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イカ部オフ会 [p a l i n d r o m e]



  • さて、漁港にネコがいると教えられて出かける。作業場にネコが集まっているのは冬の間だけらしい。冬の寒さをここで耐えしのぐということだろうか。ネコの世話をしている方に話を聞く。あるとき家に連れて帰ろうとしたが嫌がったそうだ。ネコは環境の変化を避けることがある。ここでネコ同士で暮らす空間がすべてなのだろう。それにしても吹雪があり、また晴れ間ものぞくという天候の変化は急激だ。吹雪いているときなどは風上に顔を向けると雪が痛いほどだ。ケコも顔を伏せている。雪が止むと景色の立体感が違ってくる。ネコの顔もたちまちゆるむ。漁港にはハクチョウたちも羽を休めに来る。クワッとハクチョウが鳴くとネコが顔を上げてハクチョウを見る。が、お互いに関心はあまりなさそうだ。流れる雪雲に悩まされながら、またあらためて雪国のネコのたくましさ頭が下がる思いをする。
    岩合 光昭 「ねこ輝く」


  • □ 乗ると音程外すセロ弾き、浮き浮き広瀬すず、ハイテン踊るの
    金星音楽団のセロ弾きゴーシュに久し振りの仕事が舞い込んだ。少女アイドルのデビュー曲発表会で伴奏するというクラシック畑のゴーシュには似つかわしくない依頼だった。弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)という、いわゆるアン・プラグド編成になったのはデビュー曲がアイドルには珍しく、ポスト・クラシカル風のアレンジが施されていたから。ポップなデジタル・ビートと流麗なストリングスの響きがミス・マッチ的に混じり合った魅力的な曲で、音楽メディアやファンのリアクションも良かった。しかし、ライヴ発表会には一抹の不安がある。ゴーシュには調子に乗って来るとリズムに遅れて、音程を外す癖があったのだ。Aメロ〜Bメロはスムーズに進行したものの、肝腎のサビでゴーシュは音程を大きく外してしまう。演奏者だけでなく素人にも分かるミス・トーンだったが、ノリノリの広瀬すずは間奏で何事もなかったように、ハイテンションで踊り続けた。

    □ 怒って四苦八苦、イライラ幾つ白紙撤回?
    女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインした新国立競技場は2500億円という膨大な建設費用に国民やアスリートたちの非難が殺到して白紙撤回。某日本人デザイナーによる東京オリンピックの公式エンブレムもネット上に溢れた数々の盗作疑惑に黒く塗れて、同じく白紙撤回を余儀なくされた。一般の庶民や貧困家庭には想像もつかない巨額の税金投入(500億円でも相当高いと思う)に苛立ち、次から次に出て来る良く似た「オリジナル・デザイン」に多くの日本人は辟易していた。ハナから躓いてケチがついたことで、2020年の東京五輪は招致会場で湧いた高揚感も「オ・モ・テ・ナ・シ」の心遣いも一気に萎んでしまった。今や東京オリンピックそのものを白紙撤回し兼ねないシニカルな風潮である。今年(2015)の流行語大賞は「白紙撤回」に決まりでしょう。アベ政権が強行採決した安保法案も新国立競技場や五輪エンブレムと同じように「白紙撤回」して欲しいけれど。

    □ 文字・戯れ文・絵のエンブレム‥‥私も
    白紙撤回した新国立競技場と五輪公式エンブレムのデザインは改めて広く公募するという。新国立競技場の設計は素人には無理だとしても、公式エンブレムのデザインならば私にも出来るかもしれないと現役美大生のM子は思案する。招致活動中に使用された桜をモチーフにしたカラフルなエンブレムは女性美大生(当時)が描いたというではないか。そのエンブレムを転用したらどうかという意見さえあるらしい。M子は五輪マークや英語や日の丸という既成概念に捉われず、自由な発想で新しいエンブレムをイメージすることにした。意識を集中すると、脳裡に将棋の「と金」が赤く閃いた。将棋の駒は五角形で、「と」(金の略字)は「東京」の頭文字を連想させる。一介の「歩」が直進し、裏返って「金」となるのも出場選手と金メダルをイメージさせないかしら?‥‥M子は「と金」をモチーフにしたエンプレムのデザイン画を描くことに決めた。

    □ 火山、余震、◯◯マンション坂
    海外から大挙して観光客が訪れるほど、日本全国各地には有名な温泉地が点在している。日本人にも国内の温泉旅行は依然として人気があるし、外国人には露天風呂や混浴風呂が珍しいのかもしれない。しかし、同時に日本は火山・地震大国でもある。いつか火山は噴火し、どこかで地震は起きる。テロや戦争は人間の英知で地上から無くせるかもしれないけれど、人知の及ばない自然災害は必ず起こるし、絶対に防げない。◯◯山の噴火による噴煙や余震で、周辺住民は不安に駆られている。火山灰や粉塵による日中の健康被害。火山性微動で眠れない夜が続く。急勾配の坂の上に建つ◯◯マンションの住人たちも不安げに黒い噴煙を吐く◯◯山の勇姿をヴェランダから眺めていた。◯◯マンションは大地震にも耐えられる構造なのか、坂の上の地盤は崩れたりはしないのか?‥‥諸事情でマンションの実名を明かせないのは残念ですが‥‥。

    □ 村にて名馬、窶れて来た。奇天烈、ヤバい目で睨む
    「無事これ名馬」の格言通り、アカは村一番の名馬だった。駿馬というわけでも、賢いわけでも、美人でもない牝馬だったが、不思議と病気や事故には無縁で、村の牧場で元気に暮らしていた。しかし、ある日を境にアカは食事を摂らなくなり、見る見る痩せ細って窶れてしまった。隣村の獣医に診てもらっても原因不明だった。新種のウィルスやインフルに感染したわけでもない。心配した馬主が村の女呪い師に見てもらうと、魔女のような風貌の老婆は恋煩いではないかと占う。人間と同じように馬も恋をして思い悩む。恋い焦がれれば食欲も失せ、失恋すれば死にたくもなるのじゃ‥‥そう言えば馬主にも思い当たることが1つだけあった。先月、左前脚を骨折した牡馬のアオを獣医に頼んで密かに安楽死させていたのだった。アオとアカは仲睦まじかった。それ以来、アカの目つきが変わった。馬主が食事を与えようとすると怖い目で睨むのだ。アカの目は怒りで真っ赤に燃えていた。

    □ 辛酸なめ子、芝居は「醜女、難産死」
    マンガ家・コラムニスト、メディア・アクティビストの辛酸なめ子さんに「女優」という肩書きが1つ加わった。それも映画やTVドラマではなく、舞台女優として本格的にデビューするという。映画「ヒミコさん」(2007)にスポーツ記者役で出演したこともあったが、殆どズブの素人が主演女優に抜擢されるのは異例中の異例である。しかも、彼女の役柄が凄まじい。「シコメさん」はブス女が長い独身時代を耐え続け、艱難辛苦の末に夢にまで見た憧れの結婚を成し遂げる物語。幸せいっぱいのヒロインは妊娠する。しかし、難産の果てに呆気なく死んでしまう‥‥「不幸」を絵に描いたような救いようのない役で(無事に子供が産まれたのが唯一の救いである)、まさに「辛酸なめ子」の芸名に相応しいハマリ役だと芸能界では早くも話題になっている。

    □ 凝り取るエプロン、遠路プエルト・リコ
    慢性的な肩凝りに悩む女性に朗報!‥‥という海外ニュースが注目を集めている。炊事、洗濯、掃除などの家事をする際に、エプロンを身に着けているだけで肩凝りが軽減されるというのだ。中米プエルト・リコ産の植物繊維で織られた特製エプロンは某衣料メーカーから発売されるや否や、世界的な人気商品となった。今でも生産が追いつかず、品薄状態が続いている。医師・科学者のアグスティン・スタール(Agustín Stahl)が母国北部の熱帯雨林で発見した新種の植物コリトルエプ。この繊維の布で枕カヴァを作った現地の女性が一晩使用したところ、翌朝起きると首から肩の凝りが嘘のように解消されたことから、その治癒効果が広く知られることになったという。「コリトル・エプロン」は日本にも限定輸入されているが、稀少品なので入手困難。重い肩凝りに苦しむ日本人女性には遠路遙々、カリブ海のプエルト・リコまで買いに行く人も少なくないと聞く。

    □ 朽木、津軽、箱根、能登去る冬、「ふるさとのねこ」春、活気づく
    青森県津軽のリンゴ農園で生まれた子ネコたちの四季を撮った写真展「ふるさとのねこ」。春・夏・秋・冬‥‥移り変わる季節、鮮やかに移ろう風景の中で成長する子ネコたちの生態は鑑賞者を深い郷愁へと誘う。東北の津軽地方だけに限ったことではない。日本各地には飼いネコ、ノラネコを問わず、無数のネコたちが人間と共に暮らしている。沖縄から北海道までの長い「ネコ歩き」の旅。滋賀(朽木)、青森(津軽)、神奈川(箱根)、石川(能登)など‥‥日本全国47都道府県のネコを撮り続けている岩合光昭氏は感慨深げに語る。冷たい木枯らしが吹き荒び、白い雪が降り積もる冬のネコたちは寒さに耐えている。暖かい冬毛に躰が覆われていても、肉球が地面や雪に直接触れるのを嫌う。撮影中の岩合さんの足の上に乗って冷えた肉球を暖める。「ふるさとのねこ」たちも梅や桃、桜の花の咲く春になると活気づくのだ。

    □ 若い武士、我が抜き身失くし南無、虚しく波、鬼怒川、渋井川
    1週間も激しい雨が降り続いていた。宿場の安宿に足止めされている若い武士は恨めしそうに暗く淀んだ空を見上げる。墨絵のような雨雲が低く垂れ籠め、カフェ・オレのような濁流がゴォーゴォーとい水音を轟かせながら荒れ狂う。川の流れは警戒水域に達しようとしていた。数人の宿泊者たちが寝静まった夜半、若侍は背中が冷たく濡れていることに気づいて飛び起きた。既に川水は宿屋内に侵入していて、土間から板の間に溢れ出ていた。咄嗟に外へ出た若侍は茫然自失する。真っ暗で川面は見渡せないが、どうやら鬼怒川が氾濫したしたようだ。3・11の津波のように川水はアッという間に腰の高さにまで達し、荒波に浚われて流された時に命の次に大切な太刀を失くしてしまった。命からがら高台の土手に泳ぎ着いた若者は防水仕様のスマホを握りしめて、ブルブル震えていた。明るく光る液晶画面には決壊した渋井川が映し出されている。

    □ 目立つ「はみだしっ子」刺す。傷、鎖骨下、瞠った目
    グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人組は街中を歩いていても目立ってしまう。「はみだしっ子」たちはシャッターの閉まった商店が建ち並ぶ人気のない商店街で一夜を明かすことにした。アーケード(屋根)で覆われた◯◯銀座商店街は雨風を凌げるし、24時間営業のコンビニ店も入っている。人通りの絶えた夜中は4人一緒にいると怪しまれるので、グレアムとアンジー、サーニンとマックスの2組に分かれて行動することにした。グレアムは深夜営業の飲食店でコーヒーを飲み、アンジーは店先のベンチで煙草を喫う。アーケードの片隅で子ネコと遊んでいたサーニンは不審な男の後を尾いて行くマックスの姿を目撃した。慌ててマックスの許へ駆け寄るサーニン。男はアーケードの出口に停めていたクルマの中にマックスを連れ込もうとしていた。サーニンが男に体当たりしてマックスから引き離す。逆上した男がナイフでサーニンを刺す。鎖骨下に刺さったナイフ‥‥傷口から紅い血が流れ出た。マックスは目を大きく見開いたまま刺傷現場に佇んでいた。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • はみだしっ子回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #41」の解答です^^

     スニンクスなぞなぞ回文 #42

     ◯△◯▽んますない◎☆◎イナズマン▽◯△◯

     回文作成:sknys

     ヒント:イナズマンを狙う新たな刺客


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    ふるさとのねこ

    ふるさとのねこ

    • 著者:岩合光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2015/04/24
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:春 / 夏 / 秋 / 冬


    はみだしっ子 1

    はみだしっ子 1

    • 著者:三原 順
    • 出版:白泉社
    • 発売日:1996/03/20
    • メディア:文庫
    • 目次:われらはみだしっ子 / 動物園のオリの中 / だから旗ふるの / 雪だるまに雪はふ / ボクの友達 / 階段のむこうには… / 眠れぬ夜 / ボクは友達 / レッツ・ダンス・オン!/ ボクと友達 / 夢をごらん / ボクが友達 / ボクも友達 / 残骸踏む音 / 解説・川原 泉

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