サイボーグ 009ノ3 [c o m i c]
石森 章太郎 「サイボーグ009 "その世界" のこれから──」
小笠原・北硫黄島で巨大なドーナツ状のビルを発見した探検隊が怪人たちに抹殺され、島に近づいた調査船がスカイ・ハット(空飛ぶ円盤)に攻撃される。ギルモア科学研究所から脱走した少女を尾行する009と004。少女がアジトに駆け戻ると、ベッドの上で横たわる両腕のない青年(F-501)を3人の男たちが取り囲んでいた。兄は裏切り者として処刑され、妹(F-502)と3人組は片腕を取り戻すべく再び「張々湖」へ向かう。009たちと謎の3人組の闘いで明らかになった彼らの正体。破れたマスクの下から現われた容貌は人間とは思えない奇怪な姿だった。1人が自爆する隙に2人は逃走するクルマから出現した円盤に乗って夜空に消える。後に残された少女リナが語った衝撃の真実!‥‥私たちが009たちの子孫であること。2222年の未来からタイム・マシンに乗って来た未来人であること。移民計画(プログラムE)のための準備工作員であること。
19XX年5月、第3次世界大戦が勃発して地球上の生物の2/3が死滅する。様相の一変した地球の生存競争から脱落した人類は核戦争前の世界へ脱出(エクソダス)しようと計画した。小笠原・北硫黄島に上陸したサイボーグ・ナンバー(009、006、007)はスカイ・ハットに攻撃され、時間砲によって過去〜未来の核戦争を体験する。捕虜となった3人は司令官と移民計画について「問答」する。ギルモア邸に届いた少女リナと009たちの捕虜交換‥‥しかし、スカイ・ハットが009や立会人のフランソワーズ・アルヌール(003)だけでなく、リナや司令官までをも上空から攻撃する。司令官、ハインリヒ(004)とジェット(002)がスカイ・ハットを撃ち落とす。009がスカイ・ハットをドーナツ・ビルに激突させて侵入路を開く。基地内に乗り込んだ司令官が裏切り者たちを倒す。009との最終対決の直前、部下が「タイム・ワープ超周期化」の成功を報せる。未来人は移民時点を変更して超過去、100万年の彼方へ移住して人類の祖先となるのだ。ドーナツ・ビルが回転して過去へタイム・ワープする。ジョーとフランソワーズの2人が司令官の遠い先祖だったというオチを残して。
超音波遮断装置を耳につけて村に入ったジョーとハインリヒは古城の跳ね橋が下りて1人の女性が出て来るのを目撃する。再び村人を襲う騎士の前に四角い箱を頭に被った謎の一団が現われる。手負いの者をまでも殺そうとする冷酷な騎士に004が闘いを挑む。逃げ帰る騎士の先回りをした009が跳ね橋を渡って古城内に潜入する。騎士と美女、母シモーヌと娘ロミイの会話を盗み聞きした009は母娘が魔女裁判によって火刑に処された一族の末裔だったと知る。村人から石を投げられて右眼を潰された少女の復讐だったのだ。009との闘いに勝ち目のないことを悟ったシモーヌは超音波音楽のヴォリームを上げて村人たちを一網打尽にしようとするが、009に撃たれて片腕を失う。古城を爆破して自爆しようとする母親を娘が撃ち、自らも命を絶つ。爆発して炎上する城から脱出した009はハインリヒから、生き残りから聞いたという話を聞かされる。シモーヌ・ローレライがA国の軍事研究所所属の物理学者だったこと、超音波兵器の研究をしていて半年前に行方不明になったこと、A国がFBIに捜査を命じたことを。
古代科学による海底都市の平和も大規模な海底火山の胎動や水圧から都市を守っている「大きなアブク」を支えるエネルギー枯渇の危機に直面していた。その災害から逃れる方法として考えついたのが地上への復帰だった。建造中の巨大海底戦艦を奪って脱出しようとするビイと捕虜として働かされている地上人たちを救出しようとする009‥‥意見の対立した2人は別行動を取ることになる。捕虜収容所へ急ぐ009とロビンは海底人たちに追われて海中に落ち、巨大な魚竜やネズミと呼ばれている海獣に襲われる。床下の通気口から王宮に忍び込んだ2人は王妃を人質にする。009との約束を破ったビイは奪った海底戦艦で脱出しようとするが、制御妨害電波に阻まれてドーム都市内に逆戻りしてしまう。ミサイル攻撃で制御室を破壊しようとするビイ。王妃と捕虜たちの交換トレードを王に要求する009。拘束首輪を外されて解放された捕虜たちが海底戦艦に乗り込む。しかし、009が制御室を破壊した直後にビイは海底戦艦を出航させてしまう。海底火山の爆発が起こるが、海底戦艦は海上に無事浮上する。捕虜たち全員を艦外に出して抹殺しようとするビイの前に009が立ちはだかる。009は海底火山の爆発する前に海底人たちの船に乗り、海底戦艦を追って来たのだった。
三たび009たちの目の前に出現した「天使」たち!‥‥人類を創ったという造物主=「神」の仕業だった。彼らは「収穫」に来た人間の出来の悪さに落胆して、始めからやり直すことにしたと告げる。「天使」たちの去った後に1人の猿人が現われる。猿人に化けた007によると、猿人たちは「天使」に変身させられた村人で、最初に殺された1人は変身が中途半端だったからだという。ギルモア邸に戻ったゼロゼロ・ナンバーたちは互いに意見を交わす。「天使の姿をした悪魔だ!!」(ブリテン)、「造物主は我々を生かすのも殺すのも彼等の自由なのだ」(ジェット)、「オレたちには意思も生きる権利もある」(ブリテン)、「人間を殺し、世界を征服しようとした黒い幽霊団と変わりがない。あの異星人とも戦うべきなのだ!」(ハインリヒ)、「004と同じ意見だ‥‥戦うべきだと思う」(ジョー)‥‥。地球に怪飛行物体(UFO)が飛来して、中国奥地や英南極基地、アフリカなどの辺境で「天使」たちが人間を狩り始める。ギルモア邸では001がサイボーグ戦士たちの躰に「新しい力」を授けようとしていた。
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バラバラになったジグソーパズルの断片、長編映画の未編集フィルムを見せられているような感じ‥‥イメージが氾濫すればストーリは混乱する。「ジュン」というよりも「リュウの道」のイメージやテーマに重なる部分も少なくない。しかも絵は「サイボーグ009」シリーズの中で最も美しいフォルムである。休載の理由を「読者の支持が得られなかった ── 平たく言えば人気が出なかった」から。《長い物語の中から順序も部分も考えずに、ゆきあたりバッタリに思い出して描いていたんですから ── 。何年かの後、1冊(あるいは2冊)の単行本にまとめるとちゃんとした物語になっている》と、作者は「あとがき」で弁明しているけれど。雑誌連載時には未完のまま作者が逝ってしまう事態になろうとは夢にも思っていなかったので、「休載」よりもジョーとフランソワーズのベッド・シーンの方がショッキングな出来事だった。2人の愛は成就したのかしら、彼女は子供を産むのかしら?‥‥なぁんて妄想したりして‥‥。「エピローグ」のラスト・カットでは謎めいたUFOの大群が冬の寒村の上空を埋め尽くしている。
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- 「石ノ森シリーズ」の第12弾は「サイボーグ・ゼロゼロナイン3」です^^
- 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006-7)をテクストに使いました
- 「神々との闘い編」は〈COMを読む(1 9 7 0)〉から再録(一部改稿)しました
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サイボーグ 009 9 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-1
- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2006/11/30
- メディア:コミック
- 目次:中東編(承前)モーゼ / 罠 / 地獄の怪物 / 絶対零度 / 移民編 交通事故 / かわいい鬼 / 小笠原・北硫黄島 / 追跡 / プログラムE / 時間砲 / 問答
サイボーグ 009 10 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-2
- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2006/11/30
- メディア:コミック
- 目次:移民編(承前)捕虜交換 / ローレライの歌編 ローレライの歌 / 魔女 / さらばローレライ / 海の底編 原子力潜水艦エンゼルフィッシュ号ゆくえ不明!/ ジョーの危機 / 海底都市 / 古代科学 / イラストコレクション
サイボーグ 009 11 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-1
- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2007/02/28
- メディア:コミック
- 目次:海の底編(承前)魚竜 / 海底戦艦 / 海の上で‥‥ / 天使編 長いいくさの日々へのプロローグ / 神 天より降りたまいき / われらヒツジのむれ / 敵か?みかたか?/ 生きるべきか 死すべきか それが問題だ / 万物に生きる意志あり 生きる権利あり 死を選ぶ自由あり / ...
サイボーグ 009 12 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-2
- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2007/02/28
- メディア:コミック
- 目次:神々との闘い編 / サイボーグ009対三億円犯人 /「たの幼」テレビきょく・サイボーグ009 / 巻末資料
2013-05-11 00:23
コメント(2)
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初めまして。「009」関連の検索により参りました。
「009」の復讐関連のエピソードは、他には「復讐鬼」前後編(旧ゼロ第22・23話)や「我が心の吸血鬼」(新ゼロ第18話)がありますが、どれも救われない話ですね。
いずれの悲劇も「人間関係の希薄さ」が生み出していると思いますので、一番の解決方法はもっと人同士で触れ合い、お互いを知る事により責任の取れない行動を控える事だと思うのです。
でも、どの話の復讐者も一方的な被害者意識を加害者に当たる人々に向けるだけで、相手の立場に立って考えるという事が全くできていない。常に自分本位。まあ、この辺も他者とのコミュニケーションの希薄さが伺えますけど・・・。
ジョーが言うように「憎しみはすべてを滅ぼす」まさにその通りだと思います。現に「ローレライ」では、アルさんと同僚の方が巻き込まれかけ「吸血鬼」「復讐鬼」では、いずれもフランが巻き込まれています。見境の無い復讐心は、何の関係も無い人達まで巻き込みかねないのです。結論として「復讐からは何も生まれない」・・・ですね。
by A-chan (2015-08-24 01:07)
A-chanさん、初コメントありがとう。
「復讐」は009だけではなく、
石ノ森作品に通底するダーク・テーマの1つだと思います。
たとえば、009ノ1の「古城よりの招待状」は
「そして誰もいなくなった」風の復讐ミステリ、
「復讐」は文字通りミレーヌに兄を殺された双子の弟のリヴェンジ‥‥。
しかし、最も根源的な復讐潭はスカルマン(神楽竜生)かもしれません。
父母を殺害した祖父(千里虎月)への復讐という救いようのないテーマ。
親子や兄弟姉妹が「悪しき血縁」で結ばれているという
石ノ森ワールドの血腥い暗渠。
何の関係もない他人が復讐に巻き込まれるのは理不尽ですが、
その対象が身内だったら?‥‥と考えると戦慄します。
by sknys (2015-08-28 20:24)