♭ ヘレーネのゴッホ(2021-12-04)小春日和、久しぶりに美術展に行こうとすると、コロナ対策なのか予め日時を決めないと鑑賞出来ない「予約制」というシステムになっていた。秋晴れで体調も良い休日に散歩がてらに美術館めぐりという気楽さが奪われてしまった。当日券の情報もSNSなどで発信されているが、美術館の窓口に行かないと入場出来るかどうか分からない。無駄足になることを懼れて早目に外出したものの、
「ゴッホ展」(東京都美術館)は3時間待ちだった。暖かい陽差しを浴びながら公園で、肌寒くなってからは館内ロビーで読書に勤しむ。予約時間10分前に一列に並んで入場する。ペラペラのレシートに記されたQRコードを翳すだけで、鑑賞券というものは存在しないらしい(チケット半券を蒐めるという愉しみも奪われた)。映像コーナーで浜辺美波(アンバサダー)が本展の概要を紹介していたが、会場内は絵に描いたような3密状態だった。この混雑では 「予約制・入場制限」 した意味がないのでは?‥‥ヘレーネが蒐集したゴッホの油彩画28点、素描・版画20点、ルノワールやルドンなどの絵画18点も展示、ファン・ゴッホ美術館から〈黄色い家〉(1888)を含む4点も特別出品されている。
♭ 秘密の花園 2(2021-12-11)『ポーの一族 秘密の花園 2』(小学館 2021)は「ランプトンは語る」に繋がるエピソードの完結篇。アーサー・クエントン卿の館に身を寄せた2人。1889年、アランは温室の東屋で眠り続け、エドガーは絵(ランプトン)のモデルとなる。画家アーサーの執事マルコ、初恋の女性パトリシアと兄パトリック、元婚約者ダイアナと弟ダニー、その妻ディジー、パトリシアの夫オリバー、子供たちポールとポーラ兄妹、画家クラウデヒア ・ルフラン、看護助手ケイトリン、シルバー、クロエ、早世したドミニクの母ドロシー、父グローブの娘セシリア、ジョン・オービンなど‥‥登場人物が入り乱れるが、主要テーマはアーサーとパトリシアの悲恋で、結核で死去した後にバンパネラとなって甦生するアーサーの物語が描かれる。巻末にマルコ視点の後日譚 「満月の夜」(4頁)を併録。読者の気懸かりはアーサーではなく、灰と化してしまったアランの再生‥‥「ユニコーン」 の続篇を待ち望んでいるはず。萩尾望都が年頭のインタヴューで宣言したアランの復活は2022年になりそうです。
♭ ハンス・ベルメール(2021-12-18)『死、欲望、人形』(国書刊行会 2021)はハンス・ベルメール(1902-1975)の評伝。全10章中8章をピーター・ウェブ、「ベルメールとシュルレアリスム」 「イマージュの解剖学」 の2章をロバート・ショートが執筆している。ベルメールは少女の人体をバラバラ殺人風に切断・結合した球体関節人形で知られるが、人形に人工着色した写真やエロティックなイメ ージを透視画風に重ねた繊細なドローイングやエッチングの作品の方が数多い。男根や女性器を露出させた少女の挑発的で赤裸々なポーズはアンドレ・ブルトンを鼻白まらせるものだ った。ベルメールの希求したのは窃視症的なポルノグラフィではなく、その向こうに隠されている未知なる領域への探求だった。スーザン・ソンタグが 「ポルノ的な想像力」(1974)で提言しているように、《われわれにいかなる感情を呼び覚まそうとも、エロティカは人間的な状態にまつわる確かな真実への接近を可能にする》のだ。カラー口絵36点(16頁)、図版303点、巻末の略年譜、索引、掲載図版リスト、参考文献なども豊富で充実している。
♭ ハニオ日記 1(2021-12-25)『ハニオ日記 I 2016-2017』(扶桑社 2021)は2016年10月10日から始まる。2016年春 、石田ゆり子は生後約1週間の仔猫兄弟を3匹保護した。ハニオ(茶トラ)とタビ(白ソックス)と、後に坂谷由夏に引き取られたメイ。ハニタビ兄弟は雪(ゴールデンレトリバー)とビスク先輩(チンチラゴールデン)に迎え入れられ、石田邸で一緒に暮らすことになる。おかーさん(ゆり子)のミルクまみれの日々。2017年正月、ビスク先輩がライオンカットされて戻って来たが、ハニオは新入りの「りすさん」だと思っていて気づかない。1月25日タビちゃんが風邪で入院。3月25日、16年間一緒に暮らしたビスクが永眠する。1年前に保護された日から逆算して5月1日にハニタビ兄弟は1歳の誕生日を迎えた。10月23日、「階段の手すりの下の隙間から滑り落ちた」 ハニオが左足の太腿を骨折してしまう。「ハニオ日記」 の主な書き手は、おかーさん(ユ)とハニオ(ハ)で、時々タビ(タ)とビスク(ビ)が混じる。石田ゆり子は飼いネコたちの思いを想像して、一人称ネコ視点で日記を綴っている。
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- 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの1カ月分(2021-12)です^^;
- リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
- 12月12日 「ゴッホ展」(東京都美術館)の最終日。午前7時40分現在で、当日券の販売終了。最後尾に並んでいる人が 「最終入場枠」(16:30~17:00)ならば、約9時間も待つことになります。会場内は3密‥‥「予約制・入場制限」 が裏目が出ています
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ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
- 会場:東京都美術館
- 会期:2021/09/18~12/12
- 開室時間:9:30~17:30(金曜日は9:30~20:00)
- 休室日:月曜日、9/21(9/20、11/8、11/22、11/29は開室)
- 概要:フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の芸術に魅了され、その世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)。ヘレーネは、画家がまだ評価の途上にあった1908年からおよそ20年で、鉄鉱業と海運業で財をなした夫アントンとともに90点を超える油彩画と約180点の素描・版画を収集しました。ファン・ゴッ...
ポーの一族 秘密の花園 2
- 著者:萩尾 望都
- 出版社:小学館
- 発売日: 2021/11/19
- メディア:コミック(フラワーコミックススペシャル)
- 内容:秘密の花園の章、完結。新たな旅の始まり。エドガーは目覚めたアランを連れてアーサーの館を離れ、アーサーはますます病重く死を迎えようとしていた。そんなおり父と再婚相手との娘・セスが現れアーサーの看病をすることに‥‥? アーサーの過去、パトリシアとの秘めた初恋の行方、そして目覚めたアラン。全てが絡み合い運命が1つの結末をつむぐ
死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール
- 著者:ピーター・ウェブ(Peter Webb)/ ロバート・ショート(Robert Short)/ 相馬 俊樹(訳)
- 出版社:国書刊行会
- 発売日:2021/08/22
- メディア:単行本
- 目次:ドイツ 1902-1933 / 人形 1933-1934 / ベルメールとシュルレアリスム 1933- 1938 / 人形の遊び 1934-1938 / パリ 1938-1939 / 南仏 1939-1945 / イマージュの解剖学 1939-1949 / 南仏 1945-1949 / パリ 1949-1955 / パリ 1955-1975
ハニオ日記 I 2016-2017
- 著者:石田 ゆり子
- 出版社:扶桑社
- 発売日: 2021/05/31
- メディア:単行本(ソフトカヴァ)
- 内容:女優石田ゆり子が5年間に渡って点描し続けた日々の記録。彼女と動物たちの「なんでもない」毎日。「日々は続いていく。悲しみも喜びも飲み込んで。そして今日も朝日は昇るのです」この本で著者が伝えたかったことは、この言葉に尽きる‥‥
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