くすまぬマスク [p a l i n d r o m e]
広瀬 すず 「オフの日の過ごし方」
□ 広瀬すず吐く、須磨のペアが「アベノマスク」外すゼロ日
「緊急事態宣言」が解除されてから2週間後、広瀬すずは恋人と神戸市須磨区にいた。須磨海岸をオレンジ色の染める夕陽を眺めながら、ロマンティックな気分に浸っていた。仕事がないのにコロナ禍で外へ出かけられない。不祥事は何も起こしていないのに自宅謹慎中みたいで、ストレスが溜まり気分も晴れなかった。待ちに待った久々のプライヴェート旅行である。「スマスイ」(須磨海浜水族園)の「波の大水槽」で優雅に泳ぐサメやエイ、「イルカライヴ館」でダイナミックなイルカショーを見た。須磨離宮公園で「王侯貴族のバラ園」や噴水を眺めた。須磨浦山上遊園のロープウェイに乗って、山頂から瀬戸内海を一望する。日本一乗り心地が悪い乗り物だという「カーレーター」にも乗ってみた。イタリア料理店のテラス席でピザも食べた。暮れなずむ夕景に見惚れながら、ホッと吐息をついて小さな布マスクを外す。2020年6月某日、兵庫県の新型コロナウイルス感染者・死者数はゼロだった。
□ 子も「コロナ籠もり」飛び火。一人模糊なロコモコ
コロナ禍で公立中学校も休みになってしまった。ボクの母親(シングルマザー)は自宅でテレワークというわけには行かず、今日も朝から出社している。朝食と夕食は出来る限り一緒に摂ることにしているが、昼食は自分で作らなければならない。不要不急の外出も外食も禁じられている。お昼前に冷蔵庫の中を覗き込んで、ランチの献立を思案する。買い置きしていたハンバーグ(レトルト)と鶏卵、ミニトマト、キャベツなどがあった。両親が離婚する前にファミレスで食べたことのあるハワイ料理のロコモコを思い出した。美味しかったことだけは憶えているけれど、うろ覚えで曖昧模糊としているので、ネットのレシピを参考にした。グリーンリーフ(レタス)はキャベツで代用。味つけは中濃ソースとトマトケチャップ。電子レンジで冷凍解凍したホカホカの白飯の上に、目玉焼きと温めたハンバーグを載せるだけでロコモコ丼の出来上がり。丼ものの一品料理は後片づけも楽チンだ。
□ 仕出し始めた、9〜4時、試食、試しはしたし‥‥
自粛休業を余儀なくされた中華料理店「五十七番」は苦肉の策として、店頭で仕出し弁当の販売を始めた。青椒肉絲、ニラ玉子、麻婆茄子、油淋鶏、黒酢酢豚、海老チリ、餃子、焼売、春巻き、肉団子‥‥弁当用のトレイの間仕切りに白飯と2〜3品の料理をバランス良く詰め合わせる。販売時間は午前9時から午後4時まで、午前中はランチ弁当、午後には夕食用に1品料理も売り出す。価格は税込500円に抑えた。販売する前に家族や友人、常連客にも試食してもらった。仕出しの注意点は料理を冷ましてから詰めること。出来立ての温かい弁当を常時販売するテイクアウト専門店との大きな違いである。高温多湿の梅雨や初夏の季節を迎えるに当たって、一番怖いのは食中毒である。「緊急事態宣言」が解除されて営業を再開した後も売り上げは半減。コロナ禍で途絶えた客足は戻らない。「持続化給付金」も未だに届かない。仕出し弁当の販売も当分続けて行くつもりである。
□ 毟る草、悶え絶えた猛者苦しむ
早朝ジョギングしていた女性が公園で倒れていた男性を発見した。スマホで119番通報すると、約10分後に救急車が駆けつけた。救急隊員によって速やかに緊急搬送されて、病院で死亡が確認された。死後のPCR検査で陽性だったことも判明した。死んだ男性は1週間前に発熱(38℃)したものの翌日平熱に戻ったので通常勤務を続けていた。ところが2日前に再発熱し、躰が怠く味覚もないことから、コロナウイルス感染を疑った男性はコールセンターに電話したが、PCR検査を断られたという。近所の病院へ行く途中で、息苦しくなって力尽きたらしい。公園内の植込みに倒れていた男性は右手で草を握り締め、爪の中には土が入っていた。悶え苦しみ、無意識裡に藁をも掴む思いで下生えの雑草を掻き毟ったのだろうか。家族や親族に見送られることもなく火葬されたが、大学時代に柔道部の「猛者」と怖れられた男の面影は消えていた。
□ 賭け麻雀、怖いわ。今夜G負けか?
コロナ自粛中に某社の新聞記者たちと賭け麻雀をしていることがバレて辞職した元検事長。「訓告」という軽い処罰に留まり、今のところ逮捕される気配もない。某マンガ家は現行犯逮捕されても、「上級国民」は捕まらないのか、テンピン(1000点=100円)という低レートならば賭けても良いのかという批判の嵐が巻き起っている。同じレートの賭け麻雀で捕まる人と捕まらない人が出ること以上に、緊急事態にも拘わらず、平気で麻雀を長時間続けるメンタリティの方が怖い。そもそもマンションの狭い一室(1LDK)で卓を囲むこと自体が密閉・密集・密接の3密ではないか。それとも4人はマスクやフェイスシールドを着けていたのだろうか。緊急事態宣言中に開店しているパチンコ店へ都府県を跨いで遠出するギャンブル依存症者と変わらないではないかとさえ思う。都内のパチンコ店から出て来たマスク男が連れに話していた‥‥「今夜のプロ野球はジャイアンツ(G)が敗ける方に1万円!」。
□ 振舞うジャスミン・パン、アンパン、水、野次馬、流布
パン工房「茉莉花」の大人気商品はジャスミン茶葉を練り込んだ「ジャスミンパン」。ジャスミンの甘く濃厚な香りが若い女性を惹きつけて止まない。「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」の休業要請を受けて一時自粛していたが、創業50周年となる6月から営業を再開した。商業記念日の11日から4日間、名物の「ジャスミンパン」、ミニ餡パン、ミネラルウォーターの3品を先着50名に無料配布する。来店客にはマスクの着用、手指の消毒と検温をお願いし、2mの間隔を空けて並んでもらう。売り子はフェイスシールドに手袋、レジの前を透明ヴィニール・カーテンで仕切り、売場の菓子パンを予め個別装した。初日は早朝から店舗の前に行列が出来た。店主は「3密」を避けるため、開店の1時間前に整理券を配布した。大々的に告知をしたわけでもないのにSNSなどで情報が拡散したのか、スマホで「茉莉花」の写真を撮る物見遊山の野次馬も少なくなかった。
□ 夜飯を異性食べない鍋、大勢を占めるよ
満漢全席のように複数の客が円卓を囲んで大皿から料理を箸で取る、バイキングのように料理をトングで取り分ける‥‥箸に付着した唾液やトングに触った手から新型コロナウイルスの感染が拡がったのではないかという。2人以上の男女が1つの鍋を食する日本料理も感染のリスクが高そうだ。「芸能界のグルメ王」の異名を持つXに夜飯を誘われて、高級鍋料理店に行ったのだが、そもそも私は鍋が好きではない。Xとは1つの鍋を互いの箸で突つくような親密な関係ではないし、コロナウイルスに感染するリスクもある。湯気のカーテン越しに鍋料理の講釈をペラペラと得意げに垂れる「グルメ王」にも辟易した。可愛い元モデル・女優と結婚して子供も産まれたのに、見境のない女遊びは止まないようだ。翌日のTVニュース番組で、私は「大勢を占める」を「おおぜいをしめる」と読み間違えてしまったが、生放送中に訂正されることはなかった。
□ 感染拡大、3密悔いた。退屈民、在宅感染か?
新型コロナウイルスの感染拡大で、WHO(世界保健機関)は2020年3月11日にパンデミック宣言した。日本でも4月7日に7都府県(埼玉、 千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡)に緊急事態洗顔が発令された。都内では6月2日に「東京アラート」が発動されて、都庁とレインボーブリッジが夜の街へ誘惑するような妖しい紅色に染まった。「コロナ禍」「巣籠もり」「濃厚接触」「アベノマスク」「Stay Home」「自粛疲れ」「テレワーク」「リモート」「ソーシャル・ディスタンス」「咳エチケット」など‥‥様々なコロナ関連の新語が生まれたが、新語・流行語大賞の最有力候補は「3密」でしょう。換気の悪い密閉空間、多くの人たちが密集している場所、互いに手の届く近距離で会話や発声する場面‥‥密閉・密集・密接の3条件の重なるシチュエーションは感染拡大させるリスクが高いと考えられていることから生まれた戒めの言葉である。「3密」と表記するのは「三密」の本来の意味(密教用語)と区別するため。最大の「3密」は性交(乱交パーティ?)かもしれない。
□「にゃんぱく宣言」ニャンコが今夜。人間急く、パン屋に
TVCMの「にゃんぱく宣言」には同意出来ないところがあるにゃん。「家の外に出してはいけない」という歌詞である。飼いネコは屋内に留め置いた方が安全で長生きするのかもしれないが、お外に出たがるネコを無理に家の中に閉じ込めるのは断乎反対する。「コロナ籠もり」のヒトと同じく、ネコにとってもストレスになるからだ。日本全国の飼いネコに外出禁止命令を出したら、岩合さんにネコ写真を撮ってもらえないではないか。野外で暮らすノラネコたちの視点が欠けているのも気になる‥‥というわけで、僭越ながら吾輩が「真・にゃんぱく宣言」することにした。《室内に閉じ込めず、自由に外出させろ。眠っている時は邪魔するな。おやつに「CIAOちゅ〜る」を用意せよ。ゴロニャンしたら、お腹を撫でろ。毎日ブラッシングして、ノミやダニを取り除け。首輪のチャームに飼いネコの名前と飼主の連絡先を書いておけ。ネコが飽きるまで一緒に遊べ。トイレを綺麗に掃除しておけ。好きなところで爪を研がせろ。ノラネコを虐待するな》‥‥「はりねずみパン」を吾輩にも食わせろ!
□ 夜廻り猫、キム・ゴードン会い。餡ドー、小麦粉練り和マヨ
「泣く子はいねが〜」と呼びかけながら夜廻りしていた強面ネコの遠藤平蔵と子ネコの重郎が「涙の匂い」を嗅ぎつける。人気のない公演のベンチに金髪女性が座っていた。久し振りに来日したキム・ゴードン(Kim Gordon)はヨシミ(Yoshimi P-We)と会い、フリー・キトン(Free Kitten)のニュー・アルバムについて話し合った。彼女との雑談の中で、美味しい「餡ドーナツ」を売っている和菓子店の情報を得た。キム姐さんは大の和菓子好き。餡子には目がない。喜び勇んで、教えてもらった和菓子屋に行ったのだが、運悪く定休日で閉まっていたという。平蔵は宙(ちゅう)さんに頼んで、老作家先生の家で一緒に「餡ドーナツ」を作ることにした。小麦粉・水・砂糖・バター・卵などを混ぜた生地で餡子を丸く包み油で揚げる。熱々のドーナツにグラニュー糖を塗して出来上がり。老作家先生によると、* *屋の「餡ドーナツ」は隠し味にマヨネーズを入れているそうだ。キム姐さんと宙さん、平蔵と重郎が喜んで食べたのは言うまでもない。
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- 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい^^;
- 「アベノマスク」 「コロナ籠もり」 「3密」 ‥‥コロナ禍一色の回文になってしまった
- 「イイトコどりの町、須磨へ行こう!」(icotto)などを参照しました
- 谷中・延命院の門柱の上で気持ち良さそうに睡っているメグちゃんを撮りました^^;
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- 著者:広瀬 すず
- 出版社:日経BP
- 発売日: 2018/06/14
- メディア:単行本
- 内容:10代最後の1年を振り返り、20代への決意を初めて語る。初公開写真100点以上。広瀬すず20歳メモリアル・フォトエッセー
- 著者:深谷 かほる
- 出版社:講談社
- 更新日:2020/04/10
- メディア:Webコミック
- 内容:ある夜、それはツイッタから始まった──。夜廻りをする猫・遠藤平蔵が心を癒す大人気の8コマ漫画が「モアイ」で連載開始。毎週月・金曜日の夜(平日のみ)に『夜廻り猫』の新作をお届けします
- Artist: Kim Gordon
- Label: Matador
- Date: 2019/10/11
- Media: Audio CD
- Songs: Sketch Artist / Air BnB / Paprika Pony / Murdered Out / Don't Play It / Cookie Butter / Hungry Baby / Earthquake / Get Yr Life Back
2020-06-21 00:22
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