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ZTT T-SHIRT [a r t]



レーベル設立25周年を記念してロンドンで開催された〈The Art of ZTT展〉が東京へ巡回しているという。ZTTとのコラボTシャツを限定販売している「UT STORE HARAJUKU」(UNIQLO原宿店)に行って来たけれど、店内1階の奥にアナログ・ジャケとCDが展示してあるだけだった(写真参照)。NYやロンドンでは兎も角、ZTTの認知度はユニクロへ来る客層の1割にも満たないでしょう。パネル展示だけではなく、もしかして限定CDも販売しているかも?‥‥と期待したのが甘かった。円筒形の透明カプセルの中に入って棚に並んでいるコラボTシャツは、デザインもパッケージのディスプレーも小洒落れていましたが。せめて店内にZTTの音楽が流れていれば印象も変わったのになぁ‥‥。まあ、warszawaの店内大改装に伴う在庫一掃セール(全品50%OFF!)の帰りに寄ってみただけなので、余り大きな声では言えませんが、warszawaの方が大混雑でした。

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ZTT RecordsはTrevor HornがNMEのジャーナリストPaul Morleyなどと共に1983年に設立したUKレーベルで、イタリア未来派のマリネッティの音楽詩「Zang Tuum Tomb」から採られている。Sonic Youth、Dinosaur Jr、Butthole Surfersなどをディストリビュートしていた「Blast First」も英国の未来派とも称される渦巻派(Vorticism)のマニフェストから採っていた。ZTTレーベルで真っ先に思い浮かべるアーティストはThe Art Of Noiseでしょう。それも《Into Battle With The Art Of Noise》(ZTT 1983)という12インチ盤(45r.p.m.)。全9曲23分のミニ・アルバムだが、その実質はA・B面の〈Beat Box〉と〈Moments In Love〉の2曲。前者のフェアライトCMIを使ったコケ脅し的な「オーケストラ・ヒット」は有名だし、後者の美しいバラードは某WAVEの営業終了を告げるBGMに使われていたこともあって、感傷的な気分に襲われる。

〈Moments In Love〉はリリースから四半世紀を経た今日でも全く色褪せないラヴ・ソングの名曲である。アナログがらデジタル、塩化ヴィニール盤からポリカーボネイトCDへ移行する時代。古き良きアナログ時代への「鎮魂歌」なのかもしれない。Peter GabrielやKate Bushなどのアルバムにも導入された当時の最先端サウンドだったフェアライト音は、どこか懐かしく響く。《Into Battle With The Art Of Noise》のアナログ盤には白地に「ヘントの祭壇画」がトリミングされていた。15世紀ネーデルランド絵画の傑作と言われる多翼祭壇画の左下の絵‥‥「キリスト騎士団」(部分)を使っている理由は分からないが、「戦士」→「Battle」という連想があるのだろうか。ZTTのブルー・インシデンシャル・シリーズ(Blue Incidencial Series)の1作目(ZTIS 100)で、ジャズ・ドラマーのBuddy Richに捧げられている。

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鳴り物入りでデビューしたFrankie Goes To Hollywood(FGTH)は〈Relax〉と〈Two Tribes〉の2大ヒット曲、それもPVのイメージ──射精、それとも潮吹き(?)の効果音が凄かった〈Relax〉。東西冷戦時代の2大首領のレーガンとチェルネンコが泥レス対決する〈Two Tribes〉──が強烈で、色もの際ものっぽいところもあった。FGTHの来日ライヴでメンバーの1人がベースを弾いていなかったという噂もあったなぁ。《Welcome To The Pleasuredome》(ZTT 1984)のアナログ2枚組を久しぶりに聴いてみたら、A面にアルバム・タイトル曲、B面にシングル曲〈Relax〉〈Two Tribes〉、C面にカヴァ曲〈Born to Run〉〈San Jose〉、D面に3rdシングルの〈The Power Of Love〉‥‥と結構良く出来ていますね。プロデューサーTrevor Hornの手腕でしょうか。Edwin Starrの〈War〉、Bruce Springsteenの〈明日なき暴走〉、Burt Bacharachの〈サン・ホセへの道〉という脈絡のないカヴァ曲には笑っちゃいましたが。ピカソ風のスリーヴはLo Cole(Lawrence Cole)が描いています。

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Grace Jonesのアルバムと言えば《Nightclubbing》(Island 1981)のスタイリッシュなアートワークを挙げなければならない。黄土色の背景、青紫色の肌に黒いアルマー二のジャケットを素肌に纏って煙草を咥える女サイボーグ(それとも異星人?)‥‥やっぱりアナログ盤は迫力が違いますね。《Slave To The Rhythm》(ZTT 1985)のアートワークも《Nightclubbing》と同じくJean-Paul Goudeが手掛けたもので、Grace Jonesの顔写真の上下部分、頭部と口腔部分をカッターで横に裁断して継ぎ足し、縦長に引き延している。不自然に長く伸びたポートレイトはアフリカの首長族を思わせなくもないし、モヒカン髪にコラージュされた「KODAKフィルム」の切れ端はインディアンの羽飾りのように見えなくもない。「a biography」と題された会話入りのアルバムは全8曲だが、オリジナル・タイトル曲をバラバラに解体して、Trevor Hornが8曲のリミックス・ヴァージョンに仕立て上げたような感じもある。〈Slave To The Rhythm〉はFGTHの2ndシングルになるはずだったという(19年振りの復活アルバムがリリースされました)。

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UNIQLO×ZTTのコラボTシャツはArt Of Noise、Frankie Goes To Hollywood、808 State、Propagandaの4アーティストとZTTレーベル・ロゴの全6種類(FGTHは2柄)で、色替わりのカラー・ヴァリエーションも各3パターン(ZTTロゴは4種)から選べる。FGTHやPropagandaなど、アルバム・ジャケットをプリントしたTシャツよりも、青と黒の白のZTTレーベル・ロゴだけの方がシンプルで洒落ている。笑い顔と泣き顔の仮面がデザインされたArt Of NoiseのTシャツを着て原宿を歩くのは、ちょっと恥ずかしいかもしれません。グレー地の上部に大きく「808」、下部の「90」という数字の左に2つのサムネイル画像(日蝕と熱帯魚)が縦に並んでいる808 StateのTシャツは、2ndアルバム《Ninety》(ZTT 1989)のデザインそのままだけれど、赤地のカラー・ヴァージョンが新鮮だった。

808 Stateは英マンチェスターのテクノ / ハウス・ユニット。基本的にインストのエレクトロ・ミュージックだが、アナログ・シンセのブヒョブヒョ感にレトロ・フューチャーな懐かしさがある。《Ninety》の1曲目〈Magical Dream〉では、Vanessa Daou嬢が舌っ足らずのヴォイスで華を添えていた。3rdアルバム《Ex:el》(ZTT 1991)は豪華絢爛なアルバム。Bernard SumnerとBjorkの2人がヴォーカル&歌詞でゲスト参加しているのだから。脱力テクノ版New Orderという感じの〈Spanish Heart〉、Bjorkのヴォイスが浮游して宙を舞う〈Qmart〉と〈Ooops〉の2曲はソロ・アルバムに収録されても異和感がない。もっとも、当時のBjorkはThe Sugarcubesに在籍していたので、ここから彼女のソロ活動が始まったと言った方が正確でしょう。〈Nephatiti〉には映画『夢のチョコレート工場』の中でウィリー・ワンカ氏がヴェルーカ・サルトに言う有名な台詞──「We are the music makers, and We are the dreamers of dreams.」がサンプリングされているのだ。

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ZTTのTシャツはTANさんの記事で知りました。Art Of Noiseの豪華BOXセット(4CD)を購入したモバサム41さんの記事にコメントしたら、逆に〈The Art of ZTT展〉のルポ記事を書くことになっちゃった。余り乗り気ではなかったのですが、味も素っ気もないZTTのアルバム展示やUNIQLOコラボTシャツは兎も角、久しぶりにアナログ盤を集中して聴く機会を得ました。25年前のアナログ盤は良い音だった。CDより高音質かもしれません。A・B盤面を引っくり返したり、盤面に付着した埃を取り除くのが面倒ですが、ZTTに限らず30×30cmのアートワークは一見の価値があります。The Art Of Noise、FGTH、Grace Jonesはアナログ盤で、808 StateはCDで‥‥ZTT Recordsが設立された1983年は、海外でCDメディアが発売されたエポック・メイキングな年でもあるんですね。

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  • 展示コーナーの奥が鏡張りだったので、撮影者が映り込んじゃったよ^^;

  • ZTTレーベルのアーティストとアルバムについてはWikipedia (en) を参照しました
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Into Battle With The Art Of Noise

Into Battle With The Art Of Noise

  • Artist: The Art Of Noise
  • Label: Repertoire
  • Date: 2003/11/25
  • Media: Audio CD+DVD
  • Songs: Battle / Beat Box / Army Now / Donna / Moments In Love / Bright Noise / Flesh In Armour / Comes & Goes / Moment In Love // Close Up / Close Up (Hop) // Moments In Love / Beat Box Pop Promo / Close To The Edit (Version 2) / Metaforce


Welcome To The Pleasuredome

Welcome To The Pleasuredome

  • Artist: Frankie Goes To Hollywood
  • Label: ZTT
  • Date: 2005/10/04
  • Media: Audio CD
  • Songs: Well... / World Is My Oyster / Snatch Of Fury / Welcome To The Pleasure Dome / Relax / War / Two Tribes / Fury / Born To Run / San Jose / Wish The Lads Were Here / Ballad Of 32 / Krisco Kisses / Black Night White Light / The Only Star In Heaven / The Power Of Love / ...


Slave To The Rhythm

Slave To The Rhythm

  • Artist: Grace Jones
  • Label: ZTT/Island
  • Date: 1990/06/15
  • Media: Audio CD
  • Songs: Jones the Rhythm / The Fashion / Operattack / Slave to the Rhythm / Frog & the Princess / Crossing (Ooh the Action...) / Don't Cry -- It's Only the Rhythm / Ladies and Gentlemen: Miss Grace Jones


Ninety

Ninety

  • Artist: 808 State
  • Label: ZTT
  • Date: 2008/10/14
  • Media: Audio CD
  • Songs: Pacific (Britmix) / Cobra Bora (Call The Cops Mix) / Donkey Doctor (Gmex Mix) / Boneyween / Kinky National / State To State / Revenge Of The Girlie Men / Magical Dream (Instrumental)



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コメント 4

tumuzi

sknysさん、おはようございます。
「Vorticism」って、知りませんでした。勉強不足です。
調べてみたらなかなか面白いですね。にゃるほど〜。
by tumuzi (2008-11-26 10:24) 

sknys

tumuziさん、コメントありがとう。
「ウズマキ派」(Vorticism)という名称が面白いですね^^
ケルトの渦巻き模様と関係があるのでしょうか。

CDに入っていた「BLAST FIRST」のカタログ(小冊子)の表紙に、
機関誌「BLAST」の1頁目がコピーされています。
創刊号(Blast no.1, 20 June 1914)だから「FIRST」にゃのかな?
by sknys (2008-11-26 22:24) 

モバサム41

sknys さんにしては珍しく素早い展開でしたね(「ミレイ展」はどないなってんねんと呟いてみる…)
でも、意外とショボイ催しだったようで残念です。
どうせだから、「マブーゼ」の12インチ盤を剥がして持って来てもらいたかったな(CDは持ってるけどアナログ盤は持ってないので)
アン・ピガールの12インチ盤が展示してないのは不満。
たくさんTBしておきますので、よろしく(笑)


by モバサム41 (2008-11-27 01:17) 

sknys

モバサム41さん、コメントありがとう。
「Peter Saville展」(Parco Gallery 1990)のように
ギャラリーで開催して欲しかったなぁ。
展示アルバムは開催期間中(〜11/30)に入れ替えがあるしい。

オマケの仮面を付けて「UT STORE HARAJUKU」に忍び込まないでね^^
ZTTの公式サイト(http://www.ztt.com/)で運試し?
‥‥運が良いと、Bjorkさまの○ンチラ画像が!

「ミレイ展」の記事はラファエル前派の関連書籍を読んでから書きます。
by sknys (2008-11-27 21:32) 

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