TECHNIQUE (Factory 1989) New Order
LUST (Elektra 1991) Ambitious Lovers
BLUE LINES (Wild Bunch 1991) Massive Attack
MAXINQUAYE (Fourth & Broadway 1995) Tricky
TIMELESS (Metalheads 1995) Goldie
DO YOU LIKE MY TIGHT SWEATER? (Echo 1995) Moloko
EMPEROR TOMATO KETCHUP (Electra 1996) Stereolab
LAMB (Fontana 1996) Lamb
60 SECOND WIPE OUT (DHR 1999) Atari Teenage Riot
ULTRA ー OBSCENE (XL) Breakbeat Era
AFTERGLOW (Heavenly 1999) Dot Allison
ENDLESS SUMMER (Mego 2001) Fennesz
VESPERTINE (One Little Indian 2001) Bjork
NUMBERS LIFE (Tigerbeat 6 2002) Numbers
RuBY BLUE (Echo 2005) Roisin Murphy
- 記事が長くなってしまったので、15枚ずつ前後編2つの記事(1・2)に分けました
- 《Endless Summer》のアルバム画像はリマスター盤(2007)の新カヴァです^^
New Orderの5thアルバムはスペイン・イビザ島と英リアル・ワールドのスタジオで録音されたこともあってか、アシッド・ハウス色が濃い。先行シングル〈Fine Time〉のカヴァにカプセル錠剤のシルエットが使われたことからも、ドラッグ・カルチャーにドップリ浸かったというイメージに拍車をかけた。お世辞にも決して上手いとは言えない演奏、Bernard Sumnerの下手クソなヴォーカル、Peter Hookのリード・ベースに 「 テクニーク」 という逆説的なアルバム・タイトルをつけ…#01
《Envy》(1984)、《Greed》(1988)に続く「7つの大罪」シリーズ3作目は「色欲」。ホワイトアウトした半開きの口唇から真っ黒い歯とピンク色の舌が覗くアルバム・カヴァは卑猥に見えなくもない。Ambitious LoversはArto Lindsay (ギター、ヴォーカル)とPete Scherer(キーボード、サンプラー、シンセベースなど)のデュオ。サウンドとプロデュースはPete Scherer(作曲)に任せて、Arto Lindsay (作詞)がプレイヤーとして前面に立つ役割分担となっている。…#02
Massive Attackのデビュー・アルバムと「湾岸戦争」は分ち難く結び着いている。なぜならばリリース時が戦争勃発時と重なったために「ATTACK」(攻撃)という言葉がアルバム・カヴァから消し去られてしまったのだから。検閲や自粛、抗議の表明とも取れるエピソードは逆に彼らの知名度を上げることになった(手許にあるUK盤は「massive attack」と表記されているが、CD盤面には「MASSIVE」としか記されていない)。英ブリストルはパンク〜ニュー・ウェイヴの80年代から...#03
1995年はトリップホップ・イヤーとして記憶されているかもしれない。しかし、Trickyのデビュー・アルバムはダークな空間で女性ヴォイスが妖しく浮游するトリップホップよりは内面へ深く沈み込むダウン・ビートに近い。Trickyの内省的な呟きとMartina Topley-Birdの耽美系ヴォイスは、解体されて鉄骨が剥き出しになった建造物や、半壊して骨組みだけが残った廃墟の中で流れる幽霊たちの歌声のように気味が悪い。陰鬱だが閉ざされた暗黒空間ではない。瓦礫の中の読経のような...#04
19世紀末芸術が20世紀に衰退したように、ドラムンベースは20世紀末に咲いた徒花だったのだろうか?‥‥人力では決して叩けない超絶ドラミング、シンコペーションする高速ビート。ドラムマシンによる超人的なプレイはサイボーグやアンドロイドたちが闊歩する近未来世界を想わせるものだった。新世紀は未だドラムンベースが描いた未来に追い尾いていないけれど、最先端音楽としてのドラムンベースは失速して前世紀の遺物となった。しかし、色褪せて古色蒼然となってしまったRo...#05
90年代中頃、雨後の筍のように出現したトリップ・ホップ・ユニット(男女2人組)の中でも、Moloko(ロシア語で「ミルク」という意味)の存在は異質だった。「私のピタ短セーターが気に入った?」という変テコリンなアルバム・タイトル。ピタ短セーターを着た子供の周りにキモ可愛い妖怪深海魚やモンスターたちが浮游する不思議なイラスト・カヴァ。無機的な変態ビート、ブヒブヒ・ブヒョブヒョなアナログ・シンセ、ウィアードな女性ヴォイス。トークボックス(ヴォコーダ?…#06
John McEntire(Tortoise)がメンバーと共同プロデュースして、Sean O'Hagan(High Llamas)がストリングス・アレンジャー兼プレイヤーとして参加した《トマト・ケチャップ皇帝 》(寺山修司の映画タイトルから採った!)はポスト・ロ ックとマジカル・ポップスの夢に満ち溢れている。Lætitia Sadierの投げ遺り風な低温ヴォイスとMary Hansen嬢の甘ったるいコーラスとの鮮やかな対比。ブヒョブヒョなアナログ・シンセと硬質で軽やかなヴィブラフォンの競演。ブリッ…#07
90年代後半に出現したトリップホップ系のユニットの多くはデビュー・アルバムが最高で、2作目以降は何故か急激に色褪せて輝きを失ってしまう。Andy BarlowとLouise Rhodesの男女デュオLambも、その例外に漏れず同名タイトルのデビュ ー作が素晴しい。トリップホップ〜ドラムンベースの見本のようなアブストラクト・サウンド。人工的にシンコペートするリズム。ダークな空間に浮游する内省的な女性ヴォイス。7拍子の〈Lusty〉、6拍子の〈Gold〉、Bjorkっぽいヴォイ...#08
2007年の暮れ「アップルストア渋谷」に立ち寄ったら、ちょうどAlec Empireの店内ライヴが始まるところだった。デジタル・ノイズの嵐!‥‥駆けつけたファンは狂喜乱舞でも、一般客にとっては騒音以外の何者でもない(営業妨害?)。ATR名義の3rdアルバムはタイトル通りの内容で、9曲入りのライヴCD(Philadelphia 1997)がオマケに付く。ハードコア・パンク、インダストリアル、ヒップホップ、ラップ、テクノ、ダブ、ドラムンベース‥‥すべてに「ノイズ」という香辛料…#09
ドラムンベースの革新者Roni Sizeが結成した新プロジェクトBreakbeat Eraのデビュー・アルバム。Roni Size、DJ Die、Leonie Laws(ヴォイス)の3人組で、かつてのトリップホップ・ユニットのように女性ヴォーカルがフィーチャーされている(ポスト・トリップホップを狙った?)。「超ワイセツ」というタイトルに反し、硬質でストイックなトラックが全15曲 ・74分以上に渡って繰り広げられる。トリップホップのように暗鬱でも淫靡でも耽美でも変態でもゴシックでもない…#10
夕闇の中に浮かび上がる金髪女性の横顔。物憂げに歩道に座って気怠そうに路上を歩く。黄昏は逢魔の時間?‥‥〈Colour Me〉や〈Close Your Eyes〉の蠱惑的なヴォイス(目を閉じて / 私を太陽まで連れて行って / ゆっくりと燃えるわ / 天国で一緒になるの)に瞬殺されちゃう。Dot Allisonのソロ・デビュー・アルバムはダビーでダウナー系のトリップホップで、Magnus Fiennesと共同プロデュースしている。〈Tomorrow Never Comes〉は儚げな妖精の囁き。〈Message Pers…#11
「終わらない夏」──1年中常夏の第3新東京のような、レトロ・フューチャーな日常と超現実的な暴力世界。2001年の夏の終わりの心象風景としてのFennesz。海面をオレンジ色に染める夕焼け空。夏の思い出にメジャー7thコードの甘い響きは良く似合う‥‥なぁんて感傷的な気分に浸ってしまうのは、思春期にインプットされたポップ・ソングのメロディ──実際はヴァーチャルで擬似的なノスタルジーに過ぎないのだが──が甘酸っぱい記憶と共に甦って来るからだろうか。「♪So...#12
《Vespertine》は不思議な親和力に満ち溢れている。今までの外部への執拗な攻撃・破壊性は暴風雨後の凪のように影を潜め、Bjorkの新たな冒険は内面ヘ向かう。いつの間にか、どこか人間離れした近寄り難い存在になってしまった彼女は、昆虫が完全変態の過程で「蛹」になるような劇的な変貌を遂げつつあるらしい。内向性と言っても、それは自閉症的な「引きこもり」でも、自らを傷つける行為でもなく、むしろ逆に親密な、Bjorkという「繭」に包まれる──彼女の中に溶け込む──…#13
ベースレスの3人組、Numbersの紅一点インドラ・ドゥニス(Indra Dunis)はドラムを叩きながら絶叫するのだろうか。Gang Of Fourみたいなギター・リフ、低音部を支えるアナログ・シンセ、パンキッシュな女性ヴォーカル‥‥DevoとThe B-52'sの「隠し子」なのか、君たちは。デビュー・アルバムはKid606(Miguel De Pedro)が運営する「Tigerbeat 6」からミャオ〜。全10曲・19分!‥‥これでフル・アルバムなのと訝しがるリスナーもいるかもしれない。アナログ時代の…#14
Roisin Murphyと言えば、男女2人組トリップホップ・ユニットMolokoの女性ヴォーカリスト。従ってソロ・アルバムというよりはプロデュースを手掛けたMatthew Herbert版モロコに近い。90年代、雨後のタケノコのように英国庭園に繁茂したトリップホップ・グループの多くはデビュー・アルバムこそ目新しかったが、2nd以降急速に失速して行った。Molokoの出世作《Do You Like My Tight Sweater?》(1995)も、その奇妙なジャケ画と共に変態的サウンドが素晴しかった…#15
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「エレクトロニック・ミュージック」というジャンルは茫洋としていて捉えどころがない。「エレクトロニック・ミュージック・アルバム・ベスト 100」(ミュージック・マガジン 2019年8月号)は「テクノやハウスなどのクラブ・ミュージックのみならず、黎明期の電子音楽や現代音楽、クラウトロックやヒップホップなどの作品も対象」にしたオールタイム・ベストだが、そこまで幅広く年代的にも遡って聴いていない。ブログでレヴューした「年間ベスト・アルバム」(Rewind)の中から選んだ、過去30年の「エレクトロニック・ミュージック・ベスト30」である。1アーティスト・1アルバムという縛りで、順位はつけずに年代順(1989-2018)とした。〈90年代UKアルバム・ベスト20〉と7枚、〈ゼロ年代アルバム・ベスト20〉と4枚、〈21世紀のシンガー・ソングライター30〉と7枚重複してしまったのは仕方ない。メインストリームよりも、そこから派生〜進化した周縁のエレクトロニック・ミュージックに興味があるのかもしれない。
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