アニマル・ファーム [c o m i c]
ジョージ・オーウェル 『動物農場』
60年代後半から70年代初頭の「少年マガジン」は「巨人の星」と「あしたのジョー」という2枚看板の長期連載で読者年齢も上がり、今では考えられないほどに青年誌化していた。サキ原作の短篇を7人のマンガ家(真崎・守、松本零士、辰巳ヨシヒロ、上村一夫、川本コオなど)が競作するシリーズ 「異色作家サキ短編」(1970)、6人のマンガ家(上村一夫、川本コオ、真崎・守、旭丘光志、辰巳ヨシヒロ、松本零士)による「短篇オリジナル・シリーズ」(1970)、永井豪、川本コオ、石森章太郎、山上たつひこ、松本零士の5人がSF小説(原作)とオリジナルの2作品で競うシリーズ「未来がまつ落し穴」(1971)など、意欲的な企画が続いた。ジョージ・オーウェルの風刺寓話「動物農場」(1945)を原作とする「アニマル・ファーム」(1970)も、この潮流に乗るもので、同誌に4週(8月23日第35~9月13日第38号)連載された。石森章太郎は小松左京のホラー短篇「くだんのはは」(1968)も劇画化(別冊少年マガジン 1970)している。
- 二本足で立つものはすべて敵である。
- 四本足で歩くもの もしくは翼や尻尾をもつものは すべて味方である。
- いかなる動物も衣服を身につけるべからず。
- いかなる動物もベッドに寝るべからず。
- いかなる動物もアルコールを飲むべからず。
- いかなる動物も他の動物を殺すべからず。
- すべての動物は平等である。
*
「動物農場」は「動物共和国」として独立した。ブタたちが牝牛の乳を搾り、動物たちが牧草の刈り入れをする。酒場「Red Lion」では農場から追い出されたジョウンズが農夫仲間に愚痴を零していた。果樹園の裏手にある小さな放牧場を引退した同志の養老施設にしたいと思うスノウボールとリクリエーション・センターにしたいと考えるナポレオンとで意見が対立する。乳牛から搾ったミルクと果樹園から穫ったリンゴをブタたちが食しているという批判にフィクサーは牛乳とリンゴは頭脳労働者たるブタの健康保持に欠かせない特質を含んでいると詭弁を弄す。ブタが責務を遂行出来なくなった場合にはジョウンズが戻って来ると脅す。武器を持ったジョウンズたちが農場を襲撃するが、スノウボールの作戦によって「ウシ小屋の戦役」に勝利した。「風車建設計画案」に反対するナポレオンは手下のイヌたちに襲わせて、提案者のスノウボールを追放する。日曜日の集会廃止、同志ナポレオンへの忠誠と服従、そして風車の建設‥‥ナポレオンが提唱していた風車の設計図をスノウボールが盗み出したのだとフィクサーが言葉巧みに動物たちを言い包める。
ナポレオンは干し草一山と小麦の収穫の一部、鶏卵週400個を売り渡す契約を二本足の人間と結ぶ。風車の建設費用や農場経営のために現金が必要になったからだ。ところが暴風雨が吹き荒れ、稲妻が光る嵐の夜に建設中の風車が崩壊してしまう。ナポレオンはスノウボールの仕業に違いないと断じ(最近発見された秘密文書によって、スノウボールはジョウンズと通じていたことが判明したとフィクサーが説明する)、動物たちに風車の再建を促す。農場主ピンチフィールドとの取り引きを止め、より高い値で収穫物を引き取ってくれるフォックスウッドに乗り換える。悪辣な交渉術で大金を得たブタたちはビールを飲み、ナポレオンは牝ブタを侍らせベッドを共にする。ブタたちの酒池肉林を窓の外から目撃したネコは動物たちに密告する。「七戒」に違反しているのではないかと疑った動物たちが翌朝見に行くと、いつの間にか書き変えられていた。ネコはナポレオンのイヌたちに咬み殺される。彼女はスノウボールのスパイだったとフィクサーが動物たちに明かす。
- 二本足で立つものの一部はすべて敵である。
- 四本足で歩くもの もしくは翼をもつもののほとんどは味方である。
- いかなる動物も必要以上の衣服を身につけるべからず。
- いかなる動物もシーツをかけたベッドに寝るべからず。
- いかなる動物も過度にアルコールを飲むべからず。
- いかなる動物も他の善良な動物を殺すべからず。
- すべての動物は平等である。しかしある動物は他の動物より平等である。
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取り引きを止められた腹いせにピンチフィールドたちが動物農場を襲撃して、完成間近の風車を爆破した。怒り狂った牡馬ボクサーが人間たちを蹴散らして追い払う。度重なる重労働や人間たちとの戦いで疲弊したボクサーは納屋で静養していた。見舞いに来た老ロバのベンジャミンに、一連の「スノウボール犯行説」を疑っていると話す。総統・同志ナポレオンの命令で、動物たち全員が中庭に招集される。手下のイヌたちがブタ、ヒツジ、ニワトリ、ヤギ、ガチョウなどの「裏切り者たち」を咬み殺す。あろうことかボクサーにも襲いかかった。イヌたちを一蹴したものの、ボクサーは過労から生じた病で倒れてしまう。そしてフィクサーの手配した箱馬車で病院へ運ばれる。馬車の後部には「アルフレッド・シモンズ馬匹屠殺にかわ製造業 / ウイリントン皮革・骨粉商」と書かれていた。農主フォックスウッドとビールを飲み交わすブタたち。背広を着込んで、葉巻を咥えたナポレオンの顔は黒ブタから醜悪な人間へと変貌して行くのだった。
*
- 「石ノ森章太郎萬画大全集 12-19」(角川書店 2008)をテクストに使いました
- 石ノ森版のネコは殺されたけれど、原作では粛清されずに生き延びたようです^^;
- コミック版では農主ピルキントンとフレデリックがフォックスウッドとピンチフィールド(農場名)に、同志スクウィーラーもフィクサーという名前に変えられています
- 「すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりもっと平等である」(新訳版)
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アニマル・ファーム ── 石ノ森章太郎萬画大全集 12-19
- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2008/11/28
- メディア:コミック
- 目次:大演説 / 反乱 / 動物共和国 / 反撃 / ウシ小屋戦役 / 風車計画案 / 春 そして夏 / 秋 そして冬 / 生と死と‥‥/ 世はなべて こともなし / 扉絵コレクション
- 著者:石ノ森 章太郎
- 出版社:筑摩書房
- 発売日:2018/11/09
- メディア:文庫(ちくま文庫)
- 目次:アニマル・ファーム(原作 ジョージ・オーウェル)/ くだんのはは(原作 小松 左京)/ カラーン・コローン / 解説・中条 省平
- 著者:ジョージ・オーウェル(George Orwell)/ 山形 浩生(訳)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2017/01/07
- メディア:文庫(ハヤカワepi文庫)
- 目次:動物農場 / 報道の自由:『動物農場』序文案 /『動物農場』ウクライナ語版への序文 / 訳者あとがき
2019-08-01 00:18
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