ギュスターヴくん(白泉社 2016)ヒグチユウコ
猫のエルは(講談社 2018)町田 康 / ヒグチユウコ
MUNCH(誠文堂新光社 2018)ステフン・クヴェーネラン
Wall and Piece(PARCO 2011)Banksy
まさか逆さま(キノブックス 2015)中村 航 / フジモトマサル
いたずらの問題(早川書房 2018)フィリップ・K・ディック
オレンジ党 最後の歌(復刊ドットコム 2011)天沢 退二郎
猫の美術史(エクスナレッジ 2018)デズモンド・モリス
私の少女マンガ講義(新潮社 2018)萩尾 望都
世界の美しい猫 101(パイ インターナショナル 2015)レイチェル・ヘイル・マッケナ
騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編(新潮社 2017)村上 春樹
騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編(新潮社 2017)村上 春樹
黒猫 ムーンヌ(平凡社 1994)フィリップ・ラグノー
ψ(プサイ)の悲劇(講談社 2018)森 博嗣
銀河の壺なおし(早川書房 2017)フィリップ・K・ディック
パーマー・エルドリッチの三つの聖痕(早川書房 1984)フィリップ・K・ディック
スキャナー・ダークリー(早川書房 2005)フィリップ・K・ディック
火星のタイム・スリップ(早川書房 1980)フィリップ・K・ディック
流れよわが涙、と警官は言った(早川書房 1989)フィリップ・K・ディック
高い城の男(早川書房 1984)フィリップ・K・ディック
ギュスターヴくんはネコとタコとヘビのキメラ。上半身は猫で下半身は蛸足、両手が蛇頭で、頭の上に尖端が赤い球になったアンテナのような触覚が生えている。「きみはネコなの? ヘビなの? タコなの?」 とワニくんが訊く。ギュスターヴくんが自画像を描いた本を下に向けて振ると、9匹の分身が落ち出て来る。10匹のギュスターヴくんは古い書物や図鑑の中から蛇 、金魚、アルマジロ、インコ、兎、蝸牛、虎、鶏、犬、蝙蝠など、摩訶不思議なキマイラを次々に出現させるのだった 260
ネコをテーマにした短編集。ヒグチユウコのイラストは装画・挿絵を含めて11点。「諧和会議」は「人間のエネルギー政策の蹉跌によって自然界に予期せぬ変異が起こり」動物たちが人語を話せるようになった未来の寓話。「猫とねずみのともぐらし」は冬に備えて2人で買った「おいしい油の入った壺」を猫が舐めてしまう。「ココア」は狸穴で泥酔して怪我を負った「私」が猫と人間が逆転した異世界を徘徊。表題作は散文詩。「とりあえずこのままいこう」は病死して猫に転生した犬(私)が飼主と巡り会う。初版の誤植(諧話会議)は残念 259
ノルウェー・ハウゲスン生まれの漫画家が8年を費やして描いたコミック版ムンク伝。オール・カラーのアメコミ風「グラフィック・ノヴェル」だが、クセの強い絵柄で、悪意があるのではないかというほどに登場キャラはデフォルメされている。元々ムンクのファンだった著者は「積み上げたら数キロメートルの高さになるくらい」膨大な本や資料を読み込んで来たそうで、作中にはムンクの日記や手紙、親族や友人たちの手記なども引用され、作者本人と作家仲間のラーシュ・フィスケも作中に登場する。興味のある方は訳者・枇谷玲子さんの「祝MUNCH発売! 訳者より作品紹介」を参照 258
覆面画家のバンクシーは外壁、停車中のバン、道路、看板、歩道橋、交通標識などにサルやカラス、ネズミ、警官などをステンシルとスプレー缶で描き、画廊や美術館や博物館の展示室の壁に自作した「パロディ作品」を密かに架ける‥‥撤収されるまでの持続時間は数時間から十数日間に及ぶ。発覚して破棄されるどころか、「永久所蔵品」となった作品もあるのだ。表紙は右手に持ったカラフルな花束を投げようとする覆面男の壁画。「著者の表紙に引用できるコメントを、我々が出すことはあり得ません」というロンドン警視庁報道官の言葉が裏表紙に添えられている 257
投稿者の回文を元に、フジモトマサルがイラストを描き、中村航が文章を書いた回文集。「よし、今夜ニャンコしよ!」よりも、〈ニャンコと月見、きっと今夜に〉の方が出来が良いと思う(自画自賛?)けれど、完成度の高い拙作よりも、謎めいた回文の方がストーリとしては面白かったりする。『終わりは始まり』(集英社 2008)から17回文を抜粋して加筆修正し、新たに21回文を加えた増補決定版(本文中に引用された16篇を含む全54回文)。著者は「あとがきにかえて」で、2015年11月に亡くなったマサルさまへの謝辞を述べている 256
2114年、道徳再生運動(モレク)の集団相互監視システムに囚われたディストピア社会。調査代理店の社長アレン・パーセルは深夜、モレク創始者ストレイター大佐像の首を電動鋸で斬り落とし、赤ペンキで穢す。落伍者にはメンタル・ヘルス・リゾートという救済場所が用意されていた。T-M(テレメディア)の局長に就任したアレンは「アザーワールド」から脱出するが、オフィスでグレッチェン(分析医の妹)とキスしているところを監視ロボットに記録され、局長の職を解任されてしまう。アレンが仲間と最後に仕掛けた「悪戯」とは? 255
28年振りに発表された〈3つの魔法〉シリーズの第4部。第2部『魔の沼』(1982)で転校してしまった名和ゆきえが戻って来て、〈オレンジ党〉の6人‥‥由木道也、李エルザ、鈴木ルミ、竜留三郎、森コージが勢揃い。彼らの父兄や小学校の先生たちなども巻き込んで、大白鳥王を暗殺しようとする〈黒い魔法〉と対決するのだが、その後に恐るべき大惨事が待っていた。『オレンジ党と黒い釜』(1978)から33年を経ても、小学6年生の少年少女たちは年を取らない。刊行が3年余り遅れたことで、物語が現実に先を越されてしまうとは 254
フランス中部ドルドーニュ県のガビュ洞窟に描かれた旧石器時代の猫から始まるが、必ずしもクロノロジカルな美術史ではない。「聖なる猫」 「都市の猫」 「修道院の猫」 「悪魔の猫」 ‥‥など15のテーマ別に全134点で構成。絵と文がネコのように自由気儘に混在するカラフルなレイアウト。「これまで出版されたことのない新たな、しかも好奇心を刺戟する絵を見つけたい」と動物行動学者が書いているように、初めて見るネコの絵も少なくない。ウィットに富んだ親密な文章も愉しく、日本やコミック、ストリート・アートまで目配りされている 253
2009年にナポリ東洋大学、ボローニャ大学などで行なわれた講演会 &インタヴュー集。「イタリアでの少女マンガ講義録」は「リボンの騎士」から「大奥」までの少女マンガ史を語り、「半神」「柳の木」「ローマへの道」「イグアナの娘」を自作解説する。「少女マンガの魅力を語る」は日本の読者向けに矢内裕子のインタヴューに応える。2017年初夏のインタヴュー「自作を語る」は3・11後の作品について。「なのはな」や放射性物質3部作を描くことで「自分の精神が保たれた」、「春の夢」は16枚の番外編として構想されたという 252
女性動物写真家のネコ写真集。短毛種・セミロングヘア種・長毛種・エイジアン・オリエンタル・その他の種類の6つにカテゴライズされた101種の可愛いネコちゃんが登場。写真と解説(外見・毛色)、ネコに関する寸言を添える。スカーフ、ワイングラス、フラワー、ハンモック、リボン、眼鏡、壺、帽子、ロープ、縫いぐるみ‥‥などの演出は最小限。彼女の飼い猫エディ(ヒマラヤン・ペルシャ)も掉尾を飾る。本書のペルシャ(p.160)を表紙にした『SMITTEN』(グラフィック社 2006)も必見 251
別れた恋人が遺した子供(秋川まりえ)が自分の娘ではないかと疑う免色渉は彼女の家を双眼鏡で眺めるために邸宅を購入した。免色に頼まれて「娘」の肖像画を描く「私」。失踪して行方不明になった秋川まりえ。雨田政彦と共に伊豆高原の療養所にいる雨田具彦を見舞った「私」は騎士団長を包丁で刺殺し、顔なが(メタファー)が覗いていた床の穴から地下世界へ降りて行く。妹コミ(小径)が潜り込んだ富士の風穴に良く似た横穴の中を這い進む。狭い穴の中で身動き出来な井「私」が躰を前に突き出すと、祠の裏手にある石室に落下した 250
6年間共に暮らした妻と別れて、小田原郊外の山中に建つ画家の家に仮住まいすることになった「私」。みみずくが棲む屋根裏に隠されていた日本画「騎士団長殺し」。谷間を挟んだ右手の斜向いに建つ瀟洒な邸宅に一人で住む白髪の男性・免色渉。彼に依頼されて描いた肖像画。夜中に古い祠の裏、方形の石を積み上げた塚の下から聞こえて来た鈴の音。円形の石室にあったのは即身仏(ミイラ)ではなく木の柄のついた鈴だった。ある夜、再び鈴が鳴り「騎士団長殺し」から抜け出て来たような騎士団長(イデア)が顕われて「私」に語り出す 249
1974年、パリのル・マレ地区ヴィラルドゥワン通りのアパルトマンに引っ越して来たフィリップ・ラグノー(わたし)とカテリエンヌ・アングラッド夫妻は1匹の黒猫と出合う。エスペラント語で「猫」を意味する「ムムーンヌ」と夫が名づけたが、女の子だと思った妻が「ラ ・ムーンヌ」に改名する。ところがボス猫のムーンヌは去勢した牡猫だった。夫妻がチュニジアへヴァカンス旅行に出かけた後、留守宅に閉じ込められてしまったムーンヌの救出劇などの騒動がユーモアた っぷりに綴られる。原題「牡猫ムーンヌの教育的にして真実の話」248
Gシリーズ後期3部作はエラリー・クイーンへのオマージュ。『ψ』も『Yの悲劇』(1932)を下敷きにしている。元大学教授の八田洋久(ハッタ・ヨーク)が「ψの悲劇」という小説を遺して失踪し、女性主治医が鈍器(鉄の花瓶)で撲殺され、子供(孫)が毒殺されかかるというストーリも『Y』を踏襲。八田家の執事の一人称視点(私)で語られる点は異なるが、深読みすれば真犯人も『Y』と同じだったりする(ネタバレ?)。『χの悲劇』(2016)に引き続き、島田文子がキーパーソンとして登場。時代設定も近未来に設定されているので、ミステリよりもSFに近い。Wシリーズに引き繋がれるテーマです 247
ジョー・ファーンライトは壺なおし職人(pot-healer)。しかし陶器の壺は旧時代の遺物だった。現存する陶器も少なく、所有者も破損しないように細心の注意を払っている。集合住宅からオフィス兼工房まで出勤するが、修理の依頼は殆ない。政府から支給される失業手当てで暮らす開店休業状態。ある日、グリマングと名乗る謎の依頼主から仕事が舞い込んで来る。シリウス系第5惑星プラウマンズ・プラネットの海底に沈む大聖堂ヘルズカラを引き揚げるプロジェクトへの参加を呼びかける誘いだった。ジョーはプラウマンズへ旅立つが‥‥ 246
21世紀の地球は急速な温暖化によって高温多湿の灼熱地獄と化していた。バーニイ・メイヤスンはパーキー・パット人形と模型セットを製造販売するP・Pレイアウト社に雇われている流行先取り課の予知能力者。取締役社長レオ・ビュレロは金星の栽培農場から非合法ドラッグのキャンDを密輸している。惑星移民者たちはキャンDを服用することで、模型世界に耽溺していた。星間実業家パーマー・エルドリッチの宇宙船が冥王星に不時着する。エルドリッチがプロキシマ星系から持ち帰ったチューZはキャンDよりも遙に強力な昇天剤だった 245
カリフォルニア州オレンジ郡麻薬課のフレッドことロバート・アークターは覆面おとり捜査官。超皮膜面に150万人にも及ぶ人相学的特徴を断片化して高速でランダム投影するスクランブル・スーツに身を包んでいるので、彼の外見は朧げな影法師のようにしか見えず、誰も正体は知らない。フレッドは上司のハンクから麻薬常用者ボブ・アークターの監視を命じられる。ヤク中仲間が同居する自宅にホロ・スキャナーを仕掛けて、3人の行動を見張ることになる。自分自身を監視するという異常事態に陥った彼は次第に2人の意識に分裂して行く 244
1994年8月、火星へ移住した修理工のジャック・ボーレンはヘリコプターでマッコーリフ酪農場へ冷却装置の修理に向かう途中、砂漠地帯で暑熱と渇きで遭難しかけていたブリークマンたちを救助する。緊急通報を受けた水利労組組合長のアーニイ・コットのヘリも飛んで来たが、原住民を侮蔑してジャックと口論になった。国連の火星再開発計画を聞きつけた投機家レオはFDR山を買い占める。ジャックの父親に土地を先取りされてしまったアーニイは自閉症児マンフレッドの未来予知・過去改変能力を使って、3週間前に時間遡行するのだが 243
TVショーを終えた国民的司会者のジェイスン・タヴァナーは歌手のマリリン・メイスンに呼び出されて彼女のアパートへ寄り、重傷を負わされる。病院で手術を受けて一命を取り留めたが、ホテルの一室で目覚めたジェイスンを誰も知らず、身分証明書も紛失。出生記録も消えた「存在しない男」となった。IDカードを偽造したキャサリン・ネルソン、昔の情婦ルース・レイ、バックマン警察本部長の妹アリス、陶芸家のメアリー・アン・ドミニク、歌手のヘザー・ハート‥‥彼は2日間の女性遍歴を経て、マルチタレントとしての自分を取り戻す 242
第二次大戦で枢軸国が勝利し、日本とドイツが世界を支配している。アメリカ美術工芸品商会のロバート・チルダン、工芸職人フランク・フリンク、元妻のジュリアナ、退役軍人ジョー・チナデーラ、太平洋岸連邦第一通商代表団の田上信輔、手崎元将軍、ドイツ国防軍大尉ルドルフ・ヴェゲナー、小説家ホーソーン・アベンゼン‥‥など、登場人物たちが複雑に絡み合う。彼らが「易経」に頼って行動していること、作中で『イナゴ身重く横たわる』という連合軍の勝利した小説がベスト・セラーになっていることが歴史改変SFを解く鍵である 241
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