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折々のねことば 1 [c a t 's c r a d l e]




  • 折々のねことば sknys 000

    自分のウェブサイトに写真を掲載することで、ガザでの破壊行為にスポットを当てたか ったが、ネットユーザーは「子猫の写真」しか見ないからね。
    バンクシー

  • 謎の覆面画家バンクシーといえばネコよりもネズミの絵で知られるが、イスラエル国防軍の攻撃で破壊された家屋(18,000軒の1つ)の壁に子ネコの絵を描いたのは「ネットユーザーは子猫の写真しか見ないから」だと言う。でも、どうして定番のネズミやイヌではなく、ネコなのだろうか‥‥ネットはネコのイメージで溢れている。ネコの動画も人気が高い。A.I.のディープラーニングで、最初に認識した画像がネコだったという 「グーグルの猫」(2012)も記憶に新しい。『バンクシー ビジュアル・アーカイブ』から。
    2019・7・6


  • 折々のねことば sknys 001

    月光に照らされたシシーの猫的なおびえた顔、これはある意味でガミッチの、真正のガミッチ仔猫の、この世で見た最後のものであった。
    フリッツ・ライバー

  • ガミッチはハリー&ヘレン・ハンター夫妻に飼われているIQ160のスーパー仔猫。2人のことを 「馬肉のせんせい」 「ネコちゃんおいで」 という渾名で呼ぶ。ハンター家には幼い娘シシーと 「赤ん坊」、他のネコたちもいるが、彼らは言葉を喋れない。ガミッチは昆虫が変態するように自分も毛並みと同じ金色の髪を持った人間の若者に変貌すると信じて疑わない。ある夜、育児室の中へ忍び込んだシシーがハットピンで「赤ん坊」の頬を引っ掻くのを見たガミッチは、その邪悪で残忍な性向を阻止しようとする。ところが人間の言葉を発したのはガミッチではなく、シシーの方だった。『跳躍者の時空』から。
    2011・6・1


  • 折々のねことば sknys 002

    欲しい物があるとき、この「声を出さないニャーオ」はすごいききめを発揮します。
    ポール・ギャリコ

  • ある朝、友人家の玄関前に分厚い原稿の束が置いてあったという。著者は文字と記号が入り混じった意味不明の暗号のような文字列を読み解く。猫語で書かれた子ネコへの指南書だった。近くに住む写真家夫妻の飼い猫ツィツァがタイプライターで書いたと思われる。「声を出さないニャーオ」(silent miaow)は人間の耳に聴こえない高い周波数で鳴いているのだが、この「声なき叫び」に心を揺さぶられた人間は、どんな願いも叶えてくれる。絶大な効果を生むので、使い過ぎは禁物にゃん。子ネコための処世術はヒトへの痛烈な批判の書でもある。『猫語の教科書』(The Silent Miaow 1964)から。
    2013・7・11


  • 折々のねことば sknys 003

    猫に話しかけずにエサをやって、どうする!! ニャア、ニャア、と鳴きながら足もとに身体をこすりつけて甘えている猫に、黙々と猫カンを開け、お皿に移し、ポンと床にエサの皿を置いてやる、などということは、人間として、まず出来ない‥‥
    金井 美恵子

  • ネコに話しかけるのは「ヘン」なことではない。ネコ好きの作家は「猫に話しかけないでください」という女子中学生の投書に異議を申し立てる。《‥‥エサを要求する、表現力の豊かな猫という動物に対して、中学生のお嬢よ、いくら、中途半端な年齢で、経験上知っているけど、女子も男子も人生の中で見た目の上でも一番みっともなくなる変身途上の時期にいるとはいえ、ブスッと黙ったまま、猫にエサをやるなんてことは、おかあさんにも、おばさんにも出来ませんよ‥‥》と続く。ネコに話しかけない方が「ヘン」なのである。『猫、そのほかの動物』(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)から。
    2013・10・11


  • 折々のねことば sknys 004

    デュシャンはこのレディ・メイドに『L.H.A.O.Q.』というタイトルをつけた。つまり、「Elle a chat au cul.」。直訳すれば「彼女のお尻は猫だ」という意味だ。
    スヴェトラーナ・ペトロヴァ

  • 「モナ・リザ」の安物のポストカードに顎髭と口髭を描き足したマルセル・デュシャンの「L.H.O.O.Q.」。スヴェトラーナはモナ・リザの胸にツァラトゥストラ(猫)を抱かせて、猫にも口髭を描き加えた。デジタル画像化した名画と愛猫の写真をコンピュータで合成した最新のコラージュ・アートである。作者はアシスタントで、デブ猫のツァラトゥストラ(吾輩)がモデルになった経緯を語り、修正前の絵画(デブ猫の描かれている絵がオリジナルという設定!)を解説する。ツァラトゥストラは両性具有者オーランドーのように時空を翔る。デブ猫が名画を語る『ファット・キャット・アート』から。
    2018・8・21


  • 折々のねことば sknys 005

    世に猫好きの人間は多いらしいので、こんなことを書いたら、袋だたきの目に会いはしないかと心配にもなるが、どういうものか、私は猫というやつを見ると、いじめてやりたい衝動が身内にむらむらと湧き起ってくるのをおぼえるのである。
    澁澤 龍彦

  • ネコの耳に洗濯バサミを挟んで部屋中を狂ったように駆けずり回させたり、鼻面に胡椒を振りかけてクシャミを連発させたり、掘り炬燵の中のネコを足で思い切り蹴飛ばして白い毛並みを茶色く焼け焦がしたり‥‥学生時代や子供の頃の偽悪趣味に先走った「動物虐待」を告白し、このエッセイ『玩物草紙』の挿絵を描いてもらっている(大のネコ好きの)加山又造の文章やボードレールの「玩具のモラル」を引いて、ある種の破壊衝動には形而上学的傾向に通じるものがあるような気がすると書く。「猫と形而上学」 から。
    2019・2・22


  • 折々のねことば sknys 006

    みなさんはねこのせなかをなでるとパチパチ音がするのを知っているでしょう。ねこ童子はあの電気でうつるねこのテレビを発明したのです。
    岡上 淑子

  • ねこ童子が発明したネコTVはネコの丸い目に映し出されるので、自分の目に映った画像を自分で視ることは出来ない。ネコたちが夜中に屋根の上に集まって背中を擦り合わせているのは互いの目に映っているTV画像を見ているからである。ねこ童子が自ら電波を出しているC・A・T=ねこチャンネルは「ねこ童子」の番組しか放映していないが、出来が悪いのでネコたちの目には、それぞれ違った映像が映ってしまうという。「山梨日日新聞」 「京都新聞」 に掲載された幻のフォトコラージュ作家の童話 「ねこ童子」 から。
    2019・4・11


  • 折々のねことば sknys 007

    「鼠殺しと見せかけるのだ、猫よ!ヴィーナスの音楽をダイアナの騒音で覆い隠すのだ !」
    アンジェラ・カーター

  • シャルル・ペローの童話「長靴をはいた猫」は遺産として譲り受けたネコが粉挽き職人の三男を侯爵に仕立てて王女と結婚させるが、英国作家はエロティックな大人の童話に改変した。若い騎兵隊士官の飼い猫フィガロ(ぼく)は自堕落な生活を送っている金欠症の主人のために朝食を調達し、賭博場で有利になるようにトランプの札を盗み見し、骰子に戯れつき、スペイン舞踏を踊って日銭を稼ぐ。嫉妬深い亭主に外出を禁じられている美しい貴婦人に一目惚れした飼主の性愛を成就させる。性交中の「あえぎ声」をネズミ捕りのドタバタ音で相殺させろという主人の言葉。短篇集『血染めの部屋』から。
    2019・4・21


  • 折々のねことば sknys 008

    猫はしっぽでしゃべる。たとえば、毛の流れと逆方向に撫でられたり、耳元で大声を出されたりしたら、いらいらしてパタパタとしっぽをたたくようにふる。
    田尻 久子

  • ネコは寝ている時に名前を呼ぶと面倒くさそうに尻尾だけで返事をする。機嫌の良い時は尻尾がピンと真上に立ち、甘えたい時には長い尻尾をヒトの躰に添わせて来る‥‥熊本県で小さな本屋「橙書店」を営む著者はヒトにも尻尾があれば良いのにと思う。尻尾で喋ることが出来れば、意思の疎通が楽かもしれない。考えていることを言葉に置き換えるということは何十年生きていても難しいと綴る。ネコ好きの小説家・谷崎潤一郎も尻尾が欲しいという思いを「客ぎらひ」の中で書いていた。エッセイ 「路地裏の猫」 から。
    2019・10・1


  • 折々のねことば sknys 009

    猫という字に、余計な線が入っているような気がする。目を凝らした。獣篇の上端からのびた線が旁の草冠と田のあいだを通って、右上のほうにゆるい弧を描いている。猫の首に紐が絡みついているような案配だ。
    皆川 博子

  • 高倍率の抽選に当たって公営住宅に入居した女性。英文タイプライターで翻訳業をしている「わたし」は前の住人が押入れの天袋に置いて行った和文タイプライターを試しに使ってみる。「猫」 という字を打つと余計な線が入っていた。猫の首に絡みついていたのは女の髪の毛だった。敗戦後ほどなく焼け跡に建てられた「監獄」のような4階建て団地。ベランダに隣室と共有のダストシュートが設置されている。《敗戦後、突然、俄に 、いっせいに、人間の命は何よりも大切だと、騒々しく叫びだしたのだ。民主主義。反戦平和。人命尊重。嘘つけ》と著者は怒りを込めて主人公に独白させる「青い扉」 から。
    2020・3・11


  • 折々のねことば sknys 010

    猫を選ぶなどということが可能だろうか? そして、私が選べなかった猫たちは、どうなるのか?
    アーシュラ・K・ル=グウィン

  • 愛猫ゾロを亡くしたル=グウィン家にも新たな魂が必要だと思える時期が来た。「猫は家の魂だ」 と言ったジャン・コクトーに同感する著者は動物愛護協会へ一緒に行って、ネコを選ぶのを手伝って欲しいと次女に頼む。希望は雄の黒猫だったが、細部にさほどの拘泥りはなかった。それよりも1人で行って選ぶのが恐くて仕方なかったのだ。ル=グウィンは最初に対面したネコを選んだ。スタッフも娘も彼女自身も驚いていた。《いいのだ。この子を戻して、ほかの猫たちを見て、一匹を選ぶ。もしかしたら、この子ではない猫を? そんなことはできっこない》と綴る彼女の公式ブログ 「パード日記」 から。
    2020・8・11

                        *

    〈折々のねことば〉は「ボーっと生きてんじゃねーよ!」という記事に付けたコメントから生まれた。「折々のことば」 を引用した記事に、謎の覆面画家バンクシーの言葉と『バンクシー ビジュアル・アーカイブ』(グラフィック社 2018)の著者ザビエル・タピエスの文章を添えたパロディ・コメントだった。調子に乗ってスニンクス版「折々のねことば 005」を作って、新たなコメントとした。元記事のブロガーにとっては迷惑な話かもしれないし、このままコメントだけで終わらせてしまうのは惜しいと思って、ブログ記事にしてみた。引用した言葉に解説文(171字以内)を添えるという〈折々のことば〉のフォーマットを踏襲して、ブログ記事らしく横書きに変えた。具体的には拙ブログ記事の冒頭に引用したネコに纏わる文章の中からキーになる「ねことば」を抜き出して、短文(273字以内)を添えるだけなのだが、これが意外に愉しい。日付は引用した「ねことば」を掲載した記事の投稿日とした。興味を持たれた読者が引用文や引用元の小説やエッセイを読んでもらえれば幸いです。

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    • 朝日新聞(朝刊)のコラム 「折々のことば」(鷲田清一)のネコ・パロディです^^;
    • 「折々のねことば sknys 000~010」 は引用文、出典はアマゾンにリンクしました
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    バンクシー 壁に隠れた男の正体(BANKSY THE MAN BEHIND THE WALL)

    バンクシー 壁に隠れた男の正体(BANKSY THE MAN BEHIND THE WALL)

    • 著者:ウィル エルスワース=ジョーンズ(Will Ellsworth-Jones)/ 「バンクシー 壁に隠れた男の正体」 翻訳チーム(訳)
    • 出版社:PARCO出版
    • 発売日:2020/06/02
    • メディア:単行本
    暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて

    暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて

    • 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)/ 谷垣 暁美(訳)
    • 目次:河出書房新社
    • 発売日:2020/01/25
    • メディア:単行本
    • 目次:カレン・ジョイ・ファウラーに寄る序文 / はじめに / 八十歳を過ぎること / パード日記 / 文学の問題 / パード日記 / 世の中を理解しようとすること / パード日記 / 報酬 / 訳者あとがき

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