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跨ぐ鳴くタマ [p a l i n d r o m e]



  • ある日、ある時。かわいいにゃんこの写真を眺めていたら、なぜか突然、臥薪嘗胆とか、眉目秀麗とか、自縄自縛といった四字熟語が頭に浮かんできた。で、写真の横にその漢字を書きつけてみたところ、あれー、何だか面白いではないの。ひょっとして、これで四字熟語辞典を作ってみたら愉快千万(ゆかいせんばん)なのではと思い立って、にゃんこの写真を片っ端から見始めた。でも、これが艱難辛苦の始まり。なにしろ、にゃんこたちの写真は大概が、寝ているか、怒っているか、何かをかじっているかで、大変バリエーションが少ない。これをじーっと睨みながら、わが脳みそに四字熟語が舞い降りてくるのを待つわけなんだから。もう苦心惨憺、七転八倒しながら、粒粒辛苦の末に作り上げたのがこの本という次第。子どもたちが四字熟語を覚えるのにもこの本は役に立つかもしれません。しかも、大人になってもその熟語とともににゃんこの姿を思い出すかも。それも欣快至極!
    西川 清史 『にゃんこ四字熟語辞典』


  • □ 猫耳・尾、何でウラ撮り? 切り貼り切りトラウデン直美、巫女ね
    お昼のワイドショーで司会者に「トラウデン‥‥」と言い間違えられたコメンテータのトラウデン直美は一瞬戸惑い、言い直すMCに笑顔で応対したが、腑は煮えくり返っていた。密かにライヴァル視しているトリンドル玲奈に名前を間違えられるとは腹立たしい。怒り心頭どころか、鶏冠に来た憤怒は治らない。SNSに投稿されたハロウィンのコスプレ姿、猫耳と尻尾をつけて黒猫に仮装したトリンドルの写真も赦せない。少女マンガのヒロインみたいな不自然なデカ目は明らかに加工細工したことが一目瞭然なのだ。猫耳も尻尾のコラージュではないかという疑いも湧いて来た。トラウデンはコピペしたトリンドルのコスプレ写真を切り貼りして、可愛いらしい黒猫から凶暴な化け猫に変貌させた。二次元のネコが立体化するのに時間はかからなかった。丑三つ時、ある神社の神樹に五寸釘で藁人形を打ち付ける白装束姿の女がいた。鉢巻の左右に赤々と燃えるロウソクが鬼の角のように見えなくもない。

    □ 冷め湯気立つマイコフィリア、この木にキノコあり。イブ乞い待つだけ夢さ
    マイコフィリア(きのこ愛好症)の人たちは森羅万象をキノコに関連づけてしまう。UFO信者が何でも宇宙人の仕業に結びつけてしまうように。ある説によると、サンタクロースはベニテングタケの化身だという。赤い衣装と白いボンボンのコスチュームが赤と白い水玉模様の毒キノコに酷似しているからだ。サンタがクリスマスツリーの下に置くプレゼントは樅の木の下に生えたキノコをイメージしているらしい。クリスマスが「幻覚キノコ・パーティ」だったのかどうかは兎も角、草間彌生の巨大な水玉キノコを見上げると、キノコを食べて小さくなった不思議の国のアリスになったような気がする。クリスマスの朝、煌びやかに飾ったクリスマスツリーの下にプレゼントの箱があった。イブの夜の願いがサンタさんに通じたのかとマイコフィリアの若者たちは欣喜雀躍したが、幻覚誘発性のマジック・マッシュルームではなく、地味な焦茶色のマツタケだった。喜んだのは食通の高齢者だけだったりして?

    □ 霞んだ軒サウナ、夜な夜な兎のダンスか?
    鹿子の木に生えているマジック・マッシュルーム(幻覚誘発性キノコ)を獲った夢野探検隊の一行は宿舎に戻って早速、試食することにした。隊長以下全員がキノコ汁を腹いっぱい食べたのに、小1時間経っても誰にも異変が起こらなかった。加熱調理したことで幻覚効果が薄れてしまったのか、腹が膨れて眠くなっただけだった。隊員たちは宿舎の軒下に隣接するサウナ風呂に入って気分転換することにした。サウナ〜水風呂〜休憩を3回ほど繰り返して心身共に整った隊員たちが軒サウナから外へ出ると突然、目の前に白兎が現われた。三匹の子兎たちが朧月夜の下で、文明堂のTVコマーシャルみたいに歌い、嬉々として踊り出したのだ。不思議なことに、耳馴染みのある「♪ カステラ一番、電話は二番‥‥」というCMソングではなく、子供の頃に歌った童謡 「うさぎのダンス」 だった。可愛い子兎たちのダンスに釣られて、いつの間にか隊員たちも 「♪ そ、そら、そらそら、兎のダンス」 と、全員笑顔で唱和していた。〈 「きのこ会議」 ‥‥大きい鹿子の木〉の続編です。

    □「にゃんこ四字熟語辞典」読んで地獄湯、次女今夜に
    3年ぶりに行動制限のない年末、仲の良い姉妹は温泉旅行に出かけた。大分県別府の「地獄めぐり」は海地獄、血の池地獄、龍巻地獄、白池地獄、鬼石坊主地獄、鬼山地獄、かまど地獄の七カ所を回遊する温泉ツアー。年末年始の 「べっぷ地獄めぐり」 は「鬼っ子とじゃんけん大会」 「べっぷ地獄めぐりスタンプラリー」 「鬼っ子と記念撮影タイム」 など、色々なイヴェントも目白押しで、全国旅行支援の「旅割クーポン」も使える。地獄巡りという名の極楽旅である。純真無垢で品行方正の妹は行きの列車の中で読書三昧していた。『にゃんこ四字熟語辞典』(飛鳥新社 2022)は中国伝来・日本由来の四字熟語(全99語)に、ネコの画像を添えた写真集。四字熟語とネコ写真の絶妙なコラボに大驚失色・吃驚仰天・興味津々・無我夢中 ・一心不乱・一笑千金・驚天動地 ・欣喜雀躍‥‥ネコ好きの妹は余程気に入ったのか、 旅館の寝床の中でもページを開いて、破顔一笑していた。

    □ マヌルネコ死、涙、孤児寝る沼
    日本で大人気のマヌルネコは《ネコ科の動物の中では、最も古い種。特徴的な厚い毛は雪の上や凍った地面の上に腹ばいになった時に体を冷やさないため。乾燥した高地の岩石で生活していて岩陰から覗いても目立たないように、目が高い位置についている。かつては、毛皮目的とした狩猟の対象になっていた。近年では、生息地減少により生息数が減少している。マヌルとは、モンゴル語で「小さいヤマネコ」という意味》である。ベッドの中で眠りに着く夜、僕は黄色い潜水艦や1人乗りの宇宙艇、大木勇魚やビョークのように、地下核シェルターや海の底へ降りて行く。今夜は深い沼の中にいた。モンゴルのゲルの中で飼っていたマヌルネコが死んだ。哀しみの涙に暮れた僕は亡き愛猫を抱いて深い沼の中に入る。戦争孤児の僕は本当に一人ぼっちになってしまった。沼の底は静かで、もの音一つしない。夢の中で眠り、朝起きると僕は死んだはずのマヌルネコになっていた。

    □ 近道、父の家饐え、命縮みがち
    音信不通になった父親の実家を久しぶりに訪ねた息子は変貌した外観に驚いた。手入れされていない中庭の草木はジャングルのように蓬々と繁り、半ば廃屋と化していたからだ。幼少の頃、父親と手を繋いで最寄りの駅までの路を歩いたことを思い出す。近所のスーパーへ買い物に行ったのか、幼稚園の送り迎えだったのか忘れてしまったが、「急がば回れ」 が父の口癖だった。近道は往々にして危険と隣り合わせ、遠回りした方が安全に目的地へ着く。早く母親を亡くした息子は父親に育てられたのだ。家を出て独立、就職、結婚してからは次第に疎遠になってしまったけれど、いつも父親のことは気に懸けていた。玄関ドアの鍵は十数年前と同じく、植木鉢の下にあった。室内に入ると饐えたような異臭が漂う。男の一人住まいとしては比較的整理整頓されていたが、人が生活しているという実態は感じられない。居間にも台所にも寝室にも父親の姿はなかった。呆然として立ち尽くす息子は貯蔵庫として使っていた地下室があったことに気づく。台所の床戸を開けて暗い階段を降りると、異臭が強くなった。貯蔵棚の横で蹲っていた人影を発見する。父親は異形なキノコ人間と化していた。

    □ 菓子舞うハロウィン、真冬。不満言うロバ・馬・鹿
    寅年のハロウィンは真冬の寒さだった。コロナ・ウイルス感染防止対策として発令されていた行動制限が3年ぶりに解かれたといえ、今でも多くの国民はマスクを着用している。渋谷のスクランブル交差点やセンター街でもマスク姿のコスプレ男女が少なくない。マスクは感染防止だけなく、防寒対策としても有効らしい。マスクを常用するようになってからは冬になってもインフルに罹らないし、口唇も皹割れない。裏通りの店では 「トリック・オア・トリート」(Trick or Treat)と言わなくても、仮装している子供たちにキャンディやチョコレ ート菓子を無料で振る舞っていた。ロバ、馬、鹿に扮装した「三バカトリオ」は足の踏み場もないハチ公前で立ち往生、混雑するスペイン坂を降りながら、暗澹とした気分に陥った。一昨日、韓国・梨泰院(イテウォン)で起きた群衆雪崩事故、158人もの若者たちが圧死した悲惨な事件を報せるニュース映像が目に焼き着いていたからだ。〈「ハロウィン、危ないな」‥‥不安、言う驢馬〉君の危惧が現実になってしまった。

    □ 2位激る魔、カタール・武士ブルー、高まる期待に
    カタールW杯(2022)が開幕した。強豪国ドイツ、スペインと同じ 「死の組」(グループE)に入った日本代表が「ベスト8」を目指すと聞いた時に耳を疑った。良くて1勝1敗1分、最悪の場合は3戦3敗もあるのではないかと危惧していたので、中途半端な目標を掲げるくらいならば、「優勝を目指す」 と宣言してくれた方が良かった。ところがサムライ・ブルーは1次リーグ敗退どころか、本大会の優勝候補と目される強豪国ドイツとスペインに逆転勝ちして、コスタリカに惜敗するという大番狂せを演じた。スペインは密かに決勝トーナメントでブラジルとの対戦を先に延ばせる1次リーグ2位通過を狙っていたのではないかという憶測も流れたが、その思惑通りのモロッコ戦で、「PK戦は運ではない」 と、日本の敗退(PK 1 ─ 3)を冷たい目で見ていたルイス・エンリケ監督に無慈悲なブーメラン(PK 0 ─ 3)が直撃した。しかもPK戦で日本を破ったクロアチアがブラジルを再びPK戦(4 ─ 2)で制してベスト4に進出するとは一体誰が想像しただろうか。W杯には魔物が棲んでいる。もし日本が2位通過していたら、どのようにサッカー・ボールは転がったかしら?

    □ 気障、疎まれ男と俺、惑う詐欺
    Rとは小学生のガキの頃からの親友だった。Rと悪戯をして両親に何度叱られたか、担任教師に呼び出されて説教されたか分からない。それでも子供時代の悪さは取るに足らない可愛いものだ。中学生、高校生と成長するに連れて、Rの悪行はエスカレートして行った。親友というよりも腐れ縁の悪友という存在になってしまった。斜に構え、口を歪ませて不平や鬱憤や悪口を吐くキザ男は周囲からも疎まれていた。高2の夏、バイクで人身事故を起こし、無免許運転がバレて学校を退学した。その後暫く音信不通だったが、数カ月前に新宿で偶然出合った。雑踏で声をかけられた時、余りの変貌ぶりに俺は誰だか分からなかった。Rは葬りの良さそうな高級スーツに身に纏いベンツを乗り回していたからだ。「オレオレ詐欺」は警察の取り締まりが厳しくなった。これからはロマンス詐欺だ。お前も一口乗らないか。Rは相変わらず懲りずに悪業を続けていたのだ。自分で言うのも憚れるが、イケメンの俺は女にモテる。顔立ちも日本人離れしている。もしかしてルクセンブルグ王の非嫡出王子に仕立てて売り込もうとしているのだろうか?

    □ 屁たるアリシ・カイミ、マツコ待った。目立つ孫、つまみ烏賊、シリアル食べ
    外国人名の正しい読み方は難しい。アリス(Alice)という同じ綴りでも、イタリアではアリーチェ、ブラジルではアリシと発音する。「ブラジル音楽界の至宝」 ドリヴァル・カイミ(Dorival Caymmi)の孫娘アリシ・カイミ(Alice Caymmi)はパンキッシュな跳ねっ返り女である。1stアルバム《Alice Caymmi》(2012)でカヴァした〈Unravel〉がビョークに褒められたことでも話題になった。日々の暴飲暴食が祟ってメタボ体型になってしまったアリシは3rdアルバム《Alice》(2018)のフロント・カヴァで縛られたことで、日本古来の緊縛プレイに興味を持つようになったという。西洋の鎖や手錠など鉄製の拘束具に代わって、日本では紐や荒縄による独自の縛り(shibari)の文化が生まれた。成田空港に着いたアリシは数カ月前から始めた過度なダイエットと長旅で屁たっていた。発着ロビーで待っていたマツコ・デラックスも激痩せしたアリシを見て、一瞬本人とは信じられなかったほどだ。都内のオーガニック・レストランで、アリシとマツコは烏賊をツマミにワインを飲み、シリアルを食べる。2人はSNSで仲良くなった数年来の親友だった。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい^^;

    • 引用文を『にゃんこ四字熟語辞典』の「はじめに」に差し替えました(2023・3・3)

    • にゃんこ四字熟語回文は 「ようこそ「地獄」 へ。」(別府地獄組合)を参照しました

    • ジョン ・ランガンの 「菌糸」(FUNGI 菌類小説選集 第 I コロニー)を参照しました
    • マヌルネコについての「説明」は 「神戸どうぶつ王国」 から引用しました

     スニンクスなぞなぞ回文 #69

     リトル・シムズ◯△◇◎▽△☆▽▽☆△▽◎◇△◯ズム
     知る鳥

     回文作成:sknys

     ヒント:鳥のように


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    にゃんこ四字熟語辞典

    にゃんこ四字熟語辞典

    • 著者:西川 清史
    • 出版社:飛鳥新社
    • 発売日:2022/03/25
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:純真無垢 / 品行方正 / 油断大敵 / 隠忍自重 / 鼓舞激励 / 乳母日傘 / 前代未聞 / 大驚失色 / 吃驚仰天 / 興味津々 / 機略縦横 / 虎視眈眈 / 珍味佳肴 / 水魚之交 / 陰謀詭計 / 乾坤一擲 / 相思相愛 / 馬耳東風 / 柔和温順 / 一触即発 / 眼光炯々 / 冷酷無残 / 有象無象 / 阿諛追従  立入禁止 / 猪突猛進 / 放歌高吟 / ...


    マイコフィリア-きのこ愛好症 知られざるキノコの不思議世界

    マイコフィリア きのこ愛好症 知られざるキノコの不思議世界

    • 著者:ユージニア・ボーン(Eugenia Bone)/ 佐藤 幸治 / 田中 涼子(訳)
    • 出版社:パイ インターナショナル
    • 発売日:2016/01/22
    • メディア:単行本
    • 目次:キノコ狩りという名の響宴 / 菌学会で出会った、魅力的なキノコ博士たち / 役に立つ菌類、破壊する菌類、寄生する菌類 / キノコハンター、キノコ泥棒、キノコ狂 / キノコを育てる人々 / 官能のキノコ、トリュフ / マッシュルームのすべて / キノコは新時代のスーパーフード / 薬になるキノコ、毒になるキノコ / マジックマッシュルームの誘惑 / ...


    Alice Caymmi

    Alice Caymmi

    • Artist: Alice Caymmi
    • Label: Kuarup Brasil
    • Date: 2008/08/11
    • Media: Audio CD
    • Songs: Água Marinha / Arco da Aliança / Mater Continua / Revés / Sangue, Água e Sal / Rompante / Vento Forte / Sargaço Mar / Tudo o que for Leve / Unravel


    Alice

    Alice

    • Artist: Alice Caymmi
    • Label: Universal
    • Date: 2018/01/19
    • Media: MP3 / CD
    • Songs: Spiritual / A Estação / What's My Name / Vin / Inimigos / Inocente / Agora / Sozinha / Eu Te Avisei

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