ゴーレム100(国書刊行会 2007)アルフレッド・ベスター
星の王子さま(宝島社 2005)アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
郵便配達夫シュヴァルの理想宮(河出書房新社 2001)岡谷 公二
「青い部屋」(文園社 2007)吉行 理恵
楽しみと日々(平凡社 2007)金井 美恵子・金井 久美子
レオノール・フィニ ── 境界を侵犯する新しい種(東信堂 2006)尾形 希和子
ジョーン・Bの夏(東京三世社 1983)樹村 みのり
グーグーだって猫である 3(角川書店 2007)大島 弓子
レタス・フライ(講談社 2006)森 博嗣
バベル(Babel)(思潮社 1994)パティ・スミス
鏡の国のアリス(東京図書 1980)ルイス・キャロル
怪盗グリフィン、絶体絶命(講談社 2006)法月 綸太郎
兎(筑摩書房 1973)金井 美恵子
文學少女の友(青土社 2007)千野 帽子
フローラ逍遙(平凡社 1987)澁澤 龍彦
ジャマイカの烈風(晶文社 2003)リチャード・ヒューズ
はるかなる わがラスカル(ブッキング 2004)スターリング・ノース
THE WIRE #275(2006 Rewind: Top 50 Releases of the Year)
楽譜、イラスト、ロールシャッハ、スラング、駄洒落、造語、ジョイス語‥‥翻訳不可能と思われていたアルフレッド・ベスターの超問題作を「ドン・キホーテ・デ・ラマンコ」な「肛門外漢」渡辺佐智江が訳出。2175年、アメリカ東海岸一帯に広がる巨大なスラム都市ガフ。8人の「蜜蜂レディ」が悪魔降臨ゲームに興じる。残虐凄惨な連続殺人!‥‥召還された「ゴーレム百手」の謎に化学者ブレイズ・シマ博士、精神工学者グレッチェン・ナン嬢、警察隊長インドゥニの3人が事件に挑む #40
新訳『星の王子さま』は倉橋由美子が「大人が読むための小説」として訳しています。キツネの逸話は「訳者あとがき」でも言及しているように、「仲良しになる」=「飼いならす」話。《狐は王子さまに「飼いならしてほしい」といいますが、これは、「自分を飼いならして愛人のような関係を結んでほしい」ということです》。21章の終わりに有名な一節があります。「おれの秘密を教えようか。簡単なことさ。心で見ないと物事はよく見えない。肝心なことは目に見えないということだ」#39
市井の郵便配達夫フェルディナン・シュヴァルが33年間かけて建てた夢の宮殿──1990年の夏、南仏オートリーヴの「シュヴァルの理想宮」を訪れた著者による解説書。郵便夫の生涯と宮殿の全貌。アンドレ・ブルトンの賛辞。文化担当の国務大臣アンドレ・マルローが国の重要建造物に指定する経緯。シュヴァル、アンリ・ルソー、レーモン・ルーセルを「3人の大無意識家」と呼ぶ岡谷公二の着眼点が面白い。親本(作品社 1992)には図版や写真なども豊富に収録されていたけれど?‥‥ #38
「吉行理恵レクイエム」と副題にあるように、吉行あぐり(母)が編纂した追悼書。あぐり、淳之介(兄)、和子(姉)、元編集者の文章に挿まれて、理恵の処女詩集「青い部屋」、小説、エッセイなどが収録されている。チャコールグレーの雲、黄色い猫のバルなど、吉行理恵は猫を愛した稀有な詩人・作家だった。巻末の「既刊リスト」によると、彼女の著作は2冊の詩集を除いて絶版状態にある。本書で 「記憶のなかに」 「小さな貴婦人」 「黄色い猫」 「靖国通り」 などを読める意義は大きい #37
月刊誌「和樂」に連載されていた18篇を中心に編まれた映画エッセイ集。カール・ドライヤー、ヴィスコンティ、ペドロ・コスタ、エリック・ロメール、クリント・イーストウッド、韓国映画、山中貞雄、山田五十鈴、フレデリック・ワイズマン、成瀬巳喜男、ゴダール、ジャン・ルノワールなどについて書かれているが、アップル・パイや豆カン(蜜豆)などのスイーツ、蓮根まんじゅうやナスの皮のきんぴらに関する文章も楽しい。ジョセフ・コーネルを想わせる姉・久美子のア ッサンブラージュが妹・美恵子のエッセイに「華」を添えている #36
《猫は、優しく静かで、しかし確かな存在である。フィニにとっては曖昧模糊とした人間社会の中では、猫たちの反応こそが確かに感じられる。猫たちは調和がとれているが、いつも1人きりで、反逆者である。だから猫を愛する人は一種孤独な状況にあるのだとフィニは言う。フィニの多くの友人たちも猫を愛していたことは、フィニの著作『猫の鏡』からもうかがい知ることができる。詩人リーズ・ドゥアルム、ジョイス・マンスール、‥‥》。〈フィニの少女たち〉を参照 #35
樹村みのりの珠玉抒情傑作短編集。「ジョーン・Bの夏」 ── 女流作家エレイン・メイに憧れる女子高生ジョーン・B・アンダーソンに纏わりつき、常に彼女を反駁する自称「親友」のバーバラはJ・B (バーバラ)の分身だった。「夜の少年」 ── 夜の廃墟に出没する幻の少年ハインリッヒは傷心の旅行者セシーの内面の投影だった。「水子の祭り」 ── 山岳病院へ画家として招かれた美大生・野沢伸子が描いた壁画は等身大の自画像だった。「ひとりと一匹の日々」 ── 脚本家の南川真理子さんとマンションの軒下で拾った子猫のきこの同居生活を描く #34
角川書店のPR月刊誌「本の旅人」に連載中のエッセイ・マンガ。「タマデビュー」から「いっしょに歩く猫」まで30篇(no.57〜86)を収録。『グーグー 3』の広告が載っている7月号「no.116 保護か抜歯か」からも、大幅に遅れたことが窺われる。「あとがきマンガ」 でも読者にお詫び。グーグー、ビー、クロ、タマ、ミケマル、モーモー、クリクリ、ルチル、きじ太郎と「今は猫9匹の大所帯」になってしまった。「さかさ食パン」の自画像ユーミンから爆発ヘアの眼鏡ムーミンへ大変身。ネコ世話係オバさんと化した中年ユーミンも悪くない #33
森博嗣の第5短篇集。ショート・ショート5篇を含む9作を収録。「ラジオの似合う夜」の「私」はVシリーズのH警部、「檻とプリズム」の「僕」は四季4部作の栗本其志雄、「刀之津診療所の怪」はGシリーズのキャラたち、山吹早月、海月及介、加部谷恵美、西之園萌絵、佐々木睦子‥‥が登場する。先行するシリーズを読んでいないと、ナンノコッチャ?‥‥ですが、診療所の医師がT鳥遊練無(ネタバレ!)だったとは。それも短篇「ぶるぶる人形にうってつけの夜」を読んでいないとチンプンカンプン。同じ西之園でも「M絵」ではなく「M子」なのだ #32
「澁澤龍彦の時間と空間」と題された篠山紀信の 「シノラマ」(30頁)。澁澤龍彦 「滞欧日記」(抄録)。主要著作初刊本書影(78冊)。種村季弘、巌谷國士、出口裕弘、東野芳明、荒俣宏のエッセイ。池田満寿夫、加山又造、中西夏之、加納光於、野田弘志、横尾忠則、野中ユリ、赤瀬川源平、谷山晃一、金子國義、四谷シモン、島谷晃、城景都、土井典、小林健二のオマージュ(作品と文+龍彦エッセイ)、自作年譜(1928ー1954)、著書目録抄、年譜補遺(1969ー1987)。『澁澤龍彦 夢の博物館』(1988)として単行本化 #31
パティ・スミスは「ロック歌手」であるより前に「詩人」だった。それも夢と現実、生と死、セックスとドラッグが混交する‥‥シュルレアリステックな現代詩。「詩」の翻訳は難しい。英語版オリジナル原詩が併録されているけれど、完訳でないのは悔やまれる(日本語訳は全65篇中48篇)。歌詞には収まらない「詩」と「散文詩」が彼女の内面を露わにする。この世界を小説化して理論武装するとキャシー・アッカー女史みたいになるのかな?(パティ・スミス「バベル」を参照しました) #30
マーチン・ガードナーの註がルイス・キャロルの仕掛けを読み解く。ノンセンス・ファンタジーの中にチェス・ゲームを嵌め込む趣向。左右が逆転する鏡のモチーフ。夢の無限観照。ヴィクトリア朝の時代背景。謎のジャバウォッキー(蛇馬魚鬼)。鏡像関係のトゥィードル兄弟。夢を見ている赤の王。言語学者ハンプティ・ダンプティ。落馬する白騎士は戯画化されたキャロルの自画像。アリス(白の歩)は「女王」になる。赤の女王は黒猫キティ。「魚ネタ」が多いのはネコの好物だから? #29
凝った装幀が愉しい少年少女向け「ミステリーランド」の1冊。怪盗グリフィンことジャック・グリフィン(ぼく)はメトロポリタン美術館所蔵の「ゴッホの自画像」(贋作)を本物と摺り替える依頼を引き受ける。これが周到な伏線。「フェニックス作戦」というCIAの指令でカリブ海に浮かぶボコノン共和国ヘ飛ぶ。ジョージ・シーガルの石膏像(『生首に聞いてみろ』)、ゴッホの贋作。アート・ネタかと思わせて、ヴードゥーの呪い人形(土偶)をめぐる推理活劇に進展 #28
漫画アクション・コミックス版『009ノ1』の第3集。「トレヴィに3度くる」「港」「夢幻(ムゲン)」「復讐」「死霊の館」「目覚め」「R&B」「昨日の暦」「ポップ」の9篇を収録。巻頭カラー4頁+4色カラー16頁なので、ミレーヌのミニ・ドレスの色が分かるし、エロティックなオリジナル表紙付きの雑誌サイズ(B5判)で読めるのが嬉しいなぁ。このシリーズを全巻持っていたら、お宝ですね。アニメ版『009-1』の原作が5.5本(「トレヴィに3度くる」は「黄金の女」に統合された)入っているのも魅力。ちなみに定価は150円です #27
金井美恵子(当時26歳)の第1短篇集。「愛あるかぎり」「不滅の夜」「帰還」「恋人たち」「森のメリュジーヌ」「腐肉」「母子像」「血まみれマリー」「忘れられた土地」「耳」「海のスフィンクス」「山姥」「迷宮の星祭り」「降誕祭の夜」「兎」の15篇を収録。「兎」は『不思議の国のアリス』をマンディアルグ風に料理した一品。集英社文庫版の「解説」で、吉田健一は『兎』を「大人の童話」と評している。《もし大人が読んでも面白くないものならば子供にも向かないのである》#26
ウサギの穴に落ちて行くアリスと白兎。文學少女ではない「文學少女の友」に宛てて綴られた7通(一週間)の手紙。月曜日・肺病で夭折した文學少女の霊に取憑かれてしまった人たちのために、火曜日・耽美と人形、水曜日・旅するお嬢さん、木曜日・「心は少女」 の罠、金曜日・等身大と妄想のあいだ、土曜日・心のにきび対策、日曜日・芥川賞選評を読む。小川洋子、倉橋由美子、澁澤龍彦、金井美恵子、笙野頼子、吉田健一など、博引傍証・博覧強記な「文學少女」のための読書ガイド本 #25
平凡社ライブラリー版(1996)のハードカヴァー原本(1987)。 美麗函入りの装幀(中島かほる)、植物図譜(カラー74頁)、澁澤龍彦のエッセー25篇(flora 25)+ 図版解説(八坂安守)が三位一体となった美しい本。水仙、椿、梅、菫、チューリップ、金雀児、桜、ライラック、アイリス、牡丹、朝顔、苧環など。澁澤龍彦の生前最後に出版された単行本。《書物の中で出会ったフローラ、記憶の中にゆらめくフローラが、現実のそれよりもさらに現実的に感じられる》 #24
1977年に刊行された〈文学のおくりもの 17〉の新装版。海洋冒険少年少女小説の傑作。金井美恵子はアーサー・ランサムの小説やゴールディングの『蠅の王』と比較して《ヒューズの『ジャマイカの烈風』は、怖しい、ある意味では残酷ともいえる小説ではあるけれど、ここに登場する子供たちは、『蠅の王』のように象徴的子供として存在するわけではなく、いってみれば、ランサムの小説の子供たちだって、条件さえそろえばこうなるだろうという、生々しい存在感がある》と書いている #23
あらいぐまのラスカル君とスターリング少年の交感を描くノン・フィクションの傑作。1918年5月、スターリングと親友のオスカーは森で、あらいぐまの仔を捕まえた。翌年4月までの1年間、ラスカルと一緒に暮らした少年の日々が、北米ウィスコンシン州の大自然の中で鮮やかに甦る。「好きなようにしたらいいんだよ、ラスカル。おまえの一生じゃないか」 ‥‥『星の時計のLiddell』(集英社 1985)のS・ノースは「幽霊」になってしまった男。少女アリスやラスカル君も登場します #22
英THE WIRE誌のキャッチコピーは「ADVENTURES IN MODERN MUSIC」。本誌1年分(12冊)をシュレッダーで裁断しちゃう批評性が好きです。2006年の年間ベスト5・アルバムを挙げておきます。1. Burial(Hyperdub)Burial、2. Ys(Drag City) Joanna Newsom、3. Evangelista(Constellation)Carla Bozulich、4. Human Animal(Sub Pop)Wolf Eyes、5. Sound Grammar (Sound Grammar Ornette Coleman‥‥「2006 Rewind」#21
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