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ネコ・ログ #62 [c a t a l o g]

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  • 近所の八百屋で棺にするダンボールをもらい、並びの花屋に寄った。猫が死んだからきれいな花で飾ってあげたい、と言い終わる前に喉が詰まる。顔なじみの店主は、盛りは終わりだから、といろんな花を余分に束ねてくれた。/ まもなく以前の同居人たちが到着した。くまの思い出話をしながら棺の中に一本一本、花をたむける。くまのキリッ賭した表情の写真もプリントして、寺へ向かった。火葬炉に入れる前に、五分間のお別れ時間があるという。鼻先や額を撫でる。肉球や耳の感触を確かめる。平べったくなったお腹に顔をうずめる。くま 、ありがとう。お別れなんだね。一緒にたくさん、楽しかったね。/ 焼いているあいだに境内を散歩すると、風が抜けて気持ちいいところだった。朝、ぼんやりした顔で探したにしては上出来だ。/ 焼場に戻ると、くまが横たわったそのままの姿に骨は整えられていた。担当の青年が、これは背骨、これは尻尾。立派ですねえ、と丁寧に説明してくれる。くまの喉仏は恋人たちが手をつないでダンスをしているようなかたちをしていた。
    安彦 幸枝 『庭猫スンスンと家猫くまの日日』


  • #550│キキ│飼い猫 ── キャテンダー・キャット
    カワセミの写真を撮っている男性に教えてもらったネコ情報。4丁目公園へ行くと数匹のネコたちが屯していた。首輪をしている飼いネコや耳先カットした地域ネコたち、白黒茶三毛と多種多彩で人見知りしない。人懐っこく近寄って来るネコもヒトとの距離をとって間合いを計るネコもいる。キキちゃんは食事中だった‥‥手前の白いトレイに、ネコおばさんが運んで来たキャットフードが盛られていた。カメラを向けると、警戒して公園沿いの物陰に身を隠す。植込みの葉っぱが右目を覆っている。フランス紅茶 JANAT「ネコの日セット」に入っていた卓上カレンダーは良く見ると「CATENDAR 2021」と表記されていた。カレンダー(calendar)の仏語はカランドリエ(calendrier)なのに変なの?‥‥と首を傾げて、頭を柔らかくしたら閃いた。「キャテンダー」(catendar)というネコ駄洒落だったことに。

    #551│サクラ│飼い猫 ── S水製麺所の看板ネコ
    サクラちゃんは染井銀座商店街S水製麺所の看板ネコ。日中だったので、強面(三白眼)風に写っていますが、本来は人懐っこくて可愛いネコちゃんです(後日、改めて撮り直しました)。女店主と少し話す。店の左側に草花の咲く空き地があって、サクラちゃんの遊び場になっている。綺麗な花々を背景にして撮りたいと思うけれど、その前で静止してくれない。S水製麺所からJR駒込駅方面に歩を進めると、右手に染井コミュニティ広場(染井開運稲荷)がある。ここには数匹のネコたちが暮らしている。首輪をしている飼いネコや耳先カットした地域ネコたち‥‥どのネコたちも温和で大人しいので、写真に撮りやすい。染井銀座から霜降銀座商店街を通り抜けると本郷通りに出る。左に曲がると旧古河庭園〜滝野川図書館、横断歩道を渡ると駒込駅、右に迂回すると駒込図書館〜駒込駅(北口)へ行き着く。

    #552│エリナ│地域猫 ── 4丁目公園のネコたち
    4丁目公園は三日月形の小さなスペース。車道という河川の中州のように存在している。真ん中にある横断通路が細長い公園を上下2つに分けている。植込みのある上部にネコたちが屯し、広場になっている下部に子供たちが遊んでいる。通路の石畳で黒ネコを撮った(写真には写っていないが、左耳先がカットされている)。ネコたちに食事を与えていた青年がたち去り際に、「良い写真が撮れましたか?」 と声をかける。その後から自転車に乗ったネコおばさんが来た。公園のネコたちに毎日夕食を運んでいるという。気配を察したのか、どこからともなく近所の女性や男性も集まって来る。ネコ談議に花が咲いたような風情だったが、先日公園を訪れると、無情にも上下2つの鉄門が閉ざされていた。コロナ禍の緊急事態宣言と関係があるのかないのか、「午後5時で閉園」 というプレートが鉄門に掲げられていた。

    #553│ファン│地域猫 ── 4丁目公園のネコたち 2
    「午後5時で閉園」 されてしまった4丁目公園に茶トラがいた。閉園前に振舞われたのだろうか、ちょうど食事中だった。鉄門が無情にも締められてヒトは公園内に入れないけれど、ネコたちは鉄柵の隙間から出入り自由である。囚人のように監獄に幽閉されているわけではない。閉園後にヒトが夕食を差し入れることは可能である。コロナ・ウイルス感染蔓延防止対策なのかどうかは兎も角、公園のネコたちに食事を与えないようにする姑息な処置だったとしても、その効果は殆ど見込めない。夕暮れ時になると数匹のネコたちが三日月形の公園を囲む鉄柵のある塀の上で人待ちげに遠くを眺めている。暫く経ってもネコおばさんが自転車に乗って来る気配がないので諦めたのか、白っぽいネコが車道へ降りて民家の方へ歩いて行く。残りのネコたちは辛抱強く、遠い目をしてネコおばさんが来るのを心待ちにしている。

    #554│イマ│ノラ猫 ── 都電沿線裏のネコ
    都電駅前の民家にネコがいた。首輪をしているので一目で飼いネコと分かる。飼主らしき男性も日向ぼっこしているネコに目を細める。踏み切りを渡ろうとすると手前に数匹の黒ネコが集まっていた。ちょうど食事時らしく、女性がキャットフードを振舞っているところだった。黒い子ネコたちは兄弟姉妹なのだろうか、皆さん良く似ていて見分けが着かない。カメラを向けると注意深く駐車しているクルマの下に身を隠す。見開いた目だけは好奇心で煌めいている。沿線裏の民家の庭に2匹のネコがいた。この家には可愛い三毛ちゃんがいるのだが、なかなかチャンスがなくて撮れない。「飼い猫の三毛を連れて行かないで下さい」 という内容の張り紙が鉄門に掲げられていたこともあった。ダメ元で手招きすると、中庭にいたキジトラが鉄門を潜って近づいて来た。左耳先カットしているので飼い猫ではなさそうだが、まん丸い顔に丸い目が愛らしく、三毛ちゃんに劣らず可愛いにゃん。

    #555│ミス│飼い猫 ── ご無沙汰スコちゃん
    図書館への道すがら、ネコのいる民家の前を通る。窓辺て外を眺めているスコちゃんと目が合う。白いレースのカーテン越しなので、ネコからも朧げに見えているはずだ。暫く見つめ合っていたけれど反応がない。マスクを外して手招きすると、漸く動き出して窓から姿が見えなくなった。玄関前に移動して待っていると、キャットスルーから出て来た。猫語で呼びかけてるので、たとえ窓越しであっても高感度の聴覚を有するネコには聞こえているはず。鳴き声で反応しなかったのは視覚(容貌)で対象を識別しているからなのかもしれない。ミスちゃんが覚束ない足取りでトコトコと外に出て来ると、三毛のピノちゃんも釣られて追随する。ミスちゃんの柔らかい毛並みを撫でていると、ピノちゃんは興味深そうに周回して見つめる。ミスちゃんはアコーディオン式門扉が好きらしく、丸い顔を擦りつけて匂いを着ける。ミスちゃんが見つめる目線の先には隣家のバルちゃんがいたりして?

    #556│バル│飼い猫 ── 美しい毛並みにゃん
    茶白トラのバルちゃんは個性的なネコである。目の形が他のネコとは少し変わっている。一般的なアーモンド型ではなく、楕円形にカットされたエメラルドを想わせる緑色の目に魅惑される。カメラのシャッター音にビクッと反応してしまうほどセンシティブな聴覚の持ち主だ。ミスやピノちゃんが近くに来ると逃げ腰になる。出会って間もない頃は距離を縮めようとして間合いを詰めると尻尾を巻いて瞬時に逃げ去ってしまったが、今では少なくとも1度は自ら近寄って来て毛並みを撫でさせてくれるようになった。ミスちゃんのように馴れてくれたかと安堵していると、「もう挨拶は終わったからね」 と言わんばかりに素っ気なく踵を返して離れて行く。隣家との狭間に入り込んで、飼主家裏の室外機の上で寛いでいるところを逆方向から回り込んで撮った。「まだ何か用があるの?」 というアンニュイな表情ですが。

    #557│マヤ│地域猫 ── 4丁目公園のネコたち 3
    「折々のねことば 7」でローラ・グールドの言葉を引いた。彼女は動物保護センターから2匹のネコ、胸部だけが白い長毛種の黒猫と三毛ネコを貰い受けたが、三毛のジョージは雄ネコだった。健康診断のために2匹を獣医の許へ連れて行って、「三毛ネコの名前はジョージです」 と紹介する。口元を歪めて薄ら笑いを浮かべた獣医の顔が真っ青になる下りも笑えたけれど、「三毛猫ホームズ」 が雌猫と知った彼女の推察‥‥ジロー・アカガワは雄の三毛ネコの存在を知らなかったのではないかという意見には爆笑を禁じ得ない。《この有名なネコが雌だと知ってわたしは驚いた。わたしが作者なら、犯人を見つける探偵役には、めずらしい雄の三毛ネコを使っただろう》‥‥「三毛猫ホームズ」 は作者の愛猫(三毛)が雌ネコだったことに由来するそうだが、名探偵という役柄ならば稀少種(雄)の方が相応しくないか。男性名のホームズではなく、「三毛猫マープル」 ならば問題はなかったかもしれませんが。4丁目公園のマヤちゃんが雄ネコなのかどうかは不明です。

    #558│キル│飼い猫 ── 悪ネコだもの‥‥
    S小学校近くの民家には三毛や茶トラなど数匹の飼いネコたちが暮らしていた。ネコたちの共同体は一見平和そうに映っていたが、その調和を乱す性悪ネコが現われた。小中学校のクラスに少なくとも1人はいるようなイジメっ子タイプ。か弱そうな女子や気の弱そうな男子などのクラスメイトには攻撃的なのに、担任教師には従順で大人しそうに装う生徒にも似て、ヒトに対しては小心者のビビリで決して懐かない。日々執拗なイジメに遭った三毛猫のレナちゃんは「ネコ小屋」から出て来なくなり、引きこもり状態になってしまったのだ。児童ならば不登校という選択肢もあるけれど、外ネコには避難場所がない。イジメによるストレスからなのか、病死や失踪などで1匹、2匹と民家からネコたちが消え去り、悪ネコ独りになってしまった。イジメる相手がいなくなって、手持ち無沙汰なのか所在なげに見える。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第62集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。今までに550匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第62集の常連ネコはバルとミスちゃん。4丁目公園のネコたちの写真は同日、短時間で撮れた。『庭猫スンスンと家猫くまの日日』(小学館 2021)は『庭猫』(パイ インターナショナル 2015)に続く横長の写真集。安彦家の庭に来るようになった雄猫スンスンと著者が友人たちと共同生活していた家に棲み着いた雌猫くま、子猫ピーヤ、タローとミニミニ兄妹の写真とウェブサイト 「Sippo」(朝日新聞社)に掲載されたエッセイで構成。スンスンと9カ月、くまと17年暮らした日々が凝縮されている。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました
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    庭猫スンスンと家猫くまの日日

    庭猫スンスンと家猫くまの日日

    • 著者:安彦 幸枝
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2021/01/22
    • メディア:単行本
    • 内容:庭猫と家猫、その幸せと命を見つめる写真集。ある日庭にやってきたボロボロの猫スンスンと、著者の長年の友である、くま。外でたくましく...


    三毛猫の遺伝学

    三毛猫の遺伝学

    • 著者:ローラ・グールド(Laura Gould)/ 七戸 和博・清水 眞澄=監修 / 古川 奈々子=訳
    • 出版社:翔泳社
    • 発売日:1997/09
    • メディア:単行本
    • 目次:はじめにジョージありき / ジョージはどこからやってきたのか?/ ジョージの祖先 / 性に関する昔の学説 / 遺伝学の起源 / 科学者たちはいつ、なにを見たのか?/ 初期の三毛ネコ論文 / 性に関する最近の学説 / ネコが袋から飛びだした(秘密の解明)/ 用語解説 / 年譜 / あとがき / 監修者あとがき / 索引

    愛蔵版 三毛猫ホームズの推理

    愛蔵版 三毛猫ホームズの推理

    • 著者:赤川 次郎
    • 出版社:光文社
    • 発売日:2006/03/23
    • メディア:単行本
    • 目次: 三毛猫ホームズの推理 / 赤川次郎ロング・インタビュー(権田萬治)/ シャーロック・ホームズが飛び込んで、三毛猫ホームズが飛び出した(山前譲) / 三毛猫ホームズのいたずら書き

    三毛猫ホームズの推理

    三毛猫ホームズの推理

    • 著者:赤川 次郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:1984/03/30
    • メディア:文庫(角川文庫)
    • 目次:プロローグ / 羽衣と殺人 / 猫と刑事 / 終わりと始まり / エピローグ / 解説・辻 真先

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