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F A V O R I T E ー B O O K S 8 [f a v o r i t e s]

  • それでも猫は出かけていく(幻冬舎 2014)ハルノ 宵子


  • 「猫びより」に連載された少女マンガ家・ハルノ宵子(吉本隆明の長女)のよる実録「シロミ介護日誌」。著者は8年前の夏の深夜、隣の墓地に捨てられていた真っ白い子ネコを拾った。「馬尾神経症候群」という障害を持つシロミと家ネコ、ノラ猫たちをも巻き込んだ8年間のドキュメントは「吉本家最後の8年間の記録」でもある。可愛いネコ・イラストも満載されているけれど、ネコ・エッセイであるところが大島弓子のエッセイ・コミックとは決定的に異なっている。少女マンガ家のネコ・エッセイなのかと舐めてかかると足許を掬われる 160



  • なぜ、猫とつきあうのか(河出書房新社 1998)吉本 隆明


  • 子供の頃、鼻汁を舐めて貰っていたというほどネコと親密な関係だった著者へのロング・インタヴュー(1987~93)。「猫の家出」 「猫のイメージ」 「猫の死、人間の死」 「猫探し」 「猫ブーム」 「猫の予感」 「猫の「なれ」」 「猫の聴覚」 「猫と擬人化」 「猫のわからなさ」 「孤独の自由度」 など、男女2人の聞き手に「戦後最大の思想家」が自由闊達に話す。余り親しくないような知人の死よりも、いつも可愛がっていたネコの死の方が悲しいという有名な発言もある。巻末に書き下ろしエッセイ「猫の部分」。挿絵はハルノ宵子、文庫版解説は吉本ばなな 159



  • ムカシ×ムカシ(講談社 2014)森 博嗣


  • Xシリーズ第4作目。資産家の百目鬼悦造・多喜夫妻が屋敷内で刺殺された。広大な敷地内の母屋に1人で棲む孫娘の小説家・君坂一葉。倉庫に遺された骨董品の鑑定を依頼された「SYアート&リサーチ」の椙田泰男(保呂草潤平)。助手の小川令子とバイトの芸大生・真鍋瞬市、永田絵里子が倉庫で美術品のリストを作成する。古井戸の中から発見された新たな死体。第3の殺人‥‥祖父の書斎の壁に架けてある河童の絵の文字「ぶすになるべからず、すすみとげて金を得る」の謎解きはあるけれど、密室トリックや殺人動機は解明されない。「森ミステリィ」横断キャラのアキラ(各務亜樹良)も最後に登場する 158



  • 岩合光昭のネコ(新潮社 2014)岩合 光昭


  • 1998年、沖縄県から始まった日本全国のネコたちを撮る旅。隔月刊誌「猫びより」の連載を纏めた写真集『岩合光昭のネコ 47都道府県の408にゃんこ』(日本出版社 2010)の文庫本。北海道・夕張から沖縄・座間味島まで、漁港、農家、雪道、桜、猫ちぐら、富士山、紅葉、神社、仏閣、駅舎、厩舎、城内、砂浜、温泉、木の上、屋根、塀の上‥‥日本の風景の中で暮らすネコたちの生態が生き生きと捉えられている。「文庫版あとがき」で赤レンガの上からジャンプする「とびネコ」を撮った山口県・粭島を再訪した時のエピソードも披露 157



  • 錯視芸術の巨匠たち──世界のだまし絵作家20人の傑作集(創元社 2008)アル・セッケル


  • ジュゼッペ・アルチンボルド、サルヴァドール・ダリ、サンドロ・デル=プレーテ、ヨース・ド・メイ、M.C.エッシャー、福田繁雄、ロブ・ゴンサルヴェス、マチュー・ハマーケルス、スコット・キム、北岡明佳、ケン・ノールトン、ギド・モレッティ、ヴィック・ムニーズ、オクタビオ・オカンポ、イシュトバン・オロス、ジョン・ピュー、オスカー・ロイテルスバルド、ロジャー・シェパード、ディック・タームズ、レックス・ホイスラーによるトリック・アート集。表紙カヴァはムニーズの〈おもちゃの兵隊〉です 156



  • 世界で一番美しい猫の図鑑(エクスナレッジ 2014)タムシン・ピッケラル


  • エジプシャンマウ、ターキッシュバン、ソコケ、キムリック、マンクス、ノルウェージャンフォレストキャット、サイベリアン、ブリティッシュショートヘア、ジャパニーズボブテイル、シャム、ドラゴンリー、コラット、バーマン、ペルシャ‥‥古代から現在の血統まで5章に分け、56種の猫たちの歴史と物語を綴った大型本。ジ ャパニーズボブテイルは福や客を招く幸運のシンボル「招き猫」のモデルだったという。大きくて重い本だが、タムシン・ピッケラルの解説とアストリッド・ハリソンの美しい写真に魅了される 155



  • キャットニップ(小学館 2014)大島 弓子


  • 愛猫グーグーの死と共に突然終わってしまった『グーグーだって猫である』の続編。掲載誌も「本の旅人」から「きらら」(2012~)に移って、その後の著者とネコたちの暮らしぶりがエッセイ・マンガとして綴られて行く。グーグーがいなくなっただけで変わり映えしないのではないかと思うかもしれないが、読後感は異なる。特別な存在だ ったグーグーの不在が他のネコたちの個性を際立たせているから。大島さん家のニャンコたちはクロ、ビー、トラ、ミケマル、ルチル、キジタロー、モーモー、ヒマラヤ、なっちゃん、ジミヤマの12匹 154



  • 大島弓子にあこがれて(ブックマン 2014)福田 里香・藤本 由香里・やまだないと


  • 「大島弓子的生活」に憧れる3人の女性、お菓子研究家、マンガ研究家、マンガ家による共著。藤本由香里の評論、著者へのインタヴューと対談がメインだが、LaLaや別コミなどから再録した単行本未収録のカラー・イラスト、イラスト・エッセイ(1頁コラム)、付録(チビ猫グリーティングカード、レターパッド)、予告カット、広告欄の穴埋めコラム、欄外コメントなど、200点以上のカットを網羅。雑誌付録のレターパッドやカード、詩集などを今でも大切に持っているという福田里香の大島弓子愛(ユーミンおたく?)が爆発している 153



  • まんがキッチン(文藝春秋 2014)福田 里香


  • 料理研究家・福田里香はマンガの中に描かれた食べ物から作品を読み解く「フード理論」の提唱者。「ハチミツとクローバー」「のだめカンタービレ」「笑う大天使」「D班レポート」「はみだしっ子」「西荻夫婦」「くちびるから散弾銃」「いちご物語」‥‥少女マンガからイメージしたお菓子のレシピだけでなく、エッセイ、対談(羽海野チカ、くらもちふさこ、よしながふみ、萩尾望都)、マンガ(やまだないと)なども収録。親本(アスペクト 2007)は大型本だったので、文庫本はレイアウトも変わってカラー頁も減ったが、1篇を追加 152



  • おしゃべりねこ(佑学社 1989)クロード・ロワ


  • ある日、トマ少年の飼い猫ガスパール・マック・キティキャットが人間の言葉を喋り出す。庭の奥に生えていた奇妙な草を食べたせいだった。思わず人語を発してガールフレンドの隣猫ミラ・ナ・ミニーに逃げられてしまったガスパールはマスメディアなどに翻弄される自分の行く末を嘆き、親友のトマに告白する。周囲の人たちにバレないように、2人はトマが腹話術の練習をしていることにする。家族たちの前で腹話術の実演を披露。最終章でガスパールに会った著者が本書を書くことになる。ガスパールのパラパラまんが(奇数頁左上)付き 151



  • 愛するあなた 恋するわたし(河出書房新社 2014)萩尾 望都


  • モーさまの対談集「2000年代編」。吾妻ひでお、よしながふみ、恩田陸、庵野秀明+佐藤嗣麻子、大和和紀、清水玲子との対談はゼロ年代(2000~07)で、巻末のヤマザキマリだけは語り下ろしロング・ヴァージョン(70頁)になっている。よしながふみと「やおい」で盛り上がり、庵野秀明とは噛み合わない。『バルバラ異界』の裏話も少なくない。吾妻ひでおの「バルバラ異聞」(2頁)などのマンガも併録。会話に即した写真や図版などのレイアウト構成も微に入り細を穿つ。山岸凉子との「初対談」(2011)が未収録なのは残念です 150



  • 評伝 バルテュス(河出書房新社 2014)クロード・ロワ


  • 画文集『バルテュス 生涯と作品』(1997)の文章だけを改訂・再録した「評伝」。口絵の〈蛾〉(1959)とマン・レイが撮ったポートレイト〈バルテュス〉(1933)の他には数点のモノクロ図版しか収録されていないので、バルテュスの絵に精通していない読者は画集が手許にないと戸惑うかもしれない。友人のロワはクロノロジカルな伝記ではなく、バルテュスの絵画(絵本、挿絵、肖像・風景画、素描、舞台装飾)と内的時間を並行して書いている。推薦文は金井美恵子。著者には『おしゃべり猫』(佑学社 1989)などの児童書もある 149



  • ソロモンの偽証 第 III 部 法廷(新潮社 2012)宮部 みゆき


  • 1991年8月15日から20日までの6日間、城東第3中学校で開廷された学校内裁判。証人への尋問で、次々と明らかになる新事実。弁護人の神原和彦が証人となって「クリスマス・イヴのゲーム」を告白し、三宅樹理が「真実」を訴えて、被告人の大出俊次に無罪判決が下される。中学生9人の陪審員は「裁判員制度」、柏木卓也の自殺は「いじめ〜自殺事件」への作者からの回答かもしれない。加害者と被害者が逆転する構図。自殺者が加害者(殺害者)だったという衝撃の判決。エピローグの「2010年、春」は長蛇の足のような気もするけど 148



  • ソロモンの偽証 第 II 部 決意(新潮社 2012)宮部 みゆき


  • 1991年7月20日。夏休み前の放課後、城東第三中学校の3年生が体育館に全員集合して「卒業制作」を話し合う。旧2年A組のクラス委員だった藤野涼子は1990年12月25日の朝、校舎の屋上から投身自殺した事件の「真実」を暴くために「学校内裁判」の開廷を提案する。被告人は大出俊次、弁護人・神原和彦、野田健一、検事・藤野涼子、判事・井上康夫、廷吏・山崎晋吾、陪審員・9名。柏木卓也は自殺なのか、三宅樹理の目撃証言は虚偽なのか、弁護人を買って出た他校の生徒、神原和彦の真意は‥‥「第III部 法廷」で明らかになる? 147



  • キウイγは時計仕掛け(講談社 2013)森 博嗣


  • 日本科学大学で開催される日本建築学会に加部谷恵美、雨宮純、山吹早月、海月及介、西之園萌絵、犀川創平、国枝桃子たちが集結する。加部谷は論文発表のため、雨宮はTVレポータとして。大会本部宛に届いた宅急便。ダンボール箱に入っていたプルトップ付きキウイ(手榴弾を模した?)にはガンマの文字が刻まれていた。その夜、学長の福川啓司が研究室で射殺され、その場に居合わせた副学長の蔵本寛子も密室で死んでしまう。他殺なのか自殺なのか?‥‥ギリシャ文字の意味も殺人の動機も明かされずに終わる。Gシリーズ第9作目でも全体像は見えない。Vシリーズのようなドンデン返しがあるかしら? 146



  • 歴史を変えた100匹の猫(創土社 2008)サム・ストール


  • ある小鳥を絶滅させてしまった灯台守の猫ティブルスから、34年間も生きた世界一の長寿猫グランパまで、「歴史を変えた」(100 Cats Who Changed Civilization)古今東西のネコたちが総登場。ニュートンの猫、世界初のクローン猫CC、シュレディンガーの猫、ポーの猫、ルイス・ウェインの猫、ディケンズの猫、アルゴンキン・ホテルの看板猫、アリス・リデルの猫、エドワード・リアの猫、ハワード・ヒューズの猫‥‥。日本からは彦根藩主井伊直孝を豪徳寺に招いて、激しい雷雨を回避した「招き猫」のエピソードが紹介されている 145



  • ソロモンの偽証 第 I 部 事件(新潮社 2012)宮部 みゆき


  • 1990年、ホワイト・クリスマスの朝、通用門近くの雪溜まりで発見された中学生の遺体。校舎の屋上から飛び降りた柏木卓也(中2)は「自殺」と看做される。しかし、津崎校長と担任教師の森内恵美子、クラス委員の藤野涼子宛てに送られた3通の匿名の「告発状」に同学年の不良グループに殺されたと書いてあったことから、教師、生徒、保護者、マスコミを巻き込んだ連続事件へ発展して行く。ドス黒い悪意の連鎖!‥‥第1巻は茂木記者に涼子が「自分たちで真実を見つけ出します」と宣言して終わる。「第II部 決意」も読まなくちゃ! 144



  • 猫街道三拾三次 歌川猫重(求龍堂 2013)シュー・ヤマモト


  • 「東海道五拾三次」のパロディ画集。オリジナルは版画だが、「猫街道三拾三次」はアクリル画(筆マーカーと色鉛筆を併用)。「日本橋」から「京都」まで、大名猫行列や駕籠屋、飛脚、旅猫など江戸時代の庶民的なネコたちを生き生きと描く。猫浮世絵師・歌川猫重による自作解説も諧謔に溢れていて楽しい。「付録 三拾三次版画制作過程」「制作余話」「参照画リスト」を併録 143



  • 絵本ジョン・レノンセンス(筑摩書房 2011)ジョン・レノン


  • ジョン・レノンが23歳の時に上梓した(In His Own Write 1964)の翻訳本。詩やショート・ショートなど30篇を収録。著者によって変形された言葉による無意味な意味が横溢する。自筆イラストを眺めているだけでも愉しい。「彼はその日の夜は辛く働いた」(He'd had a hard day's night that day)というファブ・フォー初主演映画のタイトルになった文章もある。ちくま文庫版は親本(晶文社 1975)に原文(英文)を併録。序文はポール・マッカートニー。「ジョン・レノンセンス」という日本語タイトルは高橋康也氏の造語である 142



  • ねこ歩き(クレヴィス 2013)岩合 光昭


  • 日本橋三越(2013. 5)を皮切りに岩合光昭写真展「ねこ歩き」が全国行脚中。図録は書店でも買えるが、各会場で購入すると特製栞が付き、岩合さんのサイン会(「ネコ・イラスト」は手描きではなくスタンプ)やギャラリートークに参加出来る。写真集も写真展と同じく3つの章で構成されている。1. 世界を歩く(ギリシャ・イタリア・トルコ・モロッコ・アメリカ・キューバ) 2. 日本を歩く(春・夏・秋・冬) 3. わが家のネコたち(海ちゃん・にゃんきっちゃん・柿右衛門・ケナ)‥‥ネコに「癒されるなんて甘い」141


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