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F A V O R I T E ー B O O K S 1 8 [f a v o r i t e s]

  • 月夜の森の梟(朝日新聞出版 2021)小池 真理子360


  • 最愛の夫(藤田宜永)に先立たれた作家は喪に服して1年、亡き伴侶との過去の記憶や現在の心境を綴る。朝日新聞日曜版に連載された52篇。亡夫に纏わる追憶や思慕の中で、夫妻と暮らした猫たちが点描される。夫の遺した介護ベッドで寝る2匹の飼い 「猫たち」。道先案内する茶トラ「猫のしっぽ」を握って、誰もいない森の中を散歩した。突然食事をしなくなった飼い猫を連れて行った「動物病院にて」。夫への愛情が湖のように深いだけに、喪失感も涸れた井戸のように空虚だ。「愛」 は月夜のように輝くけれど、「死」 は暗い月の裏側に隠れている



  • 幸せを語るネコ(青春出版社 2021)晴山 陽一359


  • ネコに纏わる格言や諺を蒐集した名言集。チャールズ・ディケンズ、アルベルト・シュバイツァー、ポール・ギャリコ、マーク・トゥエイン、コレット、マーク・トゥエイン、ルイス・ウェイン、エドガー・アラン・ポー、レオナルド・ダ・ヴィンチ、デズモンド・モリス、ア ーネスト・ヘミングウェイなど、有名な「ねことば」から作者不明の「ことわざ」まで、138の名言が「喜び・安らぎ・愛・豊かさ・知恵 ・自由・誇り・人生観・学び・想像力・真理」のテーマ別に分類されている。装飾的にデフォルメされたネコのカラー・イラストも魅力的



  • シミュラクラ(早川書房 2017)フィリップ・K・ディック358


  • 21世紀半ば、世界は巨大都市集合体ワルシャワを中心とする共産圏と1994年に西ドイツが米国53番目の州に加わったヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)に二極化していた。90年頃から、USEA大統領よりも大統領夫人が実権を握る母権制社会となって、国民は国家機密を知る特権階級(Ge)と何も知らされずに従属する平民(Be)に二分されている。総勢40名以上の登場人物が錯綜し、シミュラクラ(模造人間)、タイム・トラヴェル装置、超能力者、ミュータント、超小型違法宇宙船 、ガニメデ生命体、火星生物などのガジェットを満載した異色SF長編



  • ねこは るすばん(ほるぷ出版 2020)町田 尚子357


  • 家族が出かけた後、飼い猫が大人しく留守番していると思ったら大間違い。人間たちが出て行くのを窓から確認した茶トラは部屋のクローゼットの中に入って樹洞から出る。そこは「ナルニア国」ならぬ、ニャルニア(猫町)だった( 「私」 やアーサー・ヴェジンが紛れ込んだ朔太郎やブラックウッドの妖しき「猫町」ではないので、ネコに異和感はない)。カフェ、理髪店、書店、映画館、釣り堀、回転寿司、バッティング・センター、銭湯、公園‥‥「休日」 を満喫したネコは何事もなかったように、玄関で主人の帰宅を待つのだ



  • 猫のまぼろし、猫のまどわし(東京創元社 2018)東 雅夫(編)356


  • アンソロジー・レストラン「山猫軒」の妖猫譚フルコース。別役実の食前酒 「猫」。萩原朔太郎 「猫町」、アルジャーノン・ブラックウッド 「古い魔術」、江戸川乱歩のエッセイ、日影丈吉の掌編、つげ義春の紀行記。萩原朔太郎、エリオット・オドネル、池田蕉園、泉鏡花、岡本綺堂、柴田宵曲、未達の猫奇談。怪猫絵巻 「鍋島猫騒動」、上原虎重、A・B・ミッドフォード、レ・ファニ 「白い猫」、花田清輝。デザートは澁澤龍彦訳のシャルル・ペロー 「長靴をはいた猫」。東雅夫シェフの「おまかせ料理」なので怪猫ホラー味が濃い。食当たりに注意にゃん



  • L i l i t h(書肆侃侃房 2020)川野 芽生355


  • 〈ヴァージニア・ウルフの住みし街に来てねむれり自分ひとりの部屋に〉〈うつくしき靴を沓く罪 踊りなす脚なら伐れ、と斧を渡さる〉2012年から19年までの作品374首を収録した第一歌集。旧仮名遣いは詠み難いが、想像力を刺戟するシュールな短歌はファンタジー界の女戦士を想わせる。帯文の山尾悠子とは親交があって、親和性も高い。短歌ムック 「眠らない樹 vol.7」(2021)に掲載された2人の「往復書簡」の中で、川野芽生は《私にとっての理想は両性具有 ── 「男でも女でもある」 ── ではなく、無性 ── 「男でも女でもない」》と綴っている



  • 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ(中央公論新社 2021)金井 久美子‥354


  • 「話の特集」(1979~81)に掲載された鼎談集。目白姉妹(金井久美子 ・美恵子)が9人のゲスト(蓮實重彦、武田百合子、西江雅之、大岡昇平、山田宏一、フィリス・バンバウム、巌谷國士、篠山紀信、平岡正明)をお茶会に招くのだが、「老嬢の退屈な日々を、お客さまがたずさえて来る新鮮で面白い話題によって、まぎらせてもらう、というのが本心なのだ」。40数年後、オールドミスから老婆となった金井姉妹の語り下ろし対談「あの頃、そして今のお話」を巻末に併録。目白姉妹の本(装幀)は阿佐ヶ谷姉妹と同じく、ピンク色の衣装を身に纏っている



  • まさかの日々(毎日新聞出版 2021)中野 翠353


  • 「サンデー毎日」の連載を1年分(2020.10~2021.10)纏めたコラム集。2年に渡るコロナ自粛で、著者も引き籠り生活を余儀なくされる。試写会や観劇、旅行にも行けず、ストレスの溜まる日々。東京五輪、映画、相撲、歌舞伎、落語、俳句、歌謡曲についても繰言が多くなって切れ味も鈍い。運動不足なのか、老化現象なのか、顔が弛緩して長く伸びてしまったのではないかという自己診断は笑えるが、「たまには私もシリアスに内省的にならなくてはね」 という自省はLittle Simzのアルバム《Sometimes I Might Be Introvert》(2021)のタイトルみたいだ



  • ネコ・かわいい殺し屋(築地書館 2019)ピーター・P・マラ+クリス・サンテラ352


  • 鳥類学者とサイエンスライターによる 「ネコ戦争」(Cat Wars 2016)はイエネコを外来捕食者という視点で科学的に論考・検証する。人間に虐げられた被害者ではなく、希少鳥類などを絶滅させた「殺し屋」としてのネコの実態解明は愛猫家にとっては耳の痛い話である。イエネコによる希少野鳥類の絶滅、ネコが人間や動物に媒介する感染症(ペスト 、バルトネラ菌、狂犬病、トキソプラズマ症、ネコ白血病)、野放しネコ(free-ranging cats)の駆除と愛護の対立。著者はノラネコを捕獲 ・不妊去勢・再放逐するTNR(Trap-Neuter-Return)に否定的である



  • 歌の終わりは海(講談社 2021)森 博嗣351


  • Xシリーズ番外編『馬鹿と嘘の弓』(2020)に続く、漢字(尊厳死)→英語(Song End Sea)→語呂合わせ日本語再変換タイトル2作目。探偵社所長・小川令子は著名な作詞家・大日向慎太郎の妻・聖美から夫の浮気調査を依頼される。ほぼ引退状態の慎太郎は閑静な大邸宅に妻と息子と暮らし、離れには姉・紗絵子も住んでいた。小川令子と所員・加部谷恵美はカメラを仕掛けて、慎太郎の動向を見張る。住人たちが出かけた敷地内で姉の死体が発見される。自殺の動機は兄から語られるが、トリックは最後まで解明されない。西之園萌絵がヒントを仄めかすだけだ



  • 猫に学ぶ(みすず書房 2021)ジョン・グレイ350


  • 英政治哲学者の 「ネコ科哲学」。ショーペンハウワー、モンテーニュ、エピクロス、パスカル、アリストテレス、スピノザ、ニーチェ、トマス ・ホッブズの哲学。新聞記者ジョン・ローレンンスのメイオー、サミ ュエル・ジョンソンのホッジ、コレットのサア、パトリシア・ハイスミスのミング、谷崎潤一郎のリリー、メアリー・ゲイツキルのガッティ ーノ、ニコライ・ベルジャーエフのムリ、ドリス・レッシングの黒猫、トマス・ハーディのテスなどを引き、人間と猫の親密な関係を考察‥‥「猫は自分の本性に従って生きるが、人間はそれを抑圧して生きる」



  • ハニオ日記 I 2016-2017(扶桑社 2021)石田 ゆり子349


  • 2016年の春 、石田ゆり子は生後約1週間の仔猫兄弟を保護する。ハニオ(茶トラ)とタビ(白ソックス)。ハニタビ兄弟は雪(ゴールデンレトリバー)とビスク先輩(チンチラ)に迎え入れられ、ゆり子邸で一緒に暮らすことになる。おかーさん(ゆり子)のミルクまみれの日々。2017年正月、ビスク先輩がライオンカットされて戻って来たが、ハニオは新入りの「りすさん」だと思っていて気づかない。3月25日、16年間一緒に暮らしたビスクが永眠する。1年前に保護された日から逆算して5月1日、ハニタビ兄弟は満1歳の誕生日を迎えた



  • 死、欲望、人形(国書刊行会 2021)ピーター・ウェブ+ロバート・ショート348


  • 「評伝ハンス・ベルメール」 は全10章中8章をピーター、「ベルメールとシュルレアリスム」 「イマージュの解剖学」 の2章をロバートが執筆している。ベルメール(1902-1975)は少女の球体関節人形で知られるが、人形に人工着色した写真やエロティックなイメージを透視画風に重ねた繊細なドローイングやエッチングの作品の方が数多い。彼が希求したのは窃視症的なポルノグラフィではなく、その向こうに隠されている未知なる領域への探求だった。カラー口絵36点(16頁)、図版303点、巻末の略年譜、索引、図版リスト、参考文献も豊富で充実



  • 秘密の花園 2(小学館 2021)萩尾 望都347


  • 「ランプトンは語る」に繋がるエピソードの完結篇。アーサー・クエントン卿の館に身を寄せた2人。アランは東屋で眠り続け、エドガーは絵(ランプトン)のモデルとなる。画家アーサーの執事マルコ、初恋の女性パトリシアと兄パトリック、元婚約者ダイアナと弟ダニー、妻ディジー、パトリシアの夫オリバー、ポールとポーラ兄妹、早世したドミニクの母ドロシー、父グローブの娘セシリアなど、登場人物が入り乱れるが、主要テーマはアーサーとパトリシアの悲恋で、結核で死去した後にバンパネラとなって甦生するアーサーの物語が描かれる



  • ハニオ日記 III 2019-2021(扶桑社 2021)石田 ゆり子346


  • 「II 2018-2019」 のラストで、石田ゆり子は動物病院に保護されていた生後2カ月の仔猫(マンチカン)を世話することになったが、ばぶおは4日後(2019/7/19)に急逝‥‥ところが1年後(2020/7/1) 、ばぶおと良く似た同じような境遇の同種の仔猫が生まれ変わりとして還って来た。おかーさん(ゆり子)、雪(ゴールデンレトリバー) 、ハニオ(茶トラ)、たび(サバトラ)、はちみつ兄弟(立ち耳スコティッシュ)、ばびぶー(仔猫)‥‥人間1人、犬1頭、猫5匹が暮らす「ゆりごろう王国」もコロナ禍の引き蘢り生活を余儀なくされる



  • ハニオ日記 II 2018-2019(扶桑社 2021)石田 ゆり子345


  • インスタ(Instagram)に投稿されている 「ハニオ日記」 が3巻本として書籍化された。ネコが一人称視点で語る小説やエッセイは珍しくない。ハニオ(ぼく)が写真と短文を綴る日記で、頁右上の年月日にハ、ユ、タ、はち、みつ‥‥と記してあるように、ハニオ(ハ)、おかーさん(ユ)、ゴールデンレトリバーの雪(ユ)、白ソックスのたび(タ)、立ち耳のスコティッシュ兄弟はちみつ(はち/みつ)というように視点も変化する。「びーじー」 とは著者が出演していたTVドラマ 「BG〜身辺警護人〜」(2018)など、注釈があっても良かった



  • ペガサスの挽歌(烏有書林 2012)皆川 博子344


  • 夜警のバイトをしている学生・吉田くんがビルの壁の中に棲む昆虫と会話する 「コンクリ虫」。音楽プロデューサの和久(私)がSSWのカズと男女フォーク・デュオ 「ムギとヒマワリ」(カズの妹くみ子)を所属音楽事務所から引き抜く 「地獄のオルフェ」。再婚した亜里子(私)が夫・村上利之の次男・裕司と不倫する 「ペガサスの挽歌」。画廊で油絵の個展を開いた河野早穂子と沖本律子が交際する 「試罪の冠」‥‥児童文学同人誌「アララテ」に掲載された 「初期児童文学作品」 と70年代に発表された単行本未収録作品全12篇を収録した 「日本語の醍醐味 4」



  • LIVE IDOL GRAVURE collection 04. Rena Kawai(LIG COLLECTION 2020)343


  • カワイレナは2020年12月にアイドル・ユニット、ラブアグレッションを卒業。2021年1月、名古屋を拠点に活動しているアイドル・グル ープ、手羽先センセーションに加入した。手羽センは加山雄三や森山良子などが所属するメジャー・レーベル(dreamusic)からアルバムをリリースしている。大学卒業後は1度就職して社会人になって欲しいという両親の意向に抗って、レナちゃんはアイドルの道へ進んだ。地下アイドルのまま終わってしまうのかという心配は杞憂だった。ラブアグレッション時代の写真集(B5判・64頁)は水着ショットが多い



  • 鳥少年(東京創元社 2013)皆川 博子342


  • 精神病院で実施されている絵画療法を取材した作家・江森朔郎と医師 ・穂積桃子、看護婦・小野和子などの手紙による書簡体ミステリ 「火焔樹の下で」。肉屋の2階に下宿した娘(わたし)がベニヤ板の仕切りと天井の隙間から隣室の若い女性を覗き見る 「密室遊戯」。矢藤鳰子を暴行した少年たちの1人・木谷秋久(運動性失語症)を彼女が保護観察する 「鳥少年」など13篇に、「泣く椅子」 「バック・ミラー」 「沼」 の3篇を増補した初期単行本未収録短篇集。髪に花輪を飾り、半身を沼に沈めた女性を描いたカヴァ・イラストは伊豫田晃一の 「美女と野獣」



  • 夜廻り猫 7(講談社 2020)深谷 かほる341


  • 単行本第7巻は全90話(541~630話)を収録。殆どは「モアイ」でも読めるが、単行本には見開き左頁に8コマ・マンガ、右頁に扉絵が掲載されている。つまり約半分(90頁)は描き下ろしなのだ。モネ、宙さん、ラミー、らぴ(パピヨン犬)、帽子猫、ニイ、ゼン(1人集会猫)、モフモフ、カラーとメロディ姉妹、元・重郎、雑巾野郎たち 、ミーコ、痔猫など新旧キャラが登場。主役の遠藤平蔵と重郎以外では全17話に出演した夜廻り見習いワカルの活躍が目立つ。カラー口絵(3頁)、夜廻り新聞、あとがきまんが 「さっちゃんの薬」(5頁)付き


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