猫のコトラさん [a r t]
岩合 光昭 「ふるさとのねこ」
「ふるさとのねこ」(渋谷ヒカリエ 2015)に行って来ました。ネコ写真を持参すると当日入場券が2割引になるということもあってか、写真展会場横の壁面には既に数多くのネコ写真が展示されていた。岩合さんが自選した「今日のいい子だね~」のコーナーにも可愛いネコちゃんが貼ってある。青森県津軽のリンゴ農家で飼われているコトラの産んだ5匹の子ネコたちと母ネコの子育てを撮った写真展。春・夏・秋・冬‥‥移り変わる東北の四季の中で成長する子ネコたちが生き生きと捉えられている。登場するネコたちは地域限定なので多種多彩な「ネコ歩き」の華やかさには敵わないけれど、逆に感情移入しやすい。残念だったのは写真集『ふるさとのねこ』(クレヴィス 2015)に収録されていない写真が何点かあったこと(身籠ったハナちゃんの写真が載っていない!)。2度目の春は写文集『コトラ、母になる』(クレヴィス 2015)に掲載されているのだ。奇声を発しながら会場内を走り回っていたガキは野放し状態だった。
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リンゴの白い花が咲く春。木に登って歩く縞ネコ。ピンク色の桃の香りを嗅ぐ白ネコ。近所の寺へ花見に来たマミ(メス17才)。弘前公園の桜の木の上で休む長毛種のミュウミュウ。5月1日、リンゴ農家の作業小屋で5匹の子ネコ(縞ネコ4匹と白ネコ1匹)を産んだコトラ(メス1才)。他の農家で産まれた木樽の中の子ネコたち。山麓に流れる小川を飛び越える白ネコ。黄色いタンポポ畑で匂いを嗅ぐ茶トラ。ネコたちの夏。コトラの子ネコたち‥‥リッキー、ハナ、オフク、シマ、「吾輩はネコ」(まだ名前が付けられていないネコ)の5匹も元気良く外へ跳び出す。青いリンゴの実った木の上で寛ぎ、摘果したリンゴと戯れる。ねぷた絵師の工房で遊ぶトラジ(オス2才)ちゃん。ねぷた祭や花火大会を背景にしたネコのシルエット。茅葺き屋根の古民家の白ネコ、ラッコ(メス2才)は女飼主が豇(ササゲ)の皮を剥ぐ作業を見守っている。
収穫の秋。天日干しの稲穂の上で昼寝をしている茶トラのペー(オス2才)。リンゴの木に立て掛けられた脚立の上から仲間たちを見下ろすリッキー。赤く色づいたリンゴの木に登るリッキー。刈り取られたた田圃の中でイナゴを捕まえるペー。日本家屋の障子を破いて出入りする家ネコのブンコ(メス3才)。積み重なった木箱の中で休息するアメリカン(メス1才)。屋根で仲良く戯れ合うリッキーとハナの兄妹。夏の終わりにコトラが産んだ黒ネコと縞ネコの赤ちゃん。屋根の上、中秋の名月をバックにしたリッキーとハナちゃん。ネズミを捕まえたシマ。真っ白い雪に覆われた冬。剪定作業中のリンゴの木の上のネコたち。作業小屋の屋根の上のネコ。小屋の中の車の上から外を眺めるネコたち。白鳥たちを背景にして佇む港の長毛種。空飛ぶカモメと白黒ネコ。雪に埋もれた田圃を闊歩するペー。小屋の中で身を寄せ合って暖まるネコたち。リンゴの木に登って遊ぶリッキーたち。
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『コトラ、母になる』はハンディな写文集。情報量の少ない写真集『ふるさとのねこ』を補完するサブ・テクストという位置づけ。「オオトラ、コトラ、子ネコの系図」や他のネコたち、農家の人々の一覧リスト「本書に登場するネコ・ヒトたち」は写真展の入口にあった。「世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム)のスペシャル番組として発案された「ふるさとのねこ」。ネコの四季を撮る企画として選ばれた場所は春夏秋冬の変化が際立ち、日本人の郷愁を誘う東北の津軽だった。弘前公園並木沿いで出遭った長毛種の三毛ミュウミュウ。最勝院の山門に登る洋食屋の看板白ネコ、マミ。はリンゴ農家・五木さんのネコ、チク、アメリカ、オッド。コトラが産んだ5匹の仔ネコたち、リッキー、ハナ、オフク、シマ、「吾輩はネコ」。岩木山麓のリンゴ農家・木田さんのシャムやペルシャ風のネコたちには名前が付いていない。稲作農家・花柳さんの2匹の茶トラ、ペーとパー(短毛と長毛)。リンゴ農家・内山さんのネコたち、アメリカン、オメメ、シロ、タヌキ、ヤケ、ゴルゴ(岩合さんが命名した「撫でさせないトラ」)‥‥。
ねぷた絵師夫妻の家ネコ、トラジちゃんが黒田官兵衛の武者絵で遊ぶ。産んだ3匹の仔ネコを殺してしまったアメリカン。交通事故で亡くなったパー。リッキーの名付け親は「津軽の四季」を紹介する特別編のゲストに選ばれた塚本高史(「世界ネコ歩き」のナレーション担当)だった。茅葺き屋根の古民家の家ネコ、ブンコ。蔵つき古民家の白ネコ、ラッコ。オオトラ(コトラの母ネコ)が産んだ5匹の子ネコたち。漁港の長毛のボス、クマ。行方不明の白ネコ、オフク。交通事故に遭って大怪我をしたけれど、驚異的な治癒能力で回復したリッキー。コトラが産んだ新しい仔ネコ、クロとトラ。コトラが子離れしたので、岩合さんに懐くハナとリッキー。ネズミを捕るシマとリッキー。冷たい雪を嫌って岩合さんの足の上に乗るリッキーとハナ。雪穴や木の上で遊ぶネコたち。秋に岩合さんの躰を撫でさせれくれたゴルゴは冬に亡くなっていた。オオトラの子、スーはリッキーと仲良し。身籠ったハナの不思議な眼差し‥‥岩合さん、生姜焼き食べすぎです。
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『ねこ輝く』(辰巳出版 2015)は隔月刊誌「猫びより」に連載している「岩合光昭の猫」(2010~14)に未掲載写真を追加した「ニッポンの猫写真集」。どこかで見たことのあるネコたちも散見されるが、大判(A4、95頁)なので迫力が違う。香川(男木島・佐柳島・本島)、静岡(西伊豆)、栃木(佐野・益子)、滋賀(奥琵琶湖)、沖縄(竹富島・今帰仁・渡嘉敷島)、島根(松江・大田・奥出雲)、広島(竹原・庄原・尾道)、鹿児島(出水・屋久島)、青森(青森・弘前)‥‥日本各地、9県、20市町村郡のネコちゃんが登場。本書のネコはキャラ立ちしているというか、個性的なネコたちが多いように感じられる。表紙カヴァのガッチャン(広島・庄原市)は1年間も裏山に籠り、下山した時は弟子を連れていたというネコ生の持ち主。ウィリアム・ブレイクの詩のように光り輝くネコ科の小動物。岩合さんも《ネコの野生を垣間見るときこそ、ぼくがネコの輝きを掴み取る一瞬なのかもしれない》と「あとがき──ネコが輝くとき」に書いている。
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- 「ふるさとのねこ」は渋谷ヒカリエで開催されました(2015. 7. 25~8. 31)
- リッキーはハインラインの『夏への扉』からの命名でしょうか^^;
- 『ねこ輝く』(辰巳出版 2015)の紹介文を追記しました(2015. 9. 13)
kai and me / cats and lions / walk with cats 1 / 2 / cat in home / sknynx / 593
- 会場:渋谷ヒカリエ
- 会期:2015/07/25~08/31
- メディア:写真
- 構成:春 / 夏 / 秋 / 冬
- 内容:世界を舞台に活躍する動物写真家・岩合光昭。彼が各国で撮影を続ける中で、見つめ続けている対象があります。それは私たち日本人の心の中の「ふるさと」です。四季それぞれの美しさが際立つ日本。春夏秋冬を通じて日本の原風景に出会う時、私たちはそこに「ふるさと」を感じるのではないでしょうか。青森県津軽地方。花咲く春、夏の祭り、リンゴ実る秋、そして深く長い冬。岩合はこの地に日本の原風景を見、1年をかけて子...
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:クレヴィス
- 発売日:2015/07/31
- メディア:単行本
- 目次:春 リンゴの花が咲くころ / 夏 颯爽と、夏毛のネコたち / 秋 実りの時、喜びの季節 / 冬そしてまた春 まっ白な世界、凛として
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:辰巳出版
- 発売日:2015/04/13
- メディア:大型本
- 目次:香川・男木島 / 香川(佐柳島・本島)/ 静岡・西伊豆 / 栃木(佐野・益子)/ 滋賀・奥琵琶湖 / 沖縄・竹富島 / 沖縄(今帰仁・渡嘉敷島)/ 島根(松江・大田・奥出雲)/ 広島(竹原・庄原) 広島・尾道 / 鹿児島・出水 / 鹿児島・屋久島 / 青森(青森・弘前)/ あとがき──ネコが輝くとき
2015-09-11 00:06
コメント(2)
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猫の写真展、楽しそうですね。^^
お写真の猫さん、目がグリーンで神秘的。
by ぶーけ (2015-09-14 15:58)
「ねこ」「ねこ歩き」「世界ネコ歩き」などは日本各地を巡回中ですが、
「ふるさとのねこ」は今のところ東京(渋谷ヒカリエ)だけの展示。
青、緑、黄、銅色‥‥猫の目(虹彩)は多彩で綺麗ですね^^
by sknys (2015-09-15 00:57)