「ウンマー、ウンマー、ウンマー‥‥」という、ラジオ(AFN)から流れて来るフレーズが耳から離れない。ドージャ・キャット(Doja Cat)は 「あなたの都合の良い女にしてよ」(Let me be your woman)、「あなた好みの女になるわ」(I can be your woman)と歌う。奥村チヨの昭和歌謡〈恋の奴隷〉みたいな「良妻賢母」願望だが、後半のラップで反転攻勢に転じる。女官(Guetcha)からの進言を聞いた女王(Teyana Taylor)は王位を奪還しようと企む男どもの酒宴に乗り込む。猫女神バステトを崇めた古代エジプトのクレオパトラやスフィンクスのような煌びやかなコスチューム、挑発的なアマゾネス・ダンスに圧倒される。誇り高いラップが千本の矢のように胸を突き刺さす。サッカー・マミーの〈Your Dog〉やビリー・アイリッシュの〈Your Power〉に通底する強烈なメッセージだが、21世紀のアメリカで、このような歌がヒットすることにレイシズムやミソロジーの根深さを感じざるを得ない。女は「子供を産む機械」、同性婚は「生産性がない」などと政治家が公然と放言して憚らない島国では〈Woman〉のような叛逆ソングが生まれる気概もないのでしょうか。
2014年英ロンドンで結成されたノヴァ・ツインズ(Nova Twins)はAmy Love(ベース)とGeorgia South(ヴォーカル、ギター)による女性デュオ。彼女たちは自らを「歪んだマイクを通して叫び、捩れたベース・リフを弾く2人の混血娘」と称している。2ndアルバム《Supernova》(Marshall 2022)はラップ・ヒップホップ、ノイズ、インダストリアル、パンクなど、ライオット・ガルーなミクスチャ・ロックが大爆発。鉄拳、バイオハザード、ウンジャマ・ラミーのギター・バトルみたいなMV〈Choose Your Fighter〉にキュン死。ボーイフレンドを殺害する〈K.M.B.〉。猫撫で声から力強いヴォイスに豹変する〈A Dark Place For Somewhere Beautiful〉、ゼップの〈Kashmir〉のストリングスを髣髴させる〈Enemy〉‥‥ド派手なメイクやビッチ風コスチューム、チェアリーディングのボンボンみたいなツイン・テールなどのヴィジュアルも超インパクト。2022年上半期最大の衝撃波かもしれません。全11曲・31分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。
Songs: Woman / Naked / Payday / Get Into It (Yuh) / Need To Know / I Don’t Do Drugs / Love To Dream / You Right / Been Like This / Options / Ain’t Shit / Imagine / Alone / Kiss Me More / You Right (Extended) / Up And Down / Tonight / Ride / Why Why
Songs: Power (Intro) / Antagonist / Cleopatra / K.M.B. / Fire & Ice / Puzzles / A Dark Place For Somewhere Beautiful / Toolbox / Choose Your Fighter / Enemy / Sleep Paralysis
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