２級天使ピント：s k n y s - s y n k s：SSブログ

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２級天使ピント　[c o m i c] [編集]

二級天使は、十カ月、『漫画少年』に連載されたが、各回のエピソードはすべて独立したもので、二級天使という狂言まわしを通じて、石森氏は自分のほとばしりでる空想をまったくアトランダムに描きつらねていったものだといえるであろう。だが、その本質をなすものは、あくまでも人間愛にみちたメルヘンであって、たとえば第二話の人食い虎の話をみよう。虎に食い殺された両親の仇を討とうとひとりの少年が、虎に強烈な復讐心を燃えたたせる。だが、その虎は、じつは二年前に、かわいい二匹の子どもを狩猟隊に殺されたうらみで人を襲ったのだということを思いうかべて悩むという、二つの悲劇をめぐる不条理を描いたドラマで、最近の劇画タッチで描けば、かなりシリアスな物語となったであろう。それを石森氏は最後に二級天使を出すことによって、天使に「天帝さま　片目の虎を天国におめしくださいますよう」といわせている。一種の甘さかもしれないが、その甘さが、石森氏を悲劇を悲劇として終わらせないためのヒューマニズム溢れたドンデン返しとして用意したところに物語の特徴があったのであった。
手塚治虫「石森章太郎の作家的姿勢｢二級天使｣」

■ 二級天使（漫画少年 1955）石森章太郎

｢二級天使｣（THE ADVENTURE OF SECOND CLASS ANGEL Pint）は石森章太郎が高校時代に描いたデビュー作である。天界のピントは羽の生えていない二級天使。一級天使になるには下界に降りて、１年間に10以上の良いことするという試験に合格しなければならない。天使の持っている「神通力」は１つの善行に対して１度しか使えない‥‥という特殊な設定以上に、実験精神の溢れる凝った連載マンガになっている。ピントが舞い降りた国は日本、インド、英国、スペイン（？）、アフリカ‥‥と各国に渡り、ジャンルはファンタジーやSF、作画もコメディ・タッチから克明な実写、手法もサイレント（吹き出しなし）や４コマなど、多種多彩な試みが連作短篇（4〜10頁）の中に詰まっている。その日に書き終わった最後のコマにサイン（S. ONOTERA）と日付（1955. 1. 1など）が入っているのも微笑ましい。出版社（学童社）が倒産して、８話で休載してしまったが、10年後の｢新２級天使｣（1965）、｢二級天使25年めのPARTⅡ｣（1980）で、四半世紀後に完結することになる。

財布を擦った少年を交番に連れて行って、拾ったことにする「第１回目の良いこと」。インド・シオニー高原奥地の山村ハナンに出没する人食い虎に両親と姉を殺された少年バンゴの助太刀をする「片目の虎」。夜中の12時から５時まで、人形や玩具たちが動き出す‥‥病気の一人娘ジュデイのために、大金持ちの父親ニニンチが作った人形王国に買われて来たメキシコ生まれのジプシー人形ナナパットと仲フランス人形ベビーを攫おうとした大ネズミとの戦いで片脚を失った兵隊モンティが窓から飛び出して、下水道〜テムズ河〜ドーヴァ海峡を冒険する｢一本足の兵隊｣（前・中・後篇）。子供の頃に木から落ちて頭を打った知恵遅れの青年セルバンテスの母子家庭に赤ん坊を贈る「ドン・キホーテ」。娘の反対や母犬の抵抗に逆らって、雨の日に２匹の子犬を捨てに行く父親を描いた無科白の「雨」。誕生日にフランス人形を母親から買ってもらえず、ロンドンの裏町で泣いている少女メリーの願いを叶える「文無し横丁の奇蹟」。パパの完成したタイムマシンに乗った瀕死の父子に過去旅行の夢を見させる「時間を支配する人間」。｢ニジの花｣を探す黒人少年「マックロくん冒険記」。

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▢ 新２級天使（なかよし 1965）石森章太郎

一級天使になる試験に合格するためにべピントは下界に降りる。デビュー作「二級天使」との違いは善行を３回すること（神通力は３回使える）。銭湯の煙突に舞い降りたピントは汚れた服を洋品店のショーウィンドーにある洋服と取り替える。道端の物貰いに５円玉の山を恵み、ケチなおじさんが年始の挨拶に来た姉弟に大枚のお年玉を振舞う。天使の力を２回も使ってしまったピントは母親から小遣いをケチられ、ヘビの玩具で悪戯した弟を泣かせて叱られた「世界一不幸な少女」ヤスコと出合う。お金持ちの一人娘に生まれたかったという少女の願いを叶えようとしたピントは大邸宅の窓辺で兄弟姉妹のいる賑やかな家庭を羨む少女とヤスコの人格を入れ替える。ピアノのレッスンで出鱈目の騒音を奏でるヤスコ、弟が見せたカエルの玩具で気絶する深窓の少女。主治医が病床のヤスコを診察し、お抱えの医師たちが大挙して少女のベッドに駆けつける‥‥天使長が２人の少女を元に戻すが、ヤスコは天使に感謝する。大目玉を食らったピントは「怪我の功名」で、片羽の１.５級天使となる。

▢ 二級天使25年めのPARTⅡ（ヤングマガジン 1980）石森章太郎

「漫画家生活25周年記念特別読み切り」と題された完結篇は意外にもサタンとエンジェル、小悪魔と小天使の対決だった。ピントは暴走族女のバイクに撥ねられるが、天使なので死なない。暴走娘に気に入られたピントは10回目の善行として非行少女を更生させようとする。ところがマコは少年を悪い子すれば10回目の悪行になって、一級悪魔になれるかも目論む悪魔の娘‥‥ピントと真逆の二級悪魔だった。臆病な舎弟プルートーを手始めに９人を悪の道へ引きずり込んでいた。マコとピントは出合ったブスとババアに悪魔と天使の力を同時に使う。作者曰く「チャンポン酒で悪酔いしたみたいに‥‥ハチャメチャになってしまう訳なんです!!」。２人は｢10回の "善行" をしましたと言って天国へ還る｣｢10回の "悪行" をしましたと言って地獄へ還る｣ことにするが、天使長にも魔王にも見透かされていた。罰として未来永劫そのままの姿で、天国と地獄の境界で暮すことになった２人は同棲することに？

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▢ くちびるに歌を心にマンガを（別冊明星 1964）石森章太郎

「くちびるに歌を心にマンガを」というタイトルの短篇（12頁）の中に４つの異なるスタイルのマンガ‥‥メイン・ストーリ｢２級天使｣、１コマ｢学園広場の仲間たち｣、２コマ｢ミス・アイスとミスター・ラブオ｣、４コマ｢おそ勉くん｣を詰め込んだオムニバス番外篇。天界にあるパラダイス学園の卒業試験日。２級天使たちは下界に降りて、誰か１人の人間を幸福にしなければならない。そのために使える "天使の力" は１回だけ、２回以上使うとニ度と天界に戻れない。試験にパスすれば１級天使となって羽がもらえる。地上に降りたピントは民家の屋根から窓を覗く。金庫から現金を盗み出す兄・健二を見咎める妹・麻里。妹を平手で殴って家を出る健二。兄は妹の秘密をネタに不良学生２人に強請られていた。端金に満足出来ずに大金を得ようとして、３人は健二の家に押し込む。その１人が兄だと妹に見破られる。不良学生は本当の娘ではないことをバラすが、その事実を麻里（異母妹）は既に知っていた。麻里に刃物を向けた不良を止めようとした健二は逆に相手を刺傷してしまう‥‥。

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