U(文藝春秋 2020)皆川 博子
ニャーンズ・コレクション(小学館 1999)赤瀬川 原平
とらちゃん的日常(文藝春秋 2012)中島 らも
猫に恋して(ブルース・インターアクションズ 2006)高田 理香
馬鹿と嘘の弓(講談社 2020)森 博嗣
猫だましい(幻冬舎 2020)ハルノ 宵子
百鬼夜行拾遺 月(講談社 2020)京極 夏彦
紡ぎつづけるマンガの世界(ビジネス社 2020)萩尾 望都
ポーの一族 秘密の花園 1(小学館 2020)萩尾 望都
少女外道(文藝春秋 2013)皆川 博子
皆川博子随筆精華 書物の森を旅して(河出書房新社 2020)皆川 博子
猫のムトンさま(ペヨトル工房 1998)A・P・ド・マンディアルグ
夜廻り猫 6(講談社 2019)深谷 かほる
クロコダイル路地(講談社 2016)皆川 博子
橙書店にて(晶文社 2019)田尻 久子
猫を棄てる(文藝春秋 2020)村上 春樹
夏への扉(早川書房 2009)ロバート・A・ハインライン
アルモニカ・ディアボリカ(早川書房 2013)皆川 博子
芥川家の猫たち(春陽堂書店 2019)芥川 耿子・芥川 奈於
みぎわに立って(里山社 2019)田尻 久子
「U(ウー)」 はドイツの潜水艦Uボート(U-boat)とウンターグルンド(Untergrund)の頭文字。「U」 という2つの物語が三百年の時空を超えて交差する幻想譚。第一次大戦下、二等水兵ハンス・シャイデマンは英軍に鹵獲されたU13を自沈させる作戦任務を志願する。司書ヨハン・フリートホフと二等水兵ミヒャエル ・ローレがU19に乗艦して救出に向かう‥‥17世紀オスマン帝国に強制徴募されたヤーノシュ ・ファルカーシュ(私)とシュテファン・ヘルク(俺)。岩塩鉱地下彷徨で不老不死となった2人はオーランドーのように時空を翔る 320
木天蓼美術館館長・赤瀬川原平が猫名画30点を紹介・解説する空想美術館の図録。美術愛好家アルベルト・B・ニャーンズ(1982-1951)が蒐集した「ニャーンズ・コレクション」のテーマは "泰西猫名画"、すなわち "猫の闖入せる" 絵画である。200点を超える所蔵品はニャーンズ氏の盟友・木天蓼幸之助が設立した木天蓼美術館が管理し、世界各地の美術館に貸し出されている。巻頭の「あいさつ」の中で、館長は絵の好きな猫が名画の中に潜り込むという自説をマネの〈オランピア〉(Olympia 1863)に描かれた黒猫を例に挙げて論じている 319
著者と雌猫の身辺雑記。中島らも事務所は劇団主宰・エッセイストわかぎゑふの実家を改装した民家の1階で、2階に彼女の母親(80歳)が住み、1階の1室(6畳)を著者が仕事部屋として使っている。黒門市場のペットショップで買った縞猫とらちゃんは飼主に幻覚キノコを食べさせられる。かつて猫を12匹も飼っていたという 「好き者」 の大家にトロやタイやヒラメで懐柔され、避妊手術後にエリザベス・カラーを装着される。雄猫に初恋し、ノラ猫とケンカし、片脚の白猫ふくちゃんを迎える。写真(カラー16頁、白黒53頁)入りの文庫本 318
「ミンミン、ポンポン、ルウルウ‥‥私の3匹の猫」。イラストレータが猫たちとの出会い、生活、暮らしを綴るイラスト・写真入りのエッセイ。子供の頃に飼っていたオッド・アイの白猫ゆき、アメショー・ブラックスモークの黒猫ミンミン、その母猫が産んだ弟のポンポン、近所の家の裏庭の木箱に(捨てられて?)いたキジ三毛仔猫のルウルウ、放浪・通い猫のミーちゃん。3匹の名前は『サンダーバード』の脇役、「帽子や服につける飾り玉」 という意味の仏語(pompon)、森茉莉訳『マドゥモァゼル・ルウルウ』の主人公から採られている 317
Xシリーズ最終巻『ダマシ×ダマシ』(2017)で、SYアート&リサーチ社の所長となった小川令子と所員・加部谷恵美(Gシリーズ)の2人は匿名からの依頼を請けてホームレス青年・柚原典之の身辺調査を始める。彼と面識のあったホームレス老人・飯山健一(元教授)が路上で倒れて死亡するが、遺品の中から見つかった青年の写真は依頼者から送られて来たものと同じだった。祖母の死で毎月の仕送りを絶たれた青年は行方を眩まして、ある異常行動に出る‥‥著者曰く「そこにオチがあるのか、というミステリィを書いてみました」。Xシリーズ番外編? 316
『それでも猫は出かけていく』(2014)の続編ではなく、著者の入院闘病記だった。表紙の横書きタイトルは「猫だましい」の「い」が改行されて「し」の真下にあり、舌を出した阿修羅猫の握っている包丁が「い」に重なっている。包丁で「い」を切れば 「猫だまし」。悪賢そうに擬猫化した挿画も悪だくみを仄めかす。乳がん、大腿骨骨折後、 2017年1月に大腸がんが発覚した七転八倒というか、抱腹絶倒のエッセイ。「ま◯こからう◯こ」 「歩けない猫は猫じゃない」‥‥『猫だましい』(新潮社 2000)の河合隼雄先生も極楽浄土で笑っている? 315
講談社、角川、新潮社からバラ売りした3冊の文庫『鬼』『河童』『天狗』(2019)を1年後に新書で合本し、その1カ月後に再文庫化という出版形態が前文庫版表紙カヴァの仮面女子高生のように面妖。ノベルス(2段組)と文庫(千頁超)は共に厚さ約4cmという煉瓦本だが、組版(改行・改丁)が違うので、全く同じというわけではない。駒澤野球場周辺の連続通り魔(辻斬り) 、夷隅川水系の連続水死 、高尾山の女性登山者失踪‥‥3つの怪事件を解決する女主人公は中禅寺秋彦の妹・敦子で、『絡新婦の理』に登場した女学生・呉美由紀の視点で描かれる 314
萩尾望都が女子美の客員教授として行なった5つの講演(2014~18)を纏めた講義録。司会・内山博子(女子美教授)を交えた、宇宙飛行士 ・山崎直子、美術史家・中野京子、SSWイルカとの対談や聴講生などからの質問にも気軽に答えているので、大学の講義という堅苦しさはない。30歳過ぎに旧ソ連で交通事故に遭って死生観が変わった、夢枕獏から『ポーの一族』の続編を描くように再三リクエストされたという周知のエピソードも語られるが、「男は子宮がないから、すぐ殴るんです」 、カラオケの持ち歌が〈なごり雪〉‥‥新たな秘話も披露している 313
「魍魎の匣」と化したトランクを運ぶエドガー。バリーはアランを復活させられるのか?‥‥「ユニコーン」の興味は尽きなかったが、「秘密の花園」 は「ランプトンは語る」に繋がるエピソードだった。1888年9月1日、英レスターに向かうエドガーとアラン。一頭立て馬車の後輪が空転してアランがソア川に落ちてしまう。2人はアーサー・クエントン卿の館に身を寄せる。エルフの一族だと偽って、"眠りの時季" に入ったアランを温室続きの小屋に安置するエドガー。アーサーは彼をモデルに、夭折した庭師の子ドミニクの肖像画を描こうとする 312
「少女外道」という血と死に彩られた7つの短篇で構成された幻想連作集。「少女外道」 の画家・久緒、「巻鶴トサカの一週間」 の笹尾苓(辛島苗子)、「隠り沼の」 の乙矢(私)と少女・鳰子、「有翼日輪」 」の女子大生(私)、「標本箱」 の澁澤倫と千江叔母、「アンティゴネ」 の佐倉梓と篠井江美子、「祝祭」 の沙子と澪‥‥どのような外道少女が登場するのかと戦々恐々だったが、至極真っ当な少女たちだった。戦前・戦中 ・戦後という時代が彼女たちに「外道」として生きることを強いたのだ。その人生は沙子のように、泣きたくなるほど一途で凄まじい 311
雑誌や新聞からの依頼されたテーマに応じて書かれたエッセイを纏めた「雑文集」。身辺雑記を綴る「随筆」には力足らず、旅行も苦手なので、必然的に書物に纏わる小文が多くを占める。著作が百冊を超える著者の「初エッセイ集」である。「幻の処女作」 は自作を含む小説や作家についてのエッセイ31篇、「かぶき事始」 は歌舞伎や演劇関係の21篇、「暗合の旅」 は紀行文など旅をテーマにした14篇、「物語を発見していく旅」 はルポルタージュや自伝など4篇。幕間として挿まれた 「私のヒーロー&ヒロイン」 「美少年十選」 「マイ・ベスト」 もある 310
テレーズ嬢(20歳)はブラング家の娘ジュリーの子守りとしてパリへ行くが、悪魔のような性悪娘の陰険な虐めに遭う。その後、社交界デビューしたジュリーは青年銀行家のヴァシュラン氏と結婚し、テレーズは姉ナタリーの住むメリネへ戻る。3年後ジュリーは幼い息子ジャン・ミシェルの世話役としてテレーズを再びパリへ呼び戻す。ところが病弱なミシェルは13歳の冬に肺炎で死んでしまう。解雇されたテレ ーズに押しつけられたのが亡き少年の愛猫ムトン(アンゴラ種のペルシャ猫)だった。老嬢テレーズと巨猫ムトンの同衾生活が始まる 309
第6巻はウェブサイト 「モアイ」 で配信された全79話(462~540話)を収録。特別編 「喫茶夜廻猫」(21頁)。2019年2月、台北国際ブックフェアに招待された時の 「謝謝台湾」(493~495話)、500回記念「ありがとう」では作者が登場して楽屋裏のエピソードを披露。ワカルがバケツを川に落とすとタコ入道が現われて、純真な雑巾野郎たちを惑わす6話(517~522話)は出色。入院中の息子のために病室で描き始めた作者はキャラクターの生き死にまでを考えたというが 、平蔵と重郎、ゼン、宙さん、ニイ、モネ、元・重郎たちも健在 308
1789年ナント。フランス革命によって人生を蹂躙されたピエール、ロレンス、ジャン=マリの視点で交互に描かれる上巻。英帆船《真昼の夢》号でロンドンに脱出した3人と少女メイ・オコナー視点の下巻には『アルモニカ・ディアボリカ』(早川書房 2013)のアル、ベン、ネイサン、アンなどが客演する。表題はマンディアルグの「ポムレー路地」からの着想で、鰐男や蟹少年も登場。千頁超えの長い物語を伊像田晃一の幻想・精緻な挿絵が彩る。文庫版(2019)は単行本上下を合冊。京極レンガ本みたいな 「鈍器になる厚さです」(皆川博子)307
熊本県で本屋兼喫茶店「橙書店・オレンジ」を営む女店主の第3エッセイ集。お客さんや常連客、元スタッフなどに纏わるエピソードが多い。水俣の写真を撮って欲しいと編集者に頼まれた「巡り合わせ」は『みぎわに立って』(里山社 2019)の「水俣の猫」と内容的に重複するところもある。お客さんの多くは市井の人たちで、石牟礼道子、谷川俊太郎、伊藤比呂美、吉本由美、行定勲なども登場する。看板猫の白玉(しいくん)に会いに来た村上春樹が 「ヤクルト・スワローズ詩集」 の朗読会を開いたという「秘密の夜」に客も読者も吃驚! 306
読み始める前は気の重くなるようなタイトルに閉口したが、数頁で杞憂だったことが分かる。京都府左京区粟田口にある「安養寺」の住職(祖父・村上弁識)の次男として生まれた父親(村上千秋)について綴ったノンフィクション・エッセイ。単行本化するには中途半端な長さ(400字詰め原稿用紙約77枚)だが、カラー・イラスト(13葉)を添えることで、「パン屋を襲う」 「ねむり」 「図書館綺譚」 などの短篇とイラストで構成したアート・ブック・シリーズに似た手触りになった。台湾・台北生まれの高妍(Gao Yan)がノスタルジックな「昭和」を描く 305
1970年12月、共同経営者の友人マイルズ・ジェントリーと婚約者ベル ・ダーキンに裏切られて、会社も仕事も発明品‥‥家事ロボット 「おそうじガール」(ハイヤード・ガール)、「まどふきウィリー」 「ばんのうフランク」 も奪われた失意のダニエル・デイヴィス(ぼく)はジンジャー・エールの大好きな愛猫ピート(ペトロニウス)と一緒に、ミューチュアル保険会社の「コールド・スリープ」に入ることを決心する。30年間の長期低体温法睡眠。目覚めるのは西暦2000年‥‥ダンとピートの「夏への扉」は30年後の未来に開くはずだったが。小尾芙佐による新訳版 304
『開かせていただき光栄です』(2011)の当事者だったエドワードとナイジェルは出奔中。解剖医ダニエル・バートンの元弟子、アル、クラレンス、ベンは治安判事ジョン・フィールディングの許で犯罪情報紙を発行していた。フランシス・ダッシュウッド卿の領地ウエスト・ウィカムの採掘場で発見された身許不明の屍体の胸に記されていたメ ッセージ〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ〉。ナイジェルの出自、アルモニカ(グラスハープ)を作ったガラス職人。盲目の治安判事と元弟子が事件解明のために奔走する 303
芥川龍之介の孫娘・耿子(文)と曾孫・奈於(絵)による飼いネコ年代記。昭和20年代から令和元年まで、芥川家に棲み着いたネコたちを愛情深く綴る。姉が保護した白い仔猫チーコ。著者が捕まえた仔猫ニ ャモ。小学生の娘が下校時に雪の中で見つけた白猫ミイ。縞しっぽ母さん猫が連れて来たシミ、ピコ、パー三姉弟。噛み癖のある三毛猫メルモ。雨の日、庭の片隅にいた長毛の白猫フワ。娘がブリーダーから購入したクローバー(スコティッシュフォールド)。「月刊ねこ新聞」(2014~16)連載の27篇に5篇を書下ろし。猫イラストも可愛い 302
熊本県で小さな本屋「橙書店」と喫茶店「オレンジ」を営む著者の第2エッセイ。西日本新聞(2017)に2カ月半連載した50篇を大幅に加筆・訂正。見開き2ページのエッセイ85篇を収録している。店舗は熊本地震(2016)後、古いビルの2階に移転した。和菓子屋の黒猫みつお、朗読会、ギャラリー、店内ライヴ、石牟礼道子、伊藤比呂美、柴田元幸、黒田征太郎‥‥女主人は読んだ本、お客さんたちとの会話、届いた手紙、過去の記憶、消えた風景、日々の天候、植物、音楽、お菓子や珈琲、ネコなどについて 「水のような文章」 で綴る 301
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