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フローレンシア逍遙 [m u s i c]

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Florencia Ruizが初来日してインストア・ライヴ(渋谷タワレコ 4/4)を行ないました。最新アルバム《Mayor》(Union De Muiscos Independientes 2007)から4曲を披露‥‥民族衣裳を身に纏い、白いエレキ・ギターを弾きながら表情豊かに歌う。アッという間のパフォーマンスでしたが、日本で初めて披露された彼女のライヴに接することが出来て幸せ。この種のイヴェント(ライヴ、トーク、サイン会など)会場は録画録音・写真撮影禁止で厳しく規制されている一方で、音楽情報誌だかTV番組だか知らないけれど、首から取材パスを幼稚園児にみたいなブラ下げた野郎が我がモノ顔でヴィデオを回したり写真をバシャバシャ撮っていたりする。マスコミ業界と個人メディアの間に一体どのような違いがあるのでしょうか。Pato FuもFlorecia Ruizも幸いに撮影を禁止されていないフレンドリーな「集会」だったので、こうしてブログで紹介出来るわけです。

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「牛ジャケにハズレ無し!」という俗説がロック・ファンの間に流布しているけれど、「猫ジャケ」にも好盤が少なくない(〈猫のスリスリ〉を参照)。 Florencia Ruiz嬢の2ndアルバム《Cuerpo》(2003) も愛猫ベニータとの2ショット(裏焼き?)が小粋な「ネコ・ジャケット・アルバム」‥‥敢えて余白を取ってトリミングした写真が猫と人の親密性を強調している。Florencia Ruiz自身のギターとキーボード、サンプラーに、チェロ、ヴァイオリン、コントラバス、ピアノなど‥‥必要最小限の小宇宙に静謐なヴォイスが神秘的に響く。音数の少ないヴォイス・パフォーマンス風の佇まいはBjorkを彷彿させ、アンビエントな原風景は清楚な少女のイメージを際立たさせる。フェイドイン〜アウトして行く幽玄幽微なサウンドは、未知の惑星から送られて来る秘密の通信メッセージのようでもある。

Florencia Ruizはブエノス・アイレス在住の女性自作自演歌手。祖父はバンドネオン奏者で、彼女は幼稚園の先生をしながら音楽活動をしているという。猫ジャケの《Cuerpo》は全9曲31分という小品集ながら、一瞬にして現実世界を反転してしまう強烈なパワーを裡に秘めていた。デビュー・アルバム《Centro》(2000)は自主制作のCD-R(6曲入り)、2nd《Cuerpo》(2003)は9曲、《Correr》(2005)は11曲‥‥という風に、頭文字Cから始まる6文字のアルバム・タイトルが意味深い。《Correr》は静謐感溢れる前作に対してリズム面を強化。音像も立体的な奥行きを伴い、Juana Molinaにも相通じ合う「アルゼンチン音響派」という名称に相応しいアルバムになった。インディーズ制作ながら、三面見開きデジパック・デザインも凝っている。

「アルゼンチン音響派」の歌姫の最新4thアルバム《Mayor》は黄色いジャケも眩しいくらいに開放的。陽光の降り注ぐ野外には飛び出していないけれど、室内の窓は明け放たれている。ヴォイス・パフォーマンスという絵筆で描く抽象画は変わらぬままに、その色彩はモノクロームからパステル・カラーへ。軽快なエレクトロニカ風の〈Tiemblo〉や、豪快なロック・ナンバー〈Viendo〉など‥‥ ポップな曲も入っていて欧米主体の洋楽リスナーにも聴き易い。〈Naves〉は6拍子、〈Solo〉は3拍子曲。喉を締め付けない彼女のオープンな歌唱法は内向的でありながらナイーヴな内面を曝け出す。《Correr》がオーヴァ・プロデュースと想えるほどに、室内楽的なアレンジ(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ‥‥)も冴えている。ラスト4曲は彼女本来のアクースティック・ギター弾き語りスタイルなので、旧来のフローレンシア・ファンも安堵でしょうか。

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〔favorites〕〔rewind〕〔cats cradle〕に散らばっていたFlorencia Ruizのアルバム・レヴューを1本に纏めて加筆・再構成してみました。オリジナル・アルバムはアルゼンチンのインディーズ制作ですが、Cから始まる3部作のリミックス盤《Fogon》(2006)や、US盤《Cuerpo》も出ています。国内盤は、1st+2ndをコンパイルした2CD《Cuerpo / Centro》(P-vine 2005)と、今回のプロモーション初来日に合わせてリリースされたミニ・アルバム《tiemblo e.p.》(Taiyo 2008)があります。後者は朝日新聞「for your Collection」(3/27付夕刊)の10枚に選ばれました。6曲中4曲は最新アルバムの収録曲(1曲はニュー・ヴァージョン)なので、Florencia Ruizのアルバムを1枚買ってみようかと思っている人には、14曲入りの《Mayor》の方が良いかと‥‥。

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  • Amazon.comは殆ど全滅状態なので、主に@TOWER.JPへリンクしました^^

  • 自主制作盤(CD-R)の《Centro》とリミックス盤《Fogon》は未聴です

  • 記事タイトルは澁澤龍彦『フローラ逍遙』のモジり‥‥フローレンシア・ルイスが日本(東京・京都・名古屋)の春を逍遙する?

  • Florencia Ruizさんが「スペイン語講座」(NHK教育 4/24)にゲスト出演しました。見逃した人は再放送(4/29 tue 6:00~6:25am)をチェックしてね^^
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Cuerpo

Cuerpo

  • Artist: Florencia Ruiz
  • Label: Union De Musicos Independientes
  • Date: 2003/12/20
  • Media: Audio CD
  • Songs: Nino O / Siberia / Del cuerpo / Manana / Alcanzar / Sin imagen / Parte / Ahogarme en mi / Despierto


Correr

Correr

  • Artist: Florencia Ruiz
  • Label: Union De Musicos Independientes
  • Date: 2005/11/30
  • Media: Audio CD
  • Songs: Correr / Hasta la primavera / Mojandote / Mundo / Nube / Migajas / Intemperie / Lugar / Desato / Vivire / Nijni


Mayor

Mayor

  • Artist: Florencia Ruiz
  • Label: Union De Musicos Independientes
  • Date: 2007/11/03
  • Media: Audio CD
  • Songs: Al fin / De buscar / Regrese/Detendre / Mejor / Tiemblo / No sabras / Algo asi / Movimiento final / Naves / Viendo / Abrigada / Solo / Oraciones / Sumare


Cuerpo / Centro

Cuerpo / Centro

  • Artist: Florencia Ruiz
  • Label: P-vine
  • Date: 2005/08/19
  • Media: Audio CD
  • Songs: Nino O / Siberia / Del Cuerpo / Manana / Alcanzar / Sin imagen / Parte / Ahogarme en mi / Despierto // Contro / Revolver / Domino / Pases / Patos / Aero


tiemblo e.p.

tiemblo e.p.

  • Artist: Florencia Ruiz
  • Label: Taiyo
  • Date: 2008/03/25
  • Media: Audio CD
  • Songs: Tiemblo / Correr / Encandilado / Algo Asi (version inediita) / Movimento Final / Abrigada

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コメント 2

モバサム41

「フローレンシア逍遙」っていうおやじギャグは、ちょっと苦しいかな。
「メリー・クリスマス、ミス・フローレンシア」ってのはどうでしょう?(時季外れ…)
by モバサム41 (2008-04-07 23:24) 

sknys

モバサム41さん、コメントありがとう。
「フロール(flor)逍遙」というタイトルも考えたんですが‥‥^^;
2週間くらい日本に滞在しているようなので、
運が良ければ、どこかでFlorencia Ruizに逢えるかもしれません。
by sknys (2008-04-08 00:01) 

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