SSブログ

スニーズ・ラブ 76 [s k n y s - l a b]

  • ♭ ネコは見ていた(2021-05-01)
  • 植物学専攻の大学生・仁木雄太郎と音大生悦子(私)兄妹が箱崎医院に間借り下宿することになる。入院患者の失踪、院長夫人の母親と看護婦の殺害‥‥引っ越し先の病院で起こった連続殺人事件を仁木兄妹が解明する。仁木悦子の『猫は知っていた』(ポプラ社 2010)は1957年に発表されたミステリ長編で、作中にラジオ、電話、テープレコーダは登場するが、TV、携帯電話、ヴォイスレコーダは存在しない。防空壕、太陽灯、張り物(和服の糸を解いて洗濯し、糊付して縫い直す作業)、炭屋、練炭火鉢、国電、ヨジーム・チンキなど、若い読者には説明しないと意味不明の言葉も出て来る。現在とは異なる生活様式や環境には隔世の感があるものの、中・高校生でも読めるジュヴィナイル(Y・A)風の作品で、事件のトリ ックや犯人の動機には普遍性がある。院長の娘(園児)の可愛がっている黒猫チミも不本意ながら重要な役割を担っているけれど、三毛猫ホームズのようにネコが事件を「解決」するわけではない。第3回江戸川乱歩賞受賞作。

  • ♭ コロナ籠もり 2(2021-05-08)
  • 本や雑誌は図書館から貸出、音楽(CD)は自腹で購入している。3度目の「緊急事態宣言」発令中はレコード店に行けなかったので、未聴のアルバムを聴いていた。都内の図書館は全館休館していたり、予約資料の貸出と返却だけだったり、時短開館していたり、区によって対応が異なっている。GW中に読んだ本‥‥A.『エミリーの記憶喪失ワンダーランド』(理論社 2010)。B.『少年の名はジルベール』(小学館 2016)。C.『昨日がなければ明日もない』(文藝春秋 2018)。Aは再読。絵本『エミリー・ザ・ストレンジ』(2003)の小説版。Bはケーコタンの自伝。「大泉サロン」 については、『扉はひらく いくたびも』(河出書房新社 2021)よりも詳しく書かれている。Cは杉村三郎シリーズ中短篇 「絶対零度」 「華燭」 「昨日がなければ明日もない」 を収録。中編の 「絶対零度」(178頁)は "黒宮部" というか、久々の「鬼畜」ものだった。「体育会系俺様マッチョ男」 のミソジニーは悍ましいなぁ。

  • ♭ 少女の名はケーコタン(2021-05-15)
  • 『扉はひらく いくたびも』(中央公論新社 2021)は読売新聞朝刊に連載された竹宮惠子へのインタヴュー記事「時代の証言者・マンガで革命を」全27回を大幅(約3倍)に加筆・再構成。半生記『少年の名はジルベール』(小学館 2016)と一部重複する部分もあるが、語り下ろし(聞き手・知野恵子)の方が客観性が高い。1968年少女マンガ家デビュー、1970年徳島大学を中退して上京‥‥『風と木の詩』『地球へ‥』などの作品を生み出す。2000年に京都精華大学芸術学部マンガ学科専任教授に就任、2004年に学長に就任して、2020年に定年退職する。少女マンガ家として30年、大学教師として20年と総括しているけれど、一読者として最も興味を惹かれるのは「大泉サロン」での竹宮恵子と萩尾望都との複雑な関係である。1970年に同居してから半年後に「萩尾さんとなら結婚してもいいと思う」と告白したケーコタンが2年後に同居を解消して、モーさまに「距離を置きたい」と一方的に絶交(それ以来没交渉!)してしまうとは!‥‥竹宮惠子の苦悩は痛いほど分かったので、萩尾望都の『一度きりの大泉の話』(河出書房新社 2021)も読んでみたいと思う。

  • ♭ ネコになりたい?(2021-05-22)
  • 「世はまぎれもない猫ブーム‥‥猫も杓子も東大も」、雑誌もネコだらけ。「猫になりたい」(BRUTUS No.936)は小泉今日子の小福田、松重豊のブン、朝吹真理子の蕨、安彦幸枝のピーニャとタロ、松本零士のミーくん、若山曜子のもんちゃん、ますむらひろしのモン、コマ、ハテナ、岩合光昭のタマとトモなどが総登場。亡くなった先代ネコたちの思い出も語られる。ブルータス版ねことば 「猫たちよ! 彼奴等に捧げる言葉」、綴じ込みマンガ 「猫とのくらしあるある」、付録 「特製ふわもこシール」。2月恒例の 「NyAERA」(AERA増刊 2021)も負けていない。ヤマザキマリのインタビュー、「猫との出会いが人生を変えていた」 「岩合光昭さんの特別カメラレッスン」 「感染症から猫を守る」 「猫のごはん最強バイブル」、特別付録「沖昌之さんニャレンダー」。驚いたのは岩合さんが「うぬぼれ逆光」で撮ることを勧めていること(逆光で撮っても良いの?‥‥目からウロコです)。2誌の表紙を見て、2匹共に岩合光昭さんの撮ったネコ(ベーコンと玉三郎)だと分かる読者は「ニャン度」が高い。

  • ♭ 驚異的な自然の概観(2021-05-29)
  • 《An Overview On Phenomenal Nature》(Ba Da Bing 2021)はNYブルックリン生まれの女性SSWカッサンドラ・ジェンキンス(Cassandra Jenkins)の2ndアルバム。2019年夏、Purple Mountainsのツアーに参加する予定だったが、その直前にDavid Berman (Silver Jews)が自殺してしまう。プロデューサ兼マルチ奏者Josh Kaufmanのスタジオで録音されたという楽曲には孤独と混乱、悲嘆、無力感などを乗り越えた喪失と癒しがテーマになっている。彼女は 「優美で万華鏡のような」〈Hard Drive〉で4人の人物と会話を交わす。メットブロイヤー博物館の女性警備員、カリフォルニア・イン(Inn of the Seventh Ray)の簿記係、自動車教習所のダリル、そして友人ローウェルの誕生日パーティで出会った宝石の目を持つ(gemstone eyes)女性超能力者ペリー。彼女が3つ数えて肩を叩く。「1、2、3」 ‥‥目を閉じて3つ数えて、深呼吸をする。PVで土の中に埋めたミニチュアカー(赤いピックアップトラック)は過去のジェンキンス自身なのかもしれない。7分に及ぶインスト・アンビエント〈The Ramble〉を含む全7曲・32分。見開き紙ジャケ仕様。

                        *
    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの1カ月分(2021-05)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
                        *


    猫は知っていた 仁木兄妹の事件簿

    猫は知っていた 仁木兄妹の事件簿

    • 著者:仁木 悦子
    • 出版社:ポプラ社
    • 発売日:2010/03/08
    • メディア:文庫(ポプラ文庫ピュアフル)
    • 目次:プロローグ / 七月四日 土曜日 / 七月五日 日曜日 / 七月六日 月曜日 / 七月七日 火曜日 / 七月八日 水曜日 / 七月九日 木曜日 / エピローグ / 大矢博子 "仁木兄妹の世界" を読み解くキーワード


    昨日がなければ明日もない

    昨日がなければ明日もない

    • 著者:宮部 みゆき
    • 出版社:文藝春秋
    • 発売日:2018/11/29
    • メディア:単行本
    • 目次:絶対零度 / 華燭 / 昨日がなければ明日もない


    扉はひらく いくたびも 時代の証言者

    扉はひらく いくたびも 時代の証言者

    • 著者:竹宮 惠子
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日:2021/03/20
    • メディア:単行本
    • 目次:刊行によせて / 戦後マンガの歴史と歩む / 子ども時代 / 漫画家への道 / 大泉サロン / 風と木の詩 地球へ‥ / 新たの境地を求めて / 大学、未来へ / あとがき

    少年の名はジルベール

    少年の名はジルベール

    • 著者:竹宮 惠子
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2019/11/06
    • メディア: 文庫(小学館文庫)
    • 目次:缶詰旅館 / 一人暮らし / 少年愛の美学 / 大泉サロン / 少女たちの革命 / 不満と焦り / 男の子、女の子 / ライフワーク / 悲観 / ヨーロッパ旅行 / 契約更新 / プロデューサーの仕事 / 新担当編集者 / 読者アンケート / 大学でマンガを教えるということ / 文庫刊行によせて / 解説 サンキュータツオ


    BRUTUS 2021年 4月15日号 No.936

    BRUTUS 2021年 4月15日号 No.936

    • 特集:猫になりたい
    • 出版社:マガジンハウス
    • 発売日:2021/04/01
    • メディア:雑誌
    • 目次:小泉さんちの黒猫 / 猫がいてよかった / 世界のにゃんこスター私と猫 / 集まって暮らす / 猫と仕事場 / 猫たちよ! 彼奴等に捧げる言葉 / 銀河鉄道の夜 / ニュースな夜 / 一緒に年をとろう / 路上観察学2021 / 特選猫グッズ / 生き切った猫 / 教えて! 猫博士 / 猫の福利厚生 ウィルビーイング / 猫ドッグ / 保護猫 / 法律相談 / 猫、キュンじゃった


    NyAERA  2021(AERA増刊)

    NyAERA 2021(AERA増刊)

    • 巻頭特集:猫との出会いが人生を変えていた
    • 出版社:朝日新聞出版
    • 発売日:2021/02/17
    • メディア:雑誌
    • 目次:インタビュー(ヤマザキマリ)/ 現代のニャン像 / 時代を読む / 岩合光昭さんの特別カメラレッスン / 猫風邪から猫コロナ、新型コロナウイルスまで / 健康長寿は食からつくる / 特別付録(沖 昌之さんニャレンダー)


    An Overview On Phenomenal Nature

    An Overview On Phenomenal Nature

    • Artist: Cassandra Jenkins
    • Label: Ba Da Bing
    • Date: 2021/03/12
    • Media: Audio CD
    • Songs: Michelangelo / New Bikini / Hard Drive / Crosshairs / Ambiguous Norway / Hailey / The Ramble

    コメント(0) 

    コメント 0

    コメントを書く

    お名前:
    URL:
    コメント:
    画像認証:
    下の画像に表示されている文字を入力してください。