♭ ネコが教えるアート史(2019-09-07)古代エジプト→ビザンティン→ルネサンス→ロココ→印象派→後期印象派→点描画法→象徴主義→フォーヴィズム→キュビズム→ダダイズム→デ・ステイル→マジックリアリズム→ア ール・デコ→シュルレアリスム→象徴表現主義→コブラ→ポップアート→ミニマリズム→グラフティ→ヤング・ブリティッシュ・アーティスト‥‥
『21匹のネコがさっくり教えるアート史』(すばる舎 2019)はバステト神からダミアン・ハーストまで、21の芸術運動をネコが自らモデルとなって解説する美術入門書。モンドリアンの提唱した新造形主義(ネオ・プラスティシズム)の「デ・ステイル」、一般的にはシュルレアリスムと看做されるフリーダ ・カーロの「マジックリアリズム」、短命に終わった美術集団「コブラ」(CoBrA)など、新しい視点もある。ニア・グールド
(Nia Gould)のネコ・イラストは、それぞれのスタイル(技法)で描いていても、スーザン・ハーバートやシュー・ヤマモトの「ネコ名画」のように絵まで似せていないので、「オリジナル」を知らないと面白さが半減してしまう。
♭ 夢の遠近法(2019-09-14)『夢の遠近法』(筑摩書房 2014)は
『山尾悠子作品集成』(国書刊行会 2000)の廉価版として出版された初期作品自選集(2010)に「パラス・アテネ」「遠近法・補遺」を追加した増補文庫版。「夢の棲む街」と「遠近法」を抱き合せたようなタイトルは澁澤龍彦の『夢の宇宙誌』(1964)や『記憶の遠近法』(1978)とも響き合う。〈夢喰い虫〉のバクが円形劇場の崩壊「夢の棲む街」。大学生の叡里が従姉の娘・真赭(ますほ)と夏の京都の宵闇を散策する「月蝕」。水蛇と銀眼が月の門を目差す「ムーンゲイト」、〈腸詰宇宙〉をボルヘス流に描いた「遠近法」、糸を吐いて繭籠る種族が刺客に滅ぼされる「パラス・アテネ」(連作「破壊王」の1作目)、シノワズリ(中国趣味)のショート・ショート5篇から成る「童話・支那風小夜曲集」、風に乗って浮游する侏儒たちを素描した「透明族に関するエスキス」、分身(かれ)を射殺した「私」がエレヴェータ内に閉じ込められる「私はその男にハンザ街で出会った」‥‥など全11篇を収録。巻末の「自作解説」もメチャ面白い。
♭ 接合された少女(2019-09-21)「表現の不自由展」(あいちトリエンナーレ2019)の中止で思い出した作品がある。
「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」(森美術館 2008)のカタログに載っていたチャップマン兄弟(Jake & Dinos Chapman)の〈昇華されないリビドーモデルとしての接合子の増殖〉
(Zygotic Acceleration, Biogenetic De-sublimated Libidinal Model (Enlarged x 1000) 1995)である。気になって調べてみたら、初の個展(1996)のために出品しようとしたが、税関の検閲で英国へ返還されてしまったという。「マネキン少女たち」は展示中止どころか、入国さえ出来なかったのだ。
〈猫のオインゴ〉で紹介した《Never For Ever》(1980)の
「CDカヴァ」が日本ではトリミングされていたことも初めて知った。少女のスカートの中から出て来る魑魅魍魎を猥褻だと思ったのでしょうか?‥‥ピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボスは良くても、ニック・プライスは自主検閲する人間の思考回路の方が魑魅魍魎よりも不気味ではないかしら?
♭ 少女と小鳥たち(2019-09-28)『小鳥たち』(スチュディオ・パラボリカ 2019)は幻想作家と人形作家によるコラボ本。山尾悠子の歌集
『角砂糖の日 新装版』(LIBRAIRIE6 2016)の挟み込み付録品だった掌篇「小鳥たち」、
『夜想#中川多理──物語の中の少女』(2018)に掲載された続編「小鳥たち、その春の廃園の」、書き下ろし「小鳥たちの葬送」‥‥〈小鳥に変身する城館勤めの侍女たち〉のイメージを気に入った中川多理が〈物語の中の少女〉シリーズの1つとして作品化した。3篇の小説と人形たち(写真30点)が織りなす可憐で妖しい幻想譚。「小鳥たちの葬送」に登場する黒衣の人形たちは伊フィレンツェ、ピサ、チンクエテッレで撮影されている。「鳥に変身する少女」は『飛ぶ孔雀』(文藝春秋 2018)にも登場する作者お気に入りのイメージ。『小鳥たち』も「鳥少女」の変奏曲であろうか。今どき珍しい薄桃色の糸綴じ製本で、奥付にはミルキィ・イソベ(発行人)や今野裕一(編集)の名前もある。
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21匹のネコがさっくり教えるアート史
- 著者:ニア・グールド(Nia Gould)/ 上杉 隼人(訳)
- 出版社:すばる舎
- 発売日:2019/06/16
- メディア:単行本
- 目次:古代エジプト / ビザンティン / ルネサンス / ロココ / 印象派 / 後期印象派 / 点描画法 / 象徴主義 / フォーヴィズム / キュビズム / ダダイズム / デ・ステイル / マジックリアリズム / アール・デコ / シュルレアリスム / 象徴表現主義 / コブラ / ポップアート / ミニマリズム / グラフティ / ヤング・ブリティッシュ・アーティスト
山尾悠子作品集成
- 著者:山尾 悠子
- 出版社:国書刊行会
- 発売日: 2000/06/01
- メディア:単行本
- 目次:夢の棲む街 / 月蝕 / ムーンゲイト / 堕天使 / 遠近法 / シメールの領地 / ファンタジア領 / 耶路庭国異聞 / 街の人名簿 / 巨人 / 触 / スターストーン / 黒金 / 童話・支那風小夜曲集 / 透明族に関するエスキス / 私はその男にハンザ街で出会った / 遠近法・補遺 / 破壊王(パラス・アテネ / 火焔円 / 夜半楽 / 繭「饗宴」抄)/ 支那の禽 / 秋宵 / 菊 / ...
魔物語
- アーティスト: ケイト・ブッシュ
- レーベル:東芝EMI
- 発売日: 1987/02/25
- メディア: CD
- 曲目: バブーシュカ / ディーリアス(夏の歌)/ 死者たち / わずかな真実 / エジプト / ウエディング・リスト / バイオリン / 少年の口づけ / 木の精は夜の香り / 夢見る兵士 / 呼吸
小鳥たち
- 著者:山尾 悠子 / 中川 多理
- 出版社:ステュディオ・パラボリカ
- 発売日: 2019/07/29
- メディア:単行本
- 目次:小鳥たち/ 小鳥たち、その春の廃園の / 小鳥たち / 小鳥たちの葬送 / 中川多理さんと小鳥たちのこと──あとがきに代えて・山尾 悠子 / あとがき・中川 多理
角砂糖の日(新装版)
- 著者:山尾 悠子
- 挿画:合田 佐和子 / まりの・るうにい / 山下 陽子
- 出版社:LIBRAIRIE6
- 発売日:2016/12/15
- メディア:単行本(歌集)
- 内容: 1982年に深夜叢書社より刊行された山尾悠子による唯一の歌集『角砂糖の日』を2016年12月LIBRAIRIE6より新装版として復刊致しました!新装版特典として書き下し掌編小説『小鳥たち』を収録
夜想#中川多理──物語の中の少女
- 著者:中川 多理
- 出版社:ステュディオ・パラボリカ
- 発売日::2018/05/31
- メディア: 単行本
- 目次:人狼の少女「カファルド」ボナ・ド・マンディアルグ / ヴァニーナ「海の百合」アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ / マルスリーヌ・カイン「仔羊の血」アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ / エレンディラ「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」ガルシア・マルケス / アルビノの少女「氷」アンナ・カヴァン / 皆川博子 そこは、わたしの人形の / 山尾悠子 小鳥たち、その春の廃園の / 森島章人 指紋...
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