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ネコ・ログ #65 [c a t a l o g]

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  • 恐怖に胸を動悸しながら、思わず私が叫んだ時、ある小さな、黒い、鼠のような動物が、街の真中を走って行った。私の眼には、それが実によくはっきりと映像された。何かしら。そこにはある異常な、唐突な、全体の調和を破るような印象が感じられた。瞬間。万象が急に停止し、底の知れない沈黙が横たわった。何事かわからなかった。だが次の瞬間には。何人にも想像されない、世にも怪奇な、恐ろしい異事変が現象した。見れば町の街路に充満して 、猫の大集団がうようよと歩いているのだ。猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。〔下線引用者〕そして家家の窓口からは、髭の生えた猫の顔が、額縁の中の絵のようにして、大きく浮き出して現れていた。/ 戦慄から、私はほとんど息が止まり、まさに昏倒するところであった。これは人間の住む世界ではなくて、猫ばかり住んでいる町ではないのか。一体どうしたと言うのだろう。こんな現象が信じられるものか。たしかに今、私の頭脳はどうかしている。自分は幻影を見ているのだ。さもなければ狂気したのだ。私自身の宇宙が、意識のバランスを失って崩壊したのだ。
    萩原 朔太郎 「猫町」


  • #577│スワ│飼い猫 ── ジャパニーズ・ボブテイル 2
    三毛母は3匹の子ネコを産んだ。白茶の尻尾は長く、白黒ツートンカラーの2匹は尻尾の短いジャパニーズ・ボブテイルだった。恐らく2匹は父方の特徴を受け継いでいるのだろう。愛くるしい瞳のスワちゃんは頭部と腰回りが黒く、丸まった尻尾も黒くて可愛い。堅肥りしているが、毛並みは真綿のように柔らかい。動物写真家のレイチェル・ヘイル・マッケナは『世界の美しい猫 101』(パイ インターナショナル 2015)の中で、《ボンボンのようなしっぽが特徴的な東洋古来の品種、ジャパニーズ・ボブテイル(「ミケ」 と呼ばれることもある)。何世紀にもわたり、日本に起源を持つ猫としての誇りを持ち続けてきた。古い日本の絵巻や絵画にも描かれ、現代では、日本の幸運の象徴として有名な「招き猫」のモデルともされている》と書いている。スワちゃんは「福」を招いてくれるかしら?

    #578│オリ│飼い猫 ── チャームに連絡先
    先日、図書館へ行く道すがら、電柱の貼り紙に目が止まった。「猫を探しています」 《失踪日 ・2月11日、名前・チョビくん、年齢・一歳、性別・オス、特徴。追記事項など・しっぽは真っ直ぐで太く長いです。鼻のところに茶色い模様があります。体重は4キロ。中くらいのサイズです。体はあまり大きくないですが顔が丸いです。家族以外あまり人馴れしていないです。見かけた方、保護された方は下記までご連絡をお願いいたします。大切な家族なのでとても心配しています。ささいな情報でも結構です》。1年前、新聞の折り込み広告の中に「猫を探しています」というチラシが入っていたこともあった。飼主宅から外に出て行方不明になったアビシニアン(ちびすけ)も首輪をしていなかった。室内飼いのネコは首輪をしていないことが少なくない。飼主は外へ逃げ出した時に備えて黒猫オリちゃんのように、首輪(チャーム)に連絡先(Tel)を記しておくことが肝要である。

    #579│リリ│ノラ猫? ── 門扉の隙間から
    少子化の影響で、数年前に廃校になってしまった某区立中学校跡地。今は区役所分庁舎の一部となっている体育館(国政・地方選挙の投票所になっている)の脇にある門扉の間から黒白ネコを撮った。写真では太く映っているけれど、カメラのレンズも入らないくらい細長い鉄柵の隙間からの撮影は至難を極める。鉄柵から被写体までの距離も離れているので、標準3倍ズームではこれが限界だった。最近は外ネコの姿を見かけることが少なくなった。それだけに出合ったネコとのシャッター・チャンスは出来ることなら逃したくないが、ネコ撮り写真の現実は厳しい。ピントを手動で微調整している刹那、シャッターを押す一瞬の躊躇いが貴重なチャンスを失わせる。「チャンスの神様には前髪しかない」 というギリシャ神話のイカロスに由来する名言があるけれど、「チャンスの猫神様には尻尾しかない」 という迷言が脳裏に浮かんだ。

    #580│ケイ│ノラ猫 ── 寅年(2022)もよろしくにゃん
    2022年は寅年(Tiger Year)で、しかも2月22日は 「2」(ニャン)が6つ並ぶ「スーパー猫の日」だった。同じネコ科なので、愛猫家にとっては「猫年」と呼んでも良いのではないかと思われる。日本の干支に「猫年」はないけれど、チベット、タイ、ヴェトナム、ベラルーシなどでは「卯年」が「猫年」、ブルガリアでは「寅年」が「猫年」になっているという。アル・スチュワートの〈Year Of The Cat〉は二人称視点の不思議な曲である。海外ツアー旅行で異国を訪れた「きみ」は 「猫年」(The Year Of The Cat)から来たという謎めいた女性に魅惑されて、この地に留まることになる。アル・スチュワートの〈Year Of The Cat〉を作詞・作曲した1976年は卯年だったので、団体旅行から外れた「きみ」が滞在することになる国は上記のどこかだったのかもしれないし、キャットウーマンのように妖艶な女性だったのかもしれない。オレンジ色の茶トラは「小さな虎」に見えなくもない。

    #581│ロン│ノラ猫 ── 時には母のない子猫のように(カルメン・マキャット)
    カルメン・マキの〈時には母のない子のように〉(1969)も不思議な歌である。作詞した寺山修司はゴスペル・ソングの〈Sometimes I Feel Like A Motherless Child〉から発想したというけれど、「黙って海を見つめていたい」 「一人で旅に出たい」 と歌う少女は 「母のない子になったなら、誰にも愛を話せない」 と直ぐに心変わりする。母親から愛されなかった孤児だから、愛を知らないのか。母親がいる少女だって、海を見つめたり、一人旅に出たいのではないか?‥‥接続詞(逆接)の前後が整合的に繋がらないからだ。ブログ記事のコメントにもあるように、光線の加減なのか、ロンちゃんの「下半身がバレエのチュチュ」みたいに見える。浦島ネコ太郎の「腰蓑」に見えなくもないけれど、ロンは女の子なので、ぶーけさんの見立て通り、ドガの踊り子のようなチュチュが相応しい。

    #582│アン│ノラ猫 ── ネコ目低視線
    地上にいるネコの視線は低い。仲良くしたり、写真を撮りたい時は自ら屈んで、ネコと同じ低目線で対峙することが肝要である。毛並みを撫でたり、首周りを擽ったりすると、ネコも気持ち良さそうに寝転がる。指や手を舐めたり、甘噛みして親愛の情を示す。アンちゃんも友好的な三毛ネコで、躰に触っても嫌がらないし、気が向けば膝の上にも乗っかる。首輪をしているしていないにか拘泥らず、飼い猫たちを姿を見かけなくても特別に心配することはないけれど、ノラ猫の姿が見えないと途端に不安に襲われる。ある日ある時から忽然と消えたまま、二度と姿を見られなくなったネコたちも少なくないからだ。ネコ好きの人に保護されたのならは安心だが、悪意ある人に拉致されたのではないか、事故や病気などで命を落としたのではないかと思うと心穏やかでない。最近アンちゃんの姿を駅前公園で見かけないのは気懸かりですが。

    #583│ポン│飼い猫 ── 谷中のネコちゃんです
    初夏を思わせる陽気の午後、久しぶりに 「谷中分室」(谷中防災コミュニティセンター3階)へ行った。細長い図書館のイメージキャラは黒猫「やんにゃん」。谷中の町歩きに役立つ情報を集めた「谷中さんぽ基地」も併設されている。リサイクル本のコーナーで『すてきなあなたに』(暮しの手帖社 2012)を見つけた。ページを開くと《「コーヒーにしますか、それとも紅茶にしましょうか」といわれたら、わたくしはたいてい紅茶にします》という一文が飛び込んで来た。更に〈ポットに一つ、一人に一つ〉の解説で、長年の疑問が紅茶に入れた角砂糖のように溶解した。1人分の紅茶は茶さじ大盛り1杯。2人で飲む時に3杯入れるのは分からなくもないけれど、1人で飲む時もポットに2杯入れるのが謎だった。緑茶とは異なり、紅茶は1杯分の湯を常にポットに残しておく。英国人は予め2杯飲むことを前提にして紅茶を入れるのだ。写真は本行寺前で撮ったポンちゃんです。右後方にS城石井のレジ袋が写り込んでしまった。

    #584│アニ│飼い猫 ── C.C. キャッツ
    外ネコは周囲の人間を注意深く観察している。ヒトがネコを見つけるよりも早く、ネコはヒトを視認する。スワちゃんと兄弟姉妹のアニちゃんはヒトを発見すると、少女が陽気にハミングするように「フン、フン」と鳴きながら近寄って来る。足許にスリ寄って、頭部を脚に擦りつけ、手を舐めて指を甘噛みする。以前は爪を立てて戯れつくので、指や手に血が滲むこともあったけれど、今は爪を出して引っ掻くことはない。ヒトを警戒して逃げ回っていたのに、ある時から急に友好的になって懐いたり、ヒトの手を傷つけないように、爪を引っ込めるようになった。ネコも生活する環境に応じて自ら学習するのだ。ネコの性格や行動は遺伝的な要因だけで決まるわけではないらしい。ジャパニーズ・ボブテイルは《とても丈夫で病気にも強く、快活で賢い点も高く評価されている。おしゃべりでよくはしゃぎ、チャームポイントもいっぱい》(レイチェル・ヘイル・マッケナ)なのである。

    #585│グリ│飼い猫 ── 可愛い寄り目ちゃん
    O**図書館からの帰途、自転車に乗ったネコおばさんに出合った。自宅の周囲に棲むノラ猫たちに毎日ゴハンを持って来ているらしい。初対面なので少し警戒していたが、ネコ写真を撮っていることが分かると、打ち解けて周辺のネコ事情を話してくれた。近くのマンションに屯するノラがネコ嫌いな住人に虐められている。誰も食事を与えなければ死んでしまうではないかと憤懣を隠さない(親が幼児を虐待するように、ネコも虐待されているのだ)。ネコおばさんはキャットフードだけでなく、ネコを誘導するペンライトも携行している筋金入り。ネコ嫌いな住人たちに見つからないように隠れて、ゴハンを与えているようだ。グリちゃんたちが暮らす民家の前で、女主人と暫し会話した。ここにはタクシー運転手が買っていたという顔面真っ黒の錆ネコや良く似た寄り目の縞ネコ兄弟姉妹がいる。今度来た時に、ネコ写真を持って来る約束を彼女と交わした。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第65集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。今までに580匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第65集の常連ネコのオン・パレード。新入りは門扉の間から撮ったリリちゃん1匹です。コロナ籠りなのか、TNR (Trap-Neuter-Return)効果なのか、外ネコの姿を見かけることが少なくなりました。『猫のまぼろし、猫のまどわし』 (東京創元社 2018)はアンソロジー・レストラン「山猫軒」の妖猫譚フルコース。萩原朔太郎の「猫町」やアルジャーノン・ブラックウッドの「古い魔術」、怪猫絵巻 「鍋島猫騒動」 など、ミステリアスな妖猫や怖しい化け猫が総登場。『ねこは るすばん』(ほるぷ出版 2020)の茶トラのように、ネコだらけの 「猫町」 に行ってみたい誘惑に駆られます。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました
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    猫のまぼろし、猫のまどわし

    猫のまぼろし、猫のまどわし

    • 編者:東 雅夫
    • 出版社:東京創元社
    • 発売日:2018/08/10
    • メディア:文庫(創元推理文庫)
    • 目次:猫 / 猫町をさがして(猫町 / 古い魔術 / 猫町 / 萩原朔太郎と稲垣足穂 / 喫茶店「ミモザ」の猫 / 猫町紀行) / 虚実のあわいにニャーオ(ウォーソン夫人の黒猫 / 支柱上の猫 /「ああしんど」/ 駒の話 / 猫騒動 / 化け猫 / 遊女猫分食) / 怪猫、海をわたる(鍋島猫騒動 / 佐賀の夜桜怪猫伝とその渡英 / ナベシマの吸血鬼 / 忠猫の話 / 白い猫 / 笑い猫 / ...


    すてきなあなたに よりぬき集

    すてきなあなたに よりぬき集

    • 編集:暮しの手帖編集部
    • 出版社:暮しの手帖社
    • 発売日:2012/06/01
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:はじめに(『暮しの手帖』編集長 松浦 弥太郎)/ 一月の章 / 二月の章 / 三月の章 / 四月の章 / 五月の章 / 六月の章 / 七月の章 / 八月の章 / 九月の章 / 十月の章 / 十一月の章 / 十二月の章


    幸せを語るネコ

    幸せを語るネコ

    • 著者:晴山 陽一
    • 出版社:青春出版社
    • 発売日:2021/12/14
    • メディア:単行本
    • 目次:ネコは「喜び」を運んでくる / ネコは「安らぎ」を与えてくれる / ネコは「愛」を語る / ネコは「豊かさ」を気づかせる / ネコは「知恵」を授けてくれる / ネコは「自由」を教えてくれる / ネコは「誇り」を思い出させる / ネコは「人生観」を問いかける / ネコは「学び」をもたらす / ネコは「想像力」を刺激する / ネコは「真理」を探究さ...


    世界の美しい猫 101

    世界の美しい猫 101

    • 著者:レイチェル・ヘイル・マッケナ(Rachael Hale McKenna)/ 大浜 千尋(訳)
    • 出版社:パイ インターナショナル
    • 発売日: 2015/12/10
    • メディア:単行本
    • 目次:短毛種 / セミロングヘア種 / 長毛種 / エイジアン / オリエンタル / その他の種類 / 索引

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