◎ Boygenius(Matador 2018)boygeniusボーイジーニアス(boygenius)は3人の女性SSWが結成したスーパーグループ。「天才少年」という逆説的なバンド名には幼い頃から褒め称されて育つ少年に対する少女からの冷ややかな視線が感じられる。ジュリアン・ベイカー(Julien Baker)は米テネシー・メンフィス、フィービー・ブリジャーズ(Phoebe Bridgers)は米カリフォルニア・パサデナ、ルーシー・ダカス(Lucy Dacus)は米ヴァージニア・リッチモンドと出身は異なるが、3人共に20代前半のソロ・アーティストである。彼女たちは自作した1曲とアイディア1つを持ち寄ってレコーディングに臨んだという。6曲入りデビューEPのカヴァは
《CSN》(Crosby, Stills & Nash 1969)を模している。ちなみに写真を撮ったのはウクライナ生まれのモデル兼アーティストのレラ・ペンテルテ
(Lera Pentelute)。50年前のアルバム・カヴァを再現したのは「天才少年」の敬意と矜持なのかもしれない。
3人のヴォーカル、コーラス、ギター、バンジョー、ピアノ、マンドリン、ヴァイオリンに、ベースとドラムスを加えた編成。「貴方が求めるようには愛せないと」Lucy Dacusが歌う〈Bite The Hand〉。恋人から解放されて、愛犬と一緒に宇宙船に乗って未知の光景を見たいと夢見るJulien Bakerの〈Me & My Dog〉。ドリームキャッチャー(魔除けのお守り)の効果もなく、夢の中で恋人に殺されてしまう〈Souvenir〉。「手を噛む」(「bite the hand that feeds me」 は「恩を仇で返す」というイディオム)というイメージと愛犬、悪夢(a bad dream)とナイトメア(nightmares)‥‥切実な実体験と悪夢が交錯する私小説風の楽曲は同時代を生きる女性として通底している。シューゲイズっぽいギター・サウンドで終わる〈Stay Down〉、暗雲に覆われたような不穏なギター・ノイスと力強いヴォーカルが拮抗する〈Salt In The Wound〉。今後彼女たちがデビュー・アルバムをリリースするのかどうかは分からないが、これだけで終わってしまうのは惜しいプロジェクトです。
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◎ Stranger In The Alps(Dead Oceans 2017)Phoebe BridgersiPhoneのCM(2014)で、Pixiesの
〈Gigantic〉をカヴァして一躍注目されたSSWの1stアルバム。Phoebe Bridgersのギターとバンジョーに、キーボード、ピアノ、ギター、ベース、ドラムス、チェロ、ヴァイオリンを配したアクースティック・サウンド。3フィンガーズ・ピッキングの〈Funeral〉、アルペジオの〈Demi Moore〉など、生ギター弾き語りタイプのSSWで、〈Gigantic〉のパンキッシュなイメージとは異なる。「天才少年」 の中では一番フォーク色が濃い。デビュー・シングル
〈Killer〉のアルバム・ヴァージョンにはJohn Doe(X)がゲスト・ヴォーカルで参加。デュオ・アルバム《Better Oblivion Community Center》(2019)をリリースすることになるConor Oberst(Bright Eyes)とデュエットした〈Would You Rather〉も収録されている。少女時代に撮ったポートレイトを白く塗り潰したアルバム・カヴァはQ太郎の妹「オバケのP子」を想わせなくもない。全11曲・44分。三面見開きデジパック仕様、歌詞ブックレット(8頁)付き。
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◎ Sprained Ankle(6131 Records 2015)Julien Baker「挫いた足首」とは、まるで中学生の作文みたいなタイトルである。うら若きSSW(当時20歳)の1stアルバムとして、これほど痛々しくプライヴェートな題名も珍しい。アルバムの収録曲はテネシー州立大学在学中に書いた。当時活動していたバンド(The Star Killers 、Forrister)の雰囲気に合わないと思って、彼女は発表するつもりはなかったが、友人の勧めでデモを作り、2014年の夏ヴァージニア・リッチモンドのスタジオで録音したという。Bandcampで自主リリースした後、2015年10月、「6131 Records」 から公式リリースされた。3拍子ハーモニクス奏法の
〈Sprained Ankle〉。1人多重唱の〈Brittle Boned〉とバスドラの入った〈Vessel〉の2曲は後にレコーディングされた。ラストのピアノの弾き語り〈Go Home〉を除き、彼女のヴォーカルとギターだけのシンプルなサウンドだが、切々と吐露される無垢で可憐なヴォイスに魅了される。全9曲・34分。三面折り畳み紙ジャケ仕様、歌詞はインナーに記載されている。
◎ Turn Out The Lights(Matador 2017)Julien BakerJulien Bakerの2ndアルバムはセルフ・プロデュース。彼女のギター、ピアノ、オルガンにヴァイオリンやクラリネット、サックスを加えたシンプルなサウンド。ギターやピアノの伴奏で歌う正統派のSSWである。インストの〈Over〉に続いて、テレキャスターのアルペジオ、ピアノ、ヴァイオリンなどが奏でられる
〈Appointments〉、静寂から一転してノイジ ーなギターと高音ヴォイスで盛り上がる
〈Turn Out The Lights〉、アコギ1本で弾き語る〈Even〉、ピアノとヴァイオリン(Camille Faulkner)の伴奏で切々と歌いう〈Claws In Your Back〉‥‥憂いを帯びた内省的なヴォーカルから、可憐なコーラス、力強いシャウトまで自在に歌う彼女は「天才少年」の中では一番表現力が豊か。簡素だが平板ではない、奥行きのある音響空間を構築している。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。歌詞に添えられた花のイラストは彼女自身が描いている。
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◎ Historian(Matador 2018)Lucy Dacusルーシー・ダカス(Lucy Dacus)は米ヴァージニア・リッチモンド出身のSSW。2ndアルバムは彼女のギターと共同プロデュースしたジェイコブ・ブリザード(Jacob Blizard)のギター、ベース、オルガン、ウーリッツァ、パーカッションに、ドラムスというシンプルな編成ながらドラマティックに展開して行く。ギター弾き語りからオルタナ・ロックへ徐々に盛り上がって行く6分超の
〈Night Shift〉。ラジオから流れる女宣教師の声をノイジーなギターとストリングス、コーラスが掻き散らす〈Nonbeliever〉。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどが通奏低音として流れる〈Body To Flame〉。憂いを帯びた強靭なヴォーカルがハードなギター・サウンドと拮抗する〈Timefighter〉。抑制を解き放ってエモーショナルにシャウトする6拍子の〈Pillar Of Truth〉‥‥全10曲・48分。デジパック仕様、歌詞ブックレット(8頁)付き。Paste誌の
「50 Best Albums of 2018」で第1位に選出された。
◎ Punisher(Dead Oceans)Phoebe BridgersオバケのP子から、骸骨娘に変身しちゃった?‥‥1stアルバム
《Stranger In The Alps》(2017)のカヴァは少女時代のスナップショットを白いペイントで塗り潰し、2ndアルバムでは黒地に白い骨格をプリントしたスケルトン・スーツを着ている。フィービー・ブリジャ ーズ(Phoebe Bridgers)はオバケやガイコツなど、この世ならざる存在に強く惹かれているように見える。来日した折りの休日に古都を観光する
〈Kyoto〉、Elliott Smithへのオマ ージュ・ソング〈Punisher〉、病室で瞑想する〈Halloween〉など、浮游感のあるサウンドがファンタジー・ワールドへ誘う。Julien BakerとLucy Dacusの2人がヴォーカルで参加した〈Graceland Too〉
〈I Know The End〉は
「天才少年」(Boygenius)の再演となった。全11曲・41分。見開き三面紙ジャケ仕様。南アフリカ生まれのイラストレータ・絵本作家クリス・リデル
(Chris Riddell)のイラスト入り歌詞ブックレット(24頁)も素敵。
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- 全アルバム(輸入CD)を自腹で購入‥‥《Boygenius》は日本独自企画盤CDです
- Lucy Dacusのデビュー・アルバム《No Burden》(Egghunt 2016)は未入手、2ndアルバム《Historian》は〈アロー・モード〉の再録(一部加筆・改稿)です
- レラ・ペンテルテ(Lera Pentelute)については「VOGUEGIRL」を参照しました
- Julien Baker《Sprained Ankle》のレヴューを追記しました(2019-04-16)
- Julien Baker《Punisher》のレヴューを追記しました(2023-04-09)
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boygenius / sknynx / 826
Boygenius
- Artist: boygenius
- Label: Matador
- Date: 2018/11/23
- Media: Audio CD(EP)
- Songs: Bite The Hand / Me & My Dog / Souvenir / Stay Down / Salt In The Wound / Ketchum, ID
Stranger In The Alps
- Artist: Phoebe Bridgers
- Label: Dead Oceans
- Date: 2017/09/22
- Media: Audio CD
- Songs: Smoke Signals / Motion Sickness / Funeral / Demi Moore / Scott Street / Killer / Georgia / Chelsea / Would You Rather / You Missed My Heart / Smoke Signals (Reprise)
Turn Out The Lights
- Artist: Julien Baker
- Label: Matador
- Date: 2017/10/27
- Media: Audio CD
- Songs: Over / Appointments / Turn Out The Lights / Shadowboxing / Sour Breath / Televangelist / Everything That Helps You Sleep / Happy To Be Here / Hurt Less / Even / Claws In Your Back
Historian
- Artist: Lucy Dacus
- Label: Matador
- Date: 2018/03/02
- Media: Audio CD
- Songs: Night Shift / Addictions / The Shell / Nonbeliever / Yours & Mine / Body To Flame / Timefighter / Next Of Kin / Pillar Of Truth / Historians
No Burden
- Artist: Lucy Dacus
- Label: Matador
- Date: 2016/09/09
- Media: Audio CD
- Songs: I Don't Wanna Be Funny Anymore / Troublemaker Doppelgänger / Green Eyes, Red Face / Strange Torpedo / Dream State... / Trust / Map On A Wall / Direct Address / ...Familiar Place
Sprained Ankle
- Artist: Julien Baker
- Label: 6131 Records
- Date: 2015/10/23
- Media: Audio CD
- Songs: Blacktop / Sprained Ankle / Brittle Boned / Everybody Does / Good News / Something / Rejoice / Vessels / Go Home
Punisher
- Artist: Phoebe Bridgers
- Label: Dead Oceans
- Date: 2020/06/19
- Media: Audio CD
- Songs: DVD Menu / Garden Song / Kyoto / Punisher / Halloween / Chinese Satellite / Moon Song / Savior Complex / ICU / Graceland Too / I Know The End
猫ちゃんの足先がちょこんとかわいい。^^
そして、カーソルをあてるとお写真が変わることを発見。
ちょっと戻ってみてみたら、前にもありましたね。
い、いまごろ。。^^;
by ぶーけ (2019-02-12 21:23)
その可愛い足先で、ちょこんと膝に乗ります。
無理に降ろそうとすると、ニャンと鳴き、爪を立てて嫌がる三毛ちゃん。
3人娘の写真を撮った女性レラペンはユニクロのモデルもしていました^^;
(https://voguegirl.jp/special/uniqlo/20161214/)
by sknys (2019-02-12 22:58)