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パリンド・キャット(ネコ回文集) [p a l i n d r o m e]



  • 「肉体の美しさは、ただ皮膚にあるのみだ。もしも人間がボイオテイアの大山猫のように、皮膚の下にあるものを見ることができるならば、誰もが女を見て吐き気を催すことになろう。女の魅力も、じつは粘液と血液、水分と胆汁とから出来ている。いったい考えてもみよ、鼻の孔に何があるか、腹のなかに何が隠されているか。そこにあるのは汚物のみだ。それなのに、どうして私たちは汚物袋を抱きたがるのか。」/ 右は、十世紀のフランスの修道士オドン・ド・クリュニーの言葉である。ホイジンガの『中世の秋』(第11章)にも、サルトルの『聖ジュネ』(第4部)にも引用されているから、よほど有名な言葉なのであろう。じつは、私はかれこれ十数年前、ホイジンガやサルトルを読んで以来、このボイオテイアの大山猫という奇妙な動物に、猛然と好奇心を呼びさまされて、現在にいたっているのである。
    澁澤 龍彦 『幻想博物誌』


  • ▢ 確か黒猫ね‥‥録画した?
    ネコ・ブログなのに「ネコ回文」が今まで1つもなかったのは灯台下暗し、紺屋の白袴ではないかと思い至って作った最初の作品。K公立図書館に隣接する公園に棲んでいた2匹の黒ネコをイメージしている。初代の黒ネコは来館者と一緒に自動ドアを潜って図書館内に入って来てしまうこともあって、女性図書館員に飼われることになったという。もちろんデューイのような「図書館ねこ」になったわけではなく、彼女の家ネコとなったわけですが。日本の公立図書館内でネコを飼うのは現状では許されないでしょうね。きっと、ネコ嫌いの利用者が図書館や区市町村役所に抗議するはず。「図書館ねこ」が個人主義のアメリカで歓迎されて、付和雷同の日本で非難されるのは何故かしら?‥‥2代目は小さな黒ネコで、公園や図書館を訪れる近所の住民たちに可愛がられていた。公園のベンチで黒ネコを抱いていた女の子に拾われて、幸せに暮らしているでしょうか。

    ▢ ニャンコと月見、きっと今夜に‥‥
    「ネコ」→「コネ」という回文ジレンマから逃れるために、「ネコ」以外の言葉を使ってみた「ネコ回文」。ネコと一緒に月見が出来たら愉しいだろうなぁ‥‥と思って、想像を脹らませる。犬は月に吠え、男は満月の夜にバンパイヤに変身するけれど、ネコは月に向かって鳴くだろうか?‥‥ネコには満月よりも三日月の方が似合いかもしれない(月の満ち欠けはネコの目の形状変化に似ている)。手塚治虫のネコ・マンガに「シャミー1000」(1968)という傑作SFがあった。シャミー1000は蒼白い月の光を浴びてネコ女に変身したわけではなく、ネコ顔の異星人がネコの着ぐるみを纏って化けているのだが、そのストーリの面白さと同じくらい、「シャミー1000」というネコ星人の名前が洒落ている。IQ160のスーパー仔猫が活躍するフリッツ・ライバーの「ガミッチ・シリーズ」の中にもネコの女王(異星人スフィンクス?)がUFOに乗って夜空から地上に降りて来ますよね。仲良くネコと月見をしていたら、空飛ぶ円盤が夜空に出現したりして‥‥。

    ▢ 路地、猫屋敷、空き車庫、根城
    回文インデックスには「リスト」「テーブル」の2種類がある。前者は50音順、テーマ別に色分けされ、後者には iTunesのようなレーティングの ★(作成者による5段階評価)が付いている。「黒猫」や「ニャンコ」と同じく、「猫屋敷」も5つ星である。路地に屯するネコ、猫屋敷で飼われているネコたち、民家の空き車庫(ガレージ)の奥で寝転がっているネコ‥‥。猛暑の夏、車庫の日陰で涼を納っていたイチゴちゃん。自分の体温でコンクリートの床が暖まると、徐に場所を少し移動させる(ネコは風通しの良い快適な場所を知っている)。共働き夫妻の家で飼われているので、昼は外ネコ、夜は家ネコという生活を送っているらしい。「猫屋敷」とは複数のネコたちを飼っている民家のことで、化けもの屋敷のように幽霊や妖怪だけが棲んでいる廃屋のことではない。ちなみにネコ写真の「びっくり猫屋敷の殺人」というネーミングは『びっくり館の殺人』(2006)から採っています。

    ▢ 単4漏れ、チビ猫駄々捏ね「ピチ☆レモン」読んだ
    「チビ猫」はアップル社が新開発したAIBO(Sony製)風のネコ型ロボット iCatという設定。飼主が思うようにコントロール出来ない自律思考(AI)型ペットなのは生身のネコちゃんと同じ。左右の目に嵌め込まれた高解像度のカメラ・アイや左右の耳に内蔵された超小型マイクで飼主の顔や声を認識するけれど、チビ猫と遊ばずに放置しておくと、名前を呼んでも拗ねて近寄って来なくなる。「アトムキャット」みたいなペット型ロボットだが、鉄人28号のように遠隔操縦も可能なところがアップル社の売りになっている。手許のリモコンを操作することで、ある程度自由にチビ猫を操れるようになるのだ。しかし、チビ猫にリモコンを向けても全く反応しない。変だなぁ‥‥バッテリー切れかと思って蓋を開けると、単4乾電池からネバネバした液体が漏れ出ていた!‥‥というオチ。「ピチ☆レモン」(学習研究社)という少女ファッション誌があって良かったなぁ。

    ▢ 腹立つ従妹「姉さんさえ、猫と行ったらば?」
    仲の悪い従姉妹。ある事情があって従姉のマンションに従妹が同居している。旅行中の飼いネコの世話を頼む従姉に対して、憎まれ口を叩く従妹‥‥「何で私が好きでもないネコの面倒を見なくゃならないのよ。そんなにネコのことが心配ならば、従姉さんこそ、愛するネコと一緒に旅行すれば良いのに‥‥」。居候のクセに生意気な口を聞く従妹に、従姉の堪忍袋の尾が切れた。誹謗中傷、罵詈雑言。女同士の喧嘩は怖いにゃあ。牝ネコのキム姐さんも気性が荒いけれど。四面楚歌、五里霧中。2人の間で居心地の悪い思いをして、両耳を閉じてしまったネコ君だった。不仲の姉妹では回文にならないので、「従妹」と書いて「イトコ」と読むように工夫しました。背負ったディバッグの中から顔を覗かせている興味津々のネコと一緒に旅行するのも悪くないかもしれませんね。旅好きのネコならば‥‥。

    ▢ タイ〜箱根、「麻薬」嗅ぐ山猫はいた!
    千里眼の目を持つというボイオテイアの大山猫(リンクス)から発想したストーリ。タイに棲息していた伝説の山猫が箱根の山奥で発見された。一躍人気者となった「ハコにゃん」は生まれながらにして0.01gの「麻薬」を数100mの距離から嗅ぎ分ける特殊能力を備えているという。ネコ科の動物は聴覚に優れているけれど、嗅覚は犬族には遠く及ばないらしいから、この山猫は見るものをX線のように透視してしまうボイオテイアの大山猫と同じくらい例外的に貴重な種族ということになる。しかし、良く考えてみると透視能力を持っているのは人間ではなくネコなのだ。その大山猫が人語を話すというのなら兎も角、麻薬犬や麻薬猫のように犯罪捜査に役立つ超能力のようには到底思えない。Tumor Circusに〈千里眼の目を持つ男〉(The Man With The Corkscrew Eyes)という名曲がある。やっぱりESPは大山猫ではなく、人間でないと面白くない‥‥というわけで、「千里眼の目を持つ姫君」の回文&ストーリを作りました。

    ▢ 筋子とお水、猫娘飲めず。婿ねずみ男死す?
    猫娘の回文を作ろうと試みたものの、これが意外に難しい。ねずみ男と猫娘が結婚するという珍妙なストーリになってしまった。「筋子」は週刊真木よう子の「おんな任侠筋子肌」(2008)の影響が色濃い。特撮ドラマ「怪奇大作戦」と東映ヤクザ映画をミキサーで攪拌したようなB級ホラーに回文の方もなっているかしら?‥‥猫娘は水木しげるの妖怪キャラだが、有名な割に出番は少ない。ネコ・マンガ17篇を収録した『水木サンの猫』(2008)でも数話しか登場していない。ねずみ男を見るや否や、猫娘は目を瞠り、牙を剥き出した凶暴な形相になって襲いかかる。ところがアニメ版「ゲゲゲの鬼太郎」は新しく製作されたシリーズほど、猫娘が可愛くなって行くのだ。ネットでは「猫娘萌え」するアニメおたくも少なくないらしい。メイドカフェのネコ耳少女みたいな萌えキャラで、ズル賢いねずみ男の天敵として太刀打ち出来るのかどうか心配になる。それともアニメ版のネコ娘も凶暴な姿に変身するのでしょうか。

    ▢ 猫は「にゃあ!」と、絵売りは定価。画家が描いて貼り、上戸彩にはコネ?
    女優、歌手、タレントなど‥‥有名著名人のフルネームを折り込んだ「セレブ回文」と「ネコ回文」のコラボ作品。「ネコ」→「コネ」というベタな直球回文だが、ストーリの方は結構凝っている。ネコ画廊に展示されているネコ絵画‥‥しかも売り絵の値段は看板ネコが決めるという趣向なのだ。閑話休題。白戸家の人々が登場する某ケータイのTVコマーシャル「ホワイト家族」では何故か父親が「白い犬」という設定になっている。CM自体は余り面白くないけれど、何回も繰り返し見続けていると、犬=父(声は北大路欣也)という存在から異和感が消えてしまう。どうしてネコではなくイヌなのかと考えていた時に閃いた!‥‥このCMシリーズは〈Triumph Of A Heart〉のパクリじゃないかということに。スパイク・ジョーンズが撮ったPVは、Bjorkの恋人(夫?)が牡ネコというシュールな設定なのだ。もちろん、このヴィデオにも恋人が何故ネコなのかという不粋な説明は一切ない。

    ▢ 鳴いた、来た娘、ネコ眠る胸。子猫抱きたいな
    「なぞなぞ回文 #16」として出題した子ネコ回文。その基本になっているのは「眠るネコ、寝る胸」という短回文である。「コ」を「娘」と表記することで、子ネコではなく若い女性をイメージさせている。子ネコを抱きたいと思っている、もう1人の女性(里親)が子ネコを胸に抱いて来た娘を見つめているというシチュエーション。「なぞ回文」は回文シリーズとは別に作成していたけれど、実質上11篇の回文を作ることになるし、どこかの時点で解答を発表しなくてはならないので、「なぞなぞ回文 #11」以降は次回分の回文シリーズの中に組み込むことにした。これならば新たに「なぞ回文」を作る手間が省けるし、解答回文だけでなくストーリも書けるので一石二鳥なのだ。「なぞ回文」に挑戦したいという人は、回文シリーズで解答を読む前に「なぞなぞ回文集 2」を見て下さい。

    ▢ 下駄履き「まねきねこダック」殴った子。葱、寝間着はだけ
    妖怪「まねきねこダック」を鬼太郎が退治する回文。ねずみ男と猫娘の回文のように主人公の固有名詞は出て来ないが、下駄履きの子(少年)は鬼太郎に他ならない。回文&ストーリ上、たまたま邪悪な存在になってしまっただけで、「まねきねこダック」に個人的な怨みがあるわけではない。ネコとアヒルの合体動物はミノタウロスやキマイラなど‥‥『幻想博物誌』(1978)の中に登場する架空の「幻獣」ではなく、コスプレしたキティちゃんみたいな「着ぐるみキャラ」の変種としてイメージされたものなのでしょう(昨今の「ゆるキャラ」ブームに通じるところもある)。招きネコの皮を被ったアヒルなのか、アヒルの皮を被った招きネコなのか判然としないけれど、かつての「なめねこ」やペット雑誌の悪乗り投稿写真みたいに、生身のアヒルやネコちゃんに無理矢理コスプレ衣裳を着せる愚だけは止めて欲しいなぁ。「まねきねこダック」はハロウィンの仮装キャラとして新登場しそうな気もます。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 回文アンソロジー・シリーズ 1‥‥ネコ回文を集めてみました。各回文をクリックするとオリジナル・ストーリが読めます^^
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    手塚治虫アンソロジー 猫傑作集 I

    手塚治虫アンソロジー 猫傑作集 I

    • 著者:手塚 治虫
    • 出版社:秋田書店
    • 発売日: 2000/11/05
    • メディア:コミック
    • 収録作品:おけさのひょう六 / ブラック・ジャック[ネコと庄造と]/ ミッドナイト[ACT.3]/ ユニコ[チャオがやって来た][さらわれたチャオ]/ 2人のショーグン / シャミー1000


    水木サンの猫

    水木サンの猫

    • 著者:水木 しげる
    • 出版社:講談社
    • 発売日: 2008/05/09
    • メディア:文庫
    • 収録作品: ねこ忍 / 猫仙人 / 日本の民話 猫の町 / 猫又 / 猫娘とねずみ男 / ばけ猫 / 猫又の恋 / むせび泣く猫 / ベルサイユの化け猫 / 猫鬼 / まねき猫 / 猫娘 / 猫町切符 / 影くい猫 / 妖怪猫しょう / 魔猫 / 妖怪博士の朝食 猫の町


    幻想博物誌

    幻想博物誌

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:1983/10/04
    • メディア:文庫
    • 目次:スキタイの羊 / 犀の図 / スキヤポデス / クラーケンとタッツェルヴルム / ドードー / 蟻の伝説 / スフィンクス / 象 / 毛虫と蝶 / 人魚の進化 / 大山猫 / 原初の魚 / ゴルゴン / フェニックス / 貝 / ミノタウロス / 火鼠とサラマンドラ / グノーム / 海胆とペンタグラムマ / バジリスクス / 鳥のいろいろ / 虫のいろいろ / ケンタウロス / キマイラ


    Triumph Of A Heart

    Triumph Of A Heart

    • Artist: Bjork
    • Label: One Little Indian
    • Media: DVD
    • Songs: Triumph Of A Heart (Video) / Oceania - Piano & Vocal (Audio) / Desired Constellation - Choir mix (Audio)

    タグ:palindrome cats
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