ネコ・ログ #68 [c a t a l o g]
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金井 美恵子 「心地よい場所」
#604│エミ│ノラ猫 ── 食事中にゃん(RIP)
O**親水公園の茶トラが亡くなったことを近隣住人から知らされた。それから数週間後、最期を看取った女性から詳細を聞くことが出来た。茶トラは腎臓が悪かった。身体が弱って倒れているのに、石畳の通路を往来する人たちは誰も救けようとはしなかったと怒り心頭。〇〇さんは口だけだとか、地域ネコたちの世話をしているオバさん仲間でもナワバリ争いというか齟齬や確執があるようで一筋縄では行かない。ヴォランティアたちの情報も共有されていないので、ロンちゃんのように不妊手術を終えているのに耳先カットしていないので、再度捕獲されて病院へ連れ去られるという事態も起こっている。エミちゃんは病院に連れて行って点滴したら直ぐ元気になったけれど、保護された1カ月後に永眠して、A**のペット霊園に納骨されたという。誰にも知られることなく姿を消して死んで行くノラネコたち。ネコおばさんに手厚く介護されて看取られたエミちゃんは幸せだったかもしれない。合掌。
#605│ポニ│地域猫 ── 谷中のネコたち 4
御殿坂、夕やけだんだん、谷中ぎんざ、谷中霊園‥‥谷中には数多くのネコたちが棲息している「猫町」と喧伝されていたが、どこに潜んでいるのか殆どネコたちの姿を見かけない。谷中分室(谷中防災コミュニティセンター3階)から帰る途中、谷中霊園で1匹のネコを見つけた。顔のマズルと胸元、前足の白い(白ソックス)の黒縞ネコだった。初対面なので警戒しているが、慌てて逃げ去ることはない。一定の距離を保ちつつ、ネコの後を尾いて行く。墓石から墓石へ跳び乗って周囲を見渡したり、墓石の間に身を潜ませて休んだり、自由気儘のネコ散歩。約30分くらい追い回って、ネコと一緒に墓巡りをした。ポニちゃんにとっては迷惑な一時だったかしれないけれど、浅生ハルミンのネコ・エッセイのタイトル 「私は猫ストーカー」(中央公論新社 2013)になったような複雑な気分である。
#606│フク│飼い猫? ── S**寺のネコ
S**寺の前に1匹の小猫がいた。熱心に身繕いをしていて、近寄っても動く気配がない。まるで参拝者を待っていて、境内を案内するかのような佇まいである。写真には映っていないけれど、ネコの後ろ奥には赤い山門も見える。境内に入って参拝したことはないけれど、東京都K区観光ホームページの「解説」には《西福寺は六阿弥陀第一番の寺として知られています。江戸の人々は春秋のお彼岸に六阿弥陀詣を盛んに行いました。 花見と紅葉の時期を楽しむ目的もあったようです。 区内には西福寺のほか、無量寺が第三、與楽寺が第四番阿弥陀とされています。境内には「よさこい節」に登場するお坊さんがかんざしをあげたという土佐のお馬さんの供養塔があります。また明治維新の際に起こった上野戦争で敗走中に王子付近で戦死した彰義隊士6名を供養したことが記されている六士銘記の碑があります。山門内には昭和46年のサイパン慰霊祭の折、参謀本部跡より収集された血染めの土砂と遺骨を納めた 「彩帆観音」が祀られています》とある。
#607│シミ│ノラ猫 ── 駅前公園のネコ
金井美恵子は子供の頃、母親が作ってくれた「おそろいとおさがり」の服から、Aさん家のおばあさんが 「はぎれ細工」(パッチワーク)のように縫い集めて作った手縫いのシャツや上っ張り、姉や兄のおさがり(同じ服)を妹や弟が着ることになることから、「着たきり雀」 という言葉を思い出し、ドイツの現代美術作家ヨーゼフ・ボイスが消費文化を批判した「ウサギは服を着がえたりしない」という有名な発言を引いて《皮肉なことに日本でのボイスの大きな展覧会は、消費文化の砦──池袋駅のパルコ、西武百貨店、無印良品と続く建物のちょ っとした「砦」のようであった──西武百貨店内の美術館で開かれたのであった》と綴る。80年代後半のバブル期から「失われた30年」とも称されることになる長期のデフレ、コロナ禍やウクライナ戦争による急激な円安とインフレ‥‥昨年末、そごう・西武も海外ファンドに売却されて、池袋西武百貨店としての存続が危ぶまれているが、P'パルコ裏の駅前公園に棲息するネコたちは人間たちが右往左往する乱高下経済社会とは無縁に日々暮らしている。
#608│ユメ│ノラ猫 ── にゃんこ忍法「夢猫衆」
T**図書館の手前にある公園に三毛ネコがいた。入口の前で人待ち顔。どうやら夕食時らしい。瞑想しているような真剣な眼差しは、これから必殺忍法を繰り出すネコ忍者のようでもある。伊賀対甲賀14人の忍者と江戸対尾張14人の剣士が入り乱れて、八代将軍・徳川吉宗の元愛妾7人を争奪する『忍者月影抄』(講談社 1962)には作者・山田風太郎お気に入りの忍法がクライマックスに登場する。忍法「夢若衆」は夢の中の殺人、「鏡地獄」 は鏡の中の迷宮。夢に出て来る忍者に毎夜殺され続ける、あるいは鏡の反世界に永遠に閉じ込められる秘術。「夢」 と「鏡」の対決は忍法というよりは「アリスの冒険」のようなファンタジーに近い。夢から醒めて、異界から現実世界へ還って来るのがファンタジーなのだが、悪夢と魔鏡の中で永劫の死闘を続ける風太郎忍法帖の2人の忍者、壇宗綱と樺伯典は二度と現実世界に戻って来れない。にゃんこ忍法「夢猫衆」の夢はヴィクトリア朝時代の猫画家ルイス・ウ ェインが描いたような愉しい「お茶会」なのかもしれない。
#609│ドミノ│飼い猫 ── とても良いネコだった(RIP)
K**図書館への車道左の路地に茶トラネコがいた。近づいて手招きすると、自ら近寄って来るし、屈んで毛並みを撫でても嫌がらない。出会う度に写真を撮っていた顔見知りのネコだった。ところが数年前から姿を見なくなって、その路地を通る時に気懸りになっていた。先日、通りかかると民家の前で飼い主らしき老人が白黒ネコと日向ぼっこをしていた。室内外で滅多に外に出さず、夜は一緒に寝ているという。見かけなくなった茶トラのことを訊ねると、2年前の夜にクルマに轢かれて亡くなったと話してくれた。運転手は暗闇に紛れた茶トラがいることに気づかなかったらしい。何枚か写真を撮ったことがあるので、今度持って来ますと伝えた。改めて写真を見ると、唐草模様の布に鈴と小判の付いた「猫に小判」やオレンジ色のリングなど、会う度に首輪が変わっていたりする。飼主に可愛がられていたネコと分かって、目頭が熱くなった。
#610│セヴ│飼い猫 ── 猫屋敷のネコ 1
O**図書館へ行く途中、リニューアルされたA**遊園バラ花壇に白茶けたネコがいた。ネコを観察していた少年に「他にネコのいるところは?」と訊くと、東京さくらトラム(都電荒川線)を跨いだ向こうに20匹ものネコたちを飼っている家があるというので案内してもらった。手前の民家に駐車中のクルマの下に1匹のネコがいた。猫屋敷の前で予約したタクシーを待っていた女主人と話す。これからN**の動物病院に、ケージの中の子ネコを連れて行くらしい。先のネコが近づいて来た。背中の毛並みが疎になって赤く変色している。皮膚病なのかと思ったら藪蚊に刺された痕だった。ネコは痒くて堪らず、鋭い爪で手加減なくバリバリ掻いてしまうらしい。夏の名残の爪痕である。セヴちゃんを撮っていると、もう1匹の外ネコが逆方向から現われた。日も暮れて暗くなっていたが、どうにか2匹を撮れた。
#611│アル│飼い猫 ── 猫屋敷のネコ 2
セヴちゃんとは逆方向、猫屋敷前の路地の奥から、もう1匹の外ネコが現われた。アルちゃんの身体に引っ掻き傷らしき痕はない。同じ兄弟姉妹でも藪蚊に血を吸われやすいネコと吸われ難いネコがいるのだろうか。日暮れて暗くなり、黒い瞳が大きくなったことも幸いして可愛らしく撮れた。近隣に住んでいるらしい若い女性が通りかかって、ネコたちと仲睦まじく戯れる。猫屋敷へ案内してくれた少年も帰宅する途中らしき女性もネコ好きのようだ。この地域では有名な「猫屋敷」らしい。暫くすると予約したタクシーが来て、ケージの中の子ネコを連れた女主人が乗り込んで立ち去る。とんだ道草になってしまったが、予期せぬネコたちと(ネコ好きのヒトたちと)の出合いは愉しい。少年と女性と別れて、猫屋敷を後にする。日暮れた都電沿線沿いを歩いて、O**図書館に向かう。
#612│ペタ│飼い猫 ── 切り抜きキャット
macOS(Ventura)にはiPhoneをウェブカメラとして使える 「連係カメラ」(Continuity Camera)や表示中のアプリやウインドウを1クリックで切り替えられる 「ステージマネージャ」(Stage Manager)などの新機能が追加された。「イメージの切り抜き」(Extract an image)で、簡単に画像から背景を透過して、被写体だけを切り抜けるようになった。今までは「Preview」を起動させる必要があったが、画像を右クリック(controlキー+クリック)→「クイックアクション」→「背景を削除」することで、人物や動物だけを瞬時に抜き出せるのだ。シールのように貼り付けたり、他の画像と合成することも簡単になった。試しにペタちゃんの写真から背景を削除して、背景色をグレイに変更してみた(切り抜きキャット)。輪郭の毛先や細いヒゲまでは精確に切り抜けないけれど、ポップなポストカードに早変わり。空白スペースに文字や吹き出しに気の利いたネームを入れたくなっちゃう。
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各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第68集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。今までに600匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第68集の常連ネコはエミ、ドミノ、ペタちゃん。茶トラの2匹が亡くなってしまったのは悲しいけれど、長年撮り続けたネコたちは歳も取るし、事故に遭ったり病気に罹ったりするリスクも高くなるので、避けられないことなのかもしれません。外界への冒険は魅惑的ですが、野外で暮らすノラネコはもちろんのこと、自由気儘に家を出入りする飼いネコも交通事故や猫エイズなどの危険に晒されます。平均寿命も室内飼いの方が外ネコよりも長いという。ネコやヒトは長寿の方が幸せなのかという疑問はさておき、完全室内飼いを提唱している自称パンク作家の町田康よりも、愛猫トラーを放し飼いにしていた金井美恵子・久美子姉妹の方が「真・パンク」だったりして?
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- 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^
- オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました
- 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました
- 「701匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました
- 「東京都北区観光ホームページ」 から引用、「池袋から西武がなくなる──変わりゆく街と客層、百貨店が消える本当のワケ」(ITmedia 2022・12・26)を参照しました
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シロかクロか、どちらにしてもトラ柄ではない たのしい暮しの断片
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- メディア:文庫(河出文庫)
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2023-01-21 00:08
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