♭ さらば芳林堂書店(2016-03-05)芳林堂書店(池袋本店)は学生時代に良く通っていた。細長くて奥行きのある、縦長の店舗だったが、客にも書店員の立ち居振る舞いにも活気があった。澁澤龍彦の新刊が出ると馳せ参じた。最初に買ったのは
『洞窟の偶像』(青土社 1977)だったかな?‥‥「本の雑誌」のバックナンバーも池袋本店1階奥の棚で見つけた。椎名誠の巻頭エッセイ「さらば国分寺書店のオババ」の掲載された5号は薄くてペラペラだった。ワクワクした。西口に丸井が出店してから雲行きが怪しくなって来た。丸井へ行く客層は本なんか買わないのではないかと危惧していたら、立教大生も本を読まなくなったのか、いつの間にか閉店してしまった。芳林堂が営業していないのならば、わざわざ西口まで足を伸ばす理由がない。東口にはリブロやジュンク堂がある。本を買わなくなったのは経済的というよりも、居住スペースによるところが少なくない。日々増殖する単行本や文庫、雑誌‥‥捨てるために買うくらいならば、初めから買わない方が理に適っている。新刊書は図書館から借りて読むことにしている。
♭ ラファエル前派の夢(2016-03-12)「英国の夢 ラファエル前派展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)に行って来た。已むを得ない事情で最終日になってしまったけれど、適度の込み具合だったのでストレスなく鑑賞出来た。リヴァプール国立美術館(3館)の所蔵作品65点を「ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」「古代世界を描いた画家たち」「戸外の風景」「19世紀後半の象徴主義者たち」の4つのセクシションで構成。最初に展示されているジョン・エヴァレット・ミレイの8点が素晴しい。美術評論家ティモシー・ヒルトンに「英国史上最も才能に恵まれた画家を28歳の若さで失った」と揶揄されたミレイはラファエル前派を代表する画家である。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティやエドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスだけでなく、ケイト・グリーナウェイやジョージ・フレデリック・ワッツの作品もある。エレノア・フォーテスク=ブリックデールの
「男装の乙女ヘレン」に魅了された。ブラウンとロビンソンの2匹のネコたちにも出会えたにゃん。
♭ ペテロの葬列(2016-03-19)『ペテロの葬列』(集英社 2013)は入院中に読み終えた1冊。バスジャック事件の人質となった乗客たち。今多コンツェルン・グループ広報室勤務の杉村三郎(私)と広報誌「あおぞら」の編集長・園田瑛子、坂本啓、前野メイ、田中雄一郎、迫田とよ子、運転手の柴野和子。蜿蜒とバスジャック事件が続くのかと危惧していたら、鉈でブッタ斬ったような突然の終焉!‥‥〈音響閃光手榴弾〉、特殊部隊の突入、バスジャック犯の自死。解放された7人の人質たちに、犯人の約束通り「慰謝料」が届く。豊田商事事件紛いの「悪徳マルチ商法」と「強欲」が人生を狂わせる。被害者=加害者という二律背反のテーマは『火車』や『ソロモンの偽証』にも色濃く滲む。宮部みゆきは後半、力業で1つ1つ捩じ伏せて行く。2度目のバスジャック事件、杉村三郎の退社、離婚‥‥身勝手な妻・菜穂子さんだけは好きになれませんが、この種のお嬢様が「上流階級」には実在するのでしょうね?
♭ 負の方程式(2016-03-26)「負の方程式」は文庫版
『ソロモンの偽証』(新潮社 2014)第6巻
「第III部 法廷(下)」に収録された書き下ろし中編。精華学院中等部3年D組で「体験キャンプ事件」が起きた。学舎の教室を大規模な自然災害が発生した際の避難所に見立てて、生徒たちが寝袋で一泊する〈避難所生活体験キャンプ〉。3年D組の7人の中から犠牲者を1人選べと担任の英語教師・火野岳志教諭に命じられる。犠牲者(死者)に選ばれたキャンプリーダーの下山洋平は「避難所」から逃走してしまう。ところが火野教諭は、この発言を全面否定する。教師か、生徒たちか?‥‥どちらがが偽証している。懲戒解雇された火野岳志は法的措置に訴えて戦う。火野岳志の弁護士として20年後に登場する藤野涼子。キャンプに参加した秋吉翔太の父親・達彦から依頼を承けた私立探偵・杉村三郎(私)が真相解明の調査に乗り出す。『ペテロの葬列』の主人公と『ソロモンの偽証』のヒロインの初共演です。
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さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
- 出版社:クリーク・アンド・リバー社
- 発売日:2014/05/29
- メディア:Kindle版
- 目次:国鉄はいまわしらの眼をまともに見ることができるか / 日本の“本官”たちはいったい何をしておるのか / 死ね! そこいら中の制服関係者の皆様 / うに寿司のジャーナリズム的摂取方法 / 夕陽にむかい背を丸め痛恨のチーズケーキ960円の春 / 文庫版のためのあとがき / 対談 椎名誠×目黒考二 / 電子書籍版あとがき / 椎名誠の人生年表
英国の夢 ラファエル前派展
- 画家:ジョン・エヴァレット・ミレイ / フォード・マドックス・ブラウン / アーサー・ヒューズ / ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ / エドワード・ジョン・ポインター / ...
- 会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
- 会期:2015/12/22~2016/03/06
- メディア:絵画
- 構成:ヴィクトリア朝のロマン主義者たち / 古代世界を描いた画家たち / 戸外の風景 / 19世紀後半の象徴主義者たち
ペテロの葬列
- 著者:宮部 みゆき
- 出版社:集英社
- 発売日:2013/12/20
- メディア:単行本
- 目次:杉村三郎を巡る人物相関図 / プロローグ / ペテロの葬列 / エピローグ
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