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山手レコーズ(2 0 1 6) [m u s i c]



  • ● Bardo Pond(Fire 2011)Bardo Pond
  • 少女マンガの「デカ目」に多くの外国人は驚くという。ディズニー・アニメ・キャラの目も大きいけれど、瞳の中に星が煌めいているのは少女マンガだけの特徴らしい。1991年、米フィラディルフィアで結成されたサイケ・ロック・バンドの8thアルバムに描かれた双眸は明らかに少女マンガの「デカ目」である。これだけで「ジャケ買い」しても良いくらいだが、決め手になったのは裏カヴァのクレジット‥‥Isobel Sollenberger嬢(ヴォイス、フルート)を含む6人組で、謝辞欄にGY!BE(Godspeed You! Black Emperor)とLou Reedの名前があった。これらの情報から、歌入りのスロー・コア系ではないかと見当がつく。全7曲という少ない曲数から、GY!BEのような長尺曲が多いことも推測される(本当に長かった!)。71分に渡って繰り広げられるサイケデリア‥‥ノイズ・ギターと幽玄な女性ヴォーカルの組み合わせはシューゲイズっぽく聴こえなくもない。

  • ● Earth Sound System(Fire 2011)Jackie-O Motherfucker
  • 紙ケースを開くと、9つ折りのポスター(ヴィンテージ・アンプ(Earth Sound Research Stagemaster PA 2000)の写真と歌詞)、イラスト・カード3種、紙スリップ(CD)が現われる。Jackie-O Motherfuckerは1994年に米オレゴン・ポートランドで結成されたエクスペリメンタル・グループ。バンド結成時はTom Greenwood(マルチ器楽奏者)とNester Bucket(サクソフォン)の2人組だったが、総勢40人以上ものミュージシャンたちが在籍していたという。過去のメンバーにはソロ・デビューしたValet(Honey Owens)やWeyes Blood(Natalie Mering)がいる。Tom Greenwoodを含めた6人で録音されたアルバムはレイド・バックしたアメリカン・フォークとエクスペリメンタル(インスト)が奇妙に共存する。ラストの〈Where We Go〉だけは真っ当なノイズ・ロックですが。

  • ● Rise Up!(Fire 2010)Bobby Conn
  • Bobby Conn(Robert Conn)は1967年6月13日、NYCマンハッタン生まれ。父親の職業は貿易商である(出生証明書より)。当時20代後半の両親も30年後、こんな「アホ野郎」に成長するなんて想像も出来なかったでしょう。初期のWas(Not Was)にも通底する、おバカなアナーキーぶりが爆笑を誘う。Jim O'Rourkeのプロデュースしたデビュー・アルバム(Truckstop 1998)は近年、稀にみる「怪作」となった。アーパーっぽいアレンジが施された多種多彩なサウンド‥‥フォーク、ダンス、ロック、ファンク、グラム、ジャズ、ボサノヴァなどに乗ってクソ真面目で血気盛んな歌が赤裸々に吐露されると、今まで見て来たアメリカの風景が映画の書き割りのようにガラガラと音を立てて瓦解して行く。その果てに立ち現われるのはアルバム・カヴァに描かれているような摩訶不思議なSF・ファンタジーの世界(未来の火星のようにも見える)なのかもしれない。2010年の再発盤は〈Axis '67 Pt. 2〉〈California〉のデモ・ヴァージョン2曲(新録)を追加収録。

  • ● Faces In The Rocks(Whale Watch 2013)Mariee Sioux
  • マリー・スーは米カリフォルニア・ネヴァダシティ生まれの女性SSW。父親は東欧(ポーランドとハンガリー)系のマンドリン奏者。母親はスペイン、北米先住民のパイユート、メキシコ先住民の血を継ぐ。彼女の生ギター弾き語りに、Gentle Thunderのネイティヴ・アメリカン・フルート、バッファロー・ドラム、シンバル、レインスティック(Rainstick)、バス・ドラム。Gary Sobonya(父親)のマンドリン。ベース、チェロ、アコーディオン‥‥というアクースティックな編成でアメリカン・フォークを奏でる。Mariee SiouxはJoanna NewsomやJoni Mitchellと比較されているそうだが、透明で浮游感のある可憐なヴォイスはJesca HoopやLinda Perhacsを想わせる。高騰していたデビュー・アルバム(Grassroots 2007)の再発盤。The Cureのトリビュート・アルバム《Perfect As Cats: A Tribute To The Cure》(Manimal Vinyl 2008)で〈Lovesong〉をカヴァしていたのも嬉しい発見だった。

  • ● Holding The Mirror For Sophia Loren(Karaoke Kalk 2014)Donna Regina
  • Donna Reginaは1人の女性ではなく、Günther JanssenとEhepaar Regina夫婦のエレクトロ・ポップ・デュオ。ダークな色彩が濃かった《The Decline Of Female Happiness》(2010)とは一転して、12thアルバムには多彩な楽曲が並んでいる。亡くなった友人に捧げたアルバム・タイトル曲の〈Holding The Mirror For Sophia Loren〉、スイスの建築家ル・コルビュジエ(Le Corbusier)に触発されたという〈Les Claviers De Couleurs〉、Volker Griepenstroh(ミュート・トランペット、バス・クラリネット、ハープ)が客演した〈Carlos〉、日本の高野山を題材にした〈Koyasan〉、独ベルリンを拠点に活動する男女2人組のプロジェクト、Graw Böcklerのテクストを引用した〈Escúchame〉、F・スコット・フィッツジェラルドの小説(ヒロイン名)をタイトルにした〈Gatsby〉‥‥ダビーでメランコリックなエレクトロニック・サウンドに揺蕩う気怠い女性ヴォーカル。英語、仏語、スペイン語で歌われるドナ・レジーナの世界を堪能出来ます。

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    1年に1日だけ、インパートメントのオフィスがリアル店舗に変身する「山手レコーズ」。約600タイトル、2,000枚を100円、500円、1000円で販売するクリアランスセールだが、目玉は1枚100円(税込)‥‥雨模様で出足が鈍いのか、まだ目星しいアルバムが多数残っていた。エレクトロニカ、インディ・ロック、ポスト・ロック、アンビエント、テクノ、ジューク、ノイズ、ジャズ、エクスペリメンタル‥‥音楽好きの人たちが黙々と品定めをしている(某タワレコで鷲掴み奪取していたセドリ風情は1人も見当たらない)。今年は奮発して8枚を購入。猫ジャケ率が高いのも「山手レコーズ」の特徴で、黒と赤の2匹を捕獲した。ドイツの男女デュオ、Les Trucsの《The Musical》(Knertz 2012)。カナダとスイス人のポスト・パンク・デュオ、Peter Kernelの《White Death & Black Heart》(Africantape 2011)。猫ジャケ2枚には奇しくも男女2人組の2ndアルバムという共通点があった。「ネコード」に外れなし?‥‥日本酒も振る舞われていましたが、日中なので遠慮しました。

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    • 「山手レコーズ」 に行って来ました。□ ¥1000 ○ ¥500 ● ¥100‥‥運命の分かれ道?

    • 今年は100円コーナーから8枚をゲット。¥100(税込)×8=800円の出費です^^

    • 帰りに立ち寄ったエル・スールで、店主からホット・コーヒーを振る舞われました

    • Bobby Conn《Rise Up!》は〈メレットの夢魔〉からの再録です(一部加筆・改稿)
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    Bardo Pond

    Bardo Pond

    • Artist: Bardo Pond
    • Label: Fire UK
    • Date: 2011/02/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Just Once / Dont Know About You / Sleeping / Undone / Cracker Wrist / The Stars Behind / Waynes Tune


    Earth Sound System

    Earth Sound System

    • Artist: Jackie-O Motherfucker
    • Label: Fire Records
    • Date: 2011/07/05
    • Media: Audio CD
    • Songs: In The Willows / Raga Joining / Bring It To Me / Dedication / Raga Separating / Where We Go


    Rise Up!

    Rise Up!

    • Artist: Bobby Conn
    • Label: Fire Records
    • Date: 2011/06/21
    • Media: Audio CD
    • Songs: The Twilight Of The Empire / Rise Up! / Axis '67 Pt. 2 / United Nations / California / Passover / A Conversation / Baby Man / Baby Man (Refrain) / White Bread / Lullaby / Ominous Drone / Rise Up, Now! / Axis '67 Pt. 2 (Demo) / California (Demo)


    Faces In The Rocks

    Faces In The Rocks

    • Artist: Mariee Sioux
    • Label: Whale Watch Records
    • Date: 2013/12/10
    • Media: Audio CD
    • Songs: Wizard Flurry Home / Buried In Teeth / Friendboats / Wild Eyes / Bravitzlana Rubakalva / Two Tongues / Bundles / Flowers And Blood


    Holding The Mirror For Sophia Loren

    Holding The Mirror For Sophia Loren

    • Artist: Donna Regina
    • Label: Karaoke Kalk
    • Date: 2014/05/27
    • Media: Audio CD
    • Songs: Holding The Mirror For Sophia Loren / Les Claviers De Couleurs / Carlos / Cities / Lift Me Up / Koyasan / For The Love Of / I Wanna Know / Escúchame / I Know Now / Gatsby / In The Company Of Friends / Leaving

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    コメント 4

    ふじにぃ

    こんにちは。

    Mariee Siouxのこのアルバム、以前探した事ありますが、当時amazonで相当なプレミアが付いていた。100円は良い買い物だと思います。

    自分自身、親が中流以上の家庭だったので、Robert Connのように道を外す者の気持ちは解ります。前に良く採り上げたパンクの母Nina Hagenも裕福な家庭の人でしたね。
    by ふじにぃ (2016-07-22 14:04) 

    sknys

    ふじにぃさん、コメントありがとう。
    Mariee Siouxの再発盤が凄く良かった。
    前のレーベルからアルバムの権利を買い戻すのが大変だったみたい。
    キックスターター(クラウドファンディング)で資金調達したそうです。
    《Gift For The End》(2014)を買い渋ったのが悔まれる^^;

    Bobby Connのデビュー・アルバムもリイシューですが、
    追加収録されたデモ・ヴァージョンに惹かれて買い直しました。
    シカゴの奇人怪人はミニ・アルバムでCaetano Velosoの〈Maria Bethania〉をカヴァするなど、音楽の知識も豊富で視野も広い。

    元夫の浮気が赦せなかったKim姐さんもアッパー・ミドルですね^^
    by sknys (2016-07-22 15:44) 

    miyuco

    sknysさん、こんばんは。
    ジャケットの少女マンガのきらきらおめめは
    70年代後半によく見かけましたね。
    (本村三四子さんとか?)

    来週は「LaLa40周年記念原画展」に
    出かけようと思います。
    チビ猫ちゃんに会いに^^
    こんどこそ西武で迷子にならないように
    がんばります!


    by miyuco (2016-07-22 23:44) 

    sknys

    miyucoさん、コメントありがとう。
    「きらきらおめめ」で真っ先に思いつくのは上原きみ子かな?
    名香智子や岸裕子も異様にデカかったなぁ。

    今日、池袋三省堂書店で前売り券を買って来ました。
    カウンターに置いてある栞(ご優待券)と同じ割引価格(800円)ですが、
    特製A3ポスター・カレンダーが貰えるので^^;

    LaLa(萩尾望都の表紙!)と出合った時の感動は今でも忘れられません。
    しまりんご、チビ猫、厩戸王子、ダメ犬(ソロモン)、バジル氏、
    Z(ツェット)、ベンジャミンたち‥‥に会えるかしら?
    by sknys (2016-07-23 01:12) 

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