〈コセンタイナの単細胞〉ことビクトゥロ・ベニコレット・カントゥエソは、レギュラーサイズのサッカーボールの大きさ(周囲67センチから71センチ、重さ370グラムから425グラム)をした頭に、病気がもとでできたリンパ腫があるので有名だった。往診に行った医者は「いやはや、何とも珍しいリンパ腫ですな!」と言ったきり、湿布も貼らなければ、坐浴を施すこともせず、結局何もしないで帰ってしまった。旅団長サルガタナスは笑いが止まらず、すべてを見届けようと、雌猫ヌニロナの中に入り込んだはいいが、侵入するときに、猫の目を血のように赤くしてしまった。旅団長サルガタナスはいつだって軽薄で向う見ずな天使、実に軽薄で向う見ずな悪徳天使だったのだ。/「リンパ腫が破裂して脳味噌が空中に飛び散るときは、さぞかし傑作だろうよ!」/〈コセンタイナの単細胞〉ことビクトゥロ・ベニコレット・カントゥエソは、叔母のルイサに言った。/「ルイサ叔母さん、雌猫のヌニロナに血入り腸詰めをやってくれませんか。悪魔も同然の目つきでこっちを見るんです!」
カミロ・ホセ・セラ 『サッカーと11の寓話』
○ ドイツ 2 ─ 0 スウェーデン(6/25 ミュンヘン)
ミュンヘンW杯スタジアムの芝生は日陰部分(濃緑)に放射状の明るい縞目模様(日除け屋根の木漏れ陽)を作っている。前半4分、MFバラックの縦パスをFWクローゼが反転してシュート!‥‥GKイサクソンの弾いたボールをFWポドルスキが決める。同12分の2点目もクローゼのポストプレイから再びポドルスキがゴールに突き刺す。スウェーデンはFWイブラヒモヴィッチ、ラーション、ユングベリの3人を擁しながらも、前半35分DFルチッチが2枚目のイエローで退場。後半8分にラーションがPKをクロスバー右上に大きく外すなど、精彩を欠く。1人少なくなったスウェーデンに屈強なドイツから3点を取って逆転する力は残っていなかった。幾何学的に美しいピッチとは裏腹に、後半はバラックの執拗なミドルシュートだけが目立つ一方的な試合展開だった。
○ アルゼンチン 2 ─ 1 メキシコ(6/25 ライプチヒ)
前半6分MFパルドのFK→DFメンデスが頭で反らしたボールを主将マルケスがスライディング・シュートで鮮やかに決めて、メキシコが早々と先制。すかさずアルゼンチンも同10分右CKからFWクレスポが左脚で触って(メキシコの沢木耕太郎ことFWボルゲッティのオウンゴール?)同点に追い着く。中2日の強行日程のせいか、キックオフ後の10分間で1点ずつ取り合った後は音無し(1ー1)のまま15分ハーフの延長戦に突入。延長戦前半8分、DFソリンの左クロスをMFロドリゲスが胸でトラップ→左脚のドロップ・ボレーが美しい弧を描いてGKの頭上を掠め、ゴール左上隅に吸い込まれる。後半30分からFWテヴェス、MFアイマール、FWメッシの3人を投入。選手層の厚さ、敵陣ゴール前での素早いパス回し、シュートの精確性など‥‥アルゼンチンの方が一枚上手でしたね。
○ イングランド 1─ 0 エクアドル(6/26 シュツットガルト)
オーウェンの負傷離脱でFWルーニーのワントップ(4ー5ー1)で挑んだイングランド。エクアドルは前半11分、GKロビンソンと1対1の絶好機──DFテリーのクリアミスに乗じたMFテノリオの右脚シュートを、DFアシュリー・コールがスライディングで辛くも脚に当ててクロスバーを叩く!──を逃したのが惜しまれる。両者ともに決め手を欠く膠着状態‥‥試合を決めたのはベッカムさまのFKだった。後半15分、左45度、ゴールから25メートルの位置。黄金の右脚から放たれた弾道は左に曲がりながらゴール左下隅に落ちる。正確無比の高速キックだった。FWルーニーやMFランパード、ジェラードが点を取らなくても、ベッカムのFK一発で試合に勝ってしまう(イングランドの強運?)。
○ ポルトガル 1 ─ 0 オランダ(6/26 ニュルンベルグ)
退場者4人、16枚のイエローカードが舞い飛んだ大乱戦を制したのはMFマニシェの果敢なドリブル・シュートだった。絶不調のFWファンニステルロイをスタメン落ちさせたオランダの攻勢‥‥というより、始めから入れ込み過ぎ。しかし、前半10分に右太腿を蹴られて負傷していたFWクリスティアノ・ロナルドが先制(決勝)点の起点──C・ロナルドのラボーナ(?)→MFデコ→FWパウレタ→マニシェ──になったのだから皮肉なものですね。前半44分に2回目の警告でMFコスチーニャが退場し、1点リードしたポルトガルが1人少ない状態で後半45分を闘うことになる。ところが後半18分MFフィーゴへの肘鉄でDFブラールーズが退場(2枚目のイエロー)、同27分デコが負傷者治療のために蹴り出したレフリーボールをオランダが「紳士協定」で返さずに攻めたことで、両国の選手が一触即発‥‥あわや乱闘という険悪なムードに。32分に遅延行為でデコが、44分ファンブロンクホルストが累積警告で退場。ロスタイム6分!‥‥成り振り構わぬオランダの怒濤の攻撃も実らず、そのままタイムアップ。退場したデコとファンブロンクホルスト、2人のチームメイト(バルセロナ)が通路に坐って会話を交わす2ショットが印象的な乱戦だった。
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閑話休題──伊セリエA・レッジーナで主将を務めたコッツァというMFがいる。ある試合中にコッツァが敵陣右サイドでファウルを受け、彼自らがFKを蹴るチャンスを迎えた。ゴール前でボールを待つ味方プレーヤたち‥‥しかし次の瞬間、信じられないことが起こった。何を血迷ったのか、コッツァはボールを直接ゴール・サイドに蹴り出してしまったのだ。項垂れながも守備ポジションに走り帰るチーム・メイト‥‥一体何が起こったのだろうか。想うに、今自分が受けたタックルはファウルではないという彼一流の意思表示(ファウルかどうかは受けた本人が一番良く分かる)なのだ。下手に審判に抗議すると要らぬカードを貰う怖れがある。ただ男は黙って行動で表わす。敵陣内やペナルティ・エリア内で故意にファウルを誘い、醜悪なシュミレーションさえ演じる輩らの少なくない中にあって、愚直とでも言うべきバカ正直なプレーヤがセリエAにいたとは!‥‥。もしコッツァのような選手のいるクラブのサポータだったらウルウル(感涙)しちゃうんじゃないか、それとも一体何やってるんだって、舌打ちするだけでしょうか?
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○ イタリア 1 ─ 0 オーストラリア(6/27 カイザースラウテルン)
F組を2位通過したのは日本でもクロアチアでもなかった。4年前の日韓大会決勝トーナメント1回戦で闘将ヒディング率いる韓国に敗れた「悪夢」が再びアズーリに甦ったかもしれない。イタリアは本調子でないMFトッティに代わってデル・ピエロを先発起用。FWトニとジラルディノのシュートが決まらない前半‥‥。後半5分、対チェコ戦で負傷退場したDFネスタに代わって出場し、CKからのヘディング・シュートを決めたDFマテラッツィが「危険なタックル」で一発レッド退場!‥‥イタリアは残り40分を1人少ない10人で闘うことを余儀なくされる。攻めるオーストラリアにカウンター狙いのイタリア。後半30分にイタリアが動く。3枚目のカードを切ってトッティを投入。対照的に交代選手枠2人を残したまま動かないオーストラリア(ヒディング監督は延長戦を想定していた)。幕切れは唐突だった。ロスタイム、DFグロッソに対するDFニールのタックルがPK!‥‥トッティがPKをゴール左上隅に冷静に決め、イタリアが土壇場で辛勝。ローマの王子さまも面目躍如。母国からの批判を「おしゃぶりパフォーマンス」で黙らせた。マテラッツィのレッドもニールのPKも微妙な判定だったが、結果的には「相殺」された格好になった。
▲ スイス 0(PK 0 ─ 3)0 ウクライナ(6/27 ケルン)
前日のポルトガルvsオランダとは打って変わって、緑の海原は静かな凪状態。前半にFWシェフチェンコのヘッドが右ポストを叩き、FWフライのFKがクロスバー左隅を直撃する決定機が1度ずつあったものの、両者スコアレスのまま延長戦(30分)→PK戦という、スタジアムの観客にとっては退屈なゲームだったかもしれない。120分闘って、イエローが1枚(オフサイドも1回?)しか出ないフェアなゲーム内容。しかしPK戦は一転して変調を来たす。先攻ウクライナのシェフチェンコがGKツーバービューラーに止められて劣勢かと思いきや、対するスイスの3選手──FWシュトレラー、MFバルネッタ、カバナスが仲良く失敗してウクライナの逆転勝利(3ー0)。プレッシャーに自滅?‥‥スイスの3選手中2人は、まるで悪魔に魅入られたかようにGKショフコフスキーの正面に蹴ってしまったのだから、PK戦は何が起こるか分からない(ゴールに魔物が棲んでいたのかも?)。
○ ブラジル 3 ─ 0 ガーナ(6/28 ドルトムント)
FWロナウド、アドリアーノ、MFカカ、ロナウジーニョの「魔術的カルテット」がガーナを一蹴した。ディフェンス・ラインを高く保ちオフサイド・トラップを敷く戦術はリーグ戦では兎も角、一発勝負のトーナメント戦にはリスキーこの上ない。たとえオフサイドでも副審が旗を挙げなければ直ちにGKと1対1の決定的ピンチを招く。ガーナは前半5分と46分、キックオフ直後とロスタイムという最も危険な時間帯に痛恨の2失点。ロナウドがオフサイド・ラインの裏を抜け、カカのスルーパスをアドリアーノが簡単に決める。後半は一見ガーナの優勢に見えたが、ブラジルが余裕で攻めさせていたとも言える。後半36分FWジャンがシュミレーションを取られて退場(2回目の警告)した直後の39分、MFゼロベルトの3点目が入ってガーナは万事窮す‥‥アフリカの「黒い星」も力尽きた。
● スペイン 1 ─ 3 フランス(6/28 ハノーバー)
無敵艦隊をレ・ブリュが撃沈!‥‥屈辱の日韓大会から点が取れないフランスは、1次リーグの第3戦目、対トーゴ戦に2点差以上で勝たないと決勝トーナメント進出が危ぶまれる窮地に追い込まれていた。しかも累積警告で司令塔のジダンは出場停止。
〈スウィート・サッカー・ダンス 1〉という応援記事を書いた手前、1次リーグ敗退は何としても避けたい。そのトーゴ戦に2ー0で快勝したフランスはジダンが復帰して、快進撃のスペインに挑む。フランス優勢の中、前半27分FWビリャに痛恨のPKを決められてスペインが先制する。しかし41分、再三オフサイドに引っ掛かっていたFWアンリを囮にして、2列目から飛び出したMFリベリが(GKと1対1になって)同点弾。後半38分にMFビエラがジダンのFKをヘッドで左から突き刺して勝ち越し点を奪う。そしてロスタイム、中盤で相手のパスをカット。ジダン自らが往年のプレイを想わせる華麗なフェイントでDFプジョルを躱し3点目を決めた。
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- 一味変わったW杯TV観戦記を‥‥と心懸けていますが、どうしても新聞のスポーツ欄みたいになっちゃう。試合を観ていない読者のためのダイジェスト、自分のための「備忘録」の意味合いもあります
- W杯ドイツ大会の記事(Part 3)は少し遅れますが、11日中にアップします
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sweet soccer dance 1 / 2 / 3 / sknynx / 032
サッカーと11の寓話
- 著者:カミロ・ホセ・セラ(Camilo Jose Cela)/ 野谷 文昭 星野 智幸(訳)
- 出版社:朝日新聞社
- 発売日:1997/05/01
- メディア:単行本
- 目次:球を蹴る足、もしくは万年青年の寓話 / 自由貿易理論の応用 / 駆け引き / 金のひつじの寓話 / 街の守護者の間奏曲 / 騎士の街、アビラの郷愁 / ヒーロー / 謝肉祭に捧げる犬のように / 高等馬術 / ホロコースト / 軽薄で向こう見ずな天使 / 死神との出会い
World In Motion
- Artist:New Order
- Label:London
- Date:2002/06/03
- Media:Audio CD
- Songs:World in Motion / The B-Side / No Alla Violenza Mix / Subbuteo Mix
やった~、大勝利!
予想通りの展開になってきちゃった(笑)
次のポルトガルもブラジル・タイプのチームなんで相性良し。
問題は、決勝で当たるドイツかな。
パワー系のチームとは相性良くない。
でも、82年と86年のリベンジせねば。
by モバサム41 (2006-07-02 09:47)
モバサムさん、フランスの大勝利コメントありがとう。
イングランドvsポルトガルは睡魔に勝てず、前半終了後にベッドで仮眠。
目が醒めたのは後半20分過ぎ‥‥ベッカムもルーニーも消えていた(涙)。
ブラジルvsフランスは録画で観ました。
ロナウジーニョをFWで使った意図は不明ですが、
フランスの守備は超堅かったね。
これで準決勝の対ポルトガル戦に勝っても負けてもジダンの勇姿を、
あと2試合見れます。
アズーリがドイツ軍を撃破してくれないかなぁ。
by sknys (2006-07-02 22:21)
あたしは独逸♥命なので、sknys様とは今回だけ、敵同士でしょうか?
先日コメントいただいた記事にお返事を書き忘れ、申し訳ござませんでした。
先程書かせていただきました。心からお詫び申しあげます。
by えみる (2006-07-04 09:10)
えみるさん、独逸(ハート)命コメントありがとう。
FWクローゼ、ポドロスキ、MFバラックを擁する地元のドイツは
優勝候補の筆頭ですが、屈強なサイボーグ軍団に見えてしまいます。
対アルゼンチン戦は後味悪かったよね。
またまた変テコな長コメントしちゃって、反省‥‥。
お座なりな1行コメントだけは付けまいと自戒している一方で、
記事内容によっては「全身全霊」で立ち向かわないと
対応出来ない場合があります。
えみるさんもコメントし辛かったのではないでしょうか(笑)。
by sknys (2006-07-04 20:07)
このような記事を拝見するとnice!をつけたくなってしまいます。(笑)
ブラジルvsフランスは、録画したのですがまだ見ていません。(苦笑)
でもジダンの勇姿が後2試合見られるのは、とても嬉しいですね。
僕もドイツのサッカーは、今一つ面白みがなく好きではありません。
by (2006-07-04 21:05)
lapisさん、no nice! コメントありがとう(笑)。
最近記憶力が低下しているので、W杯決勝トーナメント覚え書き控え
という感じです。
ブラジルはMFマケレレとビエラに攻撃の芽を摘まれてしまった。
フランスの得点シーンは今以って不可解?
ジダンのFKにオフサイドを取ろうとして失敗したのか、
ディフェンス・ラインが2列に割れて、最後尾のアンリがフリーに!‥‥。
個人的にはフランス(ドイツは不死身のターミネータ?)を
応援していますが、決勝・3位決定戦の組み合わせが仮令どうなろうと、
この4試合はPK戦まで縺れずにスッキリ決着して欲しいと思います。
by sknys (2006-07-06 00:17)
こんばんにゃ^^
サイドバーに御住いの黒にゃ♪可愛いです~☆☆
しばらく遊んでしまった(笑)
by こにゃ (2006-07-07 23:37)
こにゃさん、黒猫コメントありがとう。
Maukieはオランダ在住のAnneke Hutさんがネットで拾った
作者不詳のFlashペットです。
設置方法は彼女のHPからファイルをダウンロードして自分のblogに
アップするだけですが、ソネ風呂はアップロード出来ない!
‥‥そう言えば、ソネ風呂内で見たことないですね。
ソネ風呂以外に自分のblogやHPを持っていれば、
そこにUP→リンクすれば良いし、
「ここにリンクしても構いませんよ」と仰る親切なブロガーさんもいます。
直リンクは元サーバに負荷が掛かるので避けたいなぁ‥‥と思いつつ
探していて、良いリンク先を発見しました。
あの紀藤弁護士のブログ
(http://homepage1.nifty.com/kito/maukie.htm)です。
ここなら安心(笑)。
公開されているHTMLタグ(一部省略可)をコピペするだけで、
簡単にサイドバーに設置出来ます。
こにゃさんも試してみて下さい。
by sknys (2006-07-08 15:12)
やってみました~^^
うちにも黒にゃが来ました。嬉しい♪
by こにゃ (2006-07-08 19:35)
こにゃさん家の黒にゃを見て来ました。
ちょっと寂し気な表情が「猫好き」の心を鷲づかみ
‥‥つい構ってやりたくなるんです。
Mac Fan誌に「CYBER RED CARD」というコラムを連載している
紀藤氏の好感度が上がりましたね(笑)。
お礼コメントはしていませんが。
by sknys (2006-07-08 20:50)
ホントに・・・鷲づかみです。(記事も更新せずに(笑))
そして、とうとう決勝戦ですね。
このカードだとフランスを応援←根拠は無し(爆)
sknysさんはライヴで観るのでしょうか?!
ドキドキしますね~^^
by こにゃ (2006-07-09 23:16)
一足早くドイツW杯から帰って来たFuro君と一緒にしてみました
(横サイズは150、背景色を#abd812にしてコーディネート)。
3位決定戦は睡魔に襲われて途中でウトウトしちゃいました。
キックオフが1時間早いのは嬉しいけれど
‥‥延長戦に突入したら、さっさと寝ちゃいます(笑)。
by sknys (2006-07-10 00:53)