震災大惨事 [p a l i n d r o m e]
広末 涼子『ヒロスエの思考地図』
□ 氏名:仲間由紀恵、愛撫マブい。喘ぎ湯、賄い飯
映画 「ガメラ3 邪神覚醒」(1999)の女性キャンパー役は酷かったが、仲間由紀恵はTVドラマ 「TRICK」(2000)の山田奈緒子役や 「ごくせん」(2002)の山口久美子(ヤンクミ)役でブリイクした。「相棒シリーズ」(2014)の社美彌子(警視庁総務部広報課長)役や 「24 JAPAN」(2020)の朝倉麗(女性総理候補)役ではミステリアスでありながらも、貫禄のある演技で魅了した。抱擁したくなるほど可愛いのに、近寄りがたい気高さがある。久々のオフ日、彼女は双子の子供たちを実家に預けて一人旅。本当は花粉の飛ばない沖縄で旧友たちと一緒に寛ぎたかったのだが、気分転換を兼ねて鄙びた秘湯へ出かけることにした。懸念していた通り、人里離れた温泉に入っている時に思わず咳き込んでしまった。いっそ爽快な嚏よりも不快な咳が止まらない。もしかしたら花粉症ではなく、寒暖差アレルギーなのかもしれない。夕食は温泉宿の裏メニュー「賄い飯」が美味かった。
□ 背・肩、歪なの。愛で刈る脚 「アルカディアの夏」 引いた風邪
素肌の露出が増える夏季にはムダ毛の処理が欠かせない。腕や脚だけでなく、夏服で露わになる背中や肩などの処理も怠らない。ミニスカートから長く伸びた脚のラインは自分でも気に入っているだけに入念に刈り取った。昨今は女子だけでなく、男子にも「全身脱毛」が流行っているらしい。お肌スベスベ男子はキモくないか。毛髪だけは脱毛しないで逆に増毛しようとさえするのだから、そもそも「全身脱毛」ではないし。女子だって眉を濃く描き、睫毛もマスカラでエビ天の衣のように増やす。元祖腐女子の令(中3)は風呂場で全裸になって「全身脱毛」していたせいで夏風邪を引いてしまった。夏期講習の帰りに新宿Lデパートの7階で、頭脳警察のライヴを観た。「パンタ(パンダじゃないよ)がワサワサヘアを振りたてて、声をしぼり出す」。パンタは「全身脱毛」なんか死んでもしないだろう。母親と情夫(娘の家庭教師)に無断で私室に入られた。転校する同級生・皓ニから譲り受けたカトキン(コノハズク)が開け放された窓から飛んで行った。1年前の父親と同じように、令も家出することにした。 「アルカディアの夏」 の出来事である。
□ まさかサツマイモ落ち、重い。真っ逆さま
フィービー・ブリジャーズ(Phoebe Bridgers)が「台所にブラックホールが出現した」、ジュリアン・ベイカー(Julien Baker)がザ・キュアー(The Cure)の 「〈Boys Don't Cry〉を口ずさむ」、ルーシー・ダカス(Lucy Dacus)が「いつだって天使や神さまにはなれない」と歌う〈Not Strong Enough〉は20代後半女子の愉しげなMVとは裏腹に、内省的な歌詞だった。フィービーもルーシーの愛読書『紙葉の家』(House of Leaves 2000)を読んだのかしら。天才少年(Boygenius)のヒット曲を聴きながら、激安スーパーで大量購入したサツマイモを床下貯蔵庫に入れようとしたら、勢い余って重い芋袋ごと落ちてしまった。ウサギの穴に落下した少女みたいに。重力に反して落下スピードもゆっくりで、ふんわりと地下に着地した。薄暗闇の穴の中で一人自問する。ここは一体どこなのかしら? アリスが迷い込んだワンダーランド、それともネイヴィッドソンたちが探検することになるブラックホールなのかと、大きな芋袋を抱いて思案する私だった。
□ 隣人嫌悪と穏健心理
あなたはアパートやマンションの隣人のことが気に懸かる、それとも全く関心がない?「秋深き隣は何をする人ぞ」なのか、見ず知らずの他人のプライヴァシーを尊重して「我関せず焉」なのか。隣に住んでいる人と面識がない(誰だか分からない)という状態よりも、少しは顔見知りになった方が良いのではないかと思う。万が一、地震や火災など緊急事態が起きた時に見知らぬ他人同士ではコミュニケーションも難しいのではないか。その意味でも集合住宅で行う防災訓練は欠かせないし、子供のいる世帯では住人たちの親睦会も大切である。3・11同時多発テロの標的になったツインタワーの最上階から階段で地上へ降りるのに20分も要したという。見晴らしの良い高層マンションも肝腎のエレヴェータが動かなければ孤立した空中楼閣、バベルの塔やゴシック建築のようなものではないか。タワマンよりも、来るべき核戦争に備えた地下シェルターの方が安全なのかもしれません。
□ 体罰で耐える、ブルブル震えた。撤廃だ!
生前の坂本龍一は 「児童を虐待死させる親は死刑だ」 と発言していたような気がする(ウロ覚え・要出典)。「全共闘をやりながら、けっこう右翼化してまして、長髪をばっさり切って、長い黒のコートに革の手袋して、見た目右翼でした」 《警備の機動隊に 「三島の首に会わせろ」 なんてドナったら、機動隊のやつ、てっきり僕のこと右翼だと思って、「すいません、それは出来ません」 なんていって最敬礼しやがんの。右翼はいいなぁ、と思ったね。そのとき。だって日頃デモでポカポカ殴られているんだからね。カタチは大事だねぇ」》と、鈴木邦男(一水会・元代表)との対談で語っているくらいだから、然もありなんという感じである。医師、教師、運転手など、免許制の職業に就ている輩でさえセクハラ、パワハラ、煽り・暴走などの事件や事故が絶えない。本来その職業に就いてはいけない不適格な人たちが多すぎるのではないかと思う。いっそのこと「結婚・出産・育児」も免許制にしたらどうかしら(保護猫の里親になるのにも厳しい審査があるというのに)。これも暴言でしょうか?
□「ホットドッグいる、幾つ?」とドツボ
クリスマスに学校を退学し、ロンドンの公衆浴場に浴室係として就職したマイク(ジョン・モルダー・ブラウン)は年上の金髪女性に恋心を抱く。接客係のスーザン(ジェーン・アッシャー)には婚約者がいたが、15歳の少年の「熱愛」は冷めるどころか逆に燃え盛って、今で言うところの「ストーカー」と化してしまう。 スーザンに良く似たストリッパーの等身大ヌード・パネルを盗み出し、プールで抱いて泳ぐ。雪の中に落としたスーザンの婚約指輪を見つけるために大量の雪を大きなビニール袋に詰め込んで運び、水のないプールで溶かすところなど、イエジー・スコリモフスキ監督が撮った映画 「早春」(Deep End 1970)には胸に沁み入るような場面が幾つもある。極めつけは会員制クラブの前でスーザンの帰りを待っているマイクが屋台のホットドッグを黙々と食べ続けるシーンだ。最後には同病相憐れんだ店主が金はいらないからと、無料で少年に手渡す。たとえホットドッグを何十個食べても満腹にならない。「愛の飢餓」 は永遠に満たされることはないのだ。
□ マジ割れた地に死に血垂れ輪島
新たな原発誘致・建設の安全性について、活断層の有無が議論になって来た。建設計画地の地下に活断層がなければ「安全」みたいな似非科学的な根拠が流布されている。2024年元日に起こった能登半島地震の惨状を目の当たりにするまでもなく、活断層があろうとなかろうと、日本国内のどこであろうと地震は必ず起こる。今後30年以内に70~80%の確率で発生すると政府が予測する南海トラフ地震や最悪の場合には死者約2万3000人を想定しているという首都直下地震に限らず、地震列島に暮らしている人々はいつかどこかで被災する可能性を免れない。石川県輪島市などで起きた隆起や亀裂・陥没は深刻だ。たとえ耐震構造を満たした鉄筋コンクリートのビルやマンション、住居や家屋などを建てても、建設現場の地盤が緩ければ根こそぎドミノ倒しのように容易く倒壊してしまう。原子力発電所にとっては致命的な大惨事に至る。能登半島地震で被災した円龍寺(珠洲市高屋地区)の住職・塚本真如さんは《どこで何があるか分からん。本当に珠洲原発を止めて良かった》と語っている。
□ 語れ!「震災関連死」、地震・煉瓦、遺産知れたか?
2024年1月1日午後11時過ぎに、石川県能登で最大震度7の地震を観測したという「震度速報」がTVから流れた。午後4時過ぎに起きた1回目の地震と同じく、東京は全く揺れを感じなかったので信用してしまったが、その直後に誤報として取り消された。震度速報を出す際に誤って約7時間前に起きた地震の内容を流したというのだから、おそ松くんで情けない。TV画面が「ニュース速報」に切り替わって、女子アナが同じ情報を執拗に何度も繰り返し、レギュラー番組が飛んでしまったのだ。そもそも気象庁が代表して地震速報を発表することに違和感がある。豪雨、強風、台風は地上、地震は地下で発生する地球の自然現象だからだ。政府は直ちに「地震庁」を発足させて、地震予知、避難計画、耐震構造などの研究に特化すべきである。起きるかどうか不確かな有事に備えて莫大な軍事費を計上するよりも、近い将来に必ず起こる地震対策に予算を当てるべきである。地震は天災だが、震災関連死は人災である。PTSDや劣悪な避難所の環境などによって、助かった命が失われるのは辛い。瓦礫の中に埋もれていた「遺産」が発見されても、引き取り手が誰もいないのは虚しい。
□ 悪い弟子が黒ヒゲ刺す。樽で、ひとっ飛び出る。出す叫び、録画しているわ
俺は海賊ユーチューバー黒ヒゲだ。今回は実写版「黒ひげ危機一発」に挑戦するつもりだ。実物大の木樽底にバネを仕掛けて、ダミーの短剣を刺す切り口を数箇所に開ける。どこか1つに短剣を刺すとランダムで黒ヒゲが樽から上に飛び出すのはゲーム玩具と同じだが、樽の中には生身の黒ヒゲ(俺)が入り、部下の弟子(見知らぬ通行人)に短剣で刺してもらう。人通りが比較的少ない街角に密かに等身大の「黒ひげ危機一発」を設置する。赤い郵便ポストや安部公房の「箱男」のように。見事に俺を飛び出させた勝者にゲーム版「黒ひげ危機一発」をプレゼントする玩具メーカーT**とのコラボ企画だ(黒ひげを 「飛び出させた人の負け」 というイメージが定着してしまったが、本来は 「飛び出させた人が勝ち」 というルールだった)。もちろん、その一部始終の顛末を録画した動画をユーチューブ・チャンネルで近日中に公開する予定だ。
□ 奇人・奇行より 「絵図ロビン・フッド」。秘話一つ文、広末涼子 「禁色」
『ヒロスエの思考地図』(宝島社 2022)は広末版「折々のことば」の趣き。「私の好きな哲学者の言葉、尊敬する女お生の方々の言葉とともに、つれづれなるままに書き綴らせていただきました」 「『私の好きな哲学のコトバ100』にしたかったのですが、今回は60でご容赦ください(笑)」 と巻頭にあるように、デカルト、カント、ニーチェなどの言葉を掲げて持論を展開する。従来のアイドル・女優本らしくカラー写真(16頁)も挿み込まれているが、約2年をかけて書き下ろした初エッセイである(彼女はエマニュエル・トッドの著作も読んでいるのか?)。これだけ哲学書を読み込んでいる「ポジティブ人間」が何故に世間を騒がせた 「W不倫〜離婚」(活動自粛〜独立)というスキャンダルになってしまうのか不思議に思う。復帰後の映画出演は女性版アニメ「ロビン・フッド」になりそうだが、謹慎中に書いた第2エッセイ集は 「禁色」 というタイトルになるのではないかと噂されている。
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- 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい^^;
- 皆川博子先生の短篇 「アルカディアの夏」(1973)から引用しました
- 「珠洲原発を止めて 「本当によかった」 ‥‥」(東京新聞 2024・1・23)を参照しました
- 「早春」(Deep End 1970)を数十年ぶりに再視聴しました。冒頭の面接を受けるマイクに映り込んでいる照明器具がラストの伏線になっている。地下鉄でポーランド語の新聞を読む乗客としてイエジー・スコリモフスキ監督が自らカメオ出演しています
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- 著者:皆川 博子
- 出版社:早川書房
- 発売日:2015/06/04
- メディア:文庫(ハヤカワ文庫 JA ミ 6-6)
- 目次:トマト・ゲーム / アルカディアの夏 / 獣舎のスキャット / 蜜の犬 / アイデースの館 / 遠い炎 / 花冠と氷の剣 / 漕げよマイケル / 解説・日下 三蔵
- Artist: boygenius
- Label: Interscope Records
- Date: 2023/03/31
- Media: Audio CD
- Songs: Without You Without Them / $20 / Emily I'm Sorry / True Blue / Cool About It / Not Strong Enough / Revolution / Leonard Cohen / Satanis / We're In Love4 / Anti-Curse / Letter To An Old Poet
- 出演:ジェーン・アッシャー(Jane Asher)/ ジョン・モルダー=ブラウン(John Moulder Brown)
- メーカー:復刻シネマライブラリー
- 発売日:2020/06/08
- メディア:Blu-ray(デジタル・リマスター版)
- 内容:学校を中退し、ロンドンの公衆浴場兼プールで接客係として働き始めた15歳のマイク(ジョン・モルダー=ブラウン)。彼は、そこで働く年上の女性スーザン(ジ ェーン・アッシャー)に恋心を抱く。だが、スーザンは、クリス(クリス・サンフ...
- 著者:広末 涼子
- 出版社:宝島社
- 発売日:2022/04/14
- メディア:単行本
- 目次:私とは何か、他者とは何か / 女優という仕事と向き合う / 女性として、愛することと恋すること / 子どもと共に、家族と共に成長していく / 人生、偶然と必然の狭間で
2024-03-21 00:01
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