迷宮遊覧飛行(国書刊行会 2023)山尾 悠子400
青のパンドラ 1(小学館 2023)萩尾 望都399
猫のダヤン 1(静山社 2018)池田 あきこ398
にゃんこ四字熟語辞典 2(飛鳥新社 2022)西川 清史397
名作には猫がいる(原書房 2022)ジュディス・ロビンソン / スコット・パック396
月面文字翻刻一例(書肆侃侃房 2022)川野 芽生395
夜廻り猫 9(講談社 2022)深谷 かほる394
Monchicon's Best of 2022(Monchicon 2023)清水 祐也(編)393
ねこはい(KADOKAWA 2019)南 伸坊392
シロかクロか、どちらにしてもトラ柄ではない(平凡社 2022)金井 美恵子・久美子391
皆川博子随筆精華 III 書物の森の思い出(河出書房新社 2022)皆川 博子390
オメガ城の惨劇(講談社 2022)森 博嗣389
柳生十兵衛死す 下(河出書房新社 2020)山田 風太郎388
柳生十兵衛死す 上(河出書房新社 2020)山田 風太郎387
岩合光昭の日本ねこさがし(クレヴィス 2022)岩合 光昭386
魔界転生 下(講談社 2013)山田 風太郎385
魔界転生 上(講談社 2013)山田 風太郎384
忍法八犬伝(講談社 1996)山田 風太郎383
忍者月影抄(河出書房新社 2021)山田 風太郎382
にゃんこ四字熟語辞典(飛鳥新社 2022)西川 清史381
小説には「寄らば斬るぞ!」みたいな近寄り難さもあったが、エッセイになると親密で無防備になる落差が魅力的なツンデレ系幻想作家の随筆集成(502頁)。「二十代から六十代までに書いた小説以外の文を(強引にも)一冊にまとめた訳であって、途中の三十代から四十代半ばまでは休筆期間で空白」 という事情から年代順ではなく、復帰以降のエッセイから過去へ遡る構成。巻頭の 「読書遍歴のこと」 は書き下ろし。澁澤龍彦、泉鏡花、塚本邦雄、ボルヘス、デルヴォー 、マルセル・シュオッブ‥‥書評、解説、推薦文、アンケート、掌篇小説も収録
2016年、エドガーとバリーが英レスター郊外のアーサー邸に帰って来た。灰になったアランを「復活」出来るのは大老ポーだとバリーは話す。パリのファルカの許に現われたポーがベニスのサン・ミケーレ島にエドガーを連れて来いと言伝する。アランを甦生するにはパンドラと呼ばれる青い壺と大老の持っている炎の剣が必要だった。バリーはポーの村の地下に囚われている兄フォンティーンを解放させたい。兄を拘束している薔薇の根を焼き切る炎の剣が欲しい。炎の剣と交換するためにアランの入っているトランクをエドガーから奪って姿を消す
嵐の夜、稲妻の光と共に生まれた灰縞猫のダヤンと弟ジュダ、カシス。母猫のトムは子供たちを育てながら、ダヤンのことを〈この子はちょっと変わってる、それはいいことなのかしら、悪いことなのかしら〉と考える。彼女は車道を横切ろうとしたジュダとカシスを守ろうとしてバスに轢かれてしまい、飼主の少女リーマがダヤンの母親代わりとなる。ある日、ダヤンを連れてベルおばあちゃん(高祖母)の家へ遊びに行く。百歳を超えているベルは『もうひとつの国』で魔法使いをしていたと親戚たちに噂される変わり者だった。猫のダヤンの物語、シリーズ第1弾
柳の下の泥鰌ならぬ猫を狙った 「にゃんこ四字熟語」 第二弾。「人口に膾炙したなじみのある四字熟語は第一弾でほとんど掲載してしまっている」 著者は心労辛苦、千思万考。数万枚のネコ写真をPCで見たという。苦肉之策なのか「匍匐前進、二重人格、悪戯小僧、柔軟体操、犯行現場、安眠妨害、妖怪変化、容姿端麗、空中遊泳」など、古事成語ではない四字熟語も紛れ込んでいる。ウイルス感染症の流行以前にはなかった「発熱外来」や世相を反映した「謝罪会見」など、新・四字熟語も登場
大英図書館で開催された 「本の中の猫展」(2018)に付随するイヴェントのテーマから生まれた猫文学本。「長靴をはいた猫」、「ティファニ ーで朝食を」 の名無し猫、「老女と猫」 のティビー、「黒猫」 のプルート ー、「荒涼館」 のレディ・ジェーン、「巨匠とマルガリータ」 のベヘモート、「ペット・セマタリー」 のチャーチ、「跳躍者の時空」 のガミッチ、「ずっとお城で暮らしてる」 のジョナスなどの 「有名な猫」 を始め、「古典の猫」 「詩の猫」 「児童文学の猫」 「しゃべる猫」 「作家とその猫」 「SFの猫」 「ノンフィクションの猫」 「英米文学以外の猫」 たちが総登場する
著者がデビュー以前(2013~2017年頃)に執筆した掌篇小説集。ネ ットで公開したり、同人誌に寄稿した全49篇を収録。「月面文字翻刻一例」 「眠られぬ夜と昼のための物語」 「本盗人」 「桜前線異常なし」 という4テーマに分かれている。いわゆるオチのある「ショート・ショ ート」ではなく、未発表の長編ファンタジーから零れ落ちた断片、失われた夢のエピソードのような趣き。書き下ろし短篇「天屍節」と短歌ムック 「ねむらない樹 vol.7」 に寄稿した 「蟲科病院」 を巻末に併録した初期作品集だが、本当の初期は三歳頃に遡るというのだから驚く
「8コマ・マンガ」に登場するネコたちは新聞連載の「4コマ・マンガ」などと同じく、季節は移ろうけれど基本的に年を取らない。重郎は永遠の子猫として生き、長老(元・重郎)も死なない。ネコだけではなく、登場人物たち‥‥ワカルと暮らす高齢女性さっちゃん、宙さんの飼主・先生(前川清次朗)、おこそずきん白猫(布美)と同居するお師匠(三浦)さん、遠藤平蔵や見習いワカルが涙の匂いを嗅ぎつけた老若男女も過去を振り返ることはあっても年を取らずに、現在のリアルを生きる。「春の雪」(6頁)と 「あとがきまんが」(5頁)を併録
音楽ブログ「MONCHICON」が出版した小冊子。毎年ブログで発表している「年間ベスト・アルバム」とBig Thief、Dry Cleaning、Stella Donnellyの来日インタヴューを1冊に纏めたジン(Zine)だが、ネットではなく、敢えてブックレット(A5判・20頁)という紙媒体で出したことに惹かれる。「20 BEST ALBUMS OF 2022」(ベスト・アルバム20+隠れた名盤4枚)は寸評(290~350字)付き。ちなみにベスト4は 1. Big Thief、2. Alvvays、3. Black Country, New Road、4. The Beths‥‥全国取り扱い店舗・通販で入手可能(税込 ¥330)です
中野翠が『いつか見た青空は』(毎日新聞出版 2022)の中で紹介していたネコ絵本。青林工藝舎刊 「ねこはい」(2013)と 「ねこはいに」(2016)を合本、加筆・修正した文庫版。表紙カヴァから「ねこ杯」かと思いきや「ねこ俳」だった。しかもネコを詠んだ俳句ではなく、ネコが詠んだ俳句である。「まえがき」 に書いているように、著者がネコになって作った俳句に、カラー・イラストを添えている。茶白、黒白、三毛、灰、黒、白、縞‥‥どのネコもユーモラスで憎めない。良い加減に脱力している。三句の 「おまけ」 付き。「ねこはいさん」 は未刊
2019年2月、出版元の倒産で休刊するも、半年後に復刊した「天然生活」に連載していた『暮しの断片』(2019)の続篇。木のヘラ、手芸、ロマンスグレイ、甘酒ミルク、肥満、ジンジャーシロップ、通信販売、宿命の女と運命の男、ブランド・ショッピング、トースター、トウモロコシ、杏、花など、日用雑貨から映画、おやつ、猫、家電まで、日常生活の些細な欠片を記憶によって本の中に蒐集する 「小さな暮らしを楽しむための生活情報誌」 という趣旨に最適なエッセイ集。姉・金井久美子のアッサンブラージュ(全35点)もカラフルで愉しい
『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』(早川書房 2021)で毎日芸術賞を受賞した皆川先生の未刊行エッセイ集成第三弾。新聞や雑誌に連載された 「時のかたち」 「週間日記」 「よむサラダ」(各4回)、「舞台つ記」(45回)、「プロムナード」(24回)を加算すると、全144篇を収録したことになる。「季のかよい路」 は自伝エッセイ・回想、「舞台つ記」 は演劇・映画、「アリスのお茶会」 は小説・絵画、「ビールが飲みたい」 は身辺雑記という4部構成。「エッセイは苦手なのよ〜」 と常々仰る著者に、編者の日下三蔵は「またまた、お戯を‥‥」と返している
『χの悲劇』(2016)と『ψの悲劇』(2018)に続くGシリーズの最終巻もエラリー・クイーンの三部作『Zの悲劇』へのオマージュだと思 っていたが、本書は「シリーズ外の小説」だった。英語サブタイトルに「SAIKAWA Sohei’s Last Case」とあるように、サイカワ・ソウヘイやマガタ・シキも登場するのに番外編とは?‥‥愛知県三河湾の孤島に聳えるオメガ城に招待された7人の物理学者、数学者、心理学者、研究者、医者、画家、記者。国籍も職業も異なる招待客が一夜に4人も殺害された怪事件をミヤチ・ノエミ(私)の一人称視点で描く
相国寺で薪能「船橋」を演じた世阿弥と柳生十兵衛満厳も落雷で炎上する七重塔から江戸時代へタイムスリップして、由比正雪と後水尾法皇と紀州大納言頼宣の野望に立ち向かう。安国寺の少年僧・一休坊と母親の伊予、足利義満の四男・義円と青蓮衆、南朝の遺臣・坊城具教と具康、御供衆(柳生一門)の赤松鉄心、斯波刑部、細川杖之介、御付武家・成瀬陣左衛門、十兵衛の師・愛州移香斎などが入り乱れ、三厳と満厳、世阿弥と竹阿弥、伊予と月輪ノ院、一休と七郎、義満と頼宣 、陰流と新陰流が二重螺旋の染色体のように絡み合って時空を翔る
『柳生忍法帖』(1964)、『魔界転生』(おぼろ忍法帖 1967)に続く、柳生十兵衛三部作の完結篇(1992)である。江戸と室町時代、三厳と満厳、2人の十兵衛が250年の時空をタイムスリップして入れ替わる壮大なSF時代劇。物語は 「柳生忍法帖」 の8年後、「魔界転生」 の4年後、慶安2年(1650)、柳生ノ庄を訪れた由比正雪が十兵衛に体良く追い返されるところから始まる。世阿弥に傾倒する能楽師・金春竹阿弥は秘曲「世阿弥」を作ろうとしていた。息子の金春七郎は十兵衛の弟子で、上皇月輪ノ院に見初められ、京の御所で舎人となっていた
『世界ネコさがし』(2018)の国内版。「ウォーリーをさがせ!」 みたいに、風景の中に溶け込んでいるネコを見つける写真集。偶然ネコが写り込んだのかなと思ったけれど、岩合さんが凡庸な風景写真を撮るわけがない。ネコの存在を視認しているのに敢えて被写体にフォーカスしない高等テクニック。カメレオンのように背景と同化した保護色ネコもいるので、見つけ出すのは意外に難しい。町田尚子画集『隙あらば猫』のように、思いがけないところに抜け目なくネコたちがいる。表紙カヴァ(表・茶トラ+裏・岩合光昭)を撮ったのは岩合眞知
柳生十人衆の磯谷千八、逸見瀬兵衛、伊達左十郎、北条主税、小栗丈馬、戸田五太夫、三枝麻右衛門、小屋小三郎、金丸内匠、平岡慶之助と3人の孫娘たち、お縫い、お雛、おひろは巡礼者に扮して西国三十三か所の札所を巡る。柳生十人衆と切支丹くノ一お品が柳生十兵衛に助勢する。青岸渡寺の石段で田宮坊太郎、白良浜の三段壁で宝蔵院胤舜と対戦。剣道成寺で相対した十兵衛と柳生如雲斎は「陰の太刀」で互いに右眼を斬る相討ちとなり、和歌山城天守閣の勾欄で決戦。粉河寺で天草四郎、石舟斎の眠る芳徳寺の墓前で父柳生但馬守と対決する
小西行長の遺臣・森宗意軒が幕府を転覆させるために生み出した日本忍法と西洋魔術を熔合した切支丹バテレンの秘術・魔界転生。冥界から再誕した剣豪は荒木又右衛門、天草四郎、田宮坊太郎、宮本武蔵、宝蔵院胤舜、柳生但馬守、柳生如雲斎の7人。宗意軒に唆されて魔界衆を飼うはめになった紀伊大納言徳川頼宣、柳生十兵衛、宗意軒本人も転生するはずだったが、放蕩無頼の十兵衛だけは仲間に加えられなかった。孫娘たちを救出した柳生石舟斎の弟子・木村助九郎、田宮平兵衛、関口柔心が魔剣衆に討たれたことで、十兵衛との死闘が始まる
慶長18年(1613)、重陽の賀宴に展示された伏姫の珠を将軍秀忠の嫡男・竹千代君が所望した。八つの珠には忠・孝・悌・仁・義・礼・智・信の文字が入っている。里見安房守が献上しようとすると八老臣が猛反対した。竹千代の元服する来年に献上することになるが、本多佐渡守正信は服部半蔵に珠を盗めと命じる。珠がなければ安房の誓言が命取りとなる。大久保一族に繋がる里見家を取り潰そうという佐渡守の策謀だった。女かぶきに変装した伊賀くノ一八人衆に八つの珠を盗まれる。スリ替えられた偽珠に淫・戯・乱・盗・狂・惑・悦・弄の八文字が浮かんだ
享保17年(1732)、日本橋の「晒し場」に3人の女が一糸纏わぬ裸体で晒された。女たちの背中に書かれた朱文字「公方様御側妾棚ざらえ」。18人もの女を妾にしていた八代将軍・徳川吉宗に対する尾張藩主・宗春の仕業だった。宗春は甲賀忍者七人衆と尾張柳生七人衆に命じて吉宗の偽善を嘲弄したのだ。吉宗の懐刀・大岡越前守は公儀お庭番伊賀七人衆と江戸柳生七人衆を放って計略を阻止しようとする。現存する元愛妾は10人、先の3人を除くと7人。伊賀・甲賀14人の忍者と江戸・尾張14人の剣士が入り乱れて、元愛妾7人の争奪戦が始まる
純真無垢、品行方正、油断大敵、隠忍自重など、中国伝来、日本由来の四字熟語(全95語)に、ネコ画像を添えた写真集。ヒトをネコに改変した猫諺や四字猫語を集めた類似本は珍しくないが、単純明快。一見安直そうで、深思熟考。読者は四字熟語とネコから、ショート・ストーリを想像して、破顔一笑。ネ ットに溢れる膨大なネコ画像から四字熟語に適った写真を見つけ出すのに多くの時間を費やしたことは想像に難くない。著者の臥薪嘗胆、艱難辛苦、苦心惨憺、七転八倒、粒粒辛苦の賜物
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