• 「その猫がステーキを盗んだのさ」と、バーニイ。/「そうかしら? それを知らされたお客は、キッチンへ集って議論をはじめました。お肉は五ポンドまるごと、影もかたちもない。そして一方では、いかにもおなかがくちくてごきげん、という感じの猫がすわってる。"猫の重さをはかってみよう" だれかがそういうと、みんなもかなりお酒がまわっているもんだから、それが名案に思えたの。そこでゾロゾロとバスルームへ移動して、猫をハカリにのせたわけ。針はきっかり五ポンドをさしたわ。みんながその目盛をたしかめているとき、一人のお客が、"やっぱりそうだ。ここだよ、ステーキは "みんなはそれでなっとくして、真相がわかったつもりになった。ちゃんと実験で証拠が出たんだから、と。でも、そこで一人が急に疑問を感じて、ふしぎそうにこういったのよ。"だけど、それじゃ猫はどこへいったの?"」
    フィリップ・K・ディック 「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」


  • 読者の皆さん、御愛読ありがとう。〈s k n y s - s y n k s〉の総閲覧数が300万pvを越えました(2018-05-18)。200万PVに達したのは4年前、奇しくもW杯ブラジル大会中だった。100万PV(2011-11-20)から200万PV(2014-06-26)は3年7カ月を要したので、総閲覧数の伸びは鈍っている。年間記事数は60から70本(月6本)へ微増してるのに総閲覧数が伸び悩んでいるのだから、事実上は減少傾向にある。記事別閲覧数には大きな隔たりがある。最新記事別ランキングのトップは〈FAVORITE ー ALBUMS 11〉(53620pv、6月11日現在)で、第2位の〈猫のアート〉(20467pv)とは2.5倍以上の差がある。この記事の閲覧数だけが突出して多い理由は残念ながら分からない。急速に閲覧数が伸びている〈クリアランス・セール 2011〉(7687pv)についても同様である。400万PVは4年後の2022年(W杯カタール大会中?)になるのでしょうか。

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    ハリル・ホジッチ監督解任、ネガティヴ報道、危機感、初戦(対コロンビア)は引き分け狙い‥‥W杯2018年ロシア大会(6/14~7/16)が開催中だが、日本代表は梅雨の曇り空の暗雲のように暗鬱で悲観的な観測に覆われている。優勝を目指すと豪語しているのは本田圭佑くらいで、西田監督に至っては「小さな奇蹟を起こしたい」と謙虚というか、これから一世一代の一世一代の試合に挑む指揮官としての覇気が余り感じられない。W杯に出場した経験のある選手がいても、指揮官が初参戦では心許ない。開催2カ月前にハリル・ホジッチ監督を馘首した理由が代表から外れていた本田、香川、岡崎の3選手を復帰させることだとしたら、本末転倒ではないか。1次リーグを突破して決勝トーナメントに進出することが最優先されるべきミッションで、3選手がW杯のピッチでプレイすることではないのだから。ハリル・ホジッチ率いる日本代表の試合を観たかったと思っているサポーターは少なからずいるはずなのに。

  • 多くの人々が、ネコにある種の超能力、すなわち超感覚的知覚(ESP)があると信じているが、それはない。わからないことをなんでも超能力のせいにするのがはやりだが、これでは独りよがりに陥るのがおちである。科学的真実ははるかにおもしろいものだが、異常なできごとをなんでもかんでも「神秘的な力」というごみ箱にほうりこむだけでは、それを研究する道は閉ざされてしまう。/ そもそも超感覚的知覚ということばは自己矛盾である。定義によれば、私たちが知覚するものはいずれも感覚器官を通った結果生じるものである。そうであれば、感覚を超えたものは知覚されないはずである。したがって、超感覚的知覚というようなものはありえないことになる。
    デズモンド・モリス 「猫に超能力はあるか?」


  • W杯南アフリカ大会(2010)では予言タコのパウル君が地元ドイツ代表の決勝戦を含む全8試合の勝敗を見事に的中させて大きな話題となった。短命だったパウル君に代わって、白ネコがロシア大会の未来を予想する。エルミタージュ美術館の地下に棲む70匹の「警備員」の中から、青い目の白ネコ、アキレス君に白羽の矢が立った。「特別なネコを選びたい」が、美術館職員たちには「耳の聞こえないネコに幸せを与えたい」(碧眼白毛のネコは遺伝学的に聴覚障害が起きやすい)という思いもあったという。前哨戦のコンフェデ杯(2017)で4試合中3試合の勝敗を的中させた実績を買われ、W杯ロシア大会の「予言ネコ」としての大役を担うことになったのだ。動物行動学者のデズモンド・モリス先生は「猫に超能力はあるか?」という疑問に「それはない」と断じていますが、「耳の聞こえない予言ネコ」の「神秘的な力」に期待しましょう。 開幕戦ロシア対サウジアラビア(6/14)の勝敗を前日の記者会見で予言した。アキレス君は地元ロシアの勝利を予想‥‥果たして試合の結果は?

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  • カスタマイズした「sknysのプロフィール」


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    フィリップ・K・ディックの長編小説を10冊読み終えたので、暫定ベスト3を発表することにしました。「ユービック」「火星のタイム・スリップ」「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」(順不同)‥‥「ユービック」は不可思議な「時間退行現象」が解明された後も、主人公ジョー・チップの依然として半生者状態という絶望的なシチュエーションと特効薬ユービック広告のユーモア・センスが絶妙に混じり合った読後感を残す。「火星のタイム・スリップ」は主人公ジャック・ボーレンが原住民ブリークマンを救助するシーンからマンフレッド・スタイナーが未来から、タイム・スリップして来るラストまで瑕疵がない。「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」は義眼、義歯、義手というサイバーパンクな「聖痕」とパーキー・パット(模型世界)の「ツボ」に嵌まりました。ちなみに高校の同窓生だったというアーシュラ・K・ル=グインが挙げたベスト5は「高い城の男」「ドクター・ブラッドマネー」「火星のタイム・スリップ」「アルファ系衛星の氏族たち」「銀河の壺なおし」。

  • 初期作品と最近作のいくつかには、テーマの強迫的衝動性が顕著で、このアーティストの制御力を脅かしているものもあります。初期作品では『死の迷宮』と『時は乱れて』が好例でしょう。これらは過剰制御の緊張にいささか苦しんでいるところがみられます。そして『ユ ービック』から『流れよ我が涙、と警官は言った』に至る過程では、理性的な意見もしくは信念の表現と、非理性的な精神の目撃者としてこのうえなく頑強で圧倒的な感情とのあいだのギャップが果てしなく拡がっています。こうした危うい素材を完璧に制御していた時期には、ディックは少なくとも五冊、高く張られたワイヤの端から端までをいとも優美に歩いている、そんな作品を書きました。『高い城の男』、『ブラッドマネー博士』、『火星のタイム・スリップ』、『アルフェイン・ムーンの一族』、そしてあの極度に風変わりな『銀河の壺直し』、この五作です。
    アーシュラ・K・ル=グイン 「慎ましき者」


  • フィリップ・K・ディック(PKD)の「パーキー・パットの日々」(1963)はバービー人形のブームから着想を得た短篇で、長編「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」(1964)の原型になっている。核戦争後の荒廃した地球、北カリフォルニアの地下シェルターで暮らす3組の夫婦はパーキー・パット人形の模型セットに耽溺していた。ケア・ボーイ(八本脚の火星生物)がトランジスター・ラジオを投下したことで、無線通信機の存在に気づいたノーマン・シャインはフッカー・グリーブ市長の通信機を借りて、オークランドのシェルターと連絡を取り合う。オークランドのコニー・コンパニオン人形に興味を惹かれたからだ。ノーマン夫妻は中間地点のバークレー・シェルターでオークランド・チームと対抗ゲームを行なう。お互いに人形と模型セットを持ち合い、回転盤の針を回して出たマス目を進む。賭けの勝利品は相手の人形。熱可塑性プラスチックのパーキー・パットは十代の生娘だったが、木彫りのコニー・コンパニオンは1年前にポールと結婚していて、しかも妊娠3カ月だった。

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    s k n y s - s y n k s

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    • Articles: 779
    • Date: 2018/06/16
    • Page View: 3,032,255

    Je Suis Une Ile

    • Artist: Halo Maud
    • Label: Heavenly
    • Date: 2018/05/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: Wherever / Du Pouvoir/Power / Chanceuse / Surprise / Tu sais comme je suis / De retour / Baptism / Fred / Je suis une Île / Proche proche proche / Dans la nuit / Des bras

    猫に超能力はあるか?── キャット・ウォッチング 2

    • 著者:デズモンド・モリス(Desmond Morris)/ 羽田 節子(訳)/ 岩合 光昭(写真)
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2009/10/02
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:どれほど耳がいいか / 音楽にどう反応するか / どのようにしてゴロゴロいう音を出すか / 何種類の声を出すか / 眼でどんな信号を送るか / 尾による信号はどれくらいあるか / 超能力はあるか / どれほど味覚が鋭いか / なぜ、ときおり食物を拒否するのか / ...


    夜の言葉

    • 著者:アーシュラ・K・ル=グイン(Ursula K. Le Guin)/ 山田 和子・他(訳)
    • 出版社:サンリオ
    • 発売日:1985/11/15
    • メディア:文庫(サンリオSF文庫 2-H)
    • 目次:イントロダクション(スーザン・ウッド)/ ル=グインによるル=グインの紹介 / ファンタジーとサイエンス・フィクションについて / リアルな存在である書物 / 真実を語る / 限界への挑戦 / アーシュラ・K・ル=グイン 書誌チェックリスト(ジェフ・レヴィン)/ 世紀末の通時性(山田和子)


    変数人間(ディック短篇傑作選)

    • 著者:フィリップ・K・ディック(Philip K. Dick)/ 大森 望(編)
    • 出版社:早川書房
    • 発売日: 2013/11/08
    • メディア:文庫(ハヤカワ文庫 SF 1929)
    • 目次:パーキー・パットの日々 / CM地獄 / 不屈の蛙 / あんな目はごめんだ / 猫と宇宙船 / スパイはだれだ / 不適応者 / 超能力世界 / ペイチェック / 変数人間 / 編者あとがき