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クリアランスセール 2 0 1 4 [m u s i c]



  • ◎ Narrow(Solfo / PIAS 2012)Soap & Skin
  • 《Lovetune For Vacuum》(PIAS 2009)で鮮烈にデビューしたオーストリア・シュタイアーマルク出身の女性SSW、Anja Plaschg(Soap & Skin)のミニ・アルバム。2ndフル・アルバムではなく、全8曲29分という形態でリリースされたのは父親の死(2009)が色濃く反映されていることと無関係ではないらしい。Soap & Skinはピアノ弾き語りスタイルの自作自演歌手だが、オーソドックスなジャンルの枠に収まらない。エクスペリメンタル、エレクトロニカ、ポスト・クラシカル、ダーク・アンビエント‥‥母国語で歌われる冒頭の2曲〈Vater〉と〈Voyage Voyage〉は喪服の女性の顔を隠す黒いヴェールのような暗鬱なストリングスで覆われている。インダストリアル・ゴシック風の〈Deathmental〉(デス・メタル?)やハンマー・ビートの〈Big Hand Nails Down〉が重くのしかかる。美声とは言い難い翳りを帯びた内省的なヴォイスがヨーロッパの最深部へと導くのだ。

  • ◎ We Know Nonsense(Staubgold 2013)The 49 Americans
  • 「49人のアメリカ人」という巫山戯た名前の英DIYバンド。その発端は米国生まれの英国人Giblet(Andrew Brenner)を中心とする音楽 / 非音楽集団だったというが、David ToopとSteve Beresfordのプロデュースした2ndアルバム《We Know Nonsense》(1982)はフリージャズ系のミュージシャンたちも乱入して、パンク、ニュー・ウェイヴ、ロックンロール、アフロ・ファンク、カリビアン、ディスコ、ラウンジ、ミュージカル、アカペラ、ジャズ、アヴァン・ポップ、エクスペリメンタル‥‥などが混在する自由で愉しい稀有な音楽となった。リイシューCDは2ndの17曲に、1stアルバム《Wonder(E Pluribus Unum)》(1980)から11曲、EP《The 49 Americans》(1979)から12曲をボーナス・トラックとして追加収録した全40曲、約80分の大盤振る舞い。80年代初頭のロンドンの熱気がタイムカプセルのように凝縮されている。

  • ◎ Welcome To The Welcome Wagon(Asthmatic Kitty 2008)The Welcome Wagon
  • アーモンド型に切り抜かれた紙ジャケの窓に写実的に描かれた男女の姿が映っている(歌詞ブックレットを引き抜くとキリストのイラストが現われる趣向)。The Welcome WagonはNYブルックリン・ウィリアムズバーグにある教会の牧師Vito Aiutoと妻Moniqueによる異色デュオ。デビュー・アルバムはVitoのギター、Moniqueのグロッケンシュピール、ハーモニカにフレンチ・ホルン、ラップ・スティール、トロンボーンという編成で、プロデュースしたSufjan Stevensもバンジョー、ベース、ドラムス、ギター、パーカッション、ピアノ、ウクレレ、ヴォーカルで全面サポートしていることからも分かるように、彼のソロ・アルバムと親和性の高い牧歌的なサウンドになっている。牧師夫婦のヴォーカルは素朴で優しく、キリスト教的な世界観を体現しているものの押しつけがましいところは少しもない。Vito Aiutoのオリジナル曲、17世紀長老派教会の礼拝用詩編や賛美歌、ゴスペルなどのトラディショナル、The SmithsやThe Velvet Undergroundのカヴァまでが違和感なく並ぶ。

  • ◎ The Hollow Of Morning(Second Motion 2008)Gemma Hayes
  • アイルランド・サウスティペラリー(バリーポリーン)生まれの女性SSW、Gemma Hayesの3rdアルバムは粒子の粗い白黒ポートレイト・カヴァが彼女の美貌を暈しているような気もする(ファン以外の人たちにはジャケ買いは疎か、クリアランス・セールでもスルーされる可能性が高いそう。美人で声も可愛いのに惜しいなぁ)。アイリッシュらしい透明感のある清楚なサウンドで、アクースティック・ギター弾き語りの優しいフォークと疾走感のあるインディ・ロックが混在する構成。ラストのインスト曲〈Under A Canopy〉を除き、全編に渡ってGemma Hayes嬢の可憐なヴォーカルを堪能出来る。1stシングル曲の〈Out Of Our Hands〉はシューゲイズ風のギター・ロック。Kevin Shields(ギター)がゲスト参加した〈In Over My Head〉は期待に違わずノイジーなギターが濃霧のように煙るマイブラ直系のサウンドになっている。この1曲のためだけでも、アルバムを聴く価値はあるだろう。

  • ◎ Under My Bed(Barclay 2011)Lou Lesage
  • Lou Lesage嬢もVanessa ParadisやCharlotte Gainsbourgと同じく「歌う女優」の1人。左手で片頬を隠したモノクロのカヴァ・ポートレイト(お魚顔の戸田恵梨香を想わせなくもない?)は倦怠感や物憂いさをも感じさせる。Pierre Emery(Ultra Orange)の全面プロデュースで、作詞・作曲だけでなく、ギター、ベース、ドラムス、キーボードまでを演奏する力の入れよう。それもそのはず、彼女はPierre Emery&Gil Lesage夫婦の娘なのだから(Serge GainsbourgとCharlotte父娘の関係を思い出すリスナーもかもしれない)。気怠さと儚さが共存する消え入りそうな〈Forgotten Child〉、クールで乾いたロックンロールの〈Dirty Looks〉、Pierre Emeryのギター・ソロが炸裂する〈Can Be Cruel〉‥‥全13曲英語詞ながら、60年代風ロック・サウンドがロリータ・ヴォイスを際立たせる。お顔は怖そうですが、歌うフランス女優の例外に漏れず、お声は可愛いのです。

  • ◎ Child Bride(Bella Union 2012)Hannah Cohen
  • Hannah Cohenは米サンフランシスコ生まれの元モデル、写真家‥‥という経歴のSSW。デビュー・アルバムのカヴァ・ポートレイト(Timothy Greenfield-Sanders撮)はラファエル前派の肖像画のように美しいが、インナー&バック・カヴァ写真は彼女自身が撮っている。〈Boy+Angel〉の1曲を除き、彼女の作詞・作曲によるオリジナルなので、元モデルや女性写真家という肩書きは必要ないのかもしれない。Thomas Bartlett(Daveman)のプロデュース(ピアノ、キーボード、ドラムス)で、Sam Amidon(ギター、バンジョー)、Brad Albetta(ベース)、Kenny Wolleson(ドラムス)、Doug Wieselman(クラリネット)、Rob Moose(ギター、ヴァイオリン、ヴィオラ)、Mauro Refosso(パーカッション)などが参加している。透明感のあるアクースティックなサウンドがHannah Cohenのナチュラルで伸びやかなヴォーカルを引き立てる。「美女と仔猫」も良く似合うにゃん。

  • ◎ Debora Weht(Eden 2012)Debora Weht
  • アルゼンチン・コルトバ出身の少女Debora Wehtちゃんのデビュー・アルバム。まだあどけなさの残る声と顔立ちにも拘わらず、ベテラン歌手が鼻白み、口パク・アイドルたちも尻尾を巻いて穴の中に入っちゃうくらい歌が上手い。フォルクローレ、ボサ・ノヴァ、サンバ、タンゴ、フィーリンなどの名曲だけでなく、ジャズやソウルのスタンダードもカヴァ。Lucas Heredia(ギター、ベース)やGaston Testa(キーボード)などの好サポートを得て、ラテン・アメリカの大空に羽搏く。「ペルーの貴婦人」と称される女性作曲家&歌手Chabuca Grandaを筆頭に、Joao Gilberto、Chico Cesar、Jose Dames / Horacio Sanguinetti、George Gershuwin、Cesar Portillo De La Luz、Francesca Ancarola、Sam Cooke、Djavan‥‥という選曲センスも光る。Pedro Aznarもカヴァしている〈Maria Lando〉を軽々と歌い、ジャズ・スタンダードの〈Summertime〉もハマリすぎて怖いくらい。天才少女シンガーと呼んでも良いかもしれない。

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    今年(2014)のタワレコ渋谷・クリアランスセール(B1)はショボかった。例年ならば壁側だけでなく中央にもワゴンの列が並び、その隙間を大勢の客たちが埋め尽くすバーゲン会場並みの大混雑なのに、ワゴンの数も半減して空間ばかりが目立つ。開場してから2時間以上経っていたので嵐の去った後の静けさなのかもしれないが、アルバム(CD、DVD)に比例して人数も少なかった(大量に買い漁るセドリ業者たちも拍子抜けしたんじゃないか)。いつも真っ先に見る「WORLD」のワゴンもなくてガッカリ!‥‥2時間ほど物色して4枚を購入した。これだけでは記事を書くのに枚数が足らない‥‥というわけで、秋のクリアランス(都内のタワレコ各店舗、各フロアのワゴン)で入手したアルバムも数枚加えることにした。新年の掘り出し物は「ALTERNATIVE WAVERS 2013 BEST REISSUES」の第5位に選出されたThe 49 Americansのリイシュー・アルバムかな?‥‥「ROCK / POP」ではなく「SOUL / HIP HOP」のワゴンの中に紛れ込んでいたので、見逃した人も少なくなかったかもしれません。

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    • 1枚(¥290)×7=2030円の出費です^^;

    • Soap & SkinとDebora Wehtはミニ・アルバムなので、お得感は余りないかも?

    • タワレコ・クリアランスでゲットしたCD(写真)をアップしました(2014. 2. 16)
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    Narrow

    Narrow

    • Artist: Soap & Skin
    • Label: Play It Again Sam
    • Date: 2012/02/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Vater / Voyage Voyage / Deathmental / Cradlesong / Wonder / Lost / Boat Turns Toward The Port / Big Hand Nails Down


    We Know Nonsense

    We Know Nonsense

    • Artist: The 49 Americans
    • Label: Staubgold Germany
    • Date: 2013/04/11
    • Media: Audio CD
    • Songs: Doo-bee-doo-bee / It Is And It Is / Edible / Verbal Culture / Liberty / We Know Nonsense / Tendency To Lie / Glimpse Go By / It's Time / Mon Nuisance / Taste / Imagination / Do / I Be Later / Move Around All Day / Free Trade / Mummy Was A Record Player / Mon ...


    Welcome To The Welcome Wagon

    Welcome To The Welcome Wagon

    • Artist: The Welcome Wagon
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2008/12/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Up On A Mountain / Sold! To The Nice Rich Man / Unless The Lord The House Shall Build / He Never Said A Mumblin' Word / Hail To The Lord's Annointed / But For You Who Fear My Name / American Legion / You Made My Day / Half A Person / Jesus / I Am A Stranger ...


    Hollow Of Morning

    Hollow Of Morning

    • Artist: Gemma Hayes
    • Label: Second Motion
    • Date: 2008/09/30
    • Media: Audio CD
    • Songs: This Is What You Do / Out Of Our Hands / January 14th / Home / In Over My Head / Chasing Dragons / Don't Forget / Sad Ol Song / At Constant Speed / Under A Canopy


    Under My Bed

    Under My Bed

    • Artist: Lou Lesage
    • Label: Universal France
    • Date: 2011/11/18
    • Media: Audio CD
    • Songs: Forgotten Child / Dirty Looks / Turn Into Nightmares / Gonzo Needs A Holiday / Idle Times / Private Life / Under My Bed / Can Be Cruel / Never Can Wait / Empty Head / Drown The Fish / Boy Next Door / Sad Surfer


    Child Bride

    Child Bride

    • Artist: Hannah Cohen
    • Label: Bella Union
    • Date: 2013/07/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Don't Say / The Simplest / Shadows / California / Boy + Angel / Sorry / Say Anything / Carry You Under / The Crying Game / Sunrise


    Debora Weht

    Debora Weht

    • Artist: Debora Weht
    • Label: Eden Srl
    • Date: 2012/02/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: Maria Lando / Para Que Discatir Con Madame / A Primera Vista / Nada / Summertime / Contigo En La Disnatcia / El Secreto Del Amor / A Change Is Gonna Come / Flor De Lis

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    コメント 2

    ふじにぃ

    初めまして。このブログ、面白いですね!特に女性アーティスト系は僕の好みと共通しているところも随分あります。

    宜しければお気に入りに登録させて下さい。
    by ふじにぃ (2014-02-04 21:22) 

    sknys

    ふじにぃさん、初コメントありがとう。
    激安のクリアランスセールでも取捨選択の価値判断があるわけで、
    自ずと下世話な嗜好が出ちゃいます
    (Olivia Ruizのワニ裏ジャケ・アルバムも半額セールで買いました)。

    「お気に入りに登録」して欲しいにゃん^^;
    by sknys (2014-02-04 23:21) 

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