かけ湯くん 旅する温泉漫画(河出書房新社 2018)松本 英子450
飛ぶ男(新潮社 2024)安部 公房449
小さな猫の本(リベラル社 2023)服部 幸(監修)448
神様のお父さん ユーカリの木の蔭で 2(本の雑誌社 2023)北村 薫447
猫屋台日乗(幻冬舎 2024)ハルノ 宵子446
でぃすぺる(文藝春秋 2023)今村 昌弘445
猫と ねこのエッセイアンソロジー(河出書房新社 2024)444
ぼくはあと何回、満月を見るだろう(新潮社 2023)坂本 龍一443
ねこがお(クレヴィス 2023)岩合 光昭442
夜廻り猫 10(講談社 2023)深谷 かほる441
エジプシャンマウ、アビシニアン、アメリカンショートヘア、ジャパニーズボブテイルなど全38種、「ヨーロッパ・アフリカ、アメリカ、アジア生まれの猫」 図鑑、ギリシャ・サントリーニ島、イタリア・マルタ島、北海道・小樽、宮城・田代島など全17地域の 「世界ねこめぐり」 、毛色と柄、体型、目の色の 「猫の豆知識」、マネ、ルノワール、ゴッホなど16点の 「猫と絵画」、向田邦子、大佛次郎、漱石など12人の 「猫と文学」 というように 「猫本」 のエッセンスが過不足なく、コンパクトな判型(A6変形)に詰まっている 「小さな本シリーズ」 の1冊
「本の雑誌」 に連載中のエッセイ『ユーカリの木の蔭で』(2020)の続編。「明日の友」(婦人之友社)の連載 「本と幸せ」、巻末に 「北村薫の図書室」 を収録している。小説、随筆、映画、落語などの知られざるトリヴィアを本の中から見つけて歓喜する。ミステリ作家らしく、肝腎肝要なことは掉尾に書いたり(書かなかったり?)するところが心憎い。謎の表題は手塚治虫の父親・手塚粲氏のこと。表紙カヴァに描かれた微睡む茶トラに惹かれて読んでみたが、松本英子の『かけ湯くん 旅する温泉漫画』と三島由紀夫が猫好きだったという逸話しかない
「居酒屋ワカル」 を想わせる表題だが、深谷かほるのような猫マンガではないし、猫のための料理本でもない。「猫屋台」 は2012年に相次いで両親を亡くし、介護生活から解放された吉本家の長女が自宅を改装して、2014年12月に開店した完全予約制の居酒屋である。『猫だましい』(2020)では女将の乳がん、大腿骨骨折(人工股関節)、大腸がんなどの闘病生活も綴られた。本書は脱腸入院、コロナ騒動で政府が発令した自粛要請や 「緊急事態宣言」 を厳しく批判する。ネコの出番は少ないけれど、ネコがレシピを図解するイラスト(36葉)が愉しい
小堂間小学校6年生の木島悠介(おれ)、一学期の学級委員長だった波多野沙月、転校生の畑美奈の3人は夏休み明けの二学期、壁新聞を作成する掲示係になった。昨年11月末、奥神祭りの前日に運動公園のグラウンドで刺殺された従姉・波多野真理子(マリ姉)のパソコンに遺された「奥郷町の七不思議」というテキスト・ファイルを手懸かりに、「魔女の家」 に棲む老婆や警官のヒロ兄などの助けを借りて、オカルト好き少年、優等生、ミステリ・マニアが「なずての会」の謎を解き、暗躍する黒い 「影坊主」 の正体に迫るジュヴナイル・ホラー・ミステリ
『にゃんこ天国』(2018)を改題した文庫版。 夏目漱石 「猫の墓」(1909)から、角田光代 「猫、想像力を鍛える」(2015)まで、33人の日本人作家による猫エッセイ集。塀の上で一点を見つめて身じろぎしない愛猫ネネの姿に閃いて、スランプから脱した池波正太郎。猫の 「ツンデレ」(という言葉はなかった)を見抜いた谷崎潤一郎。元祖ペットロス(ノラ)に陥って、猫愛ダダ漏れ(クル)の内田百閒などのエピソードも面白いが、大佛次郎や佐藤春夫の文章の上手さが際立つ。解説「百年の猫を編む」は猫本専門店 書肆吾輩堂店主・大久保京
初の自伝『音楽は自由にする』(2023)の続編で、冒頭の 「ガンと生きる」 はベルトリッチとボウルズ、外科手術前後(2021・1)や両親の死のことなど、「母へのレクイエム」 以降は時系列(2009~)で語られる。死後出版のため、「著者に代ってのあとがき」 は聞き手の鈴木正文が代筆している。教授と最期に会ったのは死の20日前、『坂本図書』(バリューブックス・パブリッシング 2023)に収録するための対談だったという。巻末 「フューネラル・プレイリスト」 の最後(死の3日前!)に追加された葬儀曲はローレル・ヘイローの〈Breath〉だった
ユニークな視点で編集した写真集 「IWAGO’S BOOK 8」 はネコの顔だけをクローズアップ。生後1日目の仔猫から20歳を越えた長寿ネコまで、年齢順に総勢70匹(80頁)が登場。ドアップなので迫力満点。ブルー、グリーン、ヘーゼル、アンバー、カッパ ー、オッドアイなど、どうしても美しく大きな目色に惹かれる。「目の色が神秘という言葉を連想させる顔」 。時に愛らしく、優しく、怖く、誰何する、達観したような表情に魅惑される。《ネコの顔は心底、美しい。太古から変わらない輝きを秘めています》
「泣く子はいねが〜、ひとり泣く子はいねが〜」 と遠藤平蔵と懐の重郎が夜廻りして、心で泣く人の涙の匂いを嗅ぎつける8コマ猫マンガの第10巻だが、キーワードは「20年」かもしれない。小学生の時の担任先生を思い出す明日31歳の誕生日を迎える青年(巻頭カラー)、小劇団時代の仲間から20年ぶりの連絡があった億ションに住む売れっ子脚本家(二十年)、20年ぶりに夜の公園に来た女性(あとがき)など、僅か4頁に詰まっている20年分の思いが重い。開店した 「居酒屋ワカル」(スピンオフ作品)が忙しいのか、夜廻り見習いの出番は5回に減った
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