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F A V O R I T E ー B O O K S 1 2 [f a v o r i t e s]

  • 岩合光昭の世界ネコさがし(クレヴィス 2018)岩合 光昭


  • 岩合さんの写真展で「ネコはどこにいるの?」と隣の女性に訊かれることがある。美しい風景の中に溶け込んでいるので、ネコを見つけられない人もいるのだ。ネコ版「ウォーリーをさがせ!」も面白いかもと思っていたら、1冊の写真集になった。「ネコを探している時は何を見てもネコに見えます。空に浮ぶ雲はもちろん、道端に置かれたゴミ袋さえも」‥‥米ミシシッピ川沿いの町で、コウモリ傘をネコと間違えたエピソードを「あとがき」で披露している。さあ、写真集の中だけではなく、街に出てネコを探そう。定価は本体2,222円です 240



  • LOST CAT(講談社 2018)キャロライン・ポール / ウェンディ・マクノートン(絵)


  • ある日、操縦していた飛行機が墜落した。脛骨と腓骨を骨折した私は入院して緊急手術を施される。ガールフレンドのウェンディに介抱され、縞ネコの双子姉弟フィビィとティビィの待つ自宅へ帰る。怪我が回復期に入ってから1カ月後、ティビィが姿を消す。5週間後、突然が帰って来たティビィは家で食事をしない。不審に思った私は真相解明するためにGPS装置や猫用カメラを首輪に付けた。ティビィは失踪中に一体どこで暮らし、ご飯を食べていたのか?‥‥これは2人の女性の愛と絶望の記録である‥‥「ティビア / 1994-2012 / とてもいい猫だった」239



  • アンドロイドは電気羊の夢をみるか?(早川書房 1977)フィリップ・K・ディック


  • 最終世界大戦後、放射能物質に汚染された地球。米サンフランシスコの高層集合住宅に住むリック・デッカード刑事は去年、破傷風で死んでしまった羊のグルーチョの代わりに、屋上で電気羊を飼っている。リックは火星から逃亡して来たアンドロイドを廃棄処理した懸賞金で本物の動物を購入するため、バウンティ・ハンターとなる。刑事カダリイに成り済ましたマックス・ポロコフ、ガーランド警視、オペラ歌手ルーバ・ラフト‥‥アンディーに感情移入したリックは自問する。同業のフィル・レッシュよりもルーバの方が人間らしくないかと 238



  • ユービック(早川書房 1978)フィリップ・K・ディック


  • 1992年6月5日夜、太陽系最高のテレパスが地球から姿を消す。グレン・ランシターはテスト技師のジョー・チップと11人の不活性者を月へ派遣するが、それは依頼人が仕掛けた罠だった。ヒューマノイド爆弾が破裂してランシターが殺されてしまう。地球へ舞い戻った彼らの身に不可解な「時間退行現象」が起こる。何もかもが古色蒼然として行く。不活性者も次々と干涸びて死ぬ。ユービックだけが退化を止める唯一の特効薬だった。しかし現実は真逆だった。棺の中で冷凍保存されている半生者はジョーと11人の不活性者たちの方だった 237



  • 虚空の眼(東京創元社 1991)フィリップ・K・ディック


  • 1959年10月2日、ベルモント・ベヴァトロン陽子ビーム偏向装置が暴走して観察台を焼き尽くし、主人公ジャック・ハミルトンと妻のマ ーシャを含む見学者たちとガイドの8人が装置のある床に落下した。奇蹟的に8人の命に別条はなかったが、病院で意識を取り戻したジャ ックは漠然とした違和感に捉われる。そこは「バーブ教」という宗教に支配された摩訶不思議な異世界だった。意識を失った7人は彼らの中の1人の脳内世界に囚われてしまったのだ。8人は現実世界へ無事に還れるのか。ジャックの愛猫ニニー・ナムキャットの運命は? 236



  • るきさん(筑摩書房 2015)高野 文子


  • 在宅勤務のるきさん(Miss RUKI)と女友達のOLえっちゃの日常生活を描いた見開き2頁のコミック57篇をオールカラーで収録した新装版。頭のネジが1本外れたような女主人公に振り回される相方との関係は女漫才コンビのようだ。パソコンもケータイもなかった加算器と黒電話の時代。連載時(Hanako 1988-92)はバブル景気の真っ只中で、泡のようにフワフワと浮かぶ(浮かれた?)空気感が漂っている。るきさんは最終話でイタリア・ナポリへ旅立つ。10年後の図書館を描いた巻末1頁の番外編(2003)との落差は余りにも大きい 235



  • 猫ヲ読ム(雷鳥社 2017)谷口 香織(編)ホリナルミ(絵)


  • 小説家、随筆家、評論家、写真家、画家、マンガ家、詩人、学者、俳優、映画監督などの著名人(74名)によるネコに関する文章(120篇)を抜粋したネコセトラ。猫版「折々のことば」。可愛い弁当箱サイズの猫本で、右頁に文章と解説とプロフィール、左頁にイラストがレイアウトされている。浅田次郎、安部譲二、石井桃子、伊丹十三、猪熊弦一郎、内田百閒、長部日出雄、大佛次郎、鹿島茂、金井美恵子などは複数の文章が掲載されているので、1人1文という縛りで編めば、より多種多彩で豪華絢爛なニャンソロジーになったのに‥‥ 234



  • 黒猫ジュリエットの話(河出書房新社 2017)森 茉莉


  • 表題作にネコに纏わるエッセイ21篇を加えた文庫オリジナル。「黒猫ジュリエットの話」は「吾輩は猫である」のパスティーシュで、語り手のジュリエット(我輩)が女主人・牟礼魔利(むれマリア)を容赦なく批評する。エッセイでも書き手の森娘(私)は魔利(マリア)と表記され、登場する作家たちも実名ではなく、母呂生犀川、真島由起夫、葭雪俊之介、森篤、牙田練二郎、倉田ユミ子、池満鱒夫、豊太郎(父・林太郎)‥‥という変名になっている。巻末に室生犀星の評伝「黄金の針」と室生朝子のエッセイ「森茉莉さんのこと」を再録 233



  • 総特集 木原敏江 エレガンスの女王(河出書房新社 2017)木原 敏江


  • デビュー48年を記念したムック。「2万字ロングインタビュー」、木原敏江×青池保子×萩尾望都による「スペシャル鼎談」。池田理代子や坂田靖子もエッセイ・マンガで寄稿。短篇「封印雅歌」(1982)と「夢占舟」(1986)を再録。「摩利と新吾」 「夢の碑」 などの美麗カラー・イラスト(表紙・扉)も60点以上収録。巻末に 「主要作品解説」 「年譜&全作品リスト」 。インタヴューで「ドジ」という渾名は「としえ」に濁点をつけた「どじえ」に由来すると明かしている。「木原敏江原画展」(銀座・SPAN ART GALLERY)も開催した 232



  • 美しの神の伝え(河出書房新社 2017)萩尾 望都


  • 小説集『音楽の在りて』(イースト・プレス 2011)に単行本未収録作品3篇を追加収録した文庫版(表題作の中編「美しの神の伝え」などは〈望都と在りて〉で紹介済み)。「クリシュナの季節」 「左手のパズル」 は東逸子との共著として発表された。前者はバレエ学校の寄宿生ジュード・コジマが語るクリシュナとの12カ月。後者は恋人ソフィアが話す左利きのチェロ弾きジョシュアの物語(「ポーの一族」 の原作に使えそう)。破滅SFの「いたずら らくがき」は8頁のコミック。山上たつひこの4千字解説「お望都」は上方落語仕立てです 231



  • 猫は宇宙で丸くなる(竹書房 2017)シオドア・スタージョン、フリッツ・ライバー他


  • 日本独自編集の「猫にまつわるSFとファンタシー傑作選」。串に刺したマシュマロをレンジの炎で焼く天才猫が野犬を罠に嵌めるジェフリー・D・コイストラの「パフ」。未開惑星に短期逗留したオテリス少年が細やかな歴史的改変を試みるロバート・F・ヤングの「ピネロピへの贈りもの」。治癒能力を持つジェフリー(ぼく)と不老不死の猫ベンとが共棲するデニス・ダンヴァーズの「ベンジャミンの治癒」など、初訳4編を含む中・短篇10作品を〈地上編〉〈宇宙編〉に分けて収録している。『魔法の猫』(扶桑社 1998)との重複はない 230



  • 希望荘(小学館 2016)宮部 みゆき


  • 巻き込まれ体質の杉村三郎を主人公とするシリーズ4作目は表題作を含む短篇4作品を収録。バスジャック事件後に巨大グループ企業を退職し、今多菜穂子と離婚した杉村三郎は東京都北区で探偵業を営む。アパートから失踪した三雲勝枝の消息を調査する「聖域」。老人ホームで亡くなった武藤寛ニの過去を調べる「希望荘」。無職になって帰郷した杉村三郎と調査会社の所長・蛎殻昴が愛人と駆け落ちした香川広樹の事件を解明する「砂男」。黒ずくめの少女・伊知明日菜に頼まれて、震災後に安否不明となった昭見豊の行方を捜す「二重身」 229



  • いらないねこ(白泉社 2017)ヒグチユウコ


  • 縫いぐるみのニャンコが主人公の絵本『せかいいちのねこ』(2015) の続編。ある日、ニャンコは3匹の捨てネコに出会う。2匹は冷たくなっていたが、1匹は辛うじて生きていた。子ねこを家に連れて帰ったニャンコは飼主の少年や家族に見つからないように注意して子ねこを育てる。アノマロ、いじわるねこ、おねえさんねこ、犬のお医者さん、本屋のねこ、大きなシマシマのねこたちの協力を得て、子ねこは成長して行く。そして、突然やって来た別れ‥‥作者は絵本にしか表現出来ない方法で、動物虐待(育児放棄や幼児虐待)に抗議する 228



  • 澁澤龍彦玉手匣(エクラン)(河出書房新社 2017)澁澤 龍彦


  • 澁澤龍彦没後30年を記念して出版された小匣(エクラン)。プロローグ・ドラコニア・オブジェ・ 文学・美術・生涯・エピローグ‥‥東雅夫によってテーマ別に精選抽出された99篇のエッセイで構成されている。「作家に長篇型と短篇型があるとすれば、私は明らかに後者であろう。だから極端にいうと、たとえば原稿用紙一枚か二枚の推薦文などに、私のもっとも得意とする領分があるのではないか」と生前書いていた通り、澁澤龍彦のエッセンスが凝縮されたアンソロジー 227



  • ダマシ×ダマシ(講談社 2017)森 博嗣


  • 上村恵子は小川令子(SYアート&リサーチ)に失踪した鳥坂大介の調査を依頼する。銀行員と結婚したはずなのに、銀行口座に振り込んだ預金と共に消えてしまったのだ。は「ホストクラブもどき」で夜のバイトをしていた鳥坂。津村路代や繁本さくらなど、彼女と同じような結婚詐欺に遭った女性たちも数人浮上するが、鳥坂(鳥井信二)は鉄パイプで撲殺されてしまう‥‥。Xシリーズの最終巻は所長の椙田泰男(保呂草潤平)が引退して、小川令子が探偵社の業務を引き継ぐことになる。西之園萌絵やGシリーズの加部谷恵美や雨宮純も仮名やペンネームで登場している。ナオミと名乗る老婆は誰なのかしら? 226



  • カストロの尻(新潮社 2017)金井 美恵子


  • 2つのエッセイに挟まれた10篇の短篇で構成された連作集。岡上淑子のコラージュを掲げた6篇は「アメリカの写真雑誌──1940年代後半から50年代にかけての──を使用したフォト・コラージュ作品から揺曳された映像が、私の記憶の中の映像や記憶の断片と結びついて書かれた」。プルーストやロラン・バルトなどをエピグラフや文中に引用した小説も括弧やダッシュで継ぎ接ぎされている。金粉ショーの踊子に夢中の狂恋男が「尼」を「尻」と読み間違えた「カストロの尻」。鴎外と森娘(森茉莉)のエピソードを発見したエッセイも面白い 225



  • ポーの一族 春の夢(小学館 2017)萩尾 望都


  • 1944年1月、ロンドンからウェールズ地方アングルーシー島へ移り住んだエドガーとアランはドイツ人姉弟ブランカとノアに出会う。去年の夏、リヴァプールから来たオットマー家。体を壊して療養中の主人ダン・オットマー、妹ベス、妻ザブリナ、ブランカとノア(ザブリナの妹ヨハンナの子供)、従姉のマージ、祖母、車夫アシュトン‥‥。ファルカ、大老ポー、クロエ、シルバー、サルヴァトーレなどバンパネラ一族も登場。張り巡らされた伏線、繊細な心理描写、凝縮されたストーリ展開など少女マンガの醍醐味が味わえる。続編にも期待 224



  • とらねこ(クレヴィス 2017)岩合 光昭


  • コンパクトな写真集シリーズ「IWAGO'S BOOK」。ネコたちの1日(午前5時〜午後6時)を時間軸に沿って構成した『ねこのとけい』(2016)に続く第2集は虎縞模様のネコだけを蒐集。色別に焦茶のストライプの「キジトラ」、茶色のグラデーションの「チャトラ」、灰色に黒縞の「サバトラ」の3種。ドメニコ(シチリア・キジトラ)、ミスター・ウー(ニューオリンズ・サバトラ)、マリアノ(ペルー・チャトラ)など18匹のトラネコちゃんが登場 223



  • 人間じゃない(講談社 2017)綾辻 行人


  • 今年デビュー30周年を迎える綾辻行人の「未収録作品集」(単独名義の著作に未収録の短・中編)。「赤いマント」は「館」シリーズ第4作『人形館の殺人』の後日譚。「崩壊の前日」は『眼球綺譚』所収の「バースデー・プレゼント」の姉妹編。「洗礼」は『どんどん橋落ちた』の「僕=綾辻行人」を語り手にした本格ミステリ連作の番外編。「蒼白い女」は「僕=綾辻行人」を語り手にした「深泥丘」連作の番外掌編怪談。漫画原作として考案した「人間じゃない ── B〇四号室の患者 ── 」は「患者」シリーズ『フリークス』の番外編ホラー 222



  • マルの背中(講談社 2016)岩瀬 成子


  • 両親が離婚して、亜澄(小3)は母親の春美と市営アパートに引っ越して来た。弟の理央は父親と暮らしている。母親は学校の給食調理室のパートとコンビニ店員をしているが、夏休みに入って生活は困窮している。駄菓子屋の店主の母親が危篤のため帰郷することになり、近所の亜澄が看板猫のマルを預ることになる。白猫マルの背中に灰色の丸い柄があって、撫でながら頼み事をすると願いが叶うという。離れ離れになった弟のことを想う姉。理央はゾゾという「猫みたいで、象みたいに大きくて、背中に翼がある」謎の動物に見守られていた 221


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    コメント 2

    モバサム41

    金井美恵子はなぜか今まで縁がなかったのだけど、スタンダールの『カストロの尼』を取り上げてくれたので、今度こそと思っています
    by モバサム41 (2017-09-01 03:16) 

    sknys

    括弧()やダッシュ(──)が介在する長いセンテンスですが、
    読み慣れると快感に変わります^^;
    『カストロの尻』の少し長いレヴューを書きました。
    http://sknyslab1.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02
    by sknys (2017-09-02 13:27) 

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