン101でインドシナ半島へ渡ったサイボーグ戦士たち。009、007、004の3人は政府軍とベトコン(民族解放軍)の戦闘を目撃する。政府軍の戦車を一網打尽にする黒い万能タンク、ブラック・モンスターを操縦するサイボーグマン‥‥。政府軍をアメリカがバックアップしていたように、ベトコンの背後では「黒い幽霊団」が暗躍していたのだ。ベトコンにブラック・モンスターを無償で提供するサイボーグマン。ベトコン兵の仕掛けた罠にかかって発見されたジョーたちは捕虜となってサイボーグマンに近づく。政府軍の空爆によってベトコン兵が殲滅され、ブラック・モンスターを操るサイボーグマン8号と009が対決する。ジョーたちはベトコンのスパイと疑われて捕まった村の娘を救うが、新型戦車の奇襲に遭い、再び捕まってしまう。3人の戦士と少女の死刑執行が始まろうとした刹那、1人のサイボーグマンが味方を裏切ってジョーたちを救ける。「黒い幽霊団」に攫われ、ベトナム戦闘用兵器実験要員に改造されたサイボーグマン11号は妹ランが行方を探していた兄だった。

    裏切り者の兄を始末した新兵器コプラーズ・アームがジョーたちに襲いかかる。さらにコプラーズ・アームと合体した飛行艇F・コプラーズ22に空からレーザー光線で攻撃されるが、間一髪、006の空けた穴に落ちて九死に一生を得る。002は空中戦でF・コプラーズ22を撃ち落とした代償として左脚を失う。ベトコン兵に見つかったジョーたち一行は老隊長に案内された地下の隠れ家で「黒い幽霊団」と戦って来た経緯を話す。009が容態の悪化した002をギルモア博士の許へ連れて行く。トラに変身した007が挙動不審の副隊長ゴジェムの後を尾ける。009や003が危惧した通り、ゴジェムは「黒い幽霊団」の手下だった。トラに化けた007が襲いかかり、ゴジェムに成り変わって滝の裏のアジトへ侵入するが、サイボーグマンに見破られて捕まり、逆に囮にされてしまう。コプラーズ・アームに追撃されて、006の掘る地下へ逃げ込んだ003と004たちも追い詰められていた。ブラック・モンスターやF・コプラーズ22などの最新兵器を操るサイボーグマンとゼロゼロナンバーサイボーグの最終決戦の火蓋が切られる。

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    オリュンポスの山。羊飼いの少年の前に現われた人頭馬身の怪物が黒羊を殺して奪い去る。ケンタウロスDはウラノス博士が造ったミュートス・サイボーグの仲間だった。彼らに「黒い幽霊団」からの命令が下る。サイボーグ戦士たちに送った挑戦状!‥‥ゼロゼロナンバーサイボーグとミュートス・サイボーグがエーゲ海の火山島マグマで対決することになったのだ。「甲賀忍法帖」を嚆矢とする「七人の影法師」や「地上最大のロボット」など、特殊能力を持った者同士が敵対して戦うという60年代当時に流行った対戦バトル形式が「サイボーグ009」にも採用されたわけである。ウラノス博士は正々堂々と闘うことを潔しとするが、ガイア博士はケンタウロスDにサイボーグ戦士の基地を破壊するように命じるなど狡賢いところがあり、2人は対立している。海底トンネルを抜けてマグマ島に偵察隊として上陸した009、003、007の3人は早くもミュートス・サイボーグと対決する。

    009は頭から角を生やしたパンを捕らえ、007はゴム製の躰を持つカバ男との戦いで勝利する。ゾウに乗った黒豹男アキレスと009の闘いで、003を人質に取ったアキレスは優位に立つが、加速装置の付いた右足の踵をパンに噛みつかれ、バランスを崩して自滅する。長い鼻がマシンガンになったゾウも009が仕留める。カバ男に変身した007とパンの捕虜となった003が敵のドーム基地内へ入る。009は変幻自在を木馬を操るヘレナと戦う。ドーム内に潜入したカバ男はウラノス博士に007だと見破られてしまうが(このパターンが多いなぁ)、フェアプレイを信条とする博士に見逃される。躰から3000度の高熱、掌から6000度の熱波、指先から8000度のレーザー光線を出すアポロンに加速装置の他に、どのような能力を持っているのかと問われた009は「勇気だけだ!」という名台詞を吐く。アポロンのレーザー・ビームに肩と胸を射抜かれた009は崖から海中に墜ちる。

    瀕死の009を救ったのはアポロンの姉ヘレナだった。ガイア博士にバレて捕虜となった007たち。ヘレナは負傷した009をサブマリン101へ搬送するが、巨大ロボットのアトラスが潜水艦を襲う。パワーアップした005の怪力も004のミサイル攻撃も全く歯が立たないアトラスをヘレナ自らが「人質」になって引き上げさせる。ウラノス博士が電磁牢のスイッチを切って003と007を逃がす。ガイア博士に疑われたウラノス博士を救出するために007は引き返す。003とパンは地下水路で恐竜に襲われ、再びケンタウロスDに捕まってしまう。サブマリン101内では長い眠りから目覚めた001が「死んだ」009を甦生させ、アトラスの捨て身の攻撃を精神移動(テレポーテーション)で躱す。同じように恐竜に襲われた007とウラノス博士は脱出に成功する。003を人質に取ったガイア博士率いるミュートス・サイボーグとゼロゼロナンバーサイボーグの最終決戦の最中に大地震が起こり、火山が大噴火して島全体が消滅してしまう‥‥「その後のサイボーグたちの運命を知るものは誰もいない」。

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    • 「石ノ森シリーズ」の第10弾は「ゼロゼロナイン」です^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006)をテクストに使い、「SUNDAY COMICS」(秋田書店 1966)を参照しました
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    サイボーグ 009 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-4

    サイボーグ 009 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-4

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/02/22
    • メディア:コミック
    • 目次:死の商人 / サイボーグ研究所 / 黒い狩人 / 00ナンバーはモルモット / 009誕生 / 叛乱 / 10000対10の戦斗 / 脱出・そしてふたたび


    サイボーグ 009 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-5

    サイボーグ 009 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-5

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/02/22
    • メディア:コミック
    • 目次:暗殺者たち / 人食い屋敷 / 0013


    サイボーグ 009 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-6

    サイボーグ 009 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-6

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/02/22
    • メディア:コミック
    • 目次:オーロラ作戦 / 放浪の始まり / 高い城の男 / 真空戦争 / 新型爆弾 「雷電」 / 深海の放浪者


    サイボーグ 009 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-4

    サイボーグ 009 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-4

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:プロローグ / 泥と血 / サイボーグマン / モグラと月 / 夜明け前 / 黄金のライオン / まぼろしの犬


    サイボーグ 009 5 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-5

    サイボーグ 009 5 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-5

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:プロローグ / オリュンポス山の神々 / 海底トンネル / アキレスのかかと / ヘレナとアポロン / アトラス襲来 / 終章

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    コメント 2

    トミー。

    労作ですね !
    お疲れ様です。

    石ノ森章太郎萬画大全集は持って居ないので表紙を見られるだけでも嬉しいです。
    又サンコミックスを読み直そうかしら。
    by トミー。 (2012-11-17 20:46) 

    sknys

    トミー。さん、コメントありがとう。
    「あらすじ」を書くだけでも結構長くなっちゃう。
    「地下帝国ヨミ編」までの予定でしたが、字数も時間もオーヴァー^^;

    石ノ森章太郎萬画全集は持っていないので、某区立図書館から借りました。
    挿入部分がないだけ、サンコミックスの方が読み易いと思います。
    by sknys (2012-11-18 00:33) 

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