◎ Anfibio(Barca 2009)Nico Ibarburuウルグアイ生まれの男性SSW、Nico Ibarburuのアルバム・カヴァは水中ゴーグルと深緑色のビー玉が涼しげ映る。水道の蛇口から細長く切った青い紙が出て来る写真など、歌詞カードのアート・デザインも洒落ている。パッケージと呼応するように音楽もロック〜ファンク色が濃く洗練されている。女性ヴォーカルを立てたファンカデリック風の〈Despierta〉、Hugo Fattorusoがアコーディオンとピアノを奏でる〈Templando〉、Meetersのカヴァ曲〈Cissy Strut〉、アルゼンチンのロック裏番長Spinettaが切なく歌う〈Otra Asi〉、ファンキーでパーカッシヴなギターがLenineを想わせる〈El Perfume〉、子供たちのコーラスに和まされる〈Luna Turquesa〉‥‥。コパ・アメリカ(南米選手権 2011)で優勝したウルグアイの健闘を讃えるのに相応しいアルバム。平常心を欠いたNHKアナや同じことばかり繰り返す解説者の音声を消し、《Anfibio》をBGMにFWスアレスやフォルランの華麗なプレイを愉しもうではないか。
◎ Vid Og Vid(12 Tonar 2007)Olof Arnalds双頭の長い首が迷路のように複雑に絡み合った白鳥のアルバム・カヴァ‥‥アイスランドの女性SSW、Olof Arnaldsのデビュー・アルバムは簡素で静謐なサウンドの中に光るものがある。2ndアルバムと同じくKjartan Sveinsson(Sigur Ros)のプロデュースで、全10曲はアイスランド語で歌われている。彼女の生ギター弾き語り(指が弦を滑る音が生々しい)に、琴やピアノ、トランペット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、オルガン、ホーン、ギター、ドラムなどを控え目に配した音数の少ないナイーヴな響き。素っ頓狂なKate Bushみたいで取っつき難いところもあるが、Mumのメンバーとして来日公演したり、
《Innundir Skinni》(One Little Indian 2010)でBjorkとデュエットしたり‥‥Olof Arnaldsの知名度や注目度は上がっている。絵本仕様の初回限定盤には不思議な白鳥の物語の謎が明かされているかもしれない。
◎ A Boris Vian "On N'Est Pas La Pour Se Faire Engueuler!"(Az 2009)ボリス・ヴィアンの50周忌を記念したトリビュート・アルバム。全38曲入り2CDはCD1にカヴァ曲、CD2には詩の朗読や新たに曲を付けたオリジナルを収録しているらしいが、セール品の編集盤(1CD)は全18曲中11曲がボリス・ヴィアンのカヴァ曲になっている。アルバム・タイトル曲〈On N'Est Pas La Pour Se Faire Engueuler〉はOlivia Ruiz、Mathieu Boogarts、Jane Birkinなど9人が代わる代わる歌うメドレー形式。Katerine、Juliette Greco、Arthur H、Thomas Fersen、-M-、Emily Loizeau、Kent(2CD盤にはArielle Dombasle、Lio、Jeanne Moreau‥‥)など、豪華絢爛たる仏ミュージシャンや女優たちが集結している。シャンソンやロック、キャバレー・ミュージックなど今日的なアレンジが施されているので、ジャズっぽさは感じられない。もしボリス・ヴィアンが生まれて来るのが20年遅かったら当時流行していたロックンロールを演っていたはずだから、この解釈は正しい。レゲエ〜ロック調に改変した-M-の〈Cinematographe〉や可愛い色気が香るEmily Loizeauの〈Ses Baisers Me Grisaient〉(Kisses Sweeter Than Wine)も愉しい。
◎ 3(Peacefrog 2009)Nouvelle Vagueパンク〜ニューウェイヴの有名曲をアクースティックにカヴァする仏ユニットの3rdアルバム。曲タイトルだけを眺めて浮かれた気分でいると足許を掬われるかもしれない。別の曲かと思うほど改変されているからだ。たとえば〈Layla〉のアンプラグド・ヴァージョンみたいに。つまりダウナーで醒めている。フレンチ女性のロリータ・ヴォイスを聴いていると次第に高揚感は萎え、逆に滅入った気分に陥って行く。批評的な解釈による捻くれたカヴァ集とも言えるが、本人がゲスト・ヴォーカルで参加している曲もあるのだから侮れない。Martin Gore(Depeche Mode)の〈Master & Servant〉、Barry Adamson(Magazine)の〈Parade〉、Ian McCullock(Echo & The Bunnymen)の〈All My Colours〉、The Go-Go'sの〈Our Lips Are Sealed〉には作曲者のTerry Hall(The Specials)が客演するという趣向。流石にDavid ByrneやStingは〈Road To Nowhere〉や〈So Lonely〉に登場していないけれど(オファーしたものの断られた可能性も高い)。
◎ Les Heures De Raison(Minty Fresh 2008)Soy Un Caballoベルギーの男女デュオによるデビュー・アルバム
(Matamore 2007)はエレクトロニカとフレンチ・ポップスが溶け合った洋菓子の逸品だった。米インディ・レーベルからリリースされたジャケ違いのスリップ・ケースはオリジナル盤に入っていた歌詞カードの表・裏表紙を流用しただけで、歌詞やミュージシャンなどの記載が一切ない。プロデュースしたSean O'Haganやゲスト・ヴォーカル参加したBonnie Prince Billyだけでなく、Aurelie MullerとThomas Van Cottonの2人の名前さえないのだ。迷った末に素っ気ないUS盤を買うことにしたのはボーナス・トラックが1曲入っていたから(8曲目と10曲目も入れ替えられている)。セール価格(¥290)を1曲の値段と考えれば高くない?‥‥ポストカード2種が付いていた見開き紙ジャケ仕様のオリジナル盤の方がアート・デザインとしては秀でているけれど。果して13曲目の〈Les Vacances〉は毛色の変わった(エレクトロニカ色を払拭した)陽気で軽快なギター・ポップだった。少女と馬男の恋愛に未来はあるのかしら?
◎ Mosaico(Universal 2010)Beatrice MasonMPB女性歌手のデビュー・アルバム。Beatrice Masonの写真や花のイラストを手で千切って再構成したカヴァが「モザイク(Mosaico)」というアルバム・タイトルを表徴している。Rodrigo Campello(プロデューサ)のプログラミングに生楽器(ハープ、アコーディオン、チューバ、トロンボーン、パンディロ、フリューゲルホーン、フルート、スライド・ギターなど)を効果的に配した先進的なサウンドで、アルゼンチン音響派やトリップホップにも通じる音像空間を創出している。Delia Fischer〈Samba Minimo〉、Suzanne Vega〈Caramel〉、Pedoro Luis〈Oracao Blues〉、Jorge Drexler〈Madre Tierra〉‥‥という選曲も意表を衝く。Beatrice MasonのヴォイスはMarisa Monteを都会的にソフィスティケートようで清涼感が漂う。Edu Kriegerとデュエットした〈Canto So〉もアクセントになっている。メジャー・レーベルからのリリースなのにアマゾン(Amason.com)で入手出来ないのは不思議ですね。
◎ The Dvd(One Little Indian 2004)The SugarcubesBjorkが在籍していたアイスランドのパンク〜ニューウェイヴ・バンドのプロモーション・ヴィデオ(PV)集。全12曲(9+3)で、代表曲の〈Birthday〉はアイスランド語と英語の2ヴァージョン(映像も異なる)を収録。歌うBjorkを撮ったシンプルなモノクロ画像、宝石泥棒の顛末、スモークの中のライヴ映像、自動車事故、エア・ギター青年、ピアノ線で宙吊り、水中や空中を漂う人面球体、ライヴ・パフォーマンスに浮游する☆、林檎、葡萄、苺‥‥。エクストラPVの3曲は細かいカット割りで情報量も多く、いわゆるMTV風に作り込まれている。Bjorkの若い肢体が弾け飛ぶ。輸入DVDの扱い難さはリージョン・コードとTV画像表示方式(PAL/NTSC)の違いにある。パソコンではPAL/NTSCに関係なく視聴可能だし、リージョン・コードを外す裏技もあるけれど、日本国内のDVD録画再生機で視られるのかどうか確認すること自体が面倒臭い。《The Dvd》(Sugar510dvd)はリージョン・フリー(Zone 0)、PAL/NTSCに対応した両面ディスクなのが嬉しい。10年後にはBlu-ray Discに淘汰されているかもしれないが、規制と制限だらけのDVDの仕様としてはベストではないだろうか。
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タワーレコードで「夏のクリアランスセール」が始まっている。各店鋪のフロアの片隅で控え目に開かれている小規模なワゴン・セール(¥290)。渋谷や池袋、秋葉原など都内のタワレコを回ってみた感じでは新宿店(9F)が一番充実していた。新年恒例のクリアランスセールを実施している渋谷店に較べて、常時抱えている在庫が多いからかもしれない。セール品を随時補充しているようなので、その時間帯に行けば掘出し物をゲットする確率も高い。ブラジルやフランスものを中心に数十枚を購入。10枚買っても3000円でオツリが来る。たとえハズレ籤を引いても、往復の交通費よりも安いのだから諦めも着く。
《Feline Groovy》(Ace 2008)という
「ネコード」‥‥猫ジャケ+猫スリーヴ(ネコ写真やネコ・グッズ)+猫ソングという猫づくしアルバム。曲タイトルの中に「cat」や「kat」などが入った50's後半〜60's半ばのキャット・ソング24曲を収録したコンピレーション盤がワゴンの中で鳴いているのを見つけた時は、ネコ神様の思し召しではないかと狂喜乱舞しちゃいました。
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- 1枚(¥290)×7=2030円の出費です^^;
- Soy Un Caballoの「少女と馬男の恋愛」は成就しなかったようですね
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clearance sale 1 / 2 / sknynx / 341
Anfibio
- Artist: Nico Ibarburu
- Label: Barca Discos
- Date: 2009/08/26
- Media: Audio CD
- Songs: Infinitas Veces / Despierta / Espejismo / Cissy Strut / Templando Momentos / Amainara / Sham Time / Otra Asi / El Perfume / Lobo War / Luna Turquesa / Valentin
Vid Og Vid
- Artist: Olof Arnalds
- Label: One Little Indian
- Date: 2009/11/17
- Media: Audio CD
- Songs: Englar Og Dárar / Í Nýju Húsi / Klara / Við Og Við / Orfeus Og Evridís (originally by Megas) / Vittu Af Mér / Moldin / Náttsöngur / Skjaldborg / Ævagömul Orkuþula
A Boris Vian
- Artist: V.A.
- Label: Universal
- Date: 2009/06/25
- Media: Audio CD(2CD)
- Songs: Boris Vian, On N'Est Pas Là Pour Se Faire / Complainte du Progrès (Les Arts Ménagers) / Je Bois / Les Joyeux Bouchers / Natacha Chien-Chien / Blouse du Dentiste / Cinématographe / Bourree de complexes / Fais moi mal, johnny / La java des bombes atomiques / ...
3
- Artist: Nouvelle Vague
- Label: Peacefrog
- Date: 2009/07/29
- Media: Audio CD
- Songs: Master & Servant / Blister In The Sun / Road To Nowhere / All My Colours / The American / Heaven / Parade / Metal / Ca Plane Pour Moi / Our Lips Are Sealed / God Save The Queen / Say Hello Wave Goodbye / So Lonely / Not Knowing / Get A Grip / Such A Shame / ...
Les Heures De Raison
- Artist: Soy Un Caballo
- Label: Minty Fresh
- Date: 2008/12/09
- Media: Audio CD(Slipcase)
- Songs: Sous Les Paupières / Volet / Comme On Va Bien / La Bibliothèque / But Will Our Tears / Robin / La Chambre / Au Ralenti / La Raison Du Plus Fort / La Lumière Sur La Pelouse / La Droiture / Passer Des Jours / Les vacances
Mosaico
- Artist: Beatrice Mason
- Label: Universal
- Date: 2010/04/30
- Media: Audio CD
- Songs: Samba Minimo / Foi no Mes que Vem / Caramel / Algum Mistério / Oracao Blues / Lilly Blonde / Canto So / Na Beira do Rio / Paulo Neves / Cortejo / O Tempo do Querer / Madre Tierra
Collection
- Artist: The Sugarcubes
- Label: One Little Indian UK
- Date: 2010/04/20
- Media: DVD(Zone 0 PAL/NTSC)
- Songs: Birthday (Icelandic) / Cold Sweat / Deus / Motorcrash / Luftgitar / Regina / Planet / Eat The Menu / Birthday (English) / Hit / Walkabout / Vitamin
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